【日付】2021年3月24日(水)
【山域】越美国境/笹ヶ峰(届かず)
【ルート】広野ダム~大河内林道~ロボットP~co1270P(ランチ)~源平谷山~広野ダム
【天候】晴れ
【メンバー】単独
もう1ヶ月以上にもなる。まだ、近くのお山に雪が残っていたころの山行です。とっくに賞味期限切れであることは自覚しておりますが、なんせ、因縁のお山なんで、記録(軌跡?)は残しておかないと…、と掲示板の隅にでも載せてもらいたく、キーを叩いております。お赦しを<m(__)m>
約束の地は遠かった…。
「もう雪がなくなる…」「賞味期限切れ」と、みんな言ってる。昨年より雪が多いと思っていたのは錯覚だったのか…? お彼岸も過ぎて春の陽光に包まれているのに、まだ訪ねていない。「必ずまた逢いに来るからね~!」と約束した山。それから10年も経ってしまった。「悪夢」のお泊り山行は、さらにその2年前だ。
「賞味期限」が切れても、熟成の味も捨てがたいかもしれない。天気予報がお日様マークの24日、今しかないチャンス。前日の夕刻発で早朝から歩き出せば登頂は可能だろう。
夜明け前の広野ダム湖畔道路。情報にあったように二ツ屋導水施設までの道路は完全除雪されている。施設前の広場に駐車。6時前になるとベールを剥ぐように辺りが明るくなる。10年前は反時計回りで美濃俣丸から笹ヶ峰へ向かった。しかし、もうそんな元気はない。今回は逆に日野川沿いの林道を歩き源平谷山からの尾根尻を回り込んで、夏道もあるという北西の尾根からco1050m(白谷山)へ出て、ロボット峰へ向かうルートを予定している。
日野川に沿う大河内林道は、さすがにもうデブリの「滑り台」越えはないが、落石、倒木の類は放置されたまま。右手の尾根を見上げながら取付き点を探す。大河内集落跡は放置されたままの家屋や廃トラックなど暮らしの匂いを残す。「ゴミステルナ」のプレートや子グマが立木に登って監視?してたり…。
足許に立派な「通行手形」が忘れられていたので立て掛けて記録保存しておいた。
そろそろかな?と思っているうちに砂防堰堤を越え、林道がヘアピンカーブ。そして行き止まりだ。ありゃ、行き過ぎた。引き返し、堰堤の下方に「白谷山登山口」の標示を発見。やれやれだ。
ところが、30cmほどの板橋が架かっているが、表面は霜で白い! そっと足を載せてみるがツルンツルンでとても渡る気になれない。
河原を上流に歩いて渡渉可能点を探すが、迸る雪解け水に拒否される。
出鼻をくじかれモチベーションはガタ落ちだが、せっかくここまで来たのにおめおめと退散するわけにもいかない。人間追い詰められたらなんでもできる気になる。橋を両手両足で抱え込み匍匐前進風に進む。レンジャー隊員がロープにしがみついて綱渡りするやり方だ。またはモノレール方式。公衆の面前では、とてもこんな恰好は見せられないのだが…。
対岸に辿りつき安堵の休憩。なんと駐車地出発から2時間もかかっている。こんな調子で山頂まで行けるのか?不安にもなってくる。
小沢に架かる苔むした橋を慎重に渡って、疎林の斜面から尾根に出る。雪はほとんどないのでスノーシューは背中。ブナとミズナラが仲良く寄り添う。・722はいつの間にか通り過ぎ、左側の樹間に笹ヶ峰が姿を見せてくれる。co900m付近でようやく残雪がつながり、シューを履く。
30分ほどで急な尾根は終わりco1050mの白谷山へ。ここにもシンボルブナが待っていてくれた。
山と言ってもピークがハッキリしているわけではない。広く平坦になった尾根からは笹ヶ峰から美濃俣丸へと連なる県境稜線の峰々が一望。目の前のロボット峰はまだ遠いのか、すぐそこなのか…、判断に苦しむ。正午までに到達できるだろうか? これからの行程を考えながら近づいてくるピークを越えて行く。
何度もニセピークに騙されながら、これぞ!と思うピークをロックオンした時にはすでに12時を過ぎている。
山頂はササ藪が顔を出し、「賞味期限」寸前の状態だが、雪を残したまま春を待つ周辺の山々の眺望は絶賛に値する。県境尾根を南に辿れば美濃俣丸から三周ヶ岳のピーク。ずっと奥には伊吹山のドームも霞む。
北側には夏小屋丸から笹ヶ峰がすぐそこだ。とはいえ、今から行ってたら闇下山になるのは必至だろう。背景には純白の白山も視界に入る。デジカメの限界で鮮明な写真が撮れないのが残念。
ピークを下り、南東の風を避けて夏小屋丸手前のco1270mの展望地でランチにする。10年前の「約束」が果たせないのは心残りだが、笹ヶ峰はここから拝むだけで許してもらおう。
暖かい日差しの中でマッタリと1時間、下りの足はアイゼンに履き替えて立ち上がる。ロボットピークは手前で右手をトラバース。息を切らせて登ってきた急斜面も、緩んだ雪面を蹴り込みながらの下りは楽ちんだ。ランチ場から1時間足らずで白谷山。ここからは源平谷山の西尾根を下る。
源平谷山まではヤブが出ているため、思ったより体力と時間がかかる。ピークからは落葉で埋まる急な尾根をかすかな踏み跡を辿りながら下って行く。
大河内川と前谷の沢音が聞こえ出すとゴールは近い。合流点に建つ立派な石製の鳥居の横を下って河原に出るのだが、そのあとが大変だ! 10年前は前谷を渡渉して雪壁を乗り越えて対岸に上がった記憶がある。しかし今回は雪壁はないがこの水量!雪解け水が迸る。下流の前谷橋に出るには渡るしかない。ストックで支えながら流速に逆らって一歩ずつ足を運ぶ。もちろん靴の中は水浸しだ。ここさえ越えれば林道を下るだけなので、がまんがまん。
渡りきり、残雪を踏んで河原を回り込むと林道が左岸に移る前谷橋が目に入る。左手の斜面から橋の南詰に降り立つ。ヤレヤレだ。
林道を40分歩いてまだ明るさが残る二ツ屋施設の駐車場に6時過ぎ。辺りに闇が迫ってくる。
当初予定の「約束の山」は、あと一歩で眺めるだけになった。「また、いつかきっと…!」と、もう約束はできない。それだけに、今回は貴重な決断だったと思う。
しかし、春が近付く頃になるとレポを読み返し、また足を向けたくなるのかもしれない。そんな自分に少しだけ期待してはいるのだが…。
~びわ爺