【 日 付 】2021年6月5日(日曜日)
【 山 域 】江若国境
【メンバー】kitayama-walkさん、山猫
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】木地山7:29〜9:37百里ヶ岳9:43〜10:25木地山峠〜10:46桜谷山11:25〜12:11与助谷山12:14〜13:01駒ヶ岳13:13〜13:21国境尾根出合13:22〜13:48駒ヶ池13:58〜15:03木地山バス停〜15:10木地山
kitayama-walk(以下KWさん)は翌日から九重への山行を控えておられるとのことで、軽めの山行にということで百里ヶ岳〜若狭駒ヶ岳ヘの縦走となる。
朽木を過ぎて木地山に向かうと、谷間には低い雲が立ち込めている。ということは朝の気温が低かったということだろうか。確かにいつになく涼しく感じられるようだ。道路脇では満開のコアジサイがまるで生垣のように道路を飾っている。
木地山はトイレの前に停める場所はあるのだが、車を停めるスペースが少ないので、いつも何となくここに車を停めることが躊躇される。集落を通り過ぎて与助谷林道入口の広地に車を駐めて出発する。木地山の集落では紅紫色のジギタリスの花が多く目立つ。果たしてこんなにジギタリスの花が多かっただろうかと思う。この草から強心薬が作られたことで有名ではあるが、鹿が食べない毒草なので繁殖しやすい。
百里ヶ岳の東尾根はほぼ並行に二本の尾根が走るが、この季節は明瞭な登山道がつけられている南側の尾根を選択する。なだらかな尾根には早速にもブナが現れる。
p723への急登に差し掛かると踏み跡は薄くなるが、斜面には真新しいトラロープがつけられている。斜面にはブナの大樹が次々と現れる。下生もなく、樹々の間隔が広いブナ林の美しさは急登のしんどさを感じさせない。
P723のが近づき急登が終わると、なだらかな台地状のピークの手前には二本並んだブナの樹が目を惹くところだ。この樹々は横から見ると東側の斜面に向かって枝を差し伸べているように見えるが、振り返ると二本の樹が均整よく枝を広げている。
やがて樹木のない草原に飛び出すと、イワヒメワラビの繁茂が始まっている。途端に周囲の展望が大きく開ける。南側には比良の山々の展望が大きく広がり、百里ヶ岳から地蔵谷峰へと続く尾根の彼方には蛇谷ヶ峰から武奈ヶ岳にかけての奥比良の稜線が見える。比良の上空でも高い雲の間から蒼空がのぞいている
振り返ると視界に大きく飛び込んでくるのは野坂の山々だ。驚いたことに三重獄の左手の彼方には残雪を纏った白山が見える。この尾根からは過去に何度も野坂山地の好展望を眺めたが、その彼方に白山が見えた覚えがない。一年の中でもとりわけ空気中の水分の高そうな時期ではあるが、意外にも空気が澄んでいるようだ。そういえば、確かに空気がカラッと気持ちよい。琵琶湖の方向を眺めると白く霞んだ朝靄の上に島のように伊吹山が浮かび上がっている。
琵琶湖の方向を眺めると白く霞んだ朝靄の上に島のように伊吹山が浮かび上がっている。KWさんは「世の中にはこの光景からどこの山に登っているのか正確に同定することが出来る人がいるんですよね〜」と言いながら、早速にも写真をfacebookにあげられたようだ。すぐにもタンボボさんから「池原山の右手に伊吹山が見えていますね」とのコメントがあり、我々の現在地を正確に同定される。
百里ヶ岳からは北西尾根に入るとすぐに北側に桜谷山の展望が開ける。しばらくはブナの快適な樹林が続くが、尾根が北に向きを変えると植林の中へと入ってゆく。祠のある木地山峠を過ぎて再び桜谷山に向かって登り返すと、ブナの樹が。昨年の夏にも上根来からp820へと登り、桜谷山に周回したのだが、その時は本来は落葉の季節にはまだ早いにも関わらず山頂一帯のブナの樹々が一様に葉を落としていたで、ブナの樹々がどうなっているのか心配していたのだったが、こうして青々と若葉を生い茂らせている様子を見ると一安心だ。桜谷山では好展望を眺めながら早めではあるが行動食でのランチ休憩をとる。
桜谷山から与助谷山の間はアップダウンの少ない稜線の随所に好展望のイワヒメワラビの草原やブナの大樹が現れ、この稜線の中でも白眉とも云うべき快適なところだ。桜谷から稜線を眺めた時には遠くに感じらた与助谷山にすぐについてしまうように思われた。与助谷山を過ぎるとしばらくは山毛欅の大樹もすくなくなり、南側斜面から植林が登ってくる。
若狭駒ヶ岳に到着すると山頂の北東には再び野坂山地の展望が大きく広がり、三重獄がかなり近くに感じられる。北東の方角には相変わらず白山の姿が見えているが、かなり雲が増えてきたようで、琵琶湖の彼方の鈴鹿の山々はすっかり見えなくなってしまっている。
明神池に向かうと1組の男女のカップルに出遭う。この日唯一出遭った登山者であった。若狭駒ヶ岳からこの明神池にかけての稜線もブナの樹々が素晴らしいところだ。以前、歩いた時はやはり6月の梅雨の季節ではあったが、10m先が見えるか見えないかという濃霧の中であり、この日のからりとした天気はまるで違う景色のように思われる。
樹高の高いブナの樹々が立ち並ぶ壮麗な林を進むと尾根が広く二重山稜になったところで、先の方からゲコゲコと賑やかな蛙の鳴き声が聞こえてくる。池のほとりに立つとやはり以前に訪れた時に比べて水の量が少なくなった印象がある。比良の長池でも同様の印象だが、近年の冬の降雪が少ないせいなのだろうか。
池の周りの樹々には多くのモリアオガエルの卵がまるで果実のように産み付けられている。田んぼのカエルもそうであるが、ふと一斉に鳴き声がやんだかと思うととまた再び一斉に鳴き始める。
池の周り巡ると駒ヶ池と記された標柱がある。元来は明神池と呼ばれ、明神池と記された標柱もあったのをその代わりにこの駒ヶ池と記された標柱が建てられたらしい。明神池とい名称はそれが本来、雨乞いの対象であったことを意味するのだろう。果たして駒ヶ池と池の名称を変えることが適切なのだろうかと疑問に思う。
池を後にすると木地山に焼尾谷の東谷を下降するルートを選択する。最初は尾根の急下降である。谷に降り立ったところで上流の左俣を見ると、カツラの巨樹が目に入る。谷を見つめるその迫力ある佇まいに惹きつけられる。
巨樹を目指して谷を登るが、早速にもKWさんが足元に蠢くヒルに気がつく。もしやと思って足元をチェックすると靴下の上からまさに吸血しようとしているヒルが一匹、そしてかなりの大きなのヒルが勢いよく私の靴を這い上がろうとしているところであった。
この斜面は相当にヒルが多いようだ。「ヒル下りのジョニー」を二人の足元にふりかける。折角、カツラの樹の近くまで来たので、その近くまで寄ってKWさんに写真を撮って頂くが、次々とヒルが寄ってくるので、早々に退散することにする。
谷はよく歩かれているルートだけあって、さすがに踏み跡は明瞭で、渡渉も難易度の高いものはない。沢沿いにはいくつもの苔むした炭焼き窯の跡が現れる。綺麗なV字の谷には自然林が続き、ここは改めて秋の紅葉の季節に来てみたいものだと思う。やがて谷が平坦になると登山道沿いにも一本の根元から株立ちのする大きなカツラの樹が現れる。こちらも立派な大樹ではあるのだが、上流のカツラの大樹を見たあとではその印象が薄れてしまった感じがある。
麻生川にかかる小さな鉄橋を渡ると、トイレの前には一台の名古屋ナンバーの車が停められていた。先ほど駒ヶ岳の手前でお遭いした方々のものだろう。
木地山から再び朽木に向かったところで道路脇のコアジサイの写真を撮るために車外に出るとあたりには濃厚なコアジサイの甘い香りが漂っていた。朽木に寄り道して久しぶりにてんくうでゆっくりと温泉に浸かる。コロナ禍で営業を休止していたが、つい最近、再開したそうだ。
京都への帰路ではすっかり曇り空が広がっていたが、天気はわからないものである。KWさんとお別れすると、京都市内では燃えるような夕焼け雲が広がっていた。
※ kitayama-walkさん 宜しければ白山の写真をお願いします