【野坂】庄部谷山の山毛欅林よ永遠に

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yamaneko0922
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登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39

【野坂】庄部谷山の山毛欅林よ永遠に

投稿記事 by yamaneko0922 »

【 日 付 】2020年6月6日〜7日
【 山 域 】 野坂山地(若越国境〜江若国境)
【メンバー】山猫単独
【 天 候 】1日目;曇り、2日目;晴れ
【 ルート 】
(1日目)粟野駅8:06〜8:26野坂岳登山口〜9:51野坂岳9:55〜11:11芦谷山11:20〜11:57ca820mピーク12:37〜13:33庄部谷山〜14:25甲森谷下の出合〜15:14甲森谷上の出合〜16:06ca860mピーク16:25〜17:25黒谷右俣
(2日目)黒谷右俣5:31〜6:43松屋7:10〜9:41大日岳〜10:19大日尾根分岐〜11:14大御影山〜12:22近江坂分岐12:36〜12:59抜土〜13:48白石平14:00〜14:10大谷山14:18〜14:32眺望尾根14:33〜16:49マキノ高原


この週末の土日はいずれも家内の都合が悪く、二日間続けて単独行の山行となるので、久しぶりにテン泊山行を計画する。とりあえず向かう先は芦谷山〜庄部谷山の稜線だ。ヤマレコのユーザーのnaojiroさんのレコでこの芦谷山から庄部谷山にかけての稜線一帯に大規模の風力発電の計画が推進されることを知る。しかも、その風力発電の計画を推進するのがgreen power investment社(G.P.I.社)という。余呉トレイルの栃ノ木峠から下谷山にかけて林道を作り、ここに大規模な風力発電の計画を進めている会社である。よくよく考えてみると庄部谷山のすぐ西側の新庄には大規模な変電所があり、また関西方面への送電線の分岐点でもあるのでここに風力発電所を作るのは工事と送電の観点からすれば都合が良いのであろう。

https://greenpower.co.jp/2020/05/26/inf ... hairyosho/

この芦谷山〜庄部谷山の稜線は一昨年の晩秋に山日和さんに出遭ったところで、私にとっては格別な思い出があるところでもある。ここの稜線の山毛欅の巨樹の回廊は並大抵のものではない。風力発電のための風車が建設されるとなると尾根上には下谷山と同様の林道が作られることとなり、見事な山毛欅の林が失われてしまう日はそう遠くないだろう。少しでもこの山毛欅の樹林の印象を目に焼き付けるべく、この稜線の再訪を考える。この稜線のみであれば日帰りが可能ではあるが、敢えてテン泊の重装備で臨んだのは、以前SHIGEKIさんのrepでもご紹介のあった黒谷のピースサインでテントを張ってみたいという念願を叶えるためでもあった。

【1日目】

京都駅から始発のサンダーバードに乗ると敦賀駅で小浜線に乗り継ぐことが出来るのだが、この日は間引き運転でサンダーバードの始発は運行されないらしい。しかし、代わりに始発の新幹線に乗り、米原経由で敦賀までたどり着くと、サンダーバードを使った場合より早く、東舞鶴行きの始発の小浜線に乗車することが出来る。

粟野の駅で下車して、いこいの森の駐車場に到着して驚いた。土曜日の朝なのでキャンプ場には人の気配が感じられないにも関わらず、広い駐車場には20台以上の車が停められている。登山道を登り始めるとすぐにも下山して来られる方がおられる。挨拶のついでに「お早いですね」とお声をかけると、すれ違いざまに「いつも6時前からや」とお返事を頂く。どうやら日課のように登っておられる方のようだ。その後も数組の先行者を追い抜くが、次々と下山されて来られる方達もおられる。

広い登山道はウツギやコアジサイの花が満開だ。足元にはタツナミソウの花も多く見られる。随所に敦賀湾の展望が開けるが、敦賀湾には低い鉛色の雲の下で灰白色の海が広がっているばかりだ。九十九折に登っていく一般登山道から離れ、直線的に尾根を辿る細い踏み跡を辿る。

野坂岳から北に伸びる主尾根に乗ると若い二人組の男性に登山道の周辺の植物の説明をしておられるご婦人がおられた。ニノ岳に至ると、その標識の背後に聳え立つ杉の大樹をここが私のパワースポットとご婦人が教えて下さる。近くには「あそこには白雲木の樹があるのよ」と教えて下さるが、同じ場所を通過しても白雲木を見分けることは出来ない自信がある。

三ノ岳に差し掛かると、山毛欅の美林が広がるようになる。しばらくご婦人と色々お話をしながら、ご婦人のお供をさせて頂く。整った顔立ちは若い頃は相当な美人であったことを伺わせる。
「失礼ですがお歳はおいくつでいらっしゃいますか?」
「80過ぎ」
毎年、100回ほど野坂岳に登られるらしい。
「今年は50回ほどの登ったから6月のうちにもう10回ほどの登るの」と仰る。ご婦人は矍鑠としてかなりの好ペースで登って行かれる。写真を撮っていると、あっという間に距離を大きく開けられる。

野坂岳の手前の避難小屋は中を覗いてみると、蝙蝠が慌ただしく部屋の中を飛び回っていた。野坂岳の山頂にたどり着くと、周りは雲の中で展望は全くない。トレラン・スタイルの一人の男性がおられた。後から先ほどのご婦人が到着されると、「おばあちゃん・・・」と挨拶される。ご婦人との会話からすると男性は三国岳から走って来られた様だ。野坂岳の山頂には後からも続々と人が到着される。

野坂岳を過ぎると途端に人影はなく、一転して静寂の縦走路となる。潅木の間を抜けて尾根を下降すると、野坂岳への登りでは終盤に思われたタニウツギがこのあたりでは花盛りだ。尾根が平坦になると再び山毛欅の大樹の見られる樹林に入る。

山集落への下降地点を過ぎると、林床にユズリハの藪が多かった覚えがある。以前、赤坂山からこの野坂岳に次男を伴って縦走した際はここから芦谷山との鞍部にかけての約1kmほどの区間は断続的にユズリハの藪が続いていたのだったが、いつの間にか刈払いが行われたのだろう、驚いたことに一般登山道と呼んで全く差し障りないほどに歩きやすく整備された道がどこまでも続いている。尾根上にあった筈の多数の倒木もすっかり処理されているようだ。下山後、flatwellさん(以前に山日和さんにお会いした庄部谷山への山行でご一緒した方)が教えて下さったのだが、江美国境と同様、ここでもトレラン目的にこの尾根を整備されている団体があるらしい。

鞍部を通り過ぎて、尾根が南西に大きく方向を転じると、再び山毛欅の大樹が目立つようになる。芦谷山の北のピークca840mにかけての登りに差し掛かると、斜面の上の方からチリンチリンと熊鈴の音が聞こえた。目を凝らしてみると斜面を登ってゆく先行者の姿が目に入る。先行者との間には前回の山行では乗り越えるのに難儀した山毛欅の巨樹の倒木が横たわっているが、倒木も通過しやすいようにすっかり処理されている。

倒木を越えて、小ピークにたどり着いたところで先行者の男性とお遭いする。その姿はヤマレコで見覚えがある。「naojiroさん!?」とご挨拶すると、にこやかに微笑みを浮かべられた。Naojiroさんとお話をしながら尾根を南下する。尾根上ではサワフタギの花も満開だ。芦谷山から尾根を南下すると急に霧がたちこめるようになり、山毛欅の回廊に幻想的な雰囲気が漂う。

庄部谷山への稜線への分岐となるジャンクション・ピーク p806のあたりは広々とした尾根に山毛欅の高木が立ち並び、大聖堂の列柱のような雰囲気となる。このあたりの荘厳な雰囲気の樹林はこの国境尾根におけるハイライトの一つだろう。樹林の中を気まぐれに通り過ぎていく霧と風のせいで山毛欅がなにかを語りかけてくるかのような印象を与える。
UNADJUSTEDNONRAW_thumb_488b.jpg

庄部谷山への稜線に入理、リョウブを中心とする低木の間を進むとと再び山毛欅の林が拡がるca830mの台地状のピークに至る。ここも山毛欅の樹林の雰囲気の良いところだ。ピークの北東端の小さな広場には凭れるのに程よい山毛欅の倒木があった。まずはノンアルコール・ビールで乾杯させて頂く。なんとnaojiroさんはノンアルコール・ビールを私のために持参して下さっておられた。naojiroさんに昨日のうちにこの日の山行予定をお伝えさせて頂いたところ、スケジュールを合わせて私の山行にお付き合い下さったのだった。ノンアルコール・ビールがこれほどまでに美味しく感じられることはなかった。

美しい山毛欅の樹林の中でnaojiroさんと長いこと話し込む。山毛欅の林は雲が薄くなり明るい光が差し込んだかと思うと、気まぐれに霧が通り過ぎていったりと様々に表情が移ろう。しかし、広場の周囲を取り巻く山毛欅の樹々にはすべからく伐採のためのマーキングと思われる黄色いテープが巻かれている。テープを付けられた山毛欅の樹々の姿にどうして哀しみを覚えずにはおられようか。

台地状のピークを南西の端まで歩いたところで、またの山行でお会い出来ることを期待してnaojiroさんとお別れする。ひとまず庄部谷山を目指して、山毛欅の回廊が続く尾根を辿る。庄部谷山の一つ手前のピークca860mでリュックをデポする。というのもこれから庄部谷山の北側の甲森谷に下降し、谷の南の出合からこのピークに突き上げる尾根を登って戻る予定だからだ。問題は甲森谷の下降ルートである。いくつもの尾根が甲森谷に下降しているが、甲森谷を辿るには庄部谷山の北尾根のp772から谷の下の出合を目がけて尾根を下降することを考える。

庄部谷山はイワカガミで覆われた林床の中を山頂に向かって緩やかに登る。山頂に到着すると再び濃い霧が立ち込めるようになり、そのうち10mほど先の樹々の輪郭すら朧げ見えるほどの濃密な霧となった。山毛欅林が続くなだらかな北尾根を辿ると、霧の中を幻影のように鹿が横切ってゆく。

標高が下がるにつれ急に霧が晴れる。雲の下に出たのだろう。尾根芯にはところどころで杉の倒木や馬酔木の藪が現れるが、歩きにくいという程でもない。地図に見られる尾根の北側の広地を目指して左側の谷に向かって下降するが、尾根は唐突に崖となって終わってしまう。実際には広地の様な場所は見当たらず、そこにあったのは狭いV字の谷であった。そのまま谷を下降すると間も無く下に沢が見えてきた。いよいよ甲森谷だ。

甲森谷に降り立ち、小滝を越えるとすぐにも広々とした谷が現れた。沢沿いには微かな踏み跡が続いているようだ。まもなく河岸には次々と苔むした炭焼き窯の跡が現れる。沢沿いにはトチノキやサワグルミの大樹が目立つが、沢沿いを上流に進むにつれ、他の樹々を圧倒して聳え立つカツラの大樹が次々と現れる。

カツラの大樹の細かく分かれて株立ちするその支幹は聖堂のパイプオルガンを思わせる。そして、その前で整然と円環を形成する炭焼き窯はまるで祭壇のようだ。先ほどの庄部谷山から芦谷山にかけての稜線の山毛欅の樹林とは林相は大きく異なるが、この谷の壮麗な林は独特の神聖な雰囲気に満ち溢れているように思われた。
炭焼き窯.jpg
谷を奥に進むにつれ、カツラの巨樹はますます多くなり、沢沿いに立ち並ぶ光景は壮観という他ない。やがて広い谷の上流で二俣の出合に至ると、正面にca860mのピークに至る尾根の急斜面が目に入る。左俣は広々とした谷が続いており、谷を逍遥するのも魅力的に思われるが、そろそろ時間が気になるところであり、谷を離れる決意をする。この谷に泊まることにしてリュックを担いで来たら良かったと後悔するが、それはまたの機会の楽しみにとっておくことにしよう。
カツラの樹々.jpg

やはり尾根の取付きはかなり急峻であり、鹿の踏み跡と思われる斜面のステップを利用してジグザグに登ってゆく。下降はロープがないと困難が予想される。取付きの急斜面を過ぎると、傾斜はましになるが、急登は続く。所々に薄い踏み跡が現れるものの、ほとんど踏み跡はない。

杉の倒木で尾根芯が塞がれている箇所があり、木の根を掴んで石楠花の間を這い上がる。やがてあたり一面は山毛欅の樹林が広がる登りやすい尾根となる。しかし、この尾根の急登はかなり体力を消耗し、かなりバテ気味となる。ピークにたどり着いた時点で水もかなり消費しており、水の補給という問題が生じることになった。

黒谷まで尾根をまっすぐ下ろうと思っていたが、右下になだらかな源頭が見えるので水を求めて下降してみる。谷に下降すると確かに落ち葉が堆積したなだらかな源頭が広がっているのだが、谷を下降すると堆積した落ち葉から水が浸み出しているばかりであり、到底、水が汲めるようなところではない。
源頭.jpg

右岸の尾根に登り、隣の谷の源頭に移動するが、ここもほぼ同様である。非常に複雑な地形の中、源頭を次々と渡りあるく。気持ちに余裕があれば、自然林の広がる美しい源頭の景色を楽しめるのだろうが、水が汲めないことによる焦燥が景色を堪能する余裕を奪う。結局、水を汲めないままに西側の谷筋までたどり着いてしまう。仕方なく、左岸の斜面の小さな流れの水を汲むことにする。

後は谷を下降して黒谷右俣の上流に降りる。地図では広範囲に広葉樹の印しか見当たらないが、谷沿いには植林が広がっている。地図上のピースサインに至ると平らな河岸段丘が広がるようになり、ようやく安心する。平らな河岸を歩くと、まもなく以前の山行で目をつけていたテントの好適地に辿り着く。岸辺には柔らかな苔が生えており、重たいリュックを下ろすと500mlの缶ビールを沢で冷やし、もう一本のビールを早速にも開ける。

テントを張ると、左岸の広い支谷に小さな流れがあったことを思い出す。谷を上流に遡るとすぐにも岩の下から水が流れ出ているのを見つけるのだった。こんな場所があるとわかっていたら・・・と思うが、致し方ない。

テントに戻ると薄暗くなりつつある沢のほとりで料理をする。料理といっても前半は万願寺とうがらしとチョリソー、後半は玉ねぎ、ブロッコリーと牛肉をフライパンに乗せて、焚き火の上で焼くだけの至ってシンプルなものだ。疲れていたせいか、これだけの料理ですっかり満腹になるのだった。
テント.jpg

テントの後ろで何やらガサゴソと小さな音がする。何かと思って振り向くとタヌキが横切っていった。食事も終わるかという頃、今度はテントのすぐ近くに現れたのは長い耳の野兎であった。警戒心が強いので滅多に山中で姿を見せることは滅多にないと聞いていたが、山中で出遭うのは初めてだ。ライトで照らしても野兎は逃げるそぶりすら見せない。やがて兎は沢を渡り、対岸の闇の中に消えていった。

深夜にすぐ近くの林の中から聞こえてきた「イーッ、イーッ、イーッ」と叫ぶような鳴き声で目が覚める。時間を確認すると真夜中を少し回ったところだった。テントから起き出して声のした方を照らしてみるが動くものの気配はない。鳴き声の正体は何だったのだろうと訝しく思いながら再び眠りについた。

【2日目】

起きた時間によって翌日の行程を決めるつもりで、目覚ましをかけずに寝たのだが、目を冷ますとすっかり明るい。時間はまだ4時半だった。鳥の囀りで早朝の森は賑やかだ。湯を沸かし、まずはコーヒーを淹れる。朝飯を済ませると1時間ほどで出発の用意が整った。

この日の計画は完全に白紙だ。三十三間山〜轆轤山または三重獄〜武奈ヶ嶽を経て小浜街道に下り、バスで近江今津に向かうか、あるいは大御影山から大谷山を経てマキノ高原に下山するか、とりあえず松屋に向かって林道を下ることにする。

二度ほど小さな渡渉をすると後は右岸の送電線巡視路を辿る。桧ノ谷とも呼ばれるらしい黒谷左俣との合流地点に来ると、まず左俣を渡渉した後、右岸を下る。堰堤を左岸から越えたところで堰堤の下をすぐに対岸に渡渉し、左岸の薄い踏み跡を辿るとすぐに林道終点に出る。

林道を歩くと正面には大御影山の稜線が雲の中から姿を現し、その上では蒼穹が広がっている。丁度このあたりで天気の境界線があるかのように背後の山々には低く雲がかかっている。

松屋に到着してもまだルートをどれにしようかと決めかねていた。大日岳に足が向かったのは、大日岳から三重獄への分岐の区間が未踏であり、山毛欅の回廊を少しでも長く辿ってみたいという潜在意識ゆえのことと思う。大日岳の北側の登山口に向かって林道を歩き始めると、林道の両側にはコアジサイの花が満開だ。コアジサイの花の香りは楚々として清涼な感じがするのだが、花が多いせいだろう、花から離れていてもその香りが十分に漂って来る。

大日岳へ送電線巡視路の長い登りを辿る。林の中には陽射しが差し込むが、程よく風が吹いているのでさほど汗をかかずに済む。山毛欅の樹林が広がるようになったのは山頂が近づいてからであった。

大日岳から三重獄にかけてはここでも山毛欅の高木による壮麗な森が広がっている。昨日の曇天とは一転、新緑の山毛欅の透過光と木洩れ陽が林の中に満ち溢れており、同じような山毛欅の林相でも、全くといってもいいほど違う光景に思われる。
大日尾根.jpg

大日分岐を過ぎて、高島トレイルに入ると、このあたりの山毛欅の樹林も素晴らしいところと思っていたが、先ほどの大日岳の南尾根に比べてると山毛欅が若いような気がした。

大御影山との鞍部になると樹林が切れて、目の前に大御影山が大きく迫る。大御影山への登りに差し掛かると樹林というほどの山毛欅の密集がないが、随所に山毛欅の大樹があるのが嬉しい。道は深い歴史を刻み込んだような掘割の道が続く。やがて傾斜が緩やかになると山頂が近い。反射板の南側に立ち寄って三重獄と比良山系の山々をすっきりと見晴らすことが出来る。野坂岳や庄部谷山の方面はまだ雲が取れていないようだ。

山頂に至ると6人のご婦人を引き連れて一人の男性が弁当を食べておられる。
ご挨拶すると、「ここまでどうやって来られたんですか?」とご質問いただく。
「野坂岳から庄部谷山を経て、黒谷に昨日は泊まりました」(さすが、黒谷という言葉だけですぐどこか理解されたようだ)
「なるほど、あそこは甲森谷もいいですな」(・・・甲森谷をご存知というのは、この山域を相当に知悉しておられる方のようだ)
「実は昨日の午後は甲森谷に下降しまして・・・」

どうも先週、出会った方によく似ているように思われるが、まさか・・・なんと先週、小雨の降る光砥山に早稲谷の源頭から山頂に登ると、山頂でばったりお会いしたshikakuraさん(ヤマレコでのHN)であった。先方も私を認識され、大いに驚かれる。

「どこから甲森谷にアプローチされたのですか?後学のために教えて下さい」・・・とお伺いする。
「沢登りです。しかし、最近は危ないので、沢はもうやめているんです。つい最近も御在所で知人が亡くなりまして・・・いつも犬を連れて山に入られる方で・・・」
「もしかして、それはアワビちゃんですか?」
「そうそう、アワビちゃん!」
緑水さんとは何度か山行にご一緒されたことがあるとのこと。お名刺を頂いたが「榾火(ほだび)山の会」の副会長をされておられる方であった。やぶこぎネットで緑水さんの訃報を知ったことをお話しすると、かつてヤブメンの方々とも一緒に山行されたことがあるらしい。

何故、昨日は芦谷山から庄部谷山を訪れようと思ったかという理由を改めてお話する。
「その風力発電の計画は無茶苦茶しよるなぁ〜」とshikakuraさんも憤られる。その後も山談義に花が咲くが、そろそろご出発の時間のようだ。shikakuraさんにお別れすると一路、大谷山を目指して稜線を南下する。

樹間からは時折、東に大谷山にかけての稜線ををすぐ下に臨む。そういえば大御影山の山頂の東側の好展望地に立ち寄ることをすっかり失念していた。前回、この稜線を訪れた時には白山に越美国境の山々が綺麗に見えていたのだが、さすがにこの日はそういう訳にはいかない。大谷山の上空をかなりの勢いで雲が通過してゆく。

なだらかな尾根を快速で歩くうちに近江坂分岐を見落としていたらしい。気がつくと林道まで来てしまっていた。近江坂分岐まで引き返す。尾根の傾斜がなだらかなのが救いだ。こういうミスによる登り返しは急登だとさらにしんどく感じられるものだ。

抜土から、大谷山への稜線にかけて高度差は200mほどではあるが、この登り返しがきついことは理解していた。しかし、程よく林の中を吹き抜けてゆく風のおかげもあって、暑さをそれほど感じずに済む。登るにつれて、山毛欅の美林が広がるようになる。

稜線上のピークca820mを過ぎると、それまでの山毛欅の回廊は途端に消え失せ、潅木が広がるようになる。そして、まもなくカレンフェルトの石が散在する広大な草稜に飛び出した。白石平と呼ばれるところらしい。一人の男性が琵琶湖を眺めている。大谷山から南には滅多に人は来ないところだと思うが、わざわざこのピークに足を運ぶとは石庭にでも下山されるのだろうか。
白石平.jpg

男性は景色にすっかり見惚れておられるようであったが、確かにこの草原からの景色はなんとも素晴らしい。黙って通り過ぎるのも失礼だし、ご挨拶申し上げようとして近づいたところで、その人物に見覚えがあることに気がついた。これまで幾度か山でご一緒したことのあるUさんであった。
Uさんはマキノ高原から出発し、赤坂山から周回して来られたところであった。下山ルートは大谷山からの展望ルートを経て、マキノ高原に戻るバリエーション・ルートをご提案させて頂く。

大谷山にかけてUさんと共に緩やかに波打つ樹木のない草原の中を歩く。赤坂山から寒風の間では相当な人とすれ違われたとのことではあるが、大谷山から南では人の気配は感じられず、ただ「千と千尋」の世界の様な夢幻的な光景が広がっている。

昨日までの霞んだ空気とは一転、湖北の横山岳から伊吹山を経て鈴鹿の山に至るまで、琵琶湖の周囲に青い山並みが明瞭だ。このルートの素晴らしいところは日本海と琵琶湖を同時に眺めながら歩くことが出来ることだ。蒼穹を反映して日本海にも琵琶湖も青い水面が限りなく広がっている。

大谷山の山頂に立つと予想以上の風の強であった。写真を撮るにもカメラを水平に固定することすることすらままならない。赤坂山も爆風であったそうだが、やはり風衝草原が広がるだけのことがあることを改めて再認識する。

風を避けて南の小さなコルに戻り、展望コースに入ると途端に風の影に入ることが出来たようだ。先ほどの白石平からの登山路と合流すると道は深い掘割の古道となる。粟柄谷へと抜ける古道だったに違いないが、今やこのルートを歩く人は少ないだろう。

下るにつれて古道の周囲には数多くのコアジサイの花が咲いている。登山路には甘い香りが漂う。道に数多くの白い花も落下している。上を見上げると無数の白い花が下垂している。エゴノキの花であることをウリさんが指摘される。あたりに漂うこの甘い香りはこのエゴノキの香りも混じっているように思われる。

古道を離れて間伐材が散乱する植林の尾根を下る。林道に着地すると標高368.8mの三角点ピークを目指す。この三角点の点名は「牧野」というらしい。この牧野からマキノ高原にかけて意外なほど良好に整備された道を下ると、路傍に薄ピンク色の綺麗な笹百合の花が忽然と現れる。それはまるで山からの贈り物のようにも思えるのだった。
笹百合2.jpg

ところで、今回の山行には残念な後日談がある。火曜日の夜になってシャワーを浴びている際に臍の下に黒いいぼの様なものがあると思ってよくよく見ると、何と吸血して黒々と膨れ上がったマダニであった。少なくとも2日以上、体についていたものであろう。翌日に皮膚科を受診すると医師が綺麗にとってくれたのだが、マダニが収納されたビニール袋の中を見ると、小さな生き物が活発に動き回っているのだった。

アバター
山日和
記事: 2894
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【野坂】庄部谷山の山毛欅林よ永遠に

投稿記事 by 山日和 »

yamanekoさん、ご無沙汰です。お元気そうで何より。
しかしダイナミックなテン泊山行ですねえ。

ヤマレコのユーザーのnaojiroさんのレコでこの芦谷山から庄部谷山にかけての稜線一帯に大規模の風力発電の計画が推進されることを知る。しかも、その風力発電の計画を推進するのがgreen power investment社(G.P.I.社)という。余呉トレイルの栃ノ木峠から下谷山にかけて林道を作り、ここに大規模な風力発電の計画を進めている会社である。

これはショックでした。10年チョイ前にも風力発電の計画が持ち上がり(その時は別の会社です)、結局頓挫してホッとしていたのですが・・・
美浜といい余呉といい、私の愛するブナの山が標的にされるとは・・・
特に庄部谷山から芦谷山は、私の庭と言ってもいいところ。これほど大規模かつ貴重なブナ林を
丸坊主にしてまで作る価値があるとはとても思えません。 :oops:
前の時に反対派の急先鋒だった敦賀市会議員のブログを貼っておきます。今回も動いてくれてはいるようですが。
https://blog.goo.ne.jp/aran1104

この芦谷山〜庄部谷山の稜線は一昨年の晩秋に山日和さんに出遭ったところで、私にとっては格別な思い出があるところでもある。

そうでしたね。ここでyamanekoさんのやぶこぎネットへの扉が開かれたのでした。

近くには「あそこには白雲木の樹があるのよ」と教えて下さるが、同じ場所を通過しても白雲木を見分けることは出来ない自信がある。

私も花が咲いてたらわかりますけどね。エゴの木の花に似た、白い清楚な花ですね。

毎年、100回ほど野坂岳に登られるらしい。
「今年は50回ほどの登ったから6月のうちにもう10回ほどの登るの」と仰る。ご婦人は矍鑠としてかなりの好ペースで登って行かれる。

ここは敦賀市民の憩いの山ですね。大阪の金剛山や神戸の六甲山みたいな感じでしょうか。

いつの間にか刈払いが行われたのだろう、驚いたことに一般登山道と呼んで全く差し障りないほどに歩きやすく整備された道がどこまでも続いている。

ここは一般登山道じゃなかったんですか? :mrgreen:

先行者との間には前回の山行では乗り越えるのに難儀した山毛欅の巨樹の倒木が横たわっているが、倒木も通過しやすいようにすっかり処理されている。

2月に行った時は倒木を乗り越えて進みましたが、歩きやすくなってましたか。

芦谷山から尾根を南下すると急に霧がたちこめるようになり、山毛欅の回廊に幻想的な雰囲気が漂う。

ここは尾根芯を外して、西側斜面を巨木の森を堪能しながら歩くのが吉ですね。 :D

庄部谷山への稜線への分岐となるジャンクション・ピーク p806のあたりは広々とした尾根に山毛欅の高木が立ち並び、大聖堂の列柱のような雰囲気となる。このあたりの荘厳な雰囲気の樹林はこの国境尾根におけるハイライトの一つだろう。

少し雑然とした印象はありますが、いいところですね。ガスってるほうがいい雰囲気です。

まずはノンアルコール・ビールで乾杯させて頂く。なんとnaojiroさんはノンアルコール・ビールを私のために持参して下さっておられた。

「ノン」アルコールなんですね。 :mrgreen:

しかし、広場の周囲を取り巻く山毛欅の樹々にはすべからく伐採のためのマーキングと思われる黄色いテープが巻かれている。テープを付けられた山毛欅の樹々の姿にどうして哀しみを覚えずにはおられようか。

うーん。

というのもこれから庄部谷山の北側の甲森谷に下降し、谷の南の出合からこのピークに突き上げる尾根を登って戻る予定だからだ。問題は甲森谷の下降ルートである。

甲森谷に下りるのなら、トチとカツラのワンダーランドで幕営という選択肢はなかったんですか?

カツラの大樹の細かく分かれて株立ちするその支幹は聖堂のパイプオルガンを思わせる。そして、その前で整然と円環を形成する炭焼き窯はまるで祭壇のようだ。先ほどの庄部谷山から芦谷山にかけての稜線の山毛欅の樹林とは林相は大きく異なるが、この谷の壮麗な林は独特の神聖な雰囲気に満ち溢れているように思われた。

なるほど、クラシック好きのyamanekoさんらしい表現ですねえ。頭の中には教会音楽が鳴り響いていたのでしょうか。 :lol:

左俣は広々とした谷が続いており、谷を逍遥するのも魅力的に思われるが、そろそろ時間が気になるところであり、谷を離れる決意をする。この谷に泊まることにしてリュックを担いで来たら良かったと後悔するが、それはまたの機会の楽しみにとっておくことにしよう。

そうでしょう~。左俣というより本流の森水屋は、芦谷山の南ピークへ上がる素敵な谷です。
難しいところもなく、途中にはワサビ田の跡もあったりしていいですよ。

気持ちに余裕があれば、自然林の広がる美しい源頭の景色を楽しめるのだろうが、水が汲めないことによる焦燥が景色を堪能する余裕を奪う。結局、水を汲めないままに西側の谷筋までたどり着いてしまう。仕方なく、左岸の斜面の小さな流れの水を汲むことにする。

黒谷でテン泊するのになんで水を汲んで行かないといけないの?

後は谷を下降して黒谷右俣の上流に降りる。地図では広範囲に広葉樹の印しか見当たらないが、谷沿いには植林が広がっている。地図上のピースサインに至ると平らな河岸段丘が広がるようになり、ようやく安心する。平らな河岸を歩くと、まもなく以前の山行で目をつけていたテントの好適地に辿り着く。岸辺には柔らかな苔が生えており、重たいリュックを下ろすと500mlの缶ビールを沢で冷やし、もう一本のビールを早速にも開ける。

ここはいいところですよね。林相がもう少し良ければねえ。下流は林相はいいけど平坦地がないし。

テントの後ろで何やらガサゴソと小さな音がする。何かと思って振り向くとタヌキが横切っていった。食事も終わるかという頃、今度はテントのすぐ近くに現れたのは長い耳の野兎であった。

タヌキ汁とウサギのステーキは追加しなかったんですか? :mrgreen:

この日の計画は完全に白紙だ。

自由ですね~。

大日岳から三重獄にかけてはここでも山毛欅の高木による壮麗な森が広がっている。昨日の曇天とは一転、新緑の山毛欅の透過光と木洩れ陽が林の中に満ち溢れており、同じような山毛欅の林相でも、全くといってもいいほど違う光景に思われる。

この尾根筋には見事なブナの巨木がたくさんあって壮観です。三重嶽への尾根に入ると曲がりくねったブナが多くなるのが不思議ですね。

山頂に至ると6人のご婦人を引き連れて一人の男性が弁当を食べておられる。

実は私とsatoさんは、13時少し前にここに立ってました。惜しかったですね。 :lol:
大御影山直登沢で見つけたトチの巨樹
大御影山直登沢で見つけたトチの巨樹
どうも先週、出会った方によく似ているように思われるが、まさか・・・なんと先週、小雨の降る光砥山に早稲谷の源頭から山頂に登ると、山頂でばったりお会いしたshikakuraさん(ヤマレコでのHN)であった。先方も私を認識され、大いに驚かれる。

yamanekoさんは山での出会いが多いですねえ。 :o

「沢登りです。しかし、最近は危ないので、沢はもうやめているんです。つい最近も御在所で知人が亡くなりまして・・・いつも犬を連れて山に入られる方で・・・」
「もしかして、それはアワビちゃんですか?」
「そうそう、アワビちゃん!」
緑水さんとは何度か山行にご一緒されたことがあるとのこと。お名刺を頂いたが「榾火(ほだび)山の会」の副会長をされておられる方であった。やぶこぎネットで緑水さんの訃報を知ったことをお話しすると、かつてヤブメンの方々とも一緒に山行されたことがあるらしい。

へえーっ、緑水さんとも知り合いだったとは。私が会ってれば話がはずんだかも。やぶこぎには登録されてなかったんでしょうか?そのヤブメンは誰なんでしょうねえ。


黙って通り過ぎるのも失礼だし、ご挨拶申し上げようとして近づいたところで、その人物に見覚えがあることに気がついた。これまで幾度か山でご一緒したことのあるUさんであった。

またまた出会いが!! 1日で私の1年分ぐらい出会ってそうですね~ :mrgreen:

ところで、今回の山行には残念な後日談がある。火曜日の夜になってシャワーを浴びている際に臍の下に黒いいぼの様なものがあると思ってよくよく見ると、何と吸血して黒々と膨れ上がったマダニであった。少なくとも2日以上、体についていたものであろう。

satoさんも、草川さんとの山行で、えげつないほどのダニに食い付かれたらしいですよ。

                 山日和

yamaneko0922
記事: 269
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39

Re: 【野坂】庄部谷山の山毛欅林よ永遠に

投稿記事 by yamaneko0922 »

山日和さん コメント有り難うございます。

>特に庄部谷山から芦谷山は、私の庭と言ってもいいところ。これほど大規模かつ貴重なブナ林を丸坊主にしてまで作る価値があるとはとても思えません。 :oops:

御意です。

>前の時に反対派の急先鋒だった敦賀市会議員のブログを貼っておきます。今回も動いてくれてはいるようですが。

今大地さんですね。flatwellさんに教えて頂きました。ご活躍に期待するばかりです。

>ここは敦賀市民の憩いの山ですね。大阪の金剛山や神戸の六甲山みたいな感じでしょうか。

そのようですね。京都の愛宕山もそうですが、ほぼ毎日登られる方もおられるらしいですから。

>ここは一般登山道じゃなかったんですか? :mrgreen:

もちろん、一般登山道の定義は曖昧なものですが、山分岐から南、三国岳のあたりまではそうではい・・・なかったと思いますが、今はトレランで走れるくらいに整備されたようです。

>2月に行った時は倒木を乗り越えて進みましたが、歩きやすくなってましたか。

確かに非常に太いブナの大樹の倒木はそのままですが、枝はノコギリを入れられた跡がありました。

>ここは尾根芯を外して、西側斜面を巨木の森を堪能しながら歩くのが吉ですね。 :D

ご教示有難うございます。近々、再訪しますので、その時はそうさせて頂きます。

>少し雑然とした印象はありますが、いいところですね。ガスってるほうがいい雰囲気です。

確かに林床に下生があるからでしょうか。でも山毛欅の高木が集まって、いい雰囲気だと思います。
junction peak.jpg

>「ノン」アルコールなんですね。 :mrgreen:

流石に誰もが導師のようにはいかないでしょう。

>甲森谷に下りるのなら、トチとカツラのワンダーランドで幕営という選択肢はなかったんですか?

テン泊の重装備でこの谷に下降して、再び登ってくることを躊躇ったのでリュックをデポしたのですが、それを後悔することになりました。

>なるほど、クラシック好きのyamanekoさんらしい表現ですねえ。頭の中には教会音楽が鳴り響いていたのでしょうか

いえ、残念ながら。

>黒谷でテン泊するのになんで水を汲んで行かないといけないの?

沢水以外に水が汲めると思っていなかったので・・・結局、容易に手に入るのでしたが。

>ここはいいところですよね。林相がもう少し良ければねえ。下流は林相はいいけど平坦地がないし。

以前、SHIGEKIさんがrepで写真を撮られていた場所だと思います。少し上流では植林が始まるのですが、丁度、テントを張ったあたりは広々とした広葉樹が樹林が広がっているように思いましたが。
UNADJUSTEDNONRAW_thumb_48d4.jpg

>実は私とsatoさんは、13時少し前にここに立ってました。惜しかったですね。 :lol:

なんと、もう少し急いでいらしてきてくだされば・・・

>へえーっ、緑水さんとも知り合いだったとは。私が会ってれば話がはずんだかも。やぶこぎには登録されてなかったんでしょうか?そのヤブメンは誰なんでしょうねえ。

間違いなく、お話が弾んだことでしょう。
残念ながらやぶこぎはメンバーとして関わったことはないと仰っておられました。

>satoさんは草川さんとの山行で・・・

さすがですね。satoはダニが媒介するウイルスにも免疫が出来ていることでしょう。

SHIGEKI
記事: 868
登録日時: 2011年7月25日(月) 18:30

Re: 【野坂】庄部谷山の山毛欅林よ永遠に

投稿記事 by SHIGEKI »

yamanekoさん こんばんは。 ご無沙汰しております。


【 ルート 】
(1日目)粟野駅8:06〜8:26野坂岳登山口〜9:51野坂岳9:55〜11:11芦谷山11:20〜11:57ca820mピーク12:37〜13:33庄部谷山〜14:25甲森谷下の出合〜15:14甲森谷上の出合〜16:06ca860mピーク16:25〜17:25黒谷右俣
(2日目)黒谷右俣5:31〜6:43松屋7:10〜9:41大日岳〜10:19大日尾根分岐〜11:14大御影山〜12:22近江坂分岐12:36〜12:59抜土〜13:48白石平14:00〜14:10大谷山14:18〜14:32眺望尾根14:33〜16:49マキノ高原

アルツの頭でルートを辿りましたが、不肖Sの許容範囲をはみ出てしまって混乱してますがなぁ~


ヤマレコのユーザーのnaojiroさんのレコでこの芦谷山から庄部谷山にかけての稜線一帯に大規模の風力発電の計画が推進されることを知る。しかも、その風力発電の計画を推進するのがgreen power investment社(G.P.I.社)という。余呉トレイルの栃ノ木峠から下谷山にかけて林道を作り、ここに大規模な風力発電の計画を進めている会社である。よくよく考えてみると庄部谷山のすぐ西側の新庄には大規模な変電所があり、また関西方面への送電線の分岐点でもあるのでここに風力発電所を作るのは工事と送電の観点からすれば都合が良いのであろう。

最悪ですね :evil: :twisted: :evil: :twisted:

宝物をブチ壊される想い・・・ :evil: :twisted:


この稜線のみであれば日帰りが可能ではあるが、敢えてテン泊の重装備で臨んだのは、以前SHIGEKIさんのrepでもご紹介のあった黒谷のピースサインでテントを張ってみたいという念願を叶えるためでもあった。

実は不肖S、この周辺で日帰りルートで10数泊しておりますが、黒谷はまだなんですわ。

言って頂ければ、最短ルートでタープ張って火を興してましたものを :mrgreen:


野坂岳から北に伸びる主尾根に乗ると若い二人組の男性に登山道の周辺の植物の説明をしておられるご婦人がおられた。ニノ岳に至ると、その標識の背後に聳え立つ杉の大樹をここが私のパワースポットとご婦人が教えて下さる。近くには「あそこには白雲木の樹があるのよ」と教えて下さるが、同じ場所を通過しても白雲木を見分けることは出来ない自信がある。

三ノ岳に差し掛かると、山毛欅の美林が広がるようになる。しばらくご婦人と色々お話をしながら、ご婦人のお供をさせて頂く。整った顔立ちは若い頃は相当な美人であったことを伺わせる。
「失礼ですがお歳はおいくつでいらっしゃいますか?」
「80過ぎ」
毎年、100回ほど野坂岳に登られるらしい。
「今年は50回ほどの登ったから6月のうちにもう10回ほどの登るの」と仰る。ご婦人は矍鑠としてかなりの好ペースで登って行かれる。写真を撮っていると、あっという間に距離を大きく開けられる。

20年後の夢ですね。

たぶん、不肖S、その頃には地獄の針の山を登ってるでしょうが :mrgreen:



庄部谷山への稜線への分岐となるジャンクション・ピーク p806のあたりは広々とした尾根に山毛欅の高木が立ち並び、大聖堂の列柱のような雰囲気となる。このあたりの荘厳な雰囲気の樹林はこの国境尾根におけるハイライトの一つだろう。樹林の中を気まぐれに通り過ぎていく霧と風のせいで山毛欅がなにかを語りかけてくるかのような印象を与える。

庄部谷山への稜線に入理、リョウブを中心とする低木の間を進むとと再び山毛欅の林が拡がるca830mの台地状のピークに至る。ここも山毛欅の樹林の雰囲気の良いところだ。

霧のベールが動く山毛欅林 最高ですね。

830 の台地、何度も昼寝に行ってますが、変なテープがたくさん付いてましたね :evil: :evil:



問題は甲森谷の下降ルートである。いくつもの尾根が甲森谷に下降しているが、甲森谷を辿るには庄部谷山の北尾根のp772から谷の下の出合を目がけて尾根を下降することを考える。

庄部谷山はイワカガミで覆われた林床の中を山頂に向かって緩やかに登る。山頂に到着すると再び濃い霧が立ち込めるようになり、そのうち10mほど先の樹々の輪郭すら朧げ見えるほどの濃密な霧となった。山毛欅林が続くなだらかな北尾根を辿ると、霧の中を幻影のように鹿が横切ってゆく。

標高が下がるにつれ急に霧が晴れる。雲の下に出たのだろう。尾根芯にはところどころで杉の倒木や馬酔木の藪が現れるが、歩きにくいという程でもない。地図に見られる尾根の北側の広地を目指して左側の谷に向かって下降するが、尾根は唐突に崖となって終わってしまう。実際には広地の様な場所は見当たらず、そこにあったのは狭いV字の谷であった。そのまま谷を下降すると間も無く下に沢が見えてきた。いよいよ甲森谷だ。

白谷分岐の少し上流辺りに降り着かれたんでしょうか?


やがて広い谷の上流で二俣の出合に至ると、正面にca860mのピークに至る尾根の急斜面が目に入る。左俣は広々とした谷が続いており、谷を逍遥するのも魅力的に思われるが、そろそろ時間が気になるところであり、谷を離れる決意をする。この谷に泊まることにしてリュックを担いで来たら良かったと後悔するが、それはまたの機会の楽しみにとっておくことにしよう。

やはり尾根の取付きはかなり急峻であり、鹿の踏み跡と思われる斜面のステップを利用してジグザグに登ってゆく。下降はロープがないと困難が予想される。取付きの急斜面を過ぎると、傾斜はましになるが、急登は続く。所々に薄い踏み跡が現れるものの、ほとんど踏み跡はない。

サルハシ谷の右岸尾根?ですね?

8年前のヤマボウシが綺麗に咲いている頃に登り、折戸谷へ戻りました。

なかなかの急登でしたね、今なら、ボチボチ谷筋を辿ります。


右岸の尾根に登り、隣の谷の源頭に移動するが、ここもほぼ同様である。非常に複雑な地形の中、源頭を次々と渡りあるく。気持ちに余裕があれば、自然林の広がる美しい源頭の景色を楽しめるのだろうが、水が汲めないことによる焦燥が景色を堪能する余裕を奪う。結局、水を汲めないままに西側の谷筋までたどり着いてしまう。仕方なく、左岸の斜面の小さな流れの水を汲むことにする。

後は谷を下降して黒谷右俣の上流に降りる。

ピースサインの左俣を降られたのですね?


テントに戻ると薄暗くなりつつある沢のほとりで料理をする。料理といっても前半は万願寺とうがらしとチョリソー、後半は玉ねぎ、ブロッコリーと牛肉をフライパンに乗せて、焚き火の上で焼くだけの至ってシンプルなものだ。疲れていたせいか、これだけの料理ですっかり満腹になるのだった。

これだけ歩いて、焚火で料理する元気が残ってるのは流石ですね~

テントの後ろで何やらガサゴソと小さな音がする。何かと思って振り向くとタヌキが横切っていった。食事も終わるかという頃、今度はテントのすぐ近くに現れたのは長い耳の野兎であった。警戒心が強いので滅多に山中で姿を見せることは滅多にないと聞いていたが、山中で出遭うのは初めてだ。ライトで照らしても野兎は逃げるそぶりすら見せない。やがて兎は沢を渡り、対岸の闇の中に消えていった。

服○文○なら狸とウサギのごった煮とヘビの蒲焼きでしょうね :mrgreen:

この日の計画は完全に白紙だ。三十三間山〜轆轤山または三重獄〜武奈ヶ嶽を経て小浜街道に下り、バスで近江今津に向かうか、あるいは大御影山から大谷山を経てマキノ高原に下山するか、とりあえず松屋に向かって林道を下ることにする。

二度ほど小さな渡渉をすると後は右岸の送電線巡視路を辿る。桧ノ谷とも呼ばれるらしい黒谷左俣との合流地点に来ると、まず左俣を渡渉した後、右岸を下る。堰堤を左岸から越えたところで堰堤の下をすぐに対岸に渡渉し、左岸の薄い踏み跡を辿るとすぐに林道終点に出る。

林道を歩くと正面には大御影山の稜線が雲の中から姿を現し、その上では蒼穹が広がっている。丁度このあたりで天気の境界線があるかのように背後の山々には低く雲がかかっている。

堰堤連漠と左岸大崩れを簡単に躱して、流石のスピード感ですね。


どうも先週、出会った方によく似ているように思われるが、まさか・・・なんと先週、小雨の降る光砥山に早稲谷の源頭から山頂に登ると、山頂でばったりお会いしたshikakuraさん(ヤマレコでのHN)であった。先方も私を認識され、大いに驚かれる。

男性は景色にすっかり見惚れておられるようであったが、確かにこの草原からの景色はなんとも素晴らしい。黙って通り過ぎるのも失礼だし、ご挨拶申し上げようとして近づいたところで、その人物に見覚えがあることに気がついた。これまで幾度か山でご一緒したことのあるUさんであった。
Uさんはマキノ高原から出発し、赤坂山から周回して来られたところであった。下山ルートは大谷山からの展望ルートを経て、マキノ高原に戻るバリエーション・ルートをご提案させて頂く。

出逢いも素晴らしいですね~


ところで、今回の山行には残念な後日談がある。火曜日の夜になってシャワーを浴びている際に臍の下に黒いいぼの様なものがあると思ってよくよく見ると、何と吸血して黒々と膨れ上がったマダニであった。少なくとも2日以上、体についていたものであろう。翌日に皮膚科を受診すると医師が綺麗にとってくれたのだが、マダニが収納されたビニール袋の中を見ると、小さな生き物が活発に動き回っているのだった。

二日間もマダニと共に山の余韻に浸ってたんですね :mrgreen:

それにしても、マネのできない素晴らしい山行、読み応えのあるrep じっくり地形図見ながら楽しませて頂きました。

    では また 次代に残る山毛欅の森で

             SHIGEKI

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yamaneko0922
記事: 269
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39

Re: 【野坂】庄部谷山の山毛欅林よ永遠に

投稿記事 by yamaneko0922 »

SHIGEKIさん コメント有り難うございます。

>実は不肖S、この周辺で日帰りルートで10数泊しておりますが、黒谷はまだなんですわ。

羨ましい。このあたりは本当に素晴らしいところが多いですね。泊まったのは初めてでしたが、風力発電が出来てもテン泊参考に出かけたいところです。

>言って頂ければ、最短ルートでタープ張って火を興してましたものを :mrgreen:

是非、お願いします。

>830 の台地、何度も昼寝に行ってますが、変なテープがたくさん付いてましたね :evil: :evil:

このテープが付いている樹々を伐採して、手始めにここに風力観測計を設置するそうです。 :evil: :twisted:

>白谷分岐の少し上流辺りに降り着かれたんでしょうか?

その少し下流だったようです。
甲森谷.jpg

>サルハシ谷の右岸尾根?ですね?

支谷の名称がわからなかったのですが、教えて下さり有難うございます。
UNADJUSTEDNONRAW_thumb_48c9.jpg
>ピースサインの左俣を降られたのですね?

右俣を降りました。
黒谷右俣.jpg
説明が難しいのでピースサインまでのルート図を貼付します。この右俣に至るまでいくつもの小さな源頭を横切りましたが、このあたりも実にいいところでした。また機会を改めて訪れてみたいところです。
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>これだけ歩いて、焚火で料理する元気が残ってるのは流石ですね~

SHIGEKIさんもそうだと思いますが、これは何よりの楽しみですから :D

>二日間もマダニと共に山の余韻に浸ってたんですね :mrgreen:

そうなんダニ :mrgreen:
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