【比良】古道を辿って蛇谷ヶ峰へ

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yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

【比良】古道を辿って蛇谷ヶ峰へ

投稿記事 by yamaneko0922 »

【 日 付 】2019年3月21日(木曜日)
【 山 域 】比良
【メンバー】山猫、家内
【 天 候 】曇り
【 ルート 】大野集落の登山口11:22~12:53 792m峰13:21~14:10西峰~14:20蛇谷ヶ峰14:32~14:42西峰~14:52天狗の森~15:15猪の馬場~15:45登山口

久しぶりの週半ばの休日、日がな雨の予報ではあったが、前日になると雨が上がる時間の予報が早くなり、昼過ぎには雨が止む予報となる。雨の音を聞きながらゆっくり起き出してみるとなんと8時半には既に雨が上がっているではないか。一時的な雨上がりかとも思ったが、雨雲レーダーを確認すると西の方面には雨雲はみられず、どうやら雨雲は既に通り過ぎたようである。

午前中からの山行は諦めていたのだったが、早速にも出掛けたいところだ。しかし折悪く、家内が洗濯機を回し始めたところだった。洗濯物を干し終わるのを待って家を出ることになる。

短時間で登山口にたどり着ける山ということで、白倉岳か今津の武奈ヶ嶽かのどちらかと考えて、R367を北に向かうことにする。途中トンネルを越えたところで琵琶湖の方角へ目を向けると三上山の向こうで鈴鹿の山並みまで見渡すことが出来る。

花折峠を越え、坂下のあたりでは電光掲示板には気温が18℃と表示されている。京都市内は20℃にまで上がるとの予想であったが、この季節にここで信じられないような暖かさだ。この気温だと山の雪は一気に融けてしまうことだろう。行者山トンネルの上を見上げると江賀谷山のピークよりも雲は高いところにある・・・ということは雲の高さは1000m前後だろう。

白倉岳の東斜面には光があたっている。北東の方角の空が明るいことを理由に急遽、蛇谷ヶ峰へと山行先を変更する。標高は901.7m、雲が下ることはないだろうから、山頂は雲の下だろう。

この蛇谷ヶ峰に登るルートとしては躊躇なく植谷峠を経て山頂へ辿り着く南西尾根を選択する。膝蓋骨骨折を負った左脚のリハビリ・ウォークにと朽木在住のHさんよりお薦め頂いたコースの一つであるが、蛇谷ヶ峰の山頂へ至る長くなだらかな尾根は以前より気になっていた。大野からの一般登山道は林道歩きが長いので、こちらを下山ルートにする周回コースを考える。

まずは大野登山口の手前に車を駐車する。植谷から流れる川にかかる橋を左岸に渡ると、高乗寺の裏手から尾根に取り付く。早速にもかつての寺院の跡と思われる苔むした石垣の遺構が現われる。その石垣を越えて斜面に取り付くと、多数の杉の倒木により道は荒れてはいるが、すぐにも掘割式の明瞭な古道が現れる。この古道は当初、植谷峠道かと思ったが、昔の地図によると植谷峠道は植谷に沿ってつけられた谷道であった・・・との情報があり、この古道は植谷峠道とは別個のものかもしれない。しかし、蛇谷ヶ峰の南にある畑集落へ抜ける古道の一つであったのは間違いないだろう。

杉の植林地はすぐにも終わり、樅の樹林にかわる。最初の標高点437m地点に達すると途端に広くなだらかな尾根となる。いつしか樅の姿は少なくなり、赤松の林となる。マツクイムシの被害によるものだろう、立ち枯れの樹が少なくない。下藪も少なく、どこでも歩くことが出来るような平坦な尾根であるが、よくよくみると薄い掘割の古道が続いている。

雲の合間からこぼれ落ちる日差しが尾根を照らす。見上げると雲の合間から青空が顔を覗かせるが、上空では風が早いのだろう、青空の形も急速に変わってゆく。上空からはほぼ間断なく風鳴りの音が響いているが、尾根上はさほど風はなく、シャツ一枚で十分な暖かさだ。風の音の伴奏に乗って、鳥の囀りによる華やかな重唱が聞こえてくる。鳥に関しては無知なので、鳴き声での鳥の同定が出来ないのだが、数種類の鳥の声が聞かれるように思われた。

いつの間にか雲の高さが僅かに上がったのだろう。右手を見ると重苦しい雲の下で白倉三山のピークが明瞭に見えている。やがて、なだらかであった尾根が斜度を増すと、尾根は赤松にとってかわり山毛欅が登場すると、細川尾根に代表される比良の西側尾根上部の雰囲気となる。やはり尾根に沿って掘割の古道は延々と続いている。

いよいよ南西尾根へと上がると東側の展望が大きく広がる。蛇谷ヶ峰から須川峠、横谷峠を経る南尾根の彼方にリトル比良の山々と琵琶湖を望む。南側を振り返ると、残雪が斜面に斑に残る釣瓶岳のピークが辛うじて雲の下に見える。
尾根から東の光景
尾根から東の光景
釣瓶岳
釣瓶岳


武奈ヶ岳は上の方は当然ながら、雲の中だ。尾根を少し北に辿ると792m峰である。広い山頂広場は気持ちのいい場所の筈なのだが、立派な山毛欅の樹が根こそぎ倒れ、山頂広場に横たわる姿を目にするのは何とも痛々しい。
792m峰の山頂広場
792m峰の山頂広場

ピークの北側に出ると途端に蛇谷ヶ峰の山頂とこれから辿る尾根を眺望することが出来る。この眺望を楽しみながらランチにするとしよう。さすがに尾根では急に風が強く感じられる。大きな杉の樹を風除けにして湯を沸かし、ハンバーグとレトルトのカレーを温める。
792m峰より蛇谷ヶ峰へ向かう尾根道を望んで
792m峰より蛇谷ヶ峰へ向かう尾根道を望んで

軽いランチを済ませるといよいよ蛇谷ヶ峰を目指して、この南西尾根を辿る。尾根は小さなアップダウンを繰り返しながら緩やかに登ってゆく。尾根には薄い踏み跡はあるものの、植谷の左岸尾根に見られた古道は最早、明らかではない。

尾根上の小さなピークではところどころに天然の杉の樹がみられる。樹高はそれほどはないものの、幹の立派な大樹が少なくない。杉の姿が目立たなくなると、山毛欅の多い明るい樹林が続くようになる。尾根からは随所に開ける好展望もこの縦走路の大きな魅力である。
尾根上の台杉
尾根上の台杉
反射板のある西峰を目指して最後の登りに差し掛かるとピーク直下では樹も少なくなり、背後の展望が大きく開けると、これまで辿ってきた縦走路と植谷左岸尾根を振り返ることが出来る。
辿ってきた尾根を振り返る
辿ってきた尾根を振り返る

反射板からは明瞭な一般登山道を歩くことになる。東へと尾根を辿るとすぐにも小栗栖山西峰の立派な山名標がある。人口に膾炙している蛇谷ヶ峰とは高島における名称であるのに対して、小栗栖山とは朽木におけるこの山の呼称である。

西峰からは蛇谷ヶ峰本峰との間の小さな鞍部へと下る登山路は雪解けの水が絶え間なく流れ続けている。鞍部から蛇谷ヶ峰本峰への登り返しの登山道には雪が覆う箇所が多いが、雪の上を歩くと多数の踏み抜きが生じる。踏み抜きで雪が割れると、登山道脇で雪の下に埋もれていた樹の幹がバネ仕掛けのように跳ね上がる。それに呼応するかのように登山路から離れた場所でも雪の下から幹を跳ね上がらせる樹が現れる。まさに春の覚醒めのようだ。

まだ雪に覆われている蛇谷ヶ峰の山頂に辿り着くと、山頂からは展望が一気に広がることを期待していたのだが、視界に飛び込んできたのはカーテンのように眺望を遮る白い雲ばかりであった。

下山は蛇谷ヶ峰から西にほぼ真っすぐに延びる尾根を下ることになるが、植谷の右岸尾根に相当する。山と高原地図にも書かれているように、山毛欅、小楢の多い、気持ちのよい自然林が続く。尾根の下部、猪の馬場のあたりに来ると赤松の美林が広がる尾根上の広場となる。マツクイムシの猛威に曝されることなく、なんとかこの美林が保たれて欲しいものだと願うばかりだ。
猪の馬場
猪の馬場

猪の馬場を過ぎると忽然と林道終点に飛び出した。林道を下ると完全に錆びついた古い廃車が現われる。車の中にはいすゞ自動車と書いてあるので旧いISUZUの車なのだろう。果たしていつからここにあるのだろう、雪で立ち往生したのだろうか、などと空想を巡らすことになる。おそらく永遠にここに留まり続けるのだろう。その錆びついた姿は廃棄物というより倒木で荒廃しつつある林道に違和感なく存在しているようにも思えるのだった。
車.jpg

九十九折の林道をショートカットして、車を停めた駐車地に戻る。R367を北に向かい朽木でHさんに表敬訪問すると、上原酒造の「杣の天狗」と「あどあずみ」を入手して京都への帰路についたのだった。

後にHさんに教えて頂いたところによると、林道の車は10年ほど前に不法投棄されたものらしいが、車が完全に錆びついているのは所有者をわからなくするために車を焼いて廃棄されたためらしい。何とも嘆かわしいことで、車が哀れに思われてならない。
山猫 🐾
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山日和
記事: 3573
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【比良】古道を辿って蛇谷ヶ峰へ

投稿記事 by 山日和 »

yamanekoさん、こんばんは。

久しぶりの週半ばの休日、日がな雨の予報ではあったが、前日になると雨が上がる時間の予報が早くなり、昼過ぎには雨が止む予報となる。

この日は意外に悪くならなかったですね。私は行けない日でしたが。

花折峠を越え、坂下のあたりでは電光掲示板には気温が18℃と表示されている。京都市内は20℃にまで上がるとの予想であったが、この季節にここで信じられないような暖かさだ。この気温だと山の雪は一気に融けてしまうことだろう。

まったくですね。ただ山の雪が融ける一番の要素は雨ですね。気温が高くなっても雨が降らなければ意外に残っているものです。

白倉岳の東斜面には光があたっている。北東の方角の空が明るいことを理由に急遽、蛇谷ヶ峰へと山行先を変更する。標高は901.7m、雲が下ることはないだろうから、山頂は雲の下だろう。

この臨機応変さは勝手知ったる山域の強みですね~。 :lol:

この蛇谷ヶ峰に登るルートとしては躊躇なく植谷峠を経て山頂へ辿り着く南西尾根を選択する。

蛇谷ヶ峰は1度登ったきりです。しかも去年の1月が初めて。なんとなく足が向かなかった山の代表格みたいな山です。地形図で見てもこの尾根は良さげですね。

多数の杉の倒木により道は荒れてはいるが、すぐにも掘割式の明瞭な古道が現れる。この古道は当初、植谷峠道かと思ったが、昔の地図によると植谷峠道は植谷に沿ってつけられた谷道であった・・・との情報があり、この古道は植谷峠道とは別個のものかもしれない。しかし、蛇谷ヶ峰の南にある畑集落へ抜ける古道の一つであったのは間違いないだろう。

野坂山地でもよく見られる古い杣道かもしれませんね。びっくりするぐらい良く掘り込まれた道があっちこっちで見られます。

武奈ヶ岳は上の方は当然ながら、雲の中だ。尾根を少し北に辿ると792m峰である。広い山頂広場は気持ちのいい場所の筈なのだが、立派な山毛欅の樹が根こそぎ倒れ、山頂広場に横たわる姿を目にするのは何とも痛々しい。

それは残念ですねえ。ブナが健在ならパラダイスだったでしょうか。

尾根上の小さなピークではところどころに天然の杉の樹がみられる。樹高はそれほどはないものの、幹の立派な大樹が少なくない。杉の姿が目立たなくなると、山毛欅の多い明るい樹林が続くようになる。尾根からは随所に開ける好展望もこの縦走路の大きな魅力である。

このあたりは気持ち良く歩けそうですね。候補地に入れておきます。

人口に膾炙している蛇谷ヶ峰とは高島における名称であるのに対して、小栗栖山とは朽木におけるこの山の呼称である。

オグラスという名前は雰囲気がありますね。蛇谷と言うとなんかおどろおどろしいですが、響きが優しいです。

踏み抜きで雪が割れると、登山道脇で雪の下に埋もれていた樹の幹がバネ仕掛けのように跳ね上がる。それに呼応するかのように登山路から離れた場所でも雪の下から幹を跳ね上がらせる樹が現れる。まさに春の覚醒めのようだ。

これで股間をやられないように注意が必要です。愚息が春の覚醒めにならないように。 :mrgreen:

まだ雪に覆われている蛇谷ヶ峰の山頂に辿り着くと、山頂からは展望が一気に広がることを期待していたのだが、視界に飛び込んできたのはカーテンのように眺望を遮る白い雲ばかりであった。

これは残念でしたね。でも当初の予報からすれば降られないだけ良しとせねば。 :D

下山は蛇谷ヶ峰から西にほぼ真っすぐに延びる尾根を下ることになるが、植谷の右岸尾根に相当する。山と高原地図にも書かれているように、山毛欅、小楢の多い、気持ちのよい自然林が続く。尾根の下部、猪の馬場のあたりに来ると赤松の美林が広がる尾根上の広場となる。

なるほど。メモメモ。

おそらく永遠にここに留まり続けるのだろう。その錆びついた姿は廃棄物というより倒木で荒廃しつつある林道に違和感なく存在しているようにも思えるのだった。

大峰の一ノタワ付近のタイタンみたいなもんでしょうか。

後にHさんに教えて頂いたところによると、林道の車は10年ほど前に不法投棄されたものらしいが、車が完全に錆びついているのは所有者をわからなくするために車を焼いて廃棄されたためらしい。何とも嘆かわしいことで、車が哀れに思われてならない。

この話は聞かない方がよかったですね。 :oops:

                山日和


yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

Re: 【比良】古道を辿って蛇谷ヶ峰へ

投稿記事 by yamaneko0922 »

山日和さん コメント有難うございます 

>蛇谷ヶ峰は1度登ったきりです。しかも去年の1月が初めて。なんとなく足が向かなかった山の代表格みたいな山です。地形図で見てもこの尾根は良さげですね。

意外ではありますが、登りやすい分、季節を問わず人が多そう・・・ということもありますでしょうか。
実際、私も次男を最初に連れていったのがこの山で、多くの人とすれ違いました。しかし、この南西尾根は実際、非常に良いと思います。最初の樅や赤松の樹林と林相を変えていくあたりもいいかと。

>野坂山地でもよく見られる古い杣道かもしれませんね。びっくりするぐらい良く掘り込まれた道があっちこっちで見られます。

この古道の雰囲気が、この植谷左岸の尾根の魅力を引き立てていると思います。

>それは残念ですねえ。ブナが健在ならパラダイスだったでしょうか。
>このあたりは気持ち良く歩けそうですね。候補地に入れておきます。


スノーシューで歩くには格好の尾根ではないかと思います。
植谷峠と思しきあたり
植谷峠と思しきあたり
p816への登り
p816への登り

特にこのp792はこの尾根の白眉かと思います。展望も良くて、無名峰であるのが勿体ないくらいだと思います。
きっと山日和師匠ならランチの場所に気に入って下さることと期待されます、

>なるほど。メモメモ。

芦原岳や庄部谷山の山毛欅の林に比べたら、林の壮麗さはありませんが、雰囲気のいい林が続くように思いました。

>大峰の一ノタワ付近のタイタンみたいなもんでしょうか。

なんでしょう?シロヤシオが咲く季節に探してみたいと思います。

>この話は聞かない方がよかったですね。

御意です。しかし、聞いてしまった以上・・・ :oops:
山猫 🐾
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