【奥越】静寂のマイナーピークを歩く 細谷又山から越戸谷山へ
Posted: 2024年2月07日(水) 19:39
【日 付】2024年2月3日(土)
【山 域】奥越 九頭竜湖周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】下大納7:15---8:25渡渉点----9:35 P827m9:55---12:10細谷又山13:35---14:30大納越戸谷源流---
15:05越戸谷山15:20---16:25林道---17:00 P835m---17:50下大納
よく冷え込んだ朝、霧氷を期待して眺めた九頭竜湖駅のまわりの山肌は黒かった。雪はずいぶん少ないようだ。
空は晴れ渡って雲海も見られない。しかし天気がいいだけでも良しとしよう。
下大納の定位置に駐車して大納川にかかる橋を渡るとすぐに除雪が終わる。雪の壁も一昨年岩谷山~御伊勢山
を周回した時よりもだいぶ低い。
大納川の上流方向に目をやると、お気に入りの縫ヶ原山の切れ落ちた南面が朝日に輝いている。
雪はよく締まっており、スタートからスノーシューを履いて大納川の下流方向へ延びる林道を調子よく歩いて
いると、なにか様子がおかしい。大納越戸谷(おっとだに)沿いに歩くはずの林道がぐんぐん高度を上げて行く。
出だしでいきなり間違えてしまったようだ。引き返して正しい道に戻ったが、次の分岐でまたもや道間違い。
5年前の無雪期に歩いている道だが、記憶はおぼろである。
結局30分ほどロスしたあげく、する必要のない渡渉までしてようやく目的の尾根に取り付いた。
ここから827mピークまで頑張れば目的地は射程圏内だ。
この尾根は仕事は速いのだが、林相は期待外れ。放置植林と潅木の面白みのない尾根だった。
827mピークまで来るとようやくブナの出迎えを受ける。ここへ来るのに九頭竜スキー場から鷲鞍山の肩を経由
するコースもあるが、鷲鞍山方面の尾根は真っ黒(つまり植林)だ。木の間越しに荒島岳の姿が見える。
ここから鞍部へ向けて一旦下って行く。右側斜面は林道が延びてきているようで、これも放置植林だろう。
食害除けのテープを巻いたりはしているが、こんな曲がったスギは売れないだろう。
鞍部に下り立つとかなり風化したお地蔵さんがあった。横に標柱も立っているが判読不能だ。
かつてはここも峠越えの道があったのだろうか。自然林の広がる東側は九頭竜ダム湖のバックウォーターが食
い込んでおり、今は下からは辿ることができない。鷲鞍岳南面に延びる林道を伝えば到達可能だが、面白くも
なんともないだろう。ダムの底に沈んだ穴馬の集落から大納へ抜け、三坂峠を越えて若王子へという道が続い
ていたのかもしれない。
ここからはブナ主体の本来の林相に変わる。と言っても大きな木は少なく、豊潤のブナ林歩きというわけに
はいかない。
ここまで来ても雪は少なく、尾根芯は地面が露出しているところがある。驚いたのは、明瞭な道が続いていた
ことである。ほとんどヤブのない道は、無雪期ならどこまで歩けるのだろう。
しばらく登るうちに再び雪に覆われて、確かめることはできなかった。まあ、確かめられるような積雪なら何
をしに来たかわからないのだが。
高度が上がるにつれ、背後の山々が大きく姿を現わして来た。ひと際大きく白いのは白山と別山だ。
石徹白の山々は手前に重なって同定することが難しい。
頭上に反射板の姿を見えると山頂は近い。まず最初の反射板の前に立つと、まったく遮るもののない見事な
展望が開けた。ここでランチタイムでもいいかと思ったのだが、2つ目の反射板が立つ山頂へ向かう。
1189.8mの細谷又山は、三角点名を「紐谷又」という。東側に落ちる谷が細谷だから、山名の方が正解なの
だろう。昔の三角点の名付け方は地元の聞き取りで、聞き違いがそのまま点名になったというケースが多い。
山頂に立つとこれまで遮られていた南側の大パノラマが開ける。間近に迫る屏風山の姿は見慣れた三角錐よ
りは少し屏風っぽい姿をしていた。
目の前に大きく横たわる越美国境稜線は、この時期にはもっとも入りにくい部分である。山麓の集落が廃村と
なり、除雪されないためアプローチすることが不可能になった山々。国道や県道をひたすら歩けば不可能では
ないが現実的ではない。
東に目を転じると、御嶽、乗鞍、北アルプス、中央アルプス、南アルプスまで全開だ。
ここはやはり白山に敬意を表して、白山遥拝ランチとしよう。
快晴微風の文句の付けようのないコンディションである。足りないのは霧氷だけだ。
しかしあんまりのんびりとしてはいられない。(と言っても1時間半ぐらいはランチタイムを楽しんでいるの
だが)なんせ帰路の方が長いのだ。
北側に大きな雪堤を張り出した尾根を進む。このあたりはそこそこのブナやミズナラも多く見られて林相は
満足できるものである。屏風山に見守られながら雪尾根漫歩を楽しんだ。
この尾根は御伊勢山へと続いているのだが、そこまで行く時間も体力もない。そこで考えたのが、尾根が南に
直角に折れた鞍部から西の大納越戸谷の源流へ下り、対岸の尾根を1151mの越戸谷山へ登り返すというルートだ。
今の地形図からは消えているようだが、以前の地形図にはこの鞍部にまん丸の池マークが付けられていた。
しかも尾根の巾いっぱいの大きなものである。
さすがにそんなはずはなく、大納越戸谷の源流にある夫婦池(眼鏡池)の位置を間違えて記載していたのだろう。
鞍部からボブスレーコースのような細い雪の溝になった谷を下ると、すぐに大納越戸谷の本流に合流した。
雪を割って流れる穏やかな流れは美しく、やわらかい陽射しと相まって、もう春の訪れを感じさせる。
雪の夫婦池も見てみたいが時間が無い。対岸の尾根に取り付いて越戸谷山頂ダイレクトを目指す。標高差180m
ほどの辛抱だ。
ヤブもなく順調に高度を上げて山頂に着いた。5年前の秋に大納越戸谷を遡行してここに立ったのだが、当然
ながら別の場所のようだ。ブナ林の素晴らしいのはその時も感じていたのだが、林床がヤブで腰を降ろせるよう
な場所もなかった。今日はヤブを埋めて広がる雪原の中にブナだけが見えている。
暗くなる前に下山するためには急がないといけない。最も手っ取り早いのは北西の尾根を辿って林道に出てか
らひたすら林道を歩くというコースだ。しかしそれでは愛想がない。
北への尾根を進んで989m、721mと経て林道に着地するというコースを選択した。
この尾根もブナ林の続くいい尾根だったが、越戸谷山頂に着いた頃から空は雲に覆われ出した。
晴れていればもっといい印象だっただろうが、少し暗くてモノトーンに沈んでしまったのが残念だ。
989mの先でガケになった末端を避けて、右から回り込んで林道に着地した。
ここで何を思ったのか、西への尾根に入らず北向きの尾根に乗ってしまった。
この尾根は距離的には最短で、林道を歩かずに済むという点ではいいのだが、835mピークへ90mの登り返しが
ある。
なんとかなるだろうと進むとすぐに835m手前の鞍部に到着。左側の斜面は若いブナ林で雰囲気は悪くない。
5方向に尾根が派生する835mからは北向きに進み、Ca680mあたりで左折すればスタート地点にピンポイントで
ある。
まったく期待もしていなかったこの尾根が拾いもので、予想外のヤブなしの自然林が続いていた。
さすがに終盤は植林帯となる。そこまでスノーシュー無しでも歩けるぐらい雪が締まっていたので脱いでみると、
いきなり股まで潜って前進不能となった。再び履き直して、少し薄暗くなってきた植林の中を歩く。
橋が見えた。なんとか闇下を回避するギリギリの時間に帰着。
いい一日だった。
山日和
【山 域】奥越 九頭竜湖周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】下大納7:15---8:25渡渉点----9:35 P827m9:55---12:10細谷又山13:35---14:30大納越戸谷源流---
15:05越戸谷山15:20---16:25林道---17:00 P835m---17:50下大納
よく冷え込んだ朝、霧氷を期待して眺めた九頭竜湖駅のまわりの山肌は黒かった。雪はずいぶん少ないようだ。
空は晴れ渡って雲海も見られない。しかし天気がいいだけでも良しとしよう。
下大納の定位置に駐車して大納川にかかる橋を渡るとすぐに除雪が終わる。雪の壁も一昨年岩谷山~御伊勢山
を周回した時よりもだいぶ低い。
大納川の上流方向に目をやると、お気に入りの縫ヶ原山の切れ落ちた南面が朝日に輝いている。
雪はよく締まっており、スタートからスノーシューを履いて大納川の下流方向へ延びる林道を調子よく歩いて
いると、なにか様子がおかしい。大納越戸谷(おっとだに)沿いに歩くはずの林道がぐんぐん高度を上げて行く。
出だしでいきなり間違えてしまったようだ。引き返して正しい道に戻ったが、次の分岐でまたもや道間違い。
5年前の無雪期に歩いている道だが、記憶はおぼろである。
結局30分ほどロスしたあげく、する必要のない渡渉までしてようやく目的の尾根に取り付いた。
ここから827mピークまで頑張れば目的地は射程圏内だ。
この尾根は仕事は速いのだが、林相は期待外れ。放置植林と潅木の面白みのない尾根だった。
827mピークまで来るとようやくブナの出迎えを受ける。ここへ来るのに九頭竜スキー場から鷲鞍山の肩を経由
するコースもあるが、鷲鞍山方面の尾根は真っ黒(つまり植林)だ。木の間越しに荒島岳の姿が見える。
ここから鞍部へ向けて一旦下って行く。右側斜面は林道が延びてきているようで、これも放置植林だろう。
食害除けのテープを巻いたりはしているが、こんな曲がったスギは売れないだろう。
鞍部に下り立つとかなり風化したお地蔵さんがあった。横に標柱も立っているが判読不能だ。
かつてはここも峠越えの道があったのだろうか。自然林の広がる東側は九頭竜ダム湖のバックウォーターが食
い込んでおり、今は下からは辿ることができない。鷲鞍岳南面に延びる林道を伝えば到達可能だが、面白くも
なんともないだろう。ダムの底に沈んだ穴馬の集落から大納へ抜け、三坂峠を越えて若王子へという道が続い
ていたのかもしれない。
ここからはブナ主体の本来の林相に変わる。と言っても大きな木は少なく、豊潤のブナ林歩きというわけに
はいかない。
ここまで来ても雪は少なく、尾根芯は地面が露出しているところがある。驚いたのは、明瞭な道が続いていた
ことである。ほとんどヤブのない道は、無雪期ならどこまで歩けるのだろう。
しばらく登るうちに再び雪に覆われて、確かめることはできなかった。まあ、確かめられるような積雪なら何
をしに来たかわからないのだが。
高度が上がるにつれ、背後の山々が大きく姿を現わして来た。ひと際大きく白いのは白山と別山だ。
石徹白の山々は手前に重なって同定することが難しい。
頭上に反射板の姿を見えると山頂は近い。まず最初の反射板の前に立つと、まったく遮るもののない見事な
展望が開けた。ここでランチタイムでもいいかと思ったのだが、2つ目の反射板が立つ山頂へ向かう。
1189.8mの細谷又山は、三角点名を「紐谷又」という。東側に落ちる谷が細谷だから、山名の方が正解なの
だろう。昔の三角点の名付け方は地元の聞き取りで、聞き違いがそのまま点名になったというケースが多い。
山頂に立つとこれまで遮られていた南側の大パノラマが開ける。間近に迫る屏風山の姿は見慣れた三角錐よ
りは少し屏風っぽい姿をしていた。
目の前に大きく横たわる越美国境稜線は、この時期にはもっとも入りにくい部分である。山麓の集落が廃村と
なり、除雪されないためアプローチすることが不可能になった山々。国道や県道をひたすら歩けば不可能では
ないが現実的ではない。
東に目を転じると、御嶽、乗鞍、北アルプス、中央アルプス、南アルプスまで全開だ。
ここはやはり白山に敬意を表して、白山遥拝ランチとしよう。
快晴微風の文句の付けようのないコンディションである。足りないのは霧氷だけだ。
しかしあんまりのんびりとしてはいられない。(と言っても1時間半ぐらいはランチタイムを楽しんでいるの
だが)なんせ帰路の方が長いのだ。
北側に大きな雪堤を張り出した尾根を進む。このあたりはそこそこのブナやミズナラも多く見られて林相は
満足できるものである。屏風山に見守られながら雪尾根漫歩を楽しんだ。
この尾根は御伊勢山へと続いているのだが、そこまで行く時間も体力もない。そこで考えたのが、尾根が南に
直角に折れた鞍部から西の大納越戸谷の源流へ下り、対岸の尾根を1151mの越戸谷山へ登り返すというルートだ。
今の地形図からは消えているようだが、以前の地形図にはこの鞍部にまん丸の池マークが付けられていた。
しかも尾根の巾いっぱいの大きなものである。
さすがにそんなはずはなく、大納越戸谷の源流にある夫婦池(眼鏡池)の位置を間違えて記載していたのだろう。
鞍部からボブスレーコースのような細い雪の溝になった谷を下ると、すぐに大納越戸谷の本流に合流した。
雪を割って流れる穏やかな流れは美しく、やわらかい陽射しと相まって、もう春の訪れを感じさせる。
雪の夫婦池も見てみたいが時間が無い。対岸の尾根に取り付いて越戸谷山頂ダイレクトを目指す。標高差180m
ほどの辛抱だ。
ヤブもなく順調に高度を上げて山頂に着いた。5年前の秋に大納越戸谷を遡行してここに立ったのだが、当然
ながら別の場所のようだ。ブナ林の素晴らしいのはその時も感じていたのだが、林床がヤブで腰を降ろせるよう
な場所もなかった。今日はヤブを埋めて広がる雪原の中にブナだけが見えている。
暗くなる前に下山するためには急がないといけない。最も手っ取り早いのは北西の尾根を辿って林道に出てか
らひたすら林道を歩くというコースだ。しかしそれでは愛想がない。
北への尾根を進んで989m、721mと経て林道に着地するというコースを選択した。
この尾根もブナ林の続くいい尾根だったが、越戸谷山頂に着いた頃から空は雲に覆われ出した。
晴れていればもっといい印象だっただろうが、少し暗くてモノトーンに沈んでしまったのが残念だ。
989mの先でガケになった末端を避けて、右から回り込んで林道に着地した。
ここで何を思ったのか、西への尾根に入らず北向きの尾根に乗ってしまった。
この尾根は距離的には最短で、林道を歩かずに済むという点ではいいのだが、835mピークへ90mの登り返しが
ある。
なんとかなるだろうと進むとすぐに835m手前の鞍部に到着。左側の斜面は若いブナ林で雰囲気は悪くない。
5方向に尾根が派生する835mからは北向きに進み、Ca680mあたりで左折すればスタート地点にピンポイントで
ある。
まったく期待もしていなかったこの尾根が拾いもので、予想外のヤブなしの自然林が続いていた。
さすがに終盤は植林帯となる。そこまでスノーシュー無しでも歩けるぐらい雪が締まっていたので脱いでみると、
いきなり股まで潜って前進不能となった。再び履き直して、少し薄暗くなってきた植林の中を歩く。
橋が見えた。なんとか闇下を回避するギリギリの時間に帰着。
いい一日だった。
山日和