【飛騨】白川郷から一匹山、北ソウレ山へ 展望とブナ林の雪尾根を辿る
Posted: 2022年4月25日(月) 20:29
【日 付】2022年4月9日(土)
【山 域】飛騨 白川郷周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】白川郷駐車地6:20---9:40一匹山10:05---11:35北ソウレ山13:25---14:25一匹山東展望地15:00--16:15林道
---17:15駐車地
人影もない白川郷の街並みを抜けて天生峠への国道に入り、わずかに進んだところが登山口。
優しい表情のお地蔵様に挨拶して歩き出す。どうしようか迷ったが、無くて後悔するのも嫌なのでスノーシューを
ザックに付けた。ザックの重しになるだけかもしれないが、ボッカトレーニングと割り切ろう。
林道をショートカットして尾根に取り付いた。うっすらと道があり、さほど煩わしいこともない。
100mほど高度を上げて再び林道に出会う。ここからは少し鬱陶しい尾根が続いた。
進むのに支障を来たすようなヤブではないが、常に両手を使わないと歩けないのは少々煩わしい。雪はまばらで、
どこまで上がれば繋がるようになるのだろうか。
振り返ると木の間から、白川郷の集落の向こうに真っ白な山々が見えた。三方岩岳あたりの稜線だ。
結局完全に雪が繋がったのは標高1100mを超えてからだった。先週の水無山では600mから地面を踏むことはなか
ったのだが、この差はなんなのだろう。1週間でそんなに雪融けが進んだのだろうか。
雪が繋がると、あまり見どころのなかった林相にも変化が現れた。ようやくブナ主体の森となり、かなりの大物
も現れ始めた。笈ヶ岳から大笠山の稜線や三ヶ辻山、猿ヶ馬場山も順番に姿を見せてくれる。
今日は寒冷な白川村でも最高気温が20度に達するらしい。まるでGW頃の陽気である。
この尾根は傾斜が強い分仕事は早い。傾斜が緩むと1417.8mの三角点、一匹山に到着した。
ずっと担ぎっぱなしというのもなんなので、背中のスノーシューを足に移し替える。
山頂の手前から美しいブナ林が続いていたのだが、山頂から先にはレベルの違う森が待っていた。
もっとも地形図を見ればわかるように、この尾根には送電線が並走している。送電線の下は当然のように皆伐され
ており、ブナの代わりに鉄塔が立っている。まるでスキー場のゲレンデのような斜面と豊潤なブナ林が並行して展
開する風景は一種独特なものだろう。送電鉄塔のおかげで展望は素晴らしく、白山から大門山までの北方稜線が横
一列に並んでいるのを眺められる。この眺望を得られる場所が他にあるだろうか。送電線が視界に入らないように
するには位置取りの工夫が必要だが。
鉄塔と送電線さえ我慢すれば展望は最高、雲一つない青空の下でまだまだたっぷり雪を纏った山々の眺めを楽しむ
ことができる。他方、この伐採がなければ広大な尾根上はすべてブナ林だったのだろうと惜しむ気持ちと、伐採の
おかげでこの展望が得られているのだという気持ちが複雑に絡み合う。
尾根上には大きなトチの木が何本も立っていた。大ダワ山頂台地のトチは谷状地形にあったが、ここは完全に尾
根の上である。谷を好むトチが育つ環境としてはちょっと不思議な感じがした。
ゲレンデの横に続くブナ林は素晴らしい。風格のある大木も多く、3mクラスはあたり前で、4mオーバーと目さ
れる巨樹も散見される。これは有家ヶ原と遜色ないレベルの森である。
これまで見たブナ林の中でも5本の指に入るだろう。濃密なブナの森に包まれるか、ゲレンデに出て眺望を楽しむ
かは悩みどころだ。ゲレンデからは猿ヶ山や大滝山から三ヶ辻山の優美な尾根の姿が美しい。
Ca1505mピークで送電線が南側に離れて行くと、尾根は純然たるブナ林に変わる。
右から緩やかな谷の源頭が上がってくるあたりの地形のうねりはマニアにはたまらない。
ブナフェチ、地形フェチなら悶絶必至である。
一匹山から1555.1mの北ソウレ山(三角点名荻町)までの3キロほどの間に上がる高度はわずかに140mだ。
この尾根がいかにゆったりしているか、この数字を見るだけでわかるというものである。
再び鉄塔が戻ってきたCa1510mピークでは、猿ヶ馬場山の手前にちょこんと三角の頭を出した籾糠山の姿を認め
ることができた。
ここで送電線とはお別れである。ブナ林は切れ目なく続き、わずかな登りで北ソウレ山の山頂に立つ。
当初の予定ではここから南の谷間へ下り、天生峠から1400.6mの三角点保谷へ周回するつもりだった。
しかしどうにも調子が悪く食欲もない。足が重く、食欲もイマイチ出ないのだ。ビールだけは別で美味しく頂く。
すると不思議なもので食欲も出てきた。なんとなくだるいので、横になって目を瞑ると20分ほど爆睡してしまっ
たようだ。山で昼寝したのはいつ以来だろうか。
目を覚まして飛越国境の北側斜面へ出てみると、ひたすら地味な1500m前後の山々の連なりの先に、先週登っ
た水無山の姿があった。先週はまさか一週間後にここに立っているとは予想もしなかった。
目の前には送電線が縦横に走り、赤と白のツートンに塗分けられたカラフルな鉄塔の姿が目立つ。
奥には金剛堂山の広大な台地がどっしりと構えていた。
無理をすることもない。周回は断念して往路を戻ろう。同じルートでも行きと帰りでは光線も違うし視線も違
う。山の違う姿を見ることができるのだと言うのは周回できない言い訳だが。
再びブナ林と展望を堪能して一匹山へ戻る。途中の雪原にはドリーネのようなものがいくつもあり、まるで御
池岳にいるようだった。一匹山手前のゲレンデど真ん中の大展望地で、最後のパノラマとコーヒータイムを楽し
んだ。
完全に往路を辿るのも芸がないので、山頂から少し下ったところから南西への尾根に入った。
分岐から見た感じも良く、何より往路がイマイチだった故の選択だ。
この尾根が当たりだった。往路の尾根よりも低い標高まで雪が繋がり、急斜面を利してズンズンと下ることがで
きた。予想外にブナの巨木もあり、いいチョイスだったと言えるだろう。
最後は雪を求めて右手の谷へ入り、林道へソフトランディング。読み通りだった。
後はフキノトウを摘みながらのんびりと林道を辿るだけだ。と思っていたら、途中でサングラスが無いことに
気が付いた。林道に出るまでは確かに掛けていたはずだ。着地点まで戻ると、雪面にポツンとサングラスが主の
戻りを待っていた。先週の水無山でも登りでサングラスを落として取りに戻ったばかり。
持ち主同様、なかなか悪運の強いサングラスのようである。
駐車地へ戻って帰り支度をしていると、近所のおばちゃんに声を掛けられた。一匹山に登ってきたと言うと
「一匹山か」と納得したように答えてくれた。
地図に名前は載っていないが、白川郷ではよく知られた山なのだろう。
山日和
【山 域】飛騨 白川郷周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】白川郷駐車地6:20---9:40一匹山10:05---11:35北ソウレ山13:25---14:25一匹山東展望地15:00--16:15林道
---17:15駐車地
人影もない白川郷の街並みを抜けて天生峠への国道に入り、わずかに進んだところが登山口。
優しい表情のお地蔵様に挨拶して歩き出す。どうしようか迷ったが、無くて後悔するのも嫌なのでスノーシューを
ザックに付けた。ザックの重しになるだけかもしれないが、ボッカトレーニングと割り切ろう。
林道をショートカットして尾根に取り付いた。うっすらと道があり、さほど煩わしいこともない。
100mほど高度を上げて再び林道に出会う。ここからは少し鬱陶しい尾根が続いた。
進むのに支障を来たすようなヤブではないが、常に両手を使わないと歩けないのは少々煩わしい。雪はまばらで、
どこまで上がれば繋がるようになるのだろうか。
振り返ると木の間から、白川郷の集落の向こうに真っ白な山々が見えた。三方岩岳あたりの稜線だ。
結局完全に雪が繋がったのは標高1100mを超えてからだった。先週の水無山では600mから地面を踏むことはなか
ったのだが、この差はなんなのだろう。1週間でそんなに雪融けが進んだのだろうか。
雪が繋がると、あまり見どころのなかった林相にも変化が現れた。ようやくブナ主体の森となり、かなりの大物
も現れ始めた。笈ヶ岳から大笠山の稜線や三ヶ辻山、猿ヶ馬場山も順番に姿を見せてくれる。
今日は寒冷な白川村でも最高気温が20度に達するらしい。まるでGW頃の陽気である。
この尾根は傾斜が強い分仕事は早い。傾斜が緩むと1417.8mの三角点、一匹山に到着した。
ずっと担ぎっぱなしというのもなんなので、背中のスノーシューを足に移し替える。
山頂の手前から美しいブナ林が続いていたのだが、山頂から先にはレベルの違う森が待っていた。
もっとも地形図を見ればわかるように、この尾根には送電線が並走している。送電線の下は当然のように皆伐され
ており、ブナの代わりに鉄塔が立っている。まるでスキー場のゲレンデのような斜面と豊潤なブナ林が並行して展
開する風景は一種独特なものだろう。送電鉄塔のおかげで展望は素晴らしく、白山から大門山までの北方稜線が横
一列に並んでいるのを眺められる。この眺望を得られる場所が他にあるだろうか。送電線が視界に入らないように
するには位置取りの工夫が必要だが。
鉄塔と送電線さえ我慢すれば展望は最高、雲一つない青空の下でまだまだたっぷり雪を纏った山々の眺めを楽しむ
ことができる。他方、この伐採がなければ広大な尾根上はすべてブナ林だったのだろうと惜しむ気持ちと、伐採の
おかげでこの展望が得られているのだという気持ちが複雑に絡み合う。
尾根上には大きなトチの木が何本も立っていた。大ダワ山頂台地のトチは谷状地形にあったが、ここは完全に尾
根の上である。谷を好むトチが育つ環境としてはちょっと不思議な感じがした。
ゲレンデの横に続くブナ林は素晴らしい。風格のある大木も多く、3mクラスはあたり前で、4mオーバーと目さ
れる巨樹も散見される。これは有家ヶ原と遜色ないレベルの森である。
これまで見たブナ林の中でも5本の指に入るだろう。濃密なブナの森に包まれるか、ゲレンデに出て眺望を楽しむ
かは悩みどころだ。ゲレンデからは猿ヶ山や大滝山から三ヶ辻山の優美な尾根の姿が美しい。
Ca1505mピークで送電線が南側に離れて行くと、尾根は純然たるブナ林に変わる。
右から緩やかな谷の源頭が上がってくるあたりの地形のうねりはマニアにはたまらない。
ブナフェチ、地形フェチなら悶絶必至である。
一匹山から1555.1mの北ソウレ山(三角点名荻町)までの3キロほどの間に上がる高度はわずかに140mだ。
この尾根がいかにゆったりしているか、この数字を見るだけでわかるというものである。
再び鉄塔が戻ってきたCa1510mピークでは、猿ヶ馬場山の手前にちょこんと三角の頭を出した籾糠山の姿を認め
ることができた。
ここで送電線とはお別れである。ブナ林は切れ目なく続き、わずかな登りで北ソウレ山の山頂に立つ。
当初の予定ではここから南の谷間へ下り、天生峠から1400.6mの三角点保谷へ周回するつもりだった。
しかしどうにも調子が悪く食欲もない。足が重く、食欲もイマイチ出ないのだ。ビールだけは別で美味しく頂く。
すると不思議なもので食欲も出てきた。なんとなくだるいので、横になって目を瞑ると20分ほど爆睡してしまっ
たようだ。山で昼寝したのはいつ以来だろうか。
目を覚まして飛越国境の北側斜面へ出てみると、ひたすら地味な1500m前後の山々の連なりの先に、先週登っ
た水無山の姿があった。先週はまさか一週間後にここに立っているとは予想もしなかった。
目の前には送電線が縦横に走り、赤と白のツートンに塗分けられたカラフルな鉄塔の姿が目立つ。
奥には金剛堂山の広大な台地がどっしりと構えていた。
無理をすることもない。周回は断念して往路を戻ろう。同じルートでも行きと帰りでは光線も違うし視線も違
う。山の違う姿を見ることができるのだと言うのは周回できない言い訳だが。
再びブナ林と展望を堪能して一匹山へ戻る。途中の雪原にはドリーネのようなものがいくつもあり、まるで御
池岳にいるようだった。一匹山手前のゲレンデど真ん中の大展望地で、最後のパノラマとコーヒータイムを楽し
んだ。
完全に往路を辿るのも芸がないので、山頂から少し下ったところから南西への尾根に入った。
分岐から見た感じも良く、何より往路がイマイチだった故の選択だ。
この尾根が当たりだった。往路の尾根よりも低い標高まで雪が繋がり、急斜面を利してズンズンと下ることがで
きた。予想外にブナの巨木もあり、いいチョイスだったと言えるだろう。
最後は雪を求めて右手の谷へ入り、林道へソフトランディング。読み通りだった。
後はフキノトウを摘みながらのんびりと林道を辿るだけだ。と思っていたら、途中でサングラスが無いことに
気が付いた。林道に出るまでは確かに掛けていたはずだ。着地点まで戻ると、雪面にポツンとサングラスが主の
戻りを待っていた。先週の水無山でも登りでサングラスを落として取りに戻ったばかり。
持ち主同様、なかなか悪運の強いサングラスのようである。
駐車地へ戻って帰り支度をしていると、近所のおばちゃんに声を掛けられた。一匹山に登ってきたと言うと
「一匹山か」と納得したように答えてくれた。
地図に名前は載っていないが、白川郷ではよく知られた山なのだろう。
山日和