【奥美濃】ミノマタ 新雪の煌めく雪稜を行く
Posted: 2021年2月03日(水) 23:46
【日 付】2021年1月31日(日)
【山 域】奥美濃 ミノマタ周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】藤橋城7:20---10:30 P918m---12:00ミノマタ・五蛇池JP---12:45ミノマタ---12:55ランチ場14:15
---16:00△西杉原---16:50駐車地
天気予報では10時頃から晴れ。とは言え、朝から小雨模様ではなかなかテンションも上がらない。雪の状態も
心配だ。
登山口の藤橋城へ車を走らせる。駐車地に着くと先着の車が一台。こちらの方を何か言いたげに見ている。
「山日和さんですか?」なんと、昨秋に磯谷ベロリ橋で出会ったblackさん一行だった。
どちらも顔を完全に覚えていなかったのはご愛敬。次からは間違いなく識別できるだろう。たぶん。
「どちらへ」と聞いてみたが、ここに駐車して登る山は他にあるはずがない。目的地は同じミノマタ(三角点三ツ又)
である。但し、辿るルートは違う。「山頂で会いましょう」と先発した一行を見送った。
今日のコースは7年前に開催したスノー衆と同じだ。雪が締まっていれば何ということもないコースだが、この
週末で一気に積雪は増えたようだ。
アプローチの八草トンネル越えも完全な積雪路。今シーズン初めてスタッドレスが威力を発揮した。
取付きは意外に雪が少なく、根雪はほとんどなかったような印象だ。尾根に乗って平凡な灌木帯を進む。
空の色は暗く、こっちの気持ちまで陰鬱になってきそうである。とにかく晴れるのを信じるしかない。
遠目には霧氷かと見えた樹林は、ただ枝の上に雪が載っているだけだった。
705m標高点で急登から解放されると、いよいよこの尾根の白眉の登場である。ここから延々と続くブナ林は見事
のひと言。天気が良ければ実に開放的なブナ林散策を楽しめるのだが。
それでもここまでの鬱屈した気分は晴れてきたが、西前の谷の対岸高くに聳えるミノマタの山頂は、やけに遠く見え
た。こういう時は調子が上がらない証拠である。satoさんにラッセルを任せて自分はトレースを辿っているだけなの
に、やたら足が重い。
天狗山から黒津山への稜線を眺めながら918mピークに着く頃には、本当に山頂まで行けるのかと弱気の虫が出始
めた。しかし、ここまで来たら気合を入れて進むしかない。
親谷源頭を囲む、ミノマタ西のJPから五蛇池山、黒津山、天狗山と巡る馬蹄形の尾根は7年前に周回したルートだ。
よく歩いたもんだと感心してしまう。五蛇池の奥に真っ白な鋭鋒が二つ。蕎麦粒山と小蕎麦粒だ。
その美しい姿とようやく姿を現わした青空に勇気づけられて、ミノマタへの尾根に踏み出した。
白い帯となった雪尾根を辿る。もうミノマタが遠く感じることはない。アップダウンはあるものの、どこまでも
続くブナ林は疲れを感じさせない。
いよいよミノマタと五蛇池山を結ぶ稜線に到達した。
北側の展望が一気に開け、能郷白山を始めとする越美国境稜線の展望が全開となり、心躍る風景に眼が釘付けになった。
雪原状となった広大な雪尾根に心が開放される。雪のうねりが生クリームのように滑らかで柔らかい曲線を描いていた。
ふと前方に視線を遣ると、これまでとは違う木の白さが眼に飛び込んで来た。正真正銘の霧氷だ。
まったく期待していなかっただけに喜びもひとしおである。
真っ青な空に煌めく霧氷を愛でながら尾根を進むと、このコースの最大のハイライトであるヤセ尾根が待ち受けて
いる。地形図で見る限りではそれほど痩せているようには思えないのだが、積雪期には美しいナイフリッジを形作っ
ている。スパッと切れ落ちた南側には芸術的とも思えるさまざまな形の雪庇が張り出し、慎重な行動が求められる場
面だ。幸い新雪が柔らかいので、北側斜面寄りに不安なくトレースを刻むことができた。
前方から声がした。ほどなく朝のパーティーが姿を現わす。当初は山頂往復のつもりだったが、我々が逆回りで周回
するのを聞いて、こちらへ踏み出したようである。お互いの行程の情報交換をして、「気を付けて」と別れた。
ミノマタ山頂は狭く、ここもまた雪庇が張り出しているので、迂闊に一番高い場所に立とうとすれば転落必至である。
風があり、適当なランチ場もないので、少し下ったブナ林でランチタイムとした。
正面に越美国境の山々を望む、なんとも贅沢な食堂だ。
間近に見えるのは上谷山と鏡山。その奥には金草岳から冠山、若丸山、能郷白山、屏風山、平家岳、滝波山へと続く
国境の山々。これまで辿ってきた山並みを眺める時、いつも心にはその時々の記憶が蘇り、なんとも言えない甘美で充
実した思いに満たされるのである。
下山の行程はトレースもあり時間が読めるので、大パノラマを肴にのんびりとランチタイムを楽しんだ。
雪山の下山はトレースがある方がありがたいとは限らない。踏まれていない雪面を選んで歩く方が、足を置く場所に
気を遣わなくて済むのだ。記憶の中では平凡な尾根だと思っていたが、こちらもブナ林が続くいい尾根である。
630.4mピーク(三角点西杉原)からはガラッと林相が変わり、ブナの代わりにモミかツガのような針葉樹が目立つ尾根
となった。雪が少なくなったのでスノーシューを脱ぐが、滑りやすくて歩きにくいことこの上ない。
送電鉄塔の下まで来ると、眼下の藤橋城(ニセものの城だが)を中心とした谷あいの集落の広がりが見えた。
その奥に、霧氷に飾られた花房山が残照を浴びて黄金色に輝いていた。
山日和
【山 域】奥美濃 ミノマタ周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】藤橋城7:20---10:30 P918m---12:00ミノマタ・五蛇池JP---12:45ミノマタ---12:55ランチ場14:15
---16:00△西杉原---16:50駐車地
天気予報では10時頃から晴れ。とは言え、朝から小雨模様ではなかなかテンションも上がらない。雪の状態も
心配だ。
登山口の藤橋城へ車を走らせる。駐車地に着くと先着の車が一台。こちらの方を何か言いたげに見ている。
「山日和さんですか?」なんと、昨秋に磯谷ベロリ橋で出会ったblackさん一行だった。
どちらも顔を完全に覚えていなかったのはご愛敬。次からは間違いなく識別できるだろう。たぶん。
「どちらへ」と聞いてみたが、ここに駐車して登る山は他にあるはずがない。目的地は同じミノマタ(三角点三ツ又)
である。但し、辿るルートは違う。「山頂で会いましょう」と先発した一行を見送った。
今日のコースは7年前に開催したスノー衆と同じだ。雪が締まっていれば何ということもないコースだが、この
週末で一気に積雪は増えたようだ。
アプローチの八草トンネル越えも完全な積雪路。今シーズン初めてスタッドレスが威力を発揮した。
取付きは意外に雪が少なく、根雪はほとんどなかったような印象だ。尾根に乗って平凡な灌木帯を進む。
空の色は暗く、こっちの気持ちまで陰鬱になってきそうである。とにかく晴れるのを信じるしかない。
遠目には霧氷かと見えた樹林は、ただ枝の上に雪が載っているだけだった。
705m標高点で急登から解放されると、いよいよこの尾根の白眉の登場である。ここから延々と続くブナ林は見事
のひと言。天気が良ければ実に開放的なブナ林散策を楽しめるのだが。
それでもここまでの鬱屈した気分は晴れてきたが、西前の谷の対岸高くに聳えるミノマタの山頂は、やけに遠く見え
た。こういう時は調子が上がらない証拠である。satoさんにラッセルを任せて自分はトレースを辿っているだけなの
に、やたら足が重い。
天狗山から黒津山への稜線を眺めながら918mピークに着く頃には、本当に山頂まで行けるのかと弱気の虫が出始
めた。しかし、ここまで来たら気合を入れて進むしかない。
親谷源頭を囲む、ミノマタ西のJPから五蛇池山、黒津山、天狗山と巡る馬蹄形の尾根は7年前に周回したルートだ。
よく歩いたもんだと感心してしまう。五蛇池の奥に真っ白な鋭鋒が二つ。蕎麦粒山と小蕎麦粒だ。
その美しい姿とようやく姿を現わした青空に勇気づけられて、ミノマタへの尾根に踏み出した。
白い帯となった雪尾根を辿る。もうミノマタが遠く感じることはない。アップダウンはあるものの、どこまでも
続くブナ林は疲れを感じさせない。
いよいよミノマタと五蛇池山を結ぶ稜線に到達した。
北側の展望が一気に開け、能郷白山を始めとする越美国境稜線の展望が全開となり、心躍る風景に眼が釘付けになった。
雪原状となった広大な雪尾根に心が開放される。雪のうねりが生クリームのように滑らかで柔らかい曲線を描いていた。
ふと前方に視線を遣ると、これまでとは違う木の白さが眼に飛び込んで来た。正真正銘の霧氷だ。
まったく期待していなかっただけに喜びもひとしおである。
真っ青な空に煌めく霧氷を愛でながら尾根を進むと、このコースの最大のハイライトであるヤセ尾根が待ち受けて
いる。地形図で見る限りではそれほど痩せているようには思えないのだが、積雪期には美しいナイフリッジを形作っ
ている。スパッと切れ落ちた南側には芸術的とも思えるさまざまな形の雪庇が張り出し、慎重な行動が求められる場
面だ。幸い新雪が柔らかいので、北側斜面寄りに不安なくトレースを刻むことができた。
前方から声がした。ほどなく朝のパーティーが姿を現わす。当初は山頂往復のつもりだったが、我々が逆回りで周回
するのを聞いて、こちらへ踏み出したようである。お互いの行程の情報交換をして、「気を付けて」と別れた。
ミノマタ山頂は狭く、ここもまた雪庇が張り出しているので、迂闊に一番高い場所に立とうとすれば転落必至である。
風があり、適当なランチ場もないので、少し下ったブナ林でランチタイムとした。
正面に越美国境の山々を望む、なんとも贅沢な食堂だ。
間近に見えるのは上谷山と鏡山。その奥には金草岳から冠山、若丸山、能郷白山、屏風山、平家岳、滝波山へと続く
国境の山々。これまで辿ってきた山並みを眺める時、いつも心にはその時々の記憶が蘇り、なんとも言えない甘美で充
実した思いに満たされるのである。
下山の行程はトレースもあり時間が読めるので、大パノラマを肴にのんびりとランチタイムを楽しんだ。
雪山の下山はトレースがある方がありがたいとは限らない。踏まれていない雪面を選んで歩く方が、足を置く場所に
気を遣わなくて済むのだ。記憶の中では平凡な尾根だと思っていたが、こちらもブナ林が続くいい尾根である。
630.4mピーク(三角点西杉原)からはガラッと林相が変わり、ブナの代わりにモミかツガのような針葉樹が目立つ尾根
となった。雪が少なくなったのでスノーシューを脱ぐが、滑りやすくて歩きにくいことこの上ない。
送電鉄塔の下まで来ると、眼下の藤橋城(ニセものの城だが)を中心とした谷あいの集落の広がりが見えた。
その奥に、霧氷に飾られた花房山が残照を浴びて黄金色に輝いていた。
山日和