- 行動の滝 上段の滝
曽爾村,名張市などにまたがる室生山地は曽爾高原,兜岳,鎧岳,香落溪など,奇峰や柱状節理が発達した高原地帯である。これらは約1500万年前に起こったカルデラ噴火によって形成された地形だという。今春,曽爾村から室生寺へ縦走した時に,山中に舗装路のような美しいナメとナメ滝があることに気づき,以来,室生山地のナメとナメ滝を求めて何度か通っている。
赤目四十八滝はそのようなナメとナメ滝を代表するものであるが,実は赤目以外にもこの地域には美しい滝群が人知れず存在していることを知った。今回は柱状節理と紅葉で有名な香落溪のある青蓮寺川に落ち込む二つの大滝を訪れることにした。ここは6月に訪れたが,水が少なく,また,下調べが不十分だったので目的の滝にたどり着くことができなかった。今回はそのリベンジである。
【 日 付 】2022年9月7日(水)
【メンバー】単独
【 天 候 】曇りのち晴れ
【 ルート】曽爾村落合近く駐車地 8:45 --- 9:23 茶屋滝 --- 10:30 駐車地 ---
--- 林道脇駐車地 11:06 --- 11:47 行動の滝中の滝下 12:30 --- 13:14 行動の滝上の滝 --- 13:34 駐車地
その1 茶屋滝
- 行動の滝
曽爾村落合近くの県道名張曽爾線の道路脇に車を停め,名張方面に少し戻ると茶屋滝のかかる谷の入り口である。このところ雨が多かったのでもう少し水量があるかと期待していたのだが,谷の入り口には水が流れていない。荒れた感じの谷を少し登ると水流が現れ,その向こうにナメ滝が現れた。前回訪れた時よりは水量があって,ナメ床の上をさらさらと流れる水流に足をつけながら登って行くのは心地いい。
- ナメ
最初に現れたのは茶屋滝の下段13mである。参考にさせてもらった「小幸の滝巡り」では,下から茶屋滝一の滝,二の滝,三の滝と呼んでいるが,ルールが統一されていないようなので,ここでは下から下段の滝,中段の滝,上段の滝と呼ぶことにする。ナメの斜度によって滝の部分とナメの部分に区分けしているようだが,実際には一つのナメによって構成されており,全体を一つの滝とみなしてもいいように思う。
- 茶屋滝 下段の滝
以外にフリクションがいいので,下段の滝はそのままフリクションだけで登って行くことができる。登り切ると中段の滝に続くナメになる。周りは植林で,しかもほとんど人が訪れないようで,暗くて雰囲気は良くない。100mほどのナメを登り切ると中段の滝20mである。
- 茶屋滝 上段の滝
この滝は直登できない。左岸の樹林帯を登って行く。傾斜がきついので単独でなければロープを出したいところだが,立木を掴んで登り切る。中段の滝の落ち口に降り立ち,ナメを少し登るとそこが上段の滝35mだった。水量がもう少し多いと見栄えのするいい滝なのだろうが,やはり水量が少なく迫力に欠ける。上段の滝が本来の茶屋滝のようだ。下段から上段までを一つの滝とみなすと100m近くの落差になる。
どうやって登ろうかと考える。右岸は絶望的な岩嵓である。左岸も岩嵓だが,樹林帯が続いている。左岸の樹林帯を登っていき,嵓の弱点があればそこから登ることにしよう。樹林帯の最上部まで登って行くが,嵓に阻まれる。岩壁上の草付きを掴みながら命をかければいけないこともないだろうが,こんなところで命をかけることもない。撤退することにする。帰りは懸垂を1回交えてすんなり車道に戻った。
茶屋滝は上,中,下段合わせて落差100mほどにもなる美しいナメ滝で,車道からも近いので車道から見えるように整備すれば観光名所になりそうな美滝である。残念なことに水量が少ないので,規模の割に迫力に欠けるのが難点か。
その2 行動(ぎょうどう)の滝
- 茶屋滝
車で青蓮寺川西側の林道を行動川近くまで走る。行動川は青蓮寺川西側の緩やかな大地を流れる川で,青蓮寺川近くになってゴルジュの中を一挙に落ち込むのである。行動の滝はこのゴルジュに落ちる大滝であるが,県道からは小尾根の陰になってみることができない。また,滝の末端は青蓮寺湖に直接落ちているので下流側からのアプローチも難しい。
林道の分岐に車を停め,荒れた遊歩道を少し歩くと行動川である。このあたりの小川らしく川床はナメになっている。前回訪れた時よりも水量が多く,いい感じである。しばらく歩くと右岸に滝見台コースと書いた看板がある。前回はこれを見逃してしまったのだ。看板に従って踏み跡を辿ると,道は100mほど緩やかに登り,その後尾根を下り始めた。300mほど尾根を下ると滝見台という看板があるが,滝そのものは立木に遮られて良く見えない。名張市はこの滝を名所にするつもりで遊歩道を整備したのだろうが,あまりに険しすぎて来る人もなく今は打ち捨てられているようだ。
- 滝見台看板
看板からさらに急な尾根を下っていく。滝屋さんがつけたのであろう黄色テープが頻繁に付けられているので迷うことはない。真下に青蓮寺川左岸を走る県道が見えるようになって,テープは尾根山腹を巻き下るように指示している。踏み跡は,足を踏み外すと谷底まで一挙に落ちていきそうな急斜面を絶妙な感じで巻き降りている。トラバース好きなグーさんの好みそうなルートである。緊張しながら降りていくとようやく谷底にたどり着いた。
ここは行動の滝下段の滝45mの落ち口のようだ。落ち口に身を乗り出して滝の全容を見ようと試みるが,滝は何段かに分かれているようで,一番上の10mほどの部分が見えるだけでその下は見えない。谷を少し遡行するとすぐに中段の滝39mに出た。ゴルジュの中を一挙に落ちる豪快なナメ滝である。もう少し水量があるともっと豪快なんだろうけど,その点は少し残念。滝下で滝を愛でる。
緊張するトラバース道を尾根まで戻る。下段の滝も見に行きたい気がするが,今日はもう満腹感が強いので,このまま戻ることにする。尾根を行動川まで戻り,上段の滝4mの前で一休み。上段の滝は下二つに比べて小さいが,雰囲気のいい滝で,ナメでできた滝床に立って滝を眺めているとほっとする。
- 行動の滝 中段の滝
行動の滝は中段と下段の二つを一つの滝とみなすと100ほどの落差を持つ大滝となり,名張市が観光名所にしようとした気持ちもわからないではない。残念なことに中段の滝はゴルジュに遮られて上からも下からも見ることができない。見るには急な尾根を下るしかないのだ。下段の滝は車道から見えるのかどうか,今度機会があったら車道側から見てみよう。
帰りは10日ほど前に新装オープンしたばかりの榊原温泉湯の瀬でのんびりした。やっぱり沢登りと温泉は私の中では切り離せないようだ。
最後に,滝へのルートおよび落差はブログ「小幸の滝巡り」
https://ameblo.jp/wakayama-koyukiblog/e ... ?frm=theme および「えだ2の滝に逢いに行く」
https://ameblo.jp/eda-2/ を参照させていただいた,ここに記してお礼申し上げる。