【 日 付 】2021年10月30日(土曜日)
【 山 域 】鈴鹿
【メンバー】山猫
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】7:56鳴野橋〜9:03カクレグラ〜10:03タイジョウ〜10:53イブネ10:54〜11:32小峠〜鈴鹿の上高地(オフ会会場)14時過ぎ〜14:33コクイ谷出合〜15:38杉峠〜16:31林道終点(鉄橋)〜17:05鳴野橋
コロナ禍による緊急事態宣言も解除され、久しぶりのやぶこぎネットのオフ会の日となる。ハムストリング付着部炎を患った左脚の調子は先日の安倍奥での山行からするとかなり回復しつつあるように思われる。
この日は家内が車を使う予定があるので、公共交通機関を使ってアプローチすることを考える。最も早いのは八日市からタクシーで甲津畑に向かう方法だろう。甲津畑からはかねがねカクレグラからタイジョウ・イブネに縦走してみたいと思っていたので、この機にこのルートを辿ることを計画する。
琵琶湖線に乗ると鈴鹿の山並みのシルエットが綺麗に暁の空に浮かび上がっている。まもなく稜線の上から朝陽が顔を出す。近江八幡駅で近江鉄道に乗ろうとすると駅員が「本日は一日乗り放題のチケットを販売しています」というので、500円硬貨一枚を渡してワンコインスマイル切符なるものを購入する。というらしい。近江鉄道の乗車促進を図るキャンペーンらしく12/12までの金土日祝日のみの限定販売らしい。
八日市の駅前には前日に予約していたタクシーが一台だけ停まっている。朝の7時なら予約しなくてもタクシーがいるだろうとは思っていたが、どうやら予約しておいて正解だったようだ。
鈴鹿の「山と高原地図」に記載されているカクレグラに向かう登山道の起点となる渋川沿いの釣り堀でタクシーを降りてしまうが、これは大きなミスだった。渋川の水量は少なく、対岸に渡渉のはさほど難しくはなさそうだ。しかし地図を確認すると計画のカクレグラに登ろうと考えていたのは鳴野橋で渋川を渡り、林道を先に進んだところから尾根に取り付くルートであったことに思い至る。
再び林道に上がり鳴野橋を目指して歩き出すと、次々と車が追い越してゆく。橋が近づくとその手前から多くの車が路駐している。紅葉の季節だからだろうか、これほど路駐は見た憶えがない。結局、鳴野橋に到着したのは8時前であり15分ほどロスした計算になる。
登山者たちが続々と岩ヶ谷林道に出発していくようだが、鳴野橋を渡るものはいない。渋川の右岸に渡って林道を進むと道路脇から冷たい清水が流れ出しているので、ペットボトルの水を入れ替える。
カクレグラに向かう尾根の末端はコンクリートで固められた擁壁の法面となっているが、その手前に梯子があり、法面を乗り越える。すぐに自然林の尾根が始まる。最初のうちこそ急登ではあるが、尾根は次第に傾斜が緩やかになる。
尾根の展望地から振り返ると対岸の祝ヶ岳の尾根の錦繍が朝陽に輝いているのが見える。尾根を登るにつれてシロモジが増えたからだろう、樹々の黄葉が華やかに感じられる。山頂直下の急登を登るとシロモジのトンネルの先に小さな山頂広場が目に入る。
カクレグラの山頂から北に伸びる尾根を覗いてみるとこちらも快適にそうな樹林が続いている。山頂広場の東側にある松の樹に登ってみる。タイジョウとイブネが見えるが、かなり遠そうだ。そして意外とアップダウンがありそうだ。ここからイブネまで2時間以内を見込んでいたが、果たして計画が甘かったか。
山頂から南東に向かって尾根を進むと、朝陽の方向に進むことになる。まるで息づくかのように広くなったり細くなったりする尾根にはシロモジによる黄色の透過光に満ち溢れている。時折、橙色に色づくシロモジや楓が柔らかなアクセントをつける。
p962を過ぎて鞍部の手前では広い尾根は台地状の緩斜面となり、樹高の高い樹々の疎林が広がる。通り過ぎてしまうのが勿体無いように思うのだが、同様の思いをこの日は何度も憶えることになる。
鞍部を過ぎるとしばらくはやせ尾根が続く。タイジョウへの最後の登り、正面が嵓(くら)となっているので、右手から巻いて山頂に上がる。タイジョウからイブネに向かうと、ますます紅葉が華やかになっていくようだ。シャクナゲの藪のある小さなアップダウンを繰り返すと尾根の北側が大きく崩壊したガレ場に差し掛かる。
崩壊地からは眼下に佐目子谷が大きく広がるが、その錦繍がなんとも見事だ。右手にはイブネから銚子ヶ口に向かって伸びる稜線が澄んだ秋空を切り取っている。
このイブネからタイジョウにかけての稜線を前回歩いたのは3年前の晩秋、まだ小学5年生だった次男を伴っての山行であった。霜が降りたイブネの美しい苔を見せようと雨乞岳から周回してきたのだが、イブネの苔は前日に降った雪の下に埋もれ、展望はすべてガスの中。頭上に獣の咆哮のような荒々しい風鳴りの音を聞きながらタイジョウを目指したのだった。泣き言ひとつ云わず次男はよく歩いたものだと改めて思うのだった。その当時は健気であった次男も今はや登山には全く興味を示さない。
崩落地を越えたところから振り返ると歩いてきたカクレグラからタイジョウの錦繍の稜線のが目に入る。
崩落地を越えるとすぐにも尾根は大きく広がり、紅葉の樹林が広がるなだらかな尾根となる。すぐに杉峠からイブネに向かう登山道と合流する。鳴野橋の駐車場の混雑状況から予想してはいたがイブネに向かって数多くの登山者が歩いている。
イブネの山頂でもこれまで見たことがないような多くの人だ。山頂を素通りして北峰からクラシ方面を眺めるとこちらも数多くの登山達で賑わっているのが遠目に見て取れる。2年前もここを通過して鈴鹿の上高地に向かったのだが、当時とはまるで人の多さが違う。
イブネの北峰から小峠に向かって東に伸びる尾根を進むとクラシの西側斜面の錦繍も素晴らしい。尾根は途端に静かな雰囲気となり、何となく安心する。最初は疎林の広がる雰囲気の良い二重尾根だが、やがて尾根の急下降が始まる。
右手に小さな谷が現れたところで谷の左岸を下る薄い踏み跡があるにはあるが、これまで何度も通っているコースだが、この谷沿いを降りた覚えはない。二度ほど登り降りを繰り返してみるが、確かに踏み跡に沿って樹にテープが巻かれてはいる。
やはりルートがおかしいと思ってGPSで確認すると本来の登山道は左手の尾根を下降していくようだ。慎重に急斜面をトラバースし、尾根に合流したところで尾根上に明瞭な登山道が現れた。
順調に小峠にたどり着き、神崎川に向かって下降してゆくと数組の登山者達とすれ違う。神崎川の畔に降り立ち、対岸に渡渉して北上すると見覚えのある広地にリースのような円陣が目に入る。
てっきり始まっているかと思ったが、なんとか山日和さんの開始の挨拶に間に合ったようだ。いつしか空には雲が広がってすっかり曇り空になってしまったようだが、山日和さんが話し始めると途端に雲から光がこぼれ落ちては林の中を黄金色に輝かせるのだった。
今回はクロオさんからお誘いを受けたgreenriverさんにwinRiverさんが参加されておられるのが嬉しい。お二人の間に私の場所を空けて頂く。早速にもgreenriverさんが挽きたてのマンデリンのコーヒーを淹れて下さる。
いつも思うがこのオフ会においては驚くほと時間が過ぎるのが早い。カクレグラからイブネにまで要したのと同じ時間が瞬く間に過ぎてゆく。瞬く間に解散の時間が到来する。下山は甲津畑から杉峠を経て来られたSHIGEKIさんにご一緒させて頂くことをお願いする。
神崎川を上流に遡ってゆくと広々とした谷では色とりどりの紅葉が美しい。青碧色を帯びた淵に通りがかるととSHIGEKIさんはすかさず「あそこに二匹」。SHIGEKIさんが指差したあたりに目を凝らすと確かに水の中を泳ぐ魚の姿を追うことが出来る。
杉峠に向かって登ってゆくと前方で休憩しておられる男性がおられる。矢問さんであった。同じく甲津畑から来られたというのでてっきり杉峠からかと思いきや雨乞岳から七人山を越えてこられたというから驚きだ。
杉峠が近づいき、鉱山跡の石垣が現れると、草木のない段丘にひと張りのテントがある。谷の右手では西陽を浴びた御在所岳が明るく輝いているのが目に入る。SHIGEKIさんには先に行って頂いて登山道のすぐ近くで湧き出ている水を汲む。すぐにも追いつけるかと思っていたが、SHIGEKIさんはなかなかの健脚で、杉峠まで追いつくことはできなった。
立ち枯れの大きな杉の樹が聳える杉峠が近づくとテン泊装備でイブネに向かう登山者が登ってゆく姿が目に入る。オフ会でも話が出たが、SHIGEKIさんが午前中に杉等に向かう千種街道ですれ違った登山者から聞いたところでは昨夜のイブネではテントが30張り近かったとのこと,
今夜は土曜日の夜なのでさらに多いことだろう。
SHIGEKIさんは岩ヶ谷林道の終点まで電動アシスト自転車で来られているので、杉峠からは私一人で先に行かせて頂くことにする。峠からしばらくの間は色ついた夕陽の生で紅葉の樹林が琥珀色に輝いて見える。この杉峠からの千種街道を下るのは久しぶりだが、旧街道の風格を感じさせる苔むしたナラの立ち枯れの大樹が立ち並ぶ様は見飽きることがない。
登山道が山の陰に入ると透過光はなくなるが紅葉のコントラストが増すようだ。林道終点の近くの小屋が近づくと山から水を引いているホースから水が噴き出しているので、再び水を汲み直す。
鉄橋の近くにはSHIGEKIさんのものと思われる電動自転車が杉の樹の根本にあった。岩ヶ谷林道を足早に歩くと、前方を軽快に歩く男性の姿が目に入る。見覚えがあるその後ろ姿はなんとokuさんであった。オフ会の会場からイブネを経由して来られたらしい・・・恐るべし。
イブネはやはりテント場と化しており、草地や苔の上にテントを張る人が多いようだ。オフ会においてもSHIGEKIさんが鋭くコメントされておられたがトイレは看過出来ない問題だろう。最近、私の知人がイブネの山頂近くで草で用を足そうとするとどう見ても人のものと思われる糞が二人分ほどあったとのこと。
鳴野橋の登山口まではokuさんと色々とお話をしていたお陰で非常に短く感じられた。林道の入口でokuさんとお別れするとまもなく電動アシスト自転車に乗ったSHIGEKIさんが帰還する。SHIGEKIさんの車に乗り込むと瞬く間に夜のとばりが降りてくるのだった。
久しぶりに紅葉の鈴鹿の中でやぶこぎネットの人達との再会を楽しんだ一日だった。また次回も無事開催されることを願いつつ、京都への帰路についた。