【飛越】ブナ林と展望と地形の妙を楽しむ 念願の水無山
Posted: 2022年4月06日(水) 21:36
【日 付】2022年4月2日(土)
【山 域】飛越国境 水無山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】上ヶ島集落7:25---9:40 P1173m----10:50三角点水無シ山---12:05水無山13:40---15:05三角点小洞---16:05尾根末端
---16:40駐車地
この山が気にかかり出してから10年以上経っていた。山頂へ至る尾根と山頂付近のゆったりと広がる緩やかな地形。
飛越国境にある水無山は、無雪期には富山県の山として認識されているが、積雪期には富山県側からの登山はほぼ不可能
となる。
登山口にあたる飛騨市河合の上ヶ島。籾糠山の登山シーズンには行き交う車で賑わうこの道も、今はひっそりとしている。
集落の裏手から地形図にもある道を利用して尾根に取り付いた。尾根の末端から繋がっていた雪はよく締まっており、
スノーシューは背中の重しになりそうである。
スギの植林の中は暗いが、日当たりの悪い分雪はカチカチで、今日のような快晴の汗ばむ陽気の日にはひんやりと涼しく
ていい。木の間から見える形のいい山は高登山だろうか。杉林の中は落ちた枝と葉だらけで快適とは言い難い。
地形図にない林道が尾根と交差した。この後、何度も林道と出合うことになる。
いつまでも担いでいては芸がないのでスノーシューを装着する。傾斜が強くなればアイゼン代わりなるのと、急登での
ヒールリフター歩行だけでも役に立つだろう。
林相はやがてスギからカラマツに変わった。このカラマツも植林であることに変わりはないのだが、落葉松と書くぐら
いなので、すっかり葉を落とした林の中でも底抜けに明るいのが救いだ。
猪臥山もそうだったが、この近辺の山はカラマツの植林が盛んなのだろうか。
P1173mあたりから始まるゆったりとした尾根は今回の楽しみのひとつだった。どんな地形を見せてくれるのか。
実際、地形の微妙な起伏や広がりは予想通りのものだったが、一面のカラマツ林と間を走る林道は期待外れだった。
雪に覆われて林道も雪原の一部になってので、まだ見栄えは悪くはないが、広大なブナ林を期待していただけに、やや
肩透かしだった。
尾根が北西に向きを変えるあたりからブナが増え始めた。かなりの巨木も散見され、一番大きなものをsatoさんが持参
した細引きで測ってみると幹周440センチあった。枝振りも良く、風格のある一本だった。
尾根が傾斜を増すとともに、ほぼブナの純林に変わる。こうでなくてはいけない。
左手には栗ヶ岳から御前岳、猿ヶ馬場山方面の視界が開ける。帰路に予定している右手の尾根もなかなか良さそうな
佇まいで楽しみだ。
1459mピーク手前の台地に乗ると、想像していた通り、いや想像以上の見事な風景が目の前に展開した。どこまでも続
く緩やかな起伏の、谷と尾根が交じり合ったような地形。のっぺりした雪原ではなく、微妙な起伏が作り出す陰影が景観
にアクセントを付けている。ここは飛越国境稜線。北ソウレ山のあたりで北に方向を転じて三ヶ辻山へと続いている。
国境稜線の先にはひと際白い白山の姿が光っていた。
時間があればあたりを彷徨い歩きたいところだが、記録を見ない下りの尾根を考えればあまりのんびりするわけにもいか
ない。
ここから山頂まで、夢の中を歩いているような素晴らしい尾根が続く。ブナの疎林と雪原、緩やかに食い込んでくる浅
い谷。その向こうにチョコンと頭を出している山の名前を想像するのも楽しい。
尾根が角度を変えると見える山も変わる。笈ヶ岳と大笠山方面、三ヶ辻山、金剛堂山と白木峰と、飛越地方の名山が次か
ら次へと現れて飽かせることがない。
山頂の手前は大きな雪堤となっていた。雪庇が落ちた後だろうが、雪庇が残っていたら処理がやっかいだったかもしれ
ない。一番段差の少ないところを選んで雪堤の上に這い上がった。 1505.6mの水無山頂はすぐそこだ。山頂はわずかに
国境稜線を外れた富山県側にある。
余談だが、ここの三角点名は大当火と言い、先ほど通過してきた1278.7mの三角点が水無シ山とされている。
少し風があるので、雪堤の下にスノスコでベンチを作る。この時期の雪は堅く、足で蹴り込むだけでは作るのが難しい。
荷物は増えるが快適なランチタイムを楽しむためには必需品である。
白山と猿ヶ馬場山を正面に最高のレストランが完成した。遠景もさることながら、手前に広がる山頂の周囲のゆったりと
した地形の広がりが素晴らしいのだ。
下山は谷を挟んだ対岸の尾根を選ぶ。周回コースとして絶好の尾根に見えるが、記録はまず見当たらない。何か理由が
あるのだろうか。末端で渡渉が待っているのは織り込み済みだが、それだけが理由だろうか。
山頂から国境稜線を北に踏み出す。一段下がったところのブナ林も実にいい。ブナの間から見る三ヶ辻山の姿が美しく、
7年前の有家ヶ原からの周回を思い出す。
無木立の雪原となった尾根からは北アルプスの大展望が広がった。北方稜線から剱、薬師、黒部五郎、笠、槍・穂高ま
でクッキリと見えている。まあ、私の場合アルプスの展望はオマケ程度なのだが。
この尾根はまさに期待通り、ブナ林の続くゆったりとした尾根だった。登りの尾根よりも高度が高く、見下ろす感じに
なる。向こうの尾根がカラマツ林になってもこちらはブナ林が続いている。尾根としてはこちらの方が面白いだろう。
1223.8mの三角点小洞を過ぎると一気に林相が変わり、カラマツを飛ばしてスギの植林帯に突入した。
今まで高度が高かった分、最後の傾斜は急になるのは必然である。ツボ足で踵を蹴り込みながら速いペースで下る。
問題の尾根の末端はどうなっているか。傾斜が増し、雪が切れて尾根芯にはヤブが出てきた。
左のガレた斜面を見るとロープがあった。下の末端も固定されているようだ。高度差は50m近くあるだろうか。何のため
のロープなのかわからないが、これを利用させてもらおう。足元はグズグズで、慎重に足を進める。
途中から雪の残る場所にトラバースして河原に着地。見上げるととんでもないガケである。これが周回記録の見当たらな
い理由のひとつか。
予定では右の支谷を渡渉して右岸側をトラバースすれば橋の袂に出られるだろうという計算だった。しかし現実の右岸
側は絶望的なガケで、手も足も出ない。
こうなれば上ヶ島谷本流の渡渉に切り替えるしかない。渡渉用に用意してきたゴミ袋を2重にしてガムテープでズボンに
貼り付けた。流れは結構速いが、一番狭いところを選べば核心部は3歩程度だろう。流されないようにスクラムを組んで
慎重にすり足で進む。ストックがなければとてもバランスが取れないだろう。
satoさんは靴を濡らすことなく渡ったが、発案者の自分は靴の中までドボドボである。何がこの差を生んだのか。
最後はストックを放り上げて、2mほどの石垣をクライミングして林道に這い上がった。
誰も周回しない理由がハッキリとわかったが、充実感も最高だ。長年の思いが結実したと言えるエピローグだった。
山日和
【山 域】飛越国境 水無山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】上ヶ島集落7:25---9:40 P1173m----10:50三角点水無シ山---12:05水無山13:40---15:05三角点小洞---16:05尾根末端
---16:40駐車地
この山が気にかかり出してから10年以上経っていた。山頂へ至る尾根と山頂付近のゆったりと広がる緩やかな地形。
飛越国境にある水無山は、無雪期には富山県の山として認識されているが、積雪期には富山県側からの登山はほぼ不可能
となる。
登山口にあたる飛騨市河合の上ヶ島。籾糠山の登山シーズンには行き交う車で賑わうこの道も、今はひっそりとしている。
集落の裏手から地形図にもある道を利用して尾根に取り付いた。尾根の末端から繋がっていた雪はよく締まっており、
スノーシューは背中の重しになりそうである。
スギの植林の中は暗いが、日当たりの悪い分雪はカチカチで、今日のような快晴の汗ばむ陽気の日にはひんやりと涼しく
ていい。木の間から見える形のいい山は高登山だろうか。杉林の中は落ちた枝と葉だらけで快適とは言い難い。
地形図にない林道が尾根と交差した。この後、何度も林道と出合うことになる。
いつまでも担いでいては芸がないのでスノーシューを装着する。傾斜が強くなればアイゼン代わりなるのと、急登での
ヒールリフター歩行だけでも役に立つだろう。
林相はやがてスギからカラマツに変わった。このカラマツも植林であることに変わりはないのだが、落葉松と書くぐら
いなので、すっかり葉を落とした林の中でも底抜けに明るいのが救いだ。
猪臥山もそうだったが、この近辺の山はカラマツの植林が盛んなのだろうか。
P1173mあたりから始まるゆったりとした尾根は今回の楽しみのひとつだった。どんな地形を見せてくれるのか。
実際、地形の微妙な起伏や広がりは予想通りのものだったが、一面のカラマツ林と間を走る林道は期待外れだった。
雪に覆われて林道も雪原の一部になってので、まだ見栄えは悪くはないが、広大なブナ林を期待していただけに、やや
肩透かしだった。
尾根が北西に向きを変えるあたりからブナが増え始めた。かなりの巨木も散見され、一番大きなものをsatoさんが持参
した細引きで測ってみると幹周440センチあった。枝振りも良く、風格のある一本だった。
尾根が傾斜を増すとともに、ほぼブナの純林に変わる。こうでなくてはいけない。
左手には栗ヶ岳から御前岳、猿ヶ馬場山方面の視界が開ける。帰路に予定している右手の尾根もなかなか良さそうな
佇まいで楽しみだ。
1459mピーク手前の台地に乗ると、想像していた通り、いや想像以上の見事な風景が目の前に展開した。どこまでも続
く緩やかな起伏の、谷と尾根が交じり合ったような地形。のっぺりした雪原ではなく、微妙な起伏が作り出す陰影が景観
にアクセントを付けている。ここは飛越国境稜線。北ソウレ山のあたりで北に方向を転じて三ヶ辻山へと続いている。
国境稜線の先にはひと際白い白山の姿が光っていた。
時間があればあたりを彷徨い歩きたいところだが、記録を見ない下りの尾根を考えればあまりのんびりするわけにもいか
ない。
ここから山頂まで、夢の中を歩いているような素晴らしい尾根が続く。ブナの疎林と雪原、緩やかに食い込んでくる浅
い谷。その向こうにチョコンと頭を出している山の名前を想像するのも楽しい。
尾根が角度を変えると見える山も変わる。笈ヶ岳と大笠山方面、三ヶ辻山、金剛堂山と白木峰と、飛越地方の名山が次か
ら次へと現れて飽かせることがない。
山頂の手前は大きな雪堤となっていた。雪庇が落ちた後だろうが、雪庇が残っていたら処理がやっかいだったかもしれ
ない。一番段差の少ないところを選んで雪堤の上に這い上がった。 1505.6mの水無山頂はすぐそこだ。山頂はわずかに
国境稜線を外れた富山県側にある。
余談だが、ここの三角点名は大当火と言い、先ほど通過してきた1278.7mの三角点が水無シ山とされている。
少し風があるので、雪堤の下にスノスコでベンチを作る。この時期の雪は堅く、足で蹴り込むだけでは作るのが難しい。
荷物は増えるが快適なランチタイムを楽しむためには必需品である。
白山と猿ヶ馬場山を正面に最高のレストランが完成した。遠景もさることながら、手前に広がる山頂の周囲のゆったりと
した地形の広がりが素晴らしいのだ。
下山は谷を挟んだ対岸の尾根を選ぶ。周回コースとして絶好の尾根に見えるが、記録はまず見当たらない。何か理由が
あるのだろうか。末端で渡渉が待っているのは織り込み済みだが、それだけが理由だろうか。
山頂から国境稜線を北に踏み出す。一段下がったところのブナ林も実にいい。ブナの間から見る三ヶ辻山の姿が美しく、
7年前の有家ヶ原からの周回を思い出す。
無木立の雪原となった尾根からは北アルプスの大展望が広がった。北方稜線から剱、薬師、黒部五郎、笠、槍・穂高ま
でクッキリと見えている。まあ、私の場合アルプスの展望はオマケ程度なのだが。
この尾根はまさに期待通り、ブナ林の続くゆったりとした尾根だった。登りの尾根よりも高度が高く、見下ろす感じに
なる。向こうの尾根がカラマツ林になってもこちらはブナ林が続いている。尾根としてはこちらの方が面白いだろう。
1223.8mの三角点小洞を過ぎると一気に林相が変わり、カラマツを飛ばしてスギの植林帯に突入した。
今まで高度が高かった分、最後の傾斜は急になるのは必然である。ツボ足で踵を蹴り込みながら速いペースで下る。
問題の尾根の末端はどうなっているか。傾斜が増し、雪が切れて尾根芯にはヤブが出てきた。
左のガレた斜面を見るとロープがあった。下の末端も固定されているようだ。高度差は50m近くあるだろうか。何のため
のロープなのかわからないが、これを利用させてもらおう。足元はグズグズで、慎重に足を進める。
途中から雪の残る場所にトラバースして河原に着地。見上げるととんでもないガケである。これが周回記録の見当たらな
い理由のひとつか。
予定では右の支谷を渡渉して右岸側をトラバースすれば橋の袂に出られるだろうという計算だった。しかし現実の右岸
側は絶望的なガケで、手も足も出ない。
こうなれば上ヶ島谷本流の渡渉に切り替えるしかない。渡渉用に用意してきたゴミ袋を2重にしてガムテープでズボンに
貼り付けた。流れは結構速いが、一番狭いところを選べば核心部は3歩程度だろう。流されないようにスクラムを組んで
慎重にすり足で進む。ストックがなければとてもバランスが取れないだろう。
satoさんは靴を濡らすことなく渡ったが、発案者の自分は靴の中までドボドボである。何がこの差を生んだのか。
最後はストックを放り上げて、2mほどの石垣をクライミングして林道に這い上がった。
誰も周回しない理由がハッキリとわかったが、充実感も最高だ。長年の思いが結実したと言えるエピローグだった。
山日和