愛媛県の片隅、水系で言えば高知県(なんといっても四万十川の源流とうたってるくらいなので)だろとツッコミを入れたくなるその場所は、その名も高き「滑床渓谷」。住所はなぜか宇和島市。最後は瀬戸内海見下ろす分水嶺の稜線に詰め上げるのだけど素直に考えればそこから見下ろす先が宇和島市。そんな不思議なところへ行ってきた。
【日付】2021年7月〇日(コロナがうるさいので〇日でお許しください)
【山域】四国南予山地(宇和島市)
【メンバー】あきんちょ・あめちゃん
【天候】曇り時々晴一時小雨
【ルート】滑床渓谷駐車場(9:10)~雪輪の滝(9:50)~千畳(10:50)~奥千畳(12:20~12:50)~猪のコル(14:40)~八面山(15:20)~熊のコル(15:55)~駐車場(18:30)
実は何回か来てるところ。あまりにも良いところだったので、あきんちょ隊長を誘っての再訪となった。朝駐車場に着いた頃はときおり小雨パラパラ。どうしようかと悩んでると隣りにも沢装束の女性二人連れが。情報交換してると、沢のガイドブックにも出てるとのこと。『そうなんだ、事前調査が不十分だったな』と反省したけど、家の本棚の「関西起点 沢登りルート100」のラストにしっかり載ってました。おまけにかの『日本百名谷』にも。ドンマイ。彼女たち張り切って出発したので、朝寝を決め込んでいるあきんちょを揺り起こして我々も出発。
- 上部概念図。クマやらイノシシやらテキトーかと思ったらいわれがあるそうです
- 概念図.jpg (84.42 KiB) 閲覧された回数 922 回
ここは横に観光道もついているので、最初はそちらをタラタラと。途中で二人組の別パーティーが滑って遊んでいたのでそちらも追い越す。なんだかんだで、名物『雪輪の滝』に一番乗り。ここは滑っておかないと。さっきの別パーティーも追いつき、互いに譲りながら滑ることに。オレは1回で満足至極でしたが、物足らない隊長、『もう一回いい?』『もう1回いい?』と結局3回スライダーでご満悦。先も長いので急ぎます。
- 雪輪の滝。かなり下から滑りましたが、それでも高さは20mくらいあるかも
この渓谷の素晴らしいところは、最初からほぼ最後までナメが続くこと。ナメで名をはせる渓谷は多々あれど、ここはナメ長さナメ気持ちよさ日本一だ(※個人の感想です)。合わせて、この渓谷では、廃トロッコ軌道、発電所跡、立派な炭焼き跡など、オタクを喜ばすイニシエノ生活跡が随所にちりばめられていて、退屈することがない。
ほどなく千畳敷。川幅いっぱいのナメの好きなところをたがいに歩く。ナメ歩きは飽きることがない。
- ナメナメ。ひたすら続きます
- ナメ.jpg (92.97 KiB) 閲覧された回数 922 回
やがて左岸に古い石垣が見える。水力発電所跡だ。
- 発電所石垣。大正時代と言われています。とにかくきれい
- 発電所跡.jpg (117.17 KiB) 閲覧された回数 922 回
この辺の木材は山を越えて瀬戸内側宇和島に搬出されていたのだが、大正時代からはここで発電した電力でインクラインを動かし峠まで運んでいたそうだ。やがて右岸に石垣(川からは見えにくい)が。コチラは水力製材所の跡だ。やがてメインデッシュとも呼べる、両岸から、石門のように迫ってくるのがトロッコ橋脚跡だ。よく見ると、足元には直径20センチくらいの穴が穿ってある。橋を補強するために使った脚を挿したところだろう。そういう目で見ると、左岸にも、そして右岸にもトロッコの軌道跡と思われる杣道みたいなものが残っている(下流ではそれがハイキング道になっている)。奥千畳の辺りでは、レールも残っている。持ち帰るには長すぎてムリ。ちなみに犬釘を探したが一切見つけることはできなかった。かなり崩れてきていることが原因なのかどうかは不明。
奥千畳の上流は二股分岐になっていて手ごろな休憩場所だ。まったり昼休憩をしていると駐車場で話をした女性二人パーティーが追い付いてきた。
「上には行かないんですか?」
「い、いぇっ、行くつもりですよ・・・」
そんなに疲れ果てたようにみえたのかしらん?
~~~~~
奥千畳では想い出がある。数年前ここまで歩いてくると、老齢(失礼!)の二人組が同じように休んでいた。
「こんにちわぁ」『下から歩いてきたのかなぁ。だとしたらすごいなぁ』と思い挨拶をし、お話をしていると、
「君はこの本を知っているのか?」とおもむろに一冊の本を見せてくれた。
『滑床の自然と探勝 大谷彰(著)』
「おおこれは素晴らしい、チョット見せてください」
「うむ、これはここ滑床のバイブルぢゃ。とくとご覧あれ」
その場であわてて読ませていただいた。そしてその日の帰りに役場に駆け込み相談すると手厚く話を聞いてくださりなんと手にすることができた。
それがここ滑床をますます好きになったきっかけのひとつだ。
~~~~~
彼女たちを見送り我々も重い腰を上げて出発。ところどころに残された立派な炭焼きの石窯跡。これらで作られた炭も峠越えをして宇和島に運んでいたそうだ。
http://www.i-manabi.jp/system/regionals ... /view/4925
やがて二股ここを左(一ノ俣)(ちなみに下流に二ノ俣がある。上流から開発された名残か)にとり、猪のコルを目指す。水も涸れてきて、最初の一滴になりそうなところで右の尾根にとりつき少し登ると、鬼が城山山頂を避けてトラバースしてきた作業道(登山道)に乗っかる。これを左にとりその先の鞍部が猪のコルだ。天気も回復してきて、眼下には瀬戸内の多島海美が広がる。そのさき西の水平線は九州だろう。
- 見下ろす瀬戸内海。ゴールした稜線から海?不思議な感覚です。
- 多島美.jpg (61.04 KiB) 閲覧された回数 922 回
稜線は瀬戸内側斜面は殆どが人工林だけど、滑床側にはブナの天然林もありしばし気持ちが良い尾根歩きを楽しむことができる。
- ほんの少しだけど、こちらもイニシエの香りが
- ブナ林.jpg (111.97 KiB) 閲覧された回数 922 回
そんな中よくよく見ると、遠く南西の稜線に風力発電の風車が見える、数えただけでも10基以上ある。今は風力発電には敏感だ。我が愛媛の端っこでもこんなことが・・・少々やるせない気持ちになる(南愛媛風力発電所(JPOWER))。チンタラ歩いていると、前から登山者が来た。聞けば宇和島側からは林道で上がってくることができ、手軽に稜線散歩ができるそうだ。
「あの風車は・・・?」
「風車と言ったら大野ヶ原かなぁ(※注・・昔から四国カルスト大野ヶ原に観光用のシンボル的なものとして風車がある)・・・」
気になるヒトと気にならないヒトの温度差を感じた。
気持ちの良い稜線散歩のところどころにクイズ問題がある。めくると正解が書いてある。思わず一つずつをめくりながら進んでしまう。
「隊長、少々急がないと、暗くなります」
- なかなか難問多し。これの答えは・・忘れてしまった
- クイズ.jpg (87.97 KiB) 閲覧された回数 922 回
熊のコルに到着、ここからは下り一辺倒だ。最後の大休憩。マッタリグッタリしてると、例の女性二人組パーティーが後ろから。そうか彼女たちは鬼が城山も経由してきたのか、スゲェナァ。
「私たちはもうしばらく稜線歩いて三本杭の近くまで行って降りていきます」
『アアソウデスカ』(笑顔で)「元気ですねぇ」
シャカシャカ登って行った彼女たちを見送り、今日何度目かの重い腰をあげる。
ここから奥千畳に駆け降り、滑床渓谷を巻き戻すように反芻した。
駐車場で着替えていると彼女たちも下りてきた。風呂と今宵の宿は今から探すそうだ。
我々は今治の基地まで約3時間のドライブだ。
ナメるようにナメナメをナメつくした一日が終わった。
あめちゃん
愛媛県の片隅、水系で言えば高知県(なんといっても四万十川の源流とうたってるくらいなので)だろとツッコミを入れたくなるその場所は、その名も高き「滑床渓谷」。住所はなぜか宇和島市。最後は瀬戸内海見下ろす分水嶺の稜線に詰め上げるのだけど素直に考えればそこから見下ろす先が宇和島市。そんな不思議なところへ行ってきた。
【日付】2021年7月〇日(コロナがうるさいので〇日でお許しください)
【山域】四国南予山地(宇和島市)
【メンバー】あきんちょ・あめちゃん
【天候】曇り時々晴一時小雨
【ルート】滑床渓谷駐車場(9:10)~雪輪の滝(9:50)~千畳(10:50)~奥千畳(12:20~12:50)~猪のコル(14:40)~八面山(15:20)~熊のコル(15:55)~駐車場(18:30)
実は何回か来てるところ。あまりにも良いところだったので、あきんちょ隊長を誘っての再訪となった。朝駐車場に着いた頃はときおり小雨パラパラ。どうしようかと悩んでると隣りにも沢装束の女性二人連れが。情報交換してると、沢のガイドブックにも出てるとのこと。『そうなんだ、事前調査が不十分だったな』と反省したけど、家の本棚の「関西起点 沢登りルート100」のラストにしっかり載ってました。おまけにかの『日本百名谷』にも。ドンマイ。彼女たち張り切って出発したので、朝寝を決め込んでいるあきんちょを揺り起こして我々も出発。
[attachment=6]概念図.jpg[/attachment]
ここは横に観光道もついているので、最初はそちらをタラタラと。途中で二人組の別パーティーが滑って遊んでいたのでそちらも追い越す。なんだかんだで、名物『雪輪の滝』に一番乗り。ここは滑っておかないと。さっきの別パーティーも追いつき、互いに譲りながら滑ることに。オレは1回で満足至極でしたが、物足らない隊長、『もう一回いい?』『もう1回いい?』と結局3回スライダーでご満悦。先も長いので急ぎます。
[attachment=5]yukiwa.jpg[/attachment]
この渓谷の素晴らしいところは、最初からほぼ最後までナメが続くこと。ナメで名をはせる渓谷は多々あれど、ここはナメ長さナメ気持ちよさ日本一だ(※個人の感想です)。合わせて、この渓谷では、廃トロッコ軌道、発電所跡、立派な炭焼き跡など、オタクを喜ばすイニシエノ生活跡が随所にちりばめられていて、退屈することがない。
ほどなく千畳敷。川幅いっぱいのナメの好きなところをたがいに歩く。ナメ歩きは飽きることがない。
[attachment=4]ナメ.jpg[/attachment]
やがて左岸に古い石垣が見える。水力発電所跡だ。
[attachment=3]発電所跡.jpg[/attachment]
この辺の木材は山を越えて瀬戸内側宇和島に搬出されていたのだが、大正時代からはここで発電した電力でインクラインを動かし峠まで運んでいたそうだ。やがて右岸に石垣(川からは見えにくい)が。コチラは水力製材所の跡だ。やがてメインデッシュとも呼べる、両岸から、石門のように迫ってくるのがトロッコ橋脚跡だ。よく見ると、足元には直径20センチくらいの穴が穿ってある。橋を補強するために使った脚を挿したところだろう。そういう目で見ると、左岸にも、そして右岸にもトロッコの軌道跡と思われる杣道みたいなものが残っている(下流ではそれがハイキング道になっている)。奥千畳の辺りでは、レールも残っている。持ち帰るには長すぎてムリ。ちなみに犬釘を探したが一切見つけることはできなかった。かなり崩れてきていることが原因なのかどうかは不明。
奥千畳の上流は二股分岐になっていて手ごろな休憩場所だ。まったり昼休憩をしていると駐車場で話をした女性二人パーティーが追い付いてきた。
「上には行かないんですか?」
「い、いぇっ、行くつもりですよ・・・」
そんなに疲れ果てたようにみえたのかしらん?
~~~~~
奥千畳では想い出がある。数年前ここまで歩いてくると、老齢(失礼!)の二人組が同じように休んでいた。
「こんにちわぁ」『下から歩いてきたのかなぁ。だとしたらすごいなぁ』と思い挨拶をし、お話をしていると、
「君はこの本を知っているのか?」とおもむろに一冊の本を見せてくれた。
『滑床の自然と探勝 大谷彰(著)』
「おおこれは素晴らしい、チョット見せてください」
「うむ、これはここ滑床のバイブルぢゃ。とくとご覧あれ」
その場であわてて読ませていただいた。そしてその日の帰りに役場に駆け込み相談すると手厚く話を聞いてくださりなんと手にすることができた。
それがここ滑床をますます好きになったきっかけのひとつだ。
~~~~~
彼女たちを見送り我々も重い腰を上げて出発。ところどころに残された立派な炭焼きの石窯跡。これらで作られた炭も峠越えをして宇和島に運んでいたそうだ。
http://www.i-manabi.jp/system/regionals/regionals/ecode:2/34/view/4925
やがて二股ここを左(一ノ俣)(ちなみに下流に二ノ俣がある。上流から開発された名残か)にとり、猪のコルを目指す。水も涸れてきて、最初の一滴になりそうなところで右の尾根にとりつき少し登ると、鬼が城山山頂を避けてトラバースしてきた作業道(登山道)に乗っかる。これを左にとりその先の鞍部が猪のコルだ。天気も回復してきて、眼下には瀬戸内の多島海美が広がる。そのさき西の水平線は九州だろう。
[attachment=2]多島美.jpg[/attachment]
稜線は瀬戸内側斜面は殆どが人工林だけど、滑床側にはブナの天然林もありしばし気持ちが良い尾根歩きを楽しむことができる。
[attachment=1]ブナ林.jpg[/attachment]
そんな中よくよく見ると、遠く南西の稜線に風力発電の風車が見える、数えただけでも10基以上ある。今は風力発電には敏感だ。我が愛媛の端っこでもこんなことが・・・少々やるせない気持ちになる(南愛媛風力発電所(JPOWER))。チンタラ歩いていると、前から登山者が来た。聞けば宇和島側からは林道で上がってくることができ、手軽に稜線散歩ができるそうだ。
「あの風車は・・・?」
「風車と言ったら大野ヶ原かなぁ(※注・・昔から四国カルスト大野ヶ原に観光用のシンボル的なものとして風車がある)・・・」
気になるヒトと気にならないヒトの温度差を感じた。
気持ちの良い稜線散歩のところどころにクイズ問題がある。めくると正解が書いてある。思わず一つずつをめくりながら進んでしまう。
「隊長、少々急がないと、暗くなります」
[attachment=0]クイズ.jpg[/attachment]
熊のコルに到着、ここからは下り一辺倒だ。最後の大休憩。マッタリグッタリしてると、例の女性二人組パーティーが後ろから。そうか彼女たちは鬼が城山も経由してきたのか、スゲェナァ。
「私たちはもうしばらく稜線歩いて三本杭の近くまで行って降りていきます」
『アアソウデスカ』(笑顔で)「元気ですねぇ」
シャカシャカ登って行った彼女たちを見送り、今日何度目かの重い腰をあげる。
ここから奥千畳に駆け降り、滑床渓谷を巻き戻すように反芻した。
駐車場で着替えていると彼女たちも下りてきた。風呂と今宵の宿は今から探すそうだ。
我々は今治の基地まで約3時間のドライブだ。
ナメるようにナメナメをナメつくした一日が終わった。
あめちゃん