【飛騨】籾糠山 極上の森を歩く
Posted: 2021年4月06日(火) 23:08
【日 付】2021年4月3日(土)
【山 域】飛騨山地 籾糠山
【天 候】晴れのち曇り
【メンバー】わしたか、山日和
【コース】駐車地6:30---7:50横谷3号橋---10:05 P1564---10:45籾糠山11:35---12:10木平湿原ランチ場13:40
---14:10下降点---15:20 P1261---16:00横谷3号橋---17:00駐車地
籾糠山に向かうのは10年振りだ。どこでもドアから歩き出した林道にはほとんど雪がなかった。
山の斜面にも雪はまばら。これまで2回、籾糠山東尾根を歩いているが、いずれもGW前後。今の状態はGWとあ
まり変わらないように見えた。
長い林道を歩き、横谷の3号橋から尾根に取り付く。案の定雪は無かったが、しっかりした踏み跡があるので
歩くのに不自由はない。ただ、地面の落ち葉がやたら滑りやすく、急傾斜の登りでは半モンキーを強いられる。
わしたかさんは途中からチェーンスパイクを装着したが、これが正解だろう。私はアイゼンしか持って来ていな
かったので我慢の登りである。
今日の飛騨地方は晴れのはずだが、栗ヶ岳・御前岳方面の稜線は雲に覆われていた。こちらの頭上には青空が
広がっている。ほんの少しの位置の違いで大きな差があるものだ。
1200mを超えたあたりで雪が繋がったのでスノーシューを装着した。格段に歩くのが楽になる。
最初は細かったブナも、ここまで来るとそこそこの大木が目に付くようになる。
この尾根は短い分急登が多いが、スノーシューを履いていればガッチリと雪面を捉えてくれるのだ。
Ca1480mの台地まで来ると急登から開放され、ゆったりした尾根にブナの大木を配したプロムナードとなった。
高度を上げるにつれ、北東側の展望が開けて行く。目に飛び込むふたつの白い塊は金剛堂山と三ヶ辻山・人形山だ。
1564m標高点からは林相も一変する。この山域の特徴であるダケカンバとオオシラビソの割合が、徐々にブナ
と入れ替わるように増えて行った。ヒノキの巨木も混じっている。
北側に見えるのは1607mピークの台地。いかにも気持ちの良さそうな疎林が広がっている。
この風景を見て、帰路はあちらへ回ろうと心に決めた。
オオシラビソの森を抜けて、籾糠山頂への最後の登りにかかる。無木立の真っ白な斜面に、スノーシューのフレ
ームが小気味良く食い込む。ふと見上げると、予想もしていなかった人影が見えた。
山頂で出会ったのは単独の若い女性だった。積雪期のこの山域では珍しいことである。山を初めてまだ3年足ら
ずだが、1年前から飛騨山岳会に所属しており、山へ行きまくっているらしい。
こちらがコロナワクチンの接種券が届いたと話すと、医療従事者なので昨日打ってきましたと言う。
しっかりやぶこぎネットの宣伝もしておいたので、訪問してくれるとうれしいのだが。
この山頂は東半分の眺めはいいのだが、白山の北方稜線はオオシラビソの脇から覗かないと見えない。
肝心の白山は猿ヶ馬場に遮られている。少し風もあるのでランチ場としては適当ではない。
なんだかんだ話しているうちに、1時間近くが経ち、体が冷えて来てしまった。元より目の前の猿ヶ馬場を目指す
つもりは毛頭ないので、先ほど眺めた1607mピーク、天生湿原の一部である木平湿原でランチ場を探すことにする。
オオシラビソの森まで戻って、木平湿原への尾根に入るとすでに空気が違う。
どこが尾根だかわからないような広い雪原を緩やかに登ると、想像をはるかに超えた世界が待っていた。
広大な雪原に展開するブナとダケカンバの森。木々は適度な間隔で並び、その1本1本が違う表情を見せる。
苔むしたブナや蔓の纏わりついたブナ。空に向かって自由に腕を伸ばすダケカンバ。見渡す限り、豊潤な森が広
がっている。この大雪原の下に木平湿原が眠っているのである。
無雪期に訪れれば湿原に目を惹かれ、さらに木道の上しか歩けないのでこの森の広がりを実感するのは難しいか
もしれない。
三ヶ辻山を正面に望む場所に陣取って乾杯。これを至福と言わずして、何が至福だろう。
わしたかさんは缶ビールを2本用意して来ていた。これは1本では足りそうもない。私ももう1本持って来ればよ
かった。
食後も雪原の端まで、思い思いのトレースを描いて、この極上の森をゆっくりと散策した。
籾糠山頂での休憩を入れると都合3時間ほど滞在したことになるが、まだまだ足りないぐらいである。
後ろ髪を引かれながら、この山上のパラダイスを後にする。
複雑な地形の中、微妙な尾根を探し出して台地から下降。振り返ると台地の際はガケのような急斜面になってお
り、台地のラインが横一直線に見えた。
お楽しみはここまでかと思いきや、ブナの森はまだまだ続く。
あまりにも素晴らしい森を見てしまったので感激は薄いが、ここだけを取れば十二分に一級品のブナの尾根だ。
宝くじの一等と一緒に前後賞も当たったような気分である。
ぼんやりと歩いて尾根の広い方へ進むと、方向を間違ってしまうので注意が必要だ。
林道を横切ってさらに尾根を直進すると、少々ヤブっぽくなってきた。ここでスノーシューを脱いでアイゼンに
換装すると、ヤブはすぐに終わって再びブナ林に変わった。
1261mピークのあたりも予想外にいいブナ林で、結構腹一杯になってきた。
続く1202mピークは黒い塊が植林くさいので、南へ伸びる尾根を選択する。とたんに雪がほとんど消えてしまっ
たが、それなりに踏み跡があるのでヤブを漕ぐ必要はない。ただ、アイゼンを外すと登りと同じく滑りやすいの
で、左の谷へ下りて雪を繋いで行こうという作戦に変更。
これが当たって、9割以上雪上歩行することができた。
最後の植林帯で雪穴にはまった時、左足のアイゼンの前爪が右足のふくらはぎに刺さって天を仰ぐ。
スパッツは破れていなかったが、後で温泉に入った時、くっきりと傷跡が残っていた。こりゃ痛いはずだ。
長い林道歩きが待っているが、前半は高原の散策路のような道で、後半は雪解け水が轟々と流れる谷を眺めな
がらの歩行で退屈はしない。
今日の豊かな時間を反芻しながら林道を歩くのもいいものだ。
山日和
【山 域】飛騨山地 籾糠山
【天 候】晴れのち曇り
【メンバー】わしたか、山日和
【コース】駐車地6:30---7:50横谷3号橋---10:05 P1564---10:45籾糠山11:35---12:10木平湿原ランチ場13:40
---14:10下降点---15:20 P1261---16:00横谷3号橋---17:00駐車地
籾糠山に向かうのは10年振りだ。どこでもドアから歩き出した林道にはほとんど雪がなかった。
山の斜面にも雪はまばら。これまで2回、籾糠山東尾根を歩いているが、いずれもGW前後。今の状態はGWとあ
まり変わらないように見えた。
長い林道を歩き、横谷の3号橋から尾根に取り付く。案の定雪は無かったが、しっかりした踏み跡があるので
歩くのに不自由はない。ただ、地面の落ち葉がやたら滑りやすく、急傾斜の登りでは半モンキーを強いられる。
わしたかさんは途中からチェーンスパイクを装着したが、これが正解だろう。私はアイゼンしか持って来ていな
かったので我慢の登りである。
今日の飛騨地方は晴れのはずだが、栗ヶ岳・御前岳方面の稜線は雲に覆われていた。こちらの頭上には青空が
広がっている。ほんの少しの位置の違いで大きな差があるものだ。
1200mを超えたあたりで雪が繋がったのでスノーシューを装着した。格段に歩くのが楽になる。
最初は細かったブナも、ここまで来るとそこそこの大木が目に付くようになる。
この尾根は短い分急登が多いが、スノーシューを履いていればガッチリと雪面を捉えてくれるのだ。
Ca1480mの台地まで来ると急登から開放され、ゆったりした尾根にブナの大木を配したプロムナードとなった。
高度を上げるにつれ、北東側の展望が開けて行く。目に飛び込むふたつの白い塊は金剛堂山と三ヶ辻山・人形山だ。
1564m標高点からは林相も一変する。この山域の特徴であるダケカンバとオオシラビソの割合が、徐々にブナ
と入れ替わるように増えて行った。ヒノキの巨木も混じっている。
北側に見えるのは1607mピークの台地。いかにも気持ちの良さそうな疎林が広がっている。
この風景を見て、帰路はあちらへ回ろうと心に決めた。
オオシラビソの森を抜けて、籾糠山頂への最後の登りにかかる。無木立の真っ白な斜面に、スノーシューのフレ
ームが小気味良く食い込む。ふと見上げると、予想もしていなかった人影が見えた。
山頂で出会ったのは単独の若い女性だった。積雪期のこの山域では珍しいことである。山を初めてまだ3年足ら
ずだが、1年前から飛騨山岳会に所属しており、山へ行きまくっているらしい。
こちらがコロナワクチンの接種券が届いたと話すと、医療従事者なので昨日打ってきましたと言う。
しっかりやぶこぎネットの宣伝もしておいたので、訪問してくれるとうれしいのだが。
この山頂は東半分の眺めはいいのだが、白山の北方稜線はオオシラビソの脇から覗かないと見えない。
肝心の白山は猿ヶ馬場に遮られている。少し風もあるのでランチ場としては適当ではない。
なんだかんだ話しているうちに、1時間近くが経ち、体が冷えて来てしまった。元より目の前の猿ヶ馬場を目指す
つもりは毛頭ないので、先ほど眺めた1607mピーク、天生湿原の一部である木平湿原でランチ場を探すことにする。
オオシラビソの森まで戻って、木平湿原への尾根に入るとすでに空気が違う。
どこが尾根だかわからないような広い雪原を緩やかに登ると、想像をはるかに超えた世界が待っていた。
広大な雪原に展開するブナとダケカンバの森。木々は適度な間隔で並び、その1本1本が違う表情を見せる。
苔むしたブナや蔓の纏わりついたブナ。空に向かって自由に腕を伸ばすダケカンバ。見渡す限り、豊潤な森が広
がっている。この大雪原の下に木平湿原が眠っているのである。
無雪期に訪れれば湿原に目を惹かれ、さらに木道の上しか歩けないのでこの森の広がりを実感するのは難しいか
もしれない。
三ヶ辻山を正面に望む場所に陣取って乾杯。これを至福と言わずして、何が至福だろう。
わしたかさんは缶ビールを2本用意して来ていた。これは1本では足りそうもない。私ももう1本持って来ればよ
かった。
食後も雪原の端まで、思い思いのトレースを描いて、この極上の森をゆっくりと散策した。
籾糠山頂での休憩を入れると都合3時間ほど滞在したことになるが、まだまだ足りないぐらいである。
後ろ髪を引かれながら、この山上のパラダイスを後にする。
複雑な地形の中、微妙な尾根を探し出して台地から下降。振り返ると台地の際はガケのような急斜面になってお
り、台地のラインが横一直線に見えた。
お楽しみはここまでかと思いきや、ブナの森はまだまだ続く。
あまりにも素晴らしい森を見てしまったので感激は薄いが、ここだけを取れば十二分に一級品のブナの尾根だ。
宝くじの一等と一緒に前後賞も当たったような気分である。
ぼんやりと歩いて尾根の広い方へ進むと、方向を間違ってしまうので注意が必要だ。
林道を横切ってさらに尾根を直進すると、少々ヤブっぽくなってきた。ここでスノーシューを脱いでアイゼンに
換装すると、ヤブはすぐに終わって再びブナ林に変わった。
1261mピークのあたりも予想外にいいブナ林で、結構腹一杯になってきた。
続く1202mピークは黒い塊が植林くさいので、南へ伸びる尾根を選択する。とたんに雪がほとんど消えてしまっ
たが、それなりに踏み跡があるのでヤブを漕ぐ必要はない。ただ、アイゼンを外すと登りと同じく滑りやすいの
で、左の谷へ下りて雪を繋いで行こうという作戦に変更。
これが当たって、9割以上雪上歩行することができた。
最後の植林帯で雪穴にはまった時、左足のアイゼンの前爪が右足のふくらはぎに刺さって天を仰ぐ。
スパッツは破れていなかったが、後で温泉に入った時、くっきりと傷跡が残っていた。こりゃ痛いはずだ。
長い林道歩きが待っているが、前半は高原の散策路のような道で、後半は雪解け水が轟々と流れる谷を眺めな
がらの歩行で退屈はしない。
今日の豊かな時間を反芻しながら林道を歩くのもいいものだ。
山日和