【越前】ハンノキ谷から想定外の丈競山・浄法寺山へ
Posted: 2021年9月29日(水) 21:18
【日 付】2021年9月20日(月)
【山 域】越前 浄法寺山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】林道駐車地9:00---9:45林道終点---11:45二俣---13:30丈競山14:45---15:15浄法寺山---15:55冠岳手前
---16:30林道終点---17:05駐車地
福井県の竹田川上流に位置するハンノキ谷は、浄法寺山と丈競(たけくらべ)山を源に持つ谷である。
龍ヶ鼻ダムから延びる林道は、本来の核心部と言われる中流域の谷の様相を変えてしまったが、源流地帯は健在だ。
駐車地から終点まで200mの標高差を稼ぐのでそれなりに急で、ウォーミングアップとしては十分過ぎるぐらいだ。
林道は途中までは舗装されたいい路面だが、中盤から草が繁って普通の車で入るのはためらわれる状態である。
と思っていたら、なんと林道終点に車が止まっていた。歩きながら「ここを走る気になるのはジムニーぐらいか」
と思っていたのだが、その車はまさにジムニーだった。釣り師だろうか。ちょっと嫌な予感がした。
林道の下に滝が見えたので、少し戻って急斜面をずり下りる。下り立った谷底はきれいなナメ床で、前方に見え
る滝はずいぶん整った形をしている。まさか堰堤じゃないだろうなと思って近付くと、まるで堰堤のような2段の
滝だった。
右から巻いて越すと、林道終点からの登山道と合流する。しばらくは登山道と並走しながら平流を進む。
植林はなく、豊かな森が広がって心地良い。
小滝をいくつかやり過ごしたところで、谷の先の空間が広がった。そこにはワイドな壁の中を二条の流れが滝と
なって落ちる、何とも言えない空間だった。二条の滝の間が階段状の岩場となっていて、簡単に落ち口へ抜ける。
いくつかの小滝をこなすと、前方に10mほどの滝が現れ、人影が見えた。釣り師か。先ほどの車の主だろう。
春の鈴鹿での嫌な思い出が頭をよぎる。渓流釣り師と沢屋は相容れない場合が多いのである。
竿を振っているのが見えたので、しばらく立ち止まって様子を窺う。近寄ってみると、もう一人、80歳を過ぎて
いると思われる老人が座っていた。竿を振っていた40歳ぐらいと思われる同行者に声を飛ばして細かく指導して
いる。小さな滝つぼから目の前で尺近いイワナを釣り上げたのには驚いた。別に身を潜めるでもなく、大声で話
しながら釣れるイワナはよほど擦れていないのか。
突然現れた登山者に迷惑そうな素振りを見せることもなく、にこやかに話をしてくれた。子供の頃からこの谷
へ入っていると言うから、もうかれこれ70年近くここで釣っているということになる。足取りもしっかりしてお
り、映画「ふるさと」で加藤嘉が演じた古老を思い起こさせた。satoさんは記念に大物のイワナを掴ませてもら
ったが取り落してしまい、危うく流れに逃げられるところをなんとか釣り師に回収してもらいホッとした。
フレンドリーな釣り師で良かったと、10m滝を直登して先行させてもらう。
ここから谷は活気を見せ、小滝ばかりながらも直登可能な滝が続いて顔がほころぶ。ヤブっぽさが微塵もなくス
ッキリした渓相がうれしい。
Ca750m付近の複雑な分岐で間違いを犯してしまった。両方に小滝のかかる二俣の右の滝を登った後、浄法寺山
と丈競山の間の尾根に突き上げる谷を進むつもりで左の谷へトラバースしたのである。
その谷は7mほどの黒い滝の上に延々とナメの続く楽しい谷だった。
コンパスを確認していればすぐに間違いに気付く場面だったが、目の前のスッキリした谷に釣られて疑いもなく
そのまま進んでしまったのだ。本当の二俣は、先ほどの二俣のすぐ先にあったのに、迂闊な話である。
気持ち良く進んでいるとさすがにナメも尽き、源頭部の様相を呈してきた。水が切れると軽めのヤブに突っ込む。
ヤブ漕ぎは織り込み済みだが、思ったよりも急傾斜でなかなか終わらない。潅木のしつこいヤブ漕ぎが延々と続い
て青息吐息である。
潅木がササに変わったと思ったら、ササの上に想定外のものが見えた。小屋の屋根だ。なんと、丈競山頂の避難
小屋の前にピンポイントで飛び出したのである。元々浄法寺山から往復するつもりだったから手間が省けたという
ものだ。まさに結果オーライである。
ここを訪れるのは13年振りだ。丸岡山の会が管理するこの小屋は、実によく手入れされていて気持ちのいい小屋
である。雪山でここへ泊まって日の出の眺めたらいいだろうと思っていたことを思い出した。
遅くなったが、小屋の前の階段に店を広げてランチタイムとしよう。もう誰も来ることはないだろう。
スパッツを外していると、なにやら張り付いているものがある。なんとクワガタムシだ。
樹液の出そうな木もないこんなところに一人(一匹?)、彼はどうやって生きてきたのだろう。
丈競山から浄法寺山への縦走路は見晴らしも良く、足元には可憐なリンドウの花も咲く快適な道だ。
小さな展望台の建つ浄法寺山の山頂にも人影はなかった。時刻はもう3時を回っているから当然か。
下山路が一般登山道というのは気が楽なものである。冠岳の手前から冠新道と呼ばれる道をハンノキ谷へ下る。
この道がなかなかの曲者だった。道ははっきりしているが、傾斜が半端ない。両側に張られたトラロープを頼りに、
転げ落ちるように高度を落として行く。まわりはブナ主体の自然林なので気持ちのいい道なのだが、足元から目の
離せない難路である。
水音が大きくなってくるとハンノキ谷へ下り立った。後は元来た道を戻るだけだ。
当然ながら、林道終点のジムニーの姿は既になかった。
山日和
【山 域】越前 浄法寺山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】林道駐車地9:00---9:45林道終点---11:45二俣---13:30丈競山14:45---15:15浄法寺山---15:55冠岳手前
---16:30林道終点---17:05駐車地
福井県の竹田川上流に位置するハンノキ谷は、浄法寺山と丈競(たけくらべ)山を源に持つ谷である。
龍ヶ鼻ダムから延びる林道は、本来の核心部と言われる中流域の谷の様相を変えてしまったが、源流地帯は健在だ。
駐車地から終点まで200mの標高差を稼ぐのでそれなりに急で、ウォーミングアップとしては十分過ぎるぐらいだ。
林道は途中までは舗装されたいい路面だが、中盤から草が繁って普通の車で入るのはためらわれる状態である。
と思っていたら、なんと林道終点に車が止まっていた。歩きながら「ここを走る気になるのはジムニーぐらいか」
と思っていたのだが、その車はまさにジムニーだった。釣り師だろうか。ちょっと嫌な予感がした。
林道の下に滝が見えたので、少し戻って急斜面をずり下りる。下り立った谷底はきれいなナメ床で、前方に見え
る滝はずいぶん整った形をしている。まさか堰堤じゃないだろうなと思って近付くと、まるで堰堤のような2段の
滝だった。
右から巻いて越すと、林道終点からの登山道と合流する。しばらくは登山道と並走しながら平流を進む。
植林はなく、豊かな森が広がって心地良い。
小滝をいくつかやり過ごしたところで、谷の先の空間が広がった。そこにはワイドな壁の中を二条の流れが滝と
なって落ちる、何とも言えない空間だった。二条の滝の間が階段状の岩場となっていて、簡単に落ち口へ抜ける。
いくつかの小滝をこなすと、前方に10mほどの滝が現れ、人影が見えた。釣り師か。先ほどの車の主だろう。
春の鈴鹿での嫌な思い出が頭をよぎる。渓流釣り師と沢屋は相容れない場合が多いのである。
竿を振っているのが見えたので、しばらく立ち止まって様子を窺う。近寄ってみると、もう一人、80歳を過ぎて
いると思われる老人が座っていた。竿を振っていた40歳ぐらいと思われる同行者に声を飛ばして細かく指導して
いる。小さな滝つぼから目の前で尺近いイワナを釣り上げたのには驚いた。別に身を潜めるでもなく、大声で話
しながら釣れるイワナはよほど擦れていないのか。
突然現れた登山者に迷惑そうな素振りを見せることもなく、にこやかに話をしてくれた。子供の頃からこの谷
へ入っていると言うから、もうかれこれ70年近くここで釣っているということになる。足取りもしっかりしてお
り、映画「ふるさと」で加藤嘉が演じた古老を思い起こさせた。satoさんは記念に大物のイワナを掴ませてもら
ったが取り落してしまい、危うく流れに逃げられるところをなんとか釣り師に回収してもらいホッとした。
フレンドリーな釣り師で良かったと、10m滝を直登して先行させてもらう。
ここから谷は活気を見せ、小滝ばかりながらも直登可能な滝が続いて顔がほころぶ。ヤブっぽさが微塵もなくス
ッキリした渓相がうれしい。
Ca750m付近の複雑な分岐で間違いを犯してしまった。両方に小滝のかかる二俣の右の滝を登った後、浄法寺山
と丈競山の間の尾根に突き上げる谷を進むつもりで左の谷へトラバースしたのである。
その谷は7mほどの黒い滝の上に延々とナメの続く楽しい谷だった。
コンパスを確認していればすぐに間違いに気付く場面だったが、目の前のスッキリした谷に釣られて疑いもなく
そのまま進んでしまったのだ。本当の二俣は、先ほどの二俣のすぐ先にあったのに、迂闊な話である。
気持ち良く進んでいるとさすがにナメも尽き、源頭部の様相を呈してきた。水が切れると軽めのヤブに突っ込む。
ヤブ漕ぎは織り込み済みだが、思ったよりも急傾斜でなかなか終わらない。潅木のしつこいヤブ漕ぎが延々と続い
て青息吐息である。
潅木がササに変わったと思ったら、ササの上に想定外のものが見えた。小屋の屋根だ。なんと、丈競山頂の避難
小屋の前にピンポイントで飛び出したのである。元々浄法寺山から往復するつもりだったから手間が省けたという
ものだ。まさに結果オーライである。
ここを訪れるのは13年振りだ。丸岡山の会が管理するこの小屋は、実によく手入れされていて気持ちのいい小屋
である。雪山でここへ泊まって日の出の眺めたらいいだろうと思っていたことを思い出した。
遅くなったが、小屋の前の階段に店を広げてランチタイムとしよう。もう誰も来ることはないだろう。
スパッツを外していると、なにやら張り付いているものがある。なんとクワガタムシだ。
樹液の出そうな木もないこんなところに一人(一匹?)、彼はどうやって生きてきたのだろう。
丈競山から浄法寺山への縦走路は見晴らしも良く、足元には可憐なリンドウの花も咲く快適な道だ。
小さな展望台の建つ浄法寺山の山頂にも人影はなかった。時刻はもう3時を回っているから当然か。
下山路が一般登山道というのは気が楽なものである。冠岳の手前から冠新道と呼ばれる道をハンノキ谷へ下る。
この道がなかなかの曲者だった。道ははっきりしているが、傾斜が半端ない。両側に張られたトラロープを頼りに、
転げ落ちるように高度を落として行く。まわりはブナ主体の自然林なので気持ちのいい道なのだが、足元から目の
離せない難路である。
水音が大きくなってくるとハンノキ谷へ下り立った。後は元来た道を戻るだけだ。
当然ながら、林道終点のジムニーの姿は既になかった。
山日和