【若丹国境】永谷から頭巾山へ トチの巨木探訪

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山日和
記事: 3573
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

【若丹国境】永谷から頭巾山へ トチの巨木探訪

投稿記事 by 山日和 »

【日 付】2021年8月28日(土)
【山 域】若丹国境 頭巾山周辺
【天 候】晴れ
【コース】永谷二俣駐車地8:05---8:55尾根近接点---10:55 P820m---11:20頭巾山---11:30野鹿の滝コース分岐12:45
     ---14:10 P761m 14:30---15:15尼来峠15:30---15:55駐車地

 クネクネした狭い林道を延々走り続けていると、自分がどこにいるのかわからなくなる。
突然目の前が大きく開け、真新しい堰堤が現れた。ちょうど二俣になったその場所は、両方の谷に砂防工事が行わ
れ、山の中に突然出現した異世界のようだ。
 右側の谷が目的の永谷である。殺伐とした林道から谷へ一歩踏み出すと、雰囲気が一変した。最初は植林だろう
と予想していた谷はいきなり自然林に包まれ、小さいながらも滝やナメが出迎えてくれたのはうれしい誤算だ。
岩という岩にはびっしりと苔が張り付き、トチやサワグルミの大木が頭上を飾る。まさに自分好みの世界である。


P8280021_1.JPG
P8280030_1.JPG

 岩溝を垂直に落ちる美しい10m滝を越えると、谷は落ち着きを見せた。この谷は岩盤がよく発達しているようで、
平流になってもナメ床が続いて楽しく遡行して行ける。
林相が植林に変わっても、谷床はナメが続いていたが、それもやがて終わり。正味植林の中を流れるただの小川に
なってしまった。

 この谷で楽しみにしていたものの一つが、Ca500mの流れが南東に向きを変えるあたり。並走する尾根との標高
差が等高線一本しかない場所の風景である。さすがに期待通りとは行かず、平凡な植林の風景だったが、ちょうど
尾根の鞍部になっている場所は人工的な切通しがあり、作業道でもあったのかと思わせた。


P8280110_1.JPG

 まったく平凡な植林の中の平流に退屈しかかっていると、杉に混じって明らかに空気感の違う巨木が現れ始めた。
トチである。幹回り6mを越えると思われるものだけでも4、5本。4~5mクラスなら数え切れないぐらいのトチが
次々に現れて、目視測定するのが忙しい。
若狭美浜の谷でもトチの木は多く見られるが、この谷のトチの密度は半端ない。これで周りが自然林ならどれほど
素晴らしい森だろう。


P8280094_1.JPG

 入渓からほとんど高度を稼いでいないが、ほとんど谷の脇に付けられた道を歩いているので行程は捗る。
左の支流に見えたトチの大木を見学した後、谷もそろそろ源流部に差し掛かるかなというところで思わぬ変化が
現れた。前方、ずいぶん高いところに水流が見える。滝だ。
近付いてみると、溝状の斜瀑を皮切りに、全部で4段25mほどはあるだろうか。平流のまま源頭を迎えるはずはな
いが、これはうれしい想定外である。
傾斜が緩く、ほぼ階段状なので登りやすいが、最上段の出口でややヌメリがあったので緊張させられた。うまい
具合に木の根があったので、それに助けられてなんとか登り切る。


P8280123_1.JPG

 これから連瀑帯の始まりかと思ったが、滝場はそれだけで終了。自然林の中を気持ち良くサラサラと流れるナメ
床をひたひたと歩いて行く。相変わらずトチの巨木は多く、源流の美しい風景に大きなインパクトを与えてくれる。
最後のツメは倒木が塞いでいたので右手の尾根へ逃げた。820mピークに突き上げる源頭はやさしいブナ林に包まれ
て、申し分のない谷のフィニッシュである。


P8280136_1.JPG

 ランチには少し早いので、とりあえず頭巾山まで行ってみよう。山頂には日陰がないはずなので、途中に適当な
場所がなければここまで戻って来ればいいのだ。
尾根に出るとさすがに暑いが、樹林に覆われているので助かる。

 頭巾山は確かに登っているはずなのだが、まったく記憶にない。(家で記録を調べると、ちょうど30年前に登って
いたが、どこをどう歩いたのか霧の中だ。)
予想通り日陰はなかったが、唯一日陰になっていた山頂の祠の裏に、誰の仕業か大きな糞が放置されていた。紙が
散らばっているのを見ると、クマではないだろう。バチ当たり以前に人間としてどうかと思う。後から来た登山者
がどう思うか想像できないのだろうか。とんだクソ野郎のおかげで気分が悪くなってしまった。

P8280187_1.JPG

 というわけで、ランチ場所を探しながら来た道を戻ると、名田庄側の野鹿の滝からのコースの分岐にいいところ
があった。ちょっとしたブナ林でフラットな場所もある。ここで腰を降ろしてビールを開けた。
寛いでいると、野鹿の滝の方から老夫婦と思しき2人パーティーがやってきた。蚊取り線香の煙が山火事だったらど
うしようと思ってドキドキしたそうだ。このパーティーがなんと、2か月振りに山中で出会う登山者だった。
6月の末から8回の登山で一人の登山者にも会ってなかったのである。記録が途切れてちょっと残念。
おまけにこのパーティーが山頂から戻って来て、少し上の方でランチタイムを始めたのはいいのだが、ラジオを大
きな音で鳴らすのには参った。それも「ブルーライトヨコハマ」を始め、ウン十年前の懐メロである。
思わず「やかましい」と怒鳴りそうになったが、グッと我慢。クソ野郎の次はかしまし夫婦か。

 下山は尼来峠へ向かう。こちらも部分的にではあるがブナ林もあり、まあまあ歩きやすい道だが、ヤブが被って
不明瞭なところもあった。ショートパンツに履き替えて足は涼しくなったものの、やはり暑くて頭がボーッとして
しまう。途中の765mピークでシートを広げて、30分ほどひっくり返っていた。

 可もなく不可もなしという感じの県境稜線だったが、761mピーク付近は素晴らしい樹林が広がっていた。
視界の開けた北西方向には、青葉山の双耳峰が目立つ。

P8280237_1.JPG

 その昔、小浜から綾部へのルートとして郡是(グンゼ産業)で働く女工達が越えたという尼来峠は、その当時を偲
ばせる風情はなく、石組みの祠の中に柔和な顔立ちのお地蔵様がひっそりと佇んでいた。
 西側の谷の源頭をトラバースする道に入り、突き当たった支尾根を谷に下りた。この谷の先がちょうど駐車地だ。
ゆるやかな谷の右岸にトラバース道が続くが、谷に大きな滝の気配が見えたところで尾根芯に戻ると、深く掘り込
まれた道が現れた。これが峠越えの旧道だろうか。その道を辿って行くと、尾根の末端付近ではハッキリしなくな
り、そのまま河原に着地。こちら側には道を示す何の目印もなかった。

 永谷は沢登りという意味では物足りない谷ではあるが、トチの展示場と呼びたいぐらい多くのトチの巨木と数少
ないながらもスッキリした滝場、源頭のやさしい風景と、今の自分には十分満足できる谷だった。

 下山後立ち寄った「あやべ温泉二王の湯」で夕食を取ったのだが、頼んだカツカレーがレトルトだったのには
ガッカリした。1400円も取りながらレトルトとは頂けない。
さらにJAFの会員割引で食事が200円オフになるのを見逃してしまい、ダブルパンチを食らった思いだった。

                   山日和
シュークリーム
記事: 2060
登録日時: 2012年2月26日(日) 17:35
お住まい: 三重県津市

Re: 【若丹国境】永谷から頭巾山へ トチの巨木探訪

投稿記事 by シュークリーム »

山日和さん,こんにちは。
私には馴染みのない山域が多くてあまりコメントしていませんが,いつも山日和文学を楽しみに読ませてもらっています。いつもいい山歩きをされていますね。


最初は植林だろう
と予想していた谷はいきなり自然林に包まれ、小さいながらも滝やナメが出迎えてくれたのはうれしい誤算だ。
岩という岩にはびっしりと苔が張り付き、トチやサワグルミの大木が頭上を飾る。まさに自分好みの世界である。


岩に苔がびっしりとついた谷は私も大好きです。よく行く鈴鹿は花崗岩が多く,こういう風景はあまり見かけませんが,台高の沢では苔がびっしりついたところが多く,なぜかこの光景に出会うと安心します。花崗岩の白い岩の間を流れる水流よりも,苔のついた緑の岩の間を流れる白い水流の方が絵になります。そんなことで最近は台高の沢に入り浸っています。

このところよく行っている木屋谷近辺も風力発電設備計画で少しづつ騒がしくなっていますが,この自然が壊れてしまわないようにと願っています。
添付ファイル
木屋谷
木屋谷
                         @シュークリーム@
アバター
山日和
記事: 3573
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【若丹国境】永谷から頭巾山へ トチの巨木探訪

投稿記事 by 山日和 »

シュークリさん、どうもです。
ご愛顧ありがとうございます。 :lol:

に苔がびっしりとついた谷は私も大好きです。よく行く鈴鹿は花崗岩が多く,こういう風景はあまり見かけませんが,台高の沢では苔がびっしりついたところが多く,なぜかこの光景に出会うと安心します。花崗岩の白い岩の間を流れる水流よりも,苔のついた緑の岩の間を流れる白い水流の方が絵になります。そんなことで最近は台高の沢に入り浸っています。

湿度が高いからでしょうかね。苔むした谷はしっとりとした味わいがありますよね。
シュークリさんも沢復活したようで、ご同慶の至りです。 :mrgreen:


P8280015_1.JPG

このところよく行っている木屋谷近辺も風力発電設備計画で少しづつ騒がしくなっていますが,この自然が壊れてしまわないようにと願っています。

私の愛する若狭、湖北の山々はかなり危ないことになってます。
なんとかならんかなあ。 :oops:

                        山日和
sato
記事: 417
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【若丹国境】永谷から頭巾山へ トチの巨木探訪

投稿記事 by sato »

山日和さま

こんばんは。
8月最後の週末は、丹波沢山旅にお出かけになられたのですね。
丹波も興味深い山域です。
若丹国境稜線とその周辺のお山と峠道を辿る山旅をぽつぽつと続けています。

永谷は、若狭の川上から菅の坂、尼公坂を経て、尼公谷を下り、尼来峠に登るという面白いルートを、
Kさんが描いてくださった時に眺めました。
「山の中に突然出現した異世界」にえっ?となりましたが、
小滝やナメのうつくしい流れが展開していくのですね。

「岩という岩にはびっしりと苔が張り付き、トチやサワグルミが頭上を飾る」
頭の中に、ぱぁっとしっとり爽やかな谷の風景が広がり、透き通った風が鼻をくすぐりました。
シュークリームさんが、苔のついた緑の岩とその間を流れる白い水流の光景に出会うと、
なぜか安心すると書かれていますが、私は思い描くだけでも、安心感に包まれます。


滝は標高420から30m辺りでしょうか。その先、谷は細いですが緩やかですね。
「楽しく遡行して行けるナメ床の谷」、想像してしまいます。
標高500mの流れが南東に向きを変えるあたり。うんと細くなった谷となだらかな尾根が接近する箇所。
レポを味わわせていただく前に、地図でコースを辿ったのですが、私も物語を感じました。
こういう地形を見るとドキドキします。どんな風景が広がっているのだろう。知りたくなります。
そう、左門岳や庄部谷山のドキドキする地形も山日和さんから教えていただきました。

実際は平凡な植林の風景だったのですね。
期待していた以上、期待通り、期待通りとは行かず・・いずれも、訪れてこそ湧き上がる感情ですね。
旅の面白さ、味わい深さですね。

谷の上流はトチの巨木林でしたか。
植林の中に立ち並ぶトチ。それだけトチは、人びとにとって生きるために大切な存在だったのだなぁ、と感じます。
トチは生活用具の材として弥生時代から利用されていたそうです。
そして大切な救荒食。その起源は縄文時代まで遡るといいます。

源頭の風景も素晴らしかったのですね。
味わい深い谷に出会え、にこにこ顔の山日和さんのお顔が浮かびます。
この日は、2か月ぶりに登山者に会われたのですね。ラジオの音うるさかったでしょうが、
人生山あり谷あり、いろんなことを乗り越えてきたご夫婦が、
この日、頭巾山に登り、ふたりでずっと聴いてきた懐メロを楽しまれている、と思ってください(笑)。

私は3年前、Kさんと山森から周回した時、綾部で本屋さんを営まれているご夫婦と出会い、
何度かお手紙の交換をしました。山日和さんのおかげでご夫婦のやわらかな笑顔を思い出しました。
いつか本屋さんを訪れようと思いました。

尼来峠の風景はこころに刻まれています。
少し前の時代の日本には、女の子たちが山を越え、働きに出かけたという歴史があるのですね。
私たちも尼来峠道の取り付きが分かりませんでした。取り付いた尾根を少し登ると道が現れました。
古道探しも楽しいですね。

味わい深い沢山旅を楽しませていただき、懐かしい思い出に浸らせていただきました。
山に行けない時間、楽しいお山の時間を過ごさせていただきました。

sato
アバター
山日和
記事: 3573
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【若丹国境】永谷から頭巾山へ トチの巨木探訪

投稿記事 by 山日和 »

satoさん、どうもです。

8月最後の週末は、丹波沢山旅にお出かけになられたのですね。

hillwandererさんの記録を見てムクムクと行く気が湧いてきました。 :D

永谷は、若狭の川上から菅の坂、尼公坂を経て、尼公谷を下り、尼来峠に登るという面白いルートを、Kさんが描いてくださった時に眺めました。
「山の中に突然出現した異世界」にえっ?となりましたが、
小滝やナメのうつくしい流れが展開していくのですね。


草川さんの本のルートですね。別に伏せ字にしなくてもいいと思うけど。
あの永谷二俣の風景は啞然としますね。「ホンマにここ?」って感じです。


P8280020_1.JPG

「岩という岩にはびっしりと苔が張り付き、トチやサワグルミが頭上を飾る」
頭の中に、ぱぁっとしっとり爽やかな谷の風景が広がり、透き通った風が鼻をくすぐりました。


素晴らしい感性です。 :lol:

滝は標高420から30m辺りでしょうか。その先、谷は細いですが緩やかですね。
「楽しく遡行して行けるナメ床の谷」、想像してしまいます。


この谷は地形図で見るとやたら細くて、どうなっているのかわからなくなってしまいます。
でも実際の地形はそれほど狭くはなく、むしろゆったりとした広がりを感じました。


P8280038_1.JPG

標高500mの流れが南東に向きを変えるあたり。うんと細くなった谷となだらかな尾根が接近する箇所。
レポを味わわせていただく前に、地図でコースを辿ったのですが、私も物語を感じました。
こういう地形を見るとドキドキします。どんな風景が広がっているのだろう。知りたくなります。
そう、左門岳や庄部谷山のドキドキする地形も山日和さんから教えていただきました。
実際は平凡な植林の風景だったのですね。
期待していた以上、期待通り、期待通りとは行かず・・いずれも、訪れてこそ湧き上がる感情ですね。
旅の面白さ、味わい深さですね。

さすがに左門の大平のようなわけにはいきませんでしたが、まあそんなもんでしょう。
それほど期待はしてなかったんだけど。 :mrgreen:

谷の上流はトチの巨木林でしたか。
植林の中に立ち並ぶトチ。それだけトチは、人びとにとって生きるために大切な存在だったのだなぁ、と感じます。


これで植林ではなく自然林ならすごい森だっただろうなあと思いましたよ。


P8280110_1.JPG

源頭の風景も素晴らしかったのですね。
味わい深い谷に出会え、にこにこ顔の山日和さんのお顔が浮かびます。


源頭がいいと、谷の印象がグッとアップしますね。 :D

P8280150_1.JPG

この日は、2か月ぶりに登山者に会われたのですね。ラジオの音うるさかったでしょうが、
人生山あり谷あり、いろんなことを乗り越えてきたご夫婦が、
この日、頭巾山に登り、ふたりでずっと聴いてきた懐メロを楽しまれている、と思ってください(笑)。

人間ができてないんで、とてもそんないいように解釈できませんでした。
まだその境地に達することができない未熟者です。 :mrgreen:

P8280225_1.JPG

尼来峠の風景はこころに刻まれています。
少し前の時代の日本には、女の子たちが山を越え、働きに出かけたという歴史があるのですね。
私たちも尼来峠道の取り付きが分かりませんでした。取り付いた尾根を少し登ると道が現れました。
古道探しも楽しいですね。


取り付くのに谷を渡渉する必要があったでしょう。長靴なら問題ないか。

味わい深い沢山旅を楽しませていただき、懐かしい思い出に浸らせていただきました。
山に行けない時間、楽しいお山の時間を過ごさせていただきました。


ケガが早く治るといいですね。

              山日和
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