【台高】霧氷の回廊を行く 中奥川流域周回(山猫version)

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yamaneko0922
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登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39

【台高】霧氷の回廊を行く 中奥川流域周回(山猫version)

投稿記事 by yamaneko0922 » 2019年1月08日(火) 00:26

【 日 付 】2019年1月2日~3日
【 山 域 】台高
【メンバー】山猫 & 家内
【 天 候 】二日間とも曇時々雪
【 ルート 】(1日目)中奥林道入口の駐車場7:07~9:39峰山10:03~11:40嵓山~12:18ジョウブツ山~12:33地蔵辻~13:10麦谷林道登山口~13:45二階岳~14:22木ノ実矢塚14:33~15:07薊岳(雄岳)15:22~15:49P1334~17:04前山17:07~17:17前山東のスキー場跡地
(2日目)三ツ塚5:14~5:44明神岳~6:42笹ヶ峰6:45~6:58瀬戸越7:02~7:36千石山(奥ノ迷峰)7:38~9:03赤倉山9:13~10:57P1238~11:16高塚11:19~11:48戸倉山11:51~12:30登尾手前の分岐~13:35高尾山~14:15大鯛山~15:18白鬚岳15:23~15:58高尾~16:28中奥林道詰~18:11中奥林道入口

正月の2日~3日、家内の実家に子供達を預けての泊りがけ山行が恒例となりつつある。湖北、奥越にはテン泊山行をしたいルートが幾つもあるのだが、このあたりは明らかに天気が悪そうである。少しでも天候が良いことを期待して奈良の南部に目を向けると以前から気になっていた赤グラ山~白鬚岳の稜線に目が行く。

昨年、4月の上旬だというのに季節外れの雪に見舞われつつ東谷出合もから神の谷川源流域を周回する形で白鬚岳に登頂した際のことである。それまで雪だったのが、山頂で突如、晴天へと変わり、薄衣のような霧氷を纏った樹々の向こうには冠雪した赤嵓山へと続く長い縦走路が視界に入ってきたのであった。

この尾根の縦走のためには明神平か笹ヶ峰あたりでのテン泊が必要と思われる。下山予定の中奥林道の入り口に車を停めれば峰山、ジョウブツ、薊岳を経て笹ヶ峰に至るのは程よい行程と思われた。

【1日目】
中奥川を渡った橋の南詰にある駐車適地に辿り着いたのは7時前である。林道の左側に車を停めるが、右側の広い広場では焚き火をしている3人の男性がいる。林業関係の方かと思ったが、前夜からキャンプをして若者三人であった。よくぞこのような場所を知っていたものだと感心してしまう。彼らは私を林業関連の人物と思い、無断のキャンプを咎められるものと思い込んだらしい。

中奥川を挟んで対岸の中奥のあたりを見上げると、急峻な山腹には鬼火のような明かりがいくつか見える。おそらく中奥集落のものなのであろう。橋を渡って中奥集落を目指して歩き始めるとあたりは急に明るくなり始めた。九十九折の舗装路を登ってゆくと、山の斜面が突然開け、忽然と集落が現れる。集落の中の細い道を辿り、最上部にまで辿り着くと小さなお寺がある。正月の行事の予定が記されており、集落の人達が集まるのだろう。

寺の前からは林の中へと続く小さな道があるので杣道であることを期待して入ってみる。道はすぐに崩落箇所があり、荒廃しているのだが、辿っていくと再び集落に出た。地図では中奥集落は東西に二つに集落が別れているのだが、その西側の方に出たようだ。正面には小白髭岳が大きく聳える。白鬚岳の山頂部は雲の中だ。

右手の植林地の斜面に入る。作業道から尾根筋に上がろうと思っていたのだが、一本の明瞭な作業道にのる。どうやら斜面をトラバースしながら尾根を目指して高度をあげていくようだ。行けるところまで行ってみようと道を辿ることにする。尾根がすぐ左手に見えてくるようになると、杉の若木の間には馬酔木の藪が目立つようになったが、薄い踏み跡を辿り鞍部に出た。

ここからは混合林となるが急に尾根の勾配がきつくなる。斜面を右手の方にトラバースしながら登ってゆく踏み跡とテープを見つけ、テープを辿ってみるが、気がついてみると尾根から離れていく。やがてテープと踏み跡も上へと登りはじめる。ところどころに小さな嵓がある。嵓を避けながら登ってゆくと、間もなく尾根筋から登ってくる踏み跡と合流した。どちらを登ったとしても勾配がかなり急であることには違いない。
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峰山山頂
尾根上には頻繁に小さな嵓が出現する。驚いたことに岩場を辿る黒いチューブが目につく。一見、集落を水を引くホースのようにも思われるが、こんな高いところで、しかも谷筋ではないので、水を引いているものではないだろう。


山頂直下では再び檜の植林地となる。相変わらず傾斜は急であるが、斜面をジグザグと辿って頂上に辿り着く。最初に目に飛び込んできたのは霧氷を纏ったブナの樹々である。山頂を境に北側はブナの自然林であり、雪の量も途端に多くなるのであった。それまでの景色とのあまりのギャップに家内も「まるで別世界」との一言。峰山の山頂標は絵が達者な方が描かれたのであろう。可愛らしい梟の絵が印象的であった。

左手に視線を向けたところで、先程の黒いチューブの正体がわかった。アンテナが立っていたのである。近づいてみるとNHKと記されたボックスがアンテナの足元にある。要は深い谷あいでテレビの電波が届かないから、ここで電波を受信する必要があるようだ。それにしても標高差はゆうに700mはあるところを長いケーブルを敷設したその労苦が偲ばれる。

ここからは雪の斜面の急降となる。やせ尾根の鞍部に下りると急斜面の登り返しが待っている。ややはり尾根上には小さなクラが目立つ。岩を巻きながら尾根を登ってゆく。やがて尾根がなだらかになると西側には檜の植林が続くようになる。

やがて尾根上のピーク、1290m峰の南側では再び急斜面となる。正面には大きな嵓が現れるので、これを左から巻いてピークに立つ。山名標があったのかもしれないが、ここは後で嵓岳と呼ばれるピークであったことを知る。南斜面の大きな嵓からそのように命名されているのではなかろうかと思う。
P1028654.JPG
山頂に立つと素晴らしい霧氷の世界が広がる。ここからはジョウブツにかけて、霧氷は徐々にスケール・アップしてゆく。標高が上がるにつれ気温が下がり、着氷の量が増えたのであろうが、初冬から真冬へと深まりつつある冬のグラデーションの中を彷徨っているような感覚を抱く。興味深いのは霧氷の形である。通常は風向きが一定で、霧氷は一方向のみについていることが多いように思うが、このあたりでは風が舞うのだろう。四方八方に様々な方向に成長した霧氷が風に舞う様は新種の有棘植物のようである。

足元の雪も増えてゆくが、深いところでも膝下までであり、ツボ足で何とかなる程度である。なだらかな尾根を辿るうちに次のピークに至る。山名標には両仏山西峰と記されている。ところで、地図ではジョウブツと記されているが、果たしてこの両仏をそのように読むのだろうか。
P1028665.JPG
麦谷林道の霧氷の回廊
尾根を東に下り、NTTの電波塔を越えると両仏山のピークである。杉林を下り、地蔵越に達すると、ここからは麦谷林道となる。林道の両側に霧氷の樹々が立ち並ぶ様はまさに霧氷の回廊と表現したくなる光景である。緩やかに林道は下ってゆくのだが、標高がわずかに下がると霧氷が急に薄くなる。林道で距離を稼いで、まもなく二階岳の西側の登山口に至る。

はじめは植林地の登りから始まるが、二階岳の山頂に辿り着くと、再び素晴らしい霧氷の世界が始まった。ところで、この日はどうも家内の足取りがいつもに比し、かなり遅い。この分でいくと笹ヶ峰に辿り着くのを諦めて、幕営地を明神平にしなければならないだろう。

薊岳を越えてからは、厳しい風雪に見舞われようになった。時折、吹きつける風には細かい霧氷が含まれているせいだろう、頬に突き刺さる風は痛みを伴う。雪に埋もれてほとんど消えかけであるが、ところどころに僅かに残っている一人分のトレースがある。山頂直下の下りが終わると後はほとんどアップダウンの少ない尾根道が延々と続く。風の方向のせいだろう。尾根の西側斜面の樹林は霧氷で真っ白に化粧を施されているが、東側は薄化粧である。まさに冬のグラデーションの境界を歩んでゆく。
P1028700.JPG
薊岳の北東尾根
霧氷で化粧された西側斜面
尾根は途中で北向きから東向きへと大きく方向を変えると、いつしか先程までの風雪も和らぐ。ふと空を見上げると雲の合間から青い晴れ間が覗く。周囲の雪も淡いブルーグレーに染まってゆくのであった。

本来、平坦で歩きやすい尾根道のはずなのだが、家内の足取りはさらに遅くなり、牛歩の如くである。この分でいくと笹ヶ峰どころか、明るいうちに明神平まで辿り着くのも難しいのではないかという危惧が脳裏をかすめる。結局、前山には山と高原地図のコースタイムの1.5倍ほどの時間をかけて辿り着いたのであった。

前山の少し東で尾根から明神平の方にむかったところに地図上ではなだらかな平坦地がある。果たして斜面を下ってみると、なだらかな傾斜がついてはいるが、テント一張り分ほどの平坦地がみつかった。どうやら、かつてのスキー場の跡地のようだ。鉄錆色のリフトの跡が暗くなりはじめて蒼みを帯びた雪景色の中で無言で佇んでいるのだった。

早速、テントを張る。この日、携行してきたのはMSRの3人用ドーム型テントである。本来、長男を伴って3人で雪山に行くために購入したものであったが、2人で使用すると中はかなり広く感じられる。周囲にも張り綱を十分なテンションで張る。元来、風に強いテントだと思うが、風の影に入ったらしい。ほとんど風が吹きつけることはない。

まずはビールのおつまみにはネギ塩を加えた牛タンと霜降り平茸のソテーで料理は始まる。次はいよいよ今晩の夜のメイン、チゲ味噌鍋でえのき茸、ネギ、白菜、木綿豆腐などいろいろと具材を担ぎ上げてきたのだった。肉は前日から味噌漬けにしてきた砂ズリとセセリであるが、いずれも線維質でありセセリよりモモ肉の方が良かったかもしれない。この日、運んできたのはいずれも奈良南部の酒であり、花巴(はなともえ)のうすにごりと篠峯の雄町米による山廃純米吟醸である。いずれも美酒ではあったが、花巴の華やかな香りは圧倒的であった。最後は雑炊で〆にして眠りにつく。この日は早朝まで快適に眠ることが出来たのであった。


【2日目】
テントを畳んで出発の用意が整ったのは5時過ぎであった。暗闇に濃霧の漂う霧氷の樹林を歩くのは幽界の中を彷徨うかの如くだ。勿論、そんな経験はないのだが・・・。
三ツ塚のあたりと思われるが、すぐ上の稜線からは雪の上に前日のものと思われる多数の踏み跡がある。このあたりの地理は頭に入っているつもりであったが、不注意にも右手の斜面をトラバースするトレースを辿ってしまう。踏み跡が尾根から下ってくる別のトレースと合流して左手に曲がっていくのを見て気がついた。明神岳の北斜面をトラバースして桧塚に向かうトレースを辿ってしまっていたのだ。尾根に登ると「千石岳→」と見覚えのある道標を目にする。

ここからは勿論、雪の上には踏み跡もなにもない。尾根の地形を同定して先へ進む。笹ヶ峰のI峰に差し掛かるとあたりの暗いながらも樹高の高いブナの樹が多く、壮麗な林が広がっていることがわかる。未明の暗いうちにこの美しい林を通過してしまうことが勿体なく思われてならない。なだらかな台地状の山頂は方向を失いそうになる。実際、気がついたらコースアウトして東の尾根に入るところであった。

笹ヶ峰の主峰にさしかかる頃、ようやくライトの明かりを落として歩けるほど明るくなってきた。夜明けが雪や霧氷を蒼一色に染め上げる束の間の美しい時間である。いつしか霧も晴れている。蒼い森の情景に対して、幾度かカメラのシャッターを切るのだが、哀しいことにすべての写真がブレているのだった。念の為、探してみたが、流石にグーさんは今回はおられなかった。やはり伊勢山上にいらっしゃるのだろうか
P1038718.JPG
笹ヶ峰にて
すべてが蒼く染まる時間
笹ヶ峰を越えると、雲の下で東の空が淡い薔薇色に染まっている。雲がかかっているのが山の上だけなのであろう。雲の彼方の朝焼けの空が雲の下に見えているようだ。千石山への登りになるとこれまでのブナの広い尾根とは一転し、ヤセ尾根を登ることになる。再び雲の中へと入っていく。雲の中はかなりの強風である。
P1038724.JPG
千石山からの急降を下ると雲の下に出る。途端に周囲の見晴らしがよい。すぐ隣に気持ちのよさそうな草原の尾根が見える。東峰まで辿って、この尾根を下るもの一法であった。

家内を先に歩かせて、私が後ろを歩くうちに気がついたら片方のチェーンスパイクがない。探しに戻るかどうしようかと躊躇われたが、少し先を急ぎたいので諦めることにした。しかし、家内が私に先行して歩いていたのはわずかに10分程の間だったので、探しに戻っておけばよかったかもしれないと後に後悔するのことになるのだが・・・

右手には赤グラ山からのこれから辿る長い尾根が見えてくる。尾根の左手には赤グラ山の山頂がある筈なのだが、千石山と同様、山頂部は雲の中だ。赤嵓山への登りはいくつもの小ピークを越えていくことになる。山頂が雲で見えないせいもあるが、次こそは山頂かもしれないと期待しながらピークを登り詰めるが、山頂ではなかったという失念を繰り返し味わうことになる。この日の朝も家内は絶不調だ。白髪岳までの縦走は諦めて途中の何処からか中奥川沿いの林道に下らねばならないだろう。山日和さんに事前にエスケープルートを相談しておかなかったことを後悔し始める。

ようやく辿り着いた赤グラ山の山頂は探し方が悪かったのだろうか、山名標は見当たらず、杉の倒木の下に三角点があるばかりの殺風景なところであった。さて、いよいよここから目指す尾根に入りたいところであるが、尾根の下降点がよくわからない。
西側の急斜面を下るうちに尾根の形が見えてきた。すぐに雲の下に出て視界が晴れるのだが、気がつくと二重山稜となっており、辿っている尾根が樹林のヤセ尾根であるのに対して、すぐ隣の北側には広い草原の尾根が広がっている。この尾根を下りたいところであった。

気がつくと、今しがたまで樹々を銀白に彩っていた霧氷はたちどころに姿を消すが、稜線上に吹き荒れていた風も途端に穏やかになる。それまで地面を覆い尽くしていた雪も薄くなり、一気に初冬の景色に舞い戻る。だが尾根を下りはじめて私が驚いたのは、突然の家内の体調の快復である。それまでは私が歩いた時間だけ家内を待つということを余儀なくされていたのが、突如としてスピードも上がり、ようやく普段の調子を取り戻したようである。

やせ尾根となる箇所ところが多いが、尾根の平坦さもあって順調に距離を稼ぐ。やがて最初のピーク1275m峰が近づいてくる。赤嵓山への台高主脈から眺めていた時には小さな起伏に思われたが、ピークに辿り着くと、その西側には意外と急峻な下りが待っていた。鞍部に下ると、今度は山頂部に霧氷がついた次のピーク、高塚から戸倉山へと至る尾根が見えて見えてくる。

私の所有している2017年版の山と高原地図においてはこのあたりにはブッシュと書き込まれている。人によってはこの尾根の縦走を躊躇する理由になっているのではないかと思われる。果たしてどんな藪漕ぎが待っているのかと覚悟はしていたのだが、拍子抜けすることに藪らしい藪に遭遇することなく、ヒメシャラの樹林があるばかりだ。この樹林になる以前はヒメシャラがブッシュだった時があったのだろうか。高塚の山頂が近づくと、霧氷を纏ったヒメシャラの樹々の間にブナの樹が目立つ。

高塚を越えると、尾根上は伐採地となり展望がよい。戸倉山の向こうに登尾が意外と大きな山容を広げている。展望に見惚れて歩いていたせいだろう。いきなり靴紐に何かが絡まり、足元を掬われて派手に転倒する。靴紐に絡みついたのは錆びついたワイヤーである。あたりを見回すと旧い鹿よけネットの金網がところどころ破れたまま尾根上に放置されているのだった。当然、鹿よけネットとしての用をなしていない訳であるが、薄く雪が積もった状態では周囲の枯れ葉と見分けがつきにくく、まるで罠である。
P1038769.JPG
高塚(右)から戸倉山(左)への稜線
戸倉山への尾根筋は伐採されており、終始、好展望が続く。すぐ南には北股川を挟んで弥次平峰を望む。この辺りがこの長大な尾根のハイライトと云えるだろう。好展望の伐採地は登尾から白鬚岳に向かう分岐まで続く。
P1038780.JPG
登尾(右)と遥か彼方に望む白髪岳(左)
戸倉山とはわずかな高度の差であるが、このピークの直下で急に樹々が霧氷を纏う。赤嵓山から辿ってきた尾根を振り返ると、赤嵓山は相変わらず雲の中であるが、既に遥か彼方である。登尾の山頂は樹林の中を西にわずかに進んだところであるが、少しでも下山の時間が早い方が良い。山頂を訪れることは諦めて、白髪岳への縦走路を南に下る。

ここでも山と高原地図にはブッシュと書き込みがあるが、尾根の東側は植林地という光景が続き、藪らしい藪は見当たらない。尾根を下ると尾根全体が広い植林地の中を歩くようになる。高尾山にかけてのなだらかなピークを登ると、一瞬、雲の間から白鬚岳が顔をだす。高尾山というと全国で最も登山者の多い東京の山、或いは広島近郊の山を思い出すが、こちらの高尾山は三名標もないなんとも寂しい山頂である。

東側は植林地、右側はヒメシャラの目立つ自然林という単調な林相の尾根道を辿り、次の大鯛山に辿り着く。大鯛山は樹の根本に半分割れてしまった山名標があるが、最初の峰山で目にしたのと同じ、可愛らしいフクロウが描かれた山名標であった。時折、樹間から見える白鬚岳は山頂部は再び雲に覆われてしまっている。

大鯛山を過ぎるといよいよ白鬚岳への長い登りとなる。雲の中に入ってゆくと再びチラホラと雪が降り始める。周囲の樹々が再び霧氷を纏うようになると、途端に足元の雪が増えるが、くるぶしが埋まるほどではない。残念なことに残っている片方のチェーンスパイクも、チェーンの一つが伸びてしまい使い物にならなくなってしまう。おそらく降り積もってまだ間もないのだろう。台高の新雪は乾いており、サラサラしている。チェーンスパイクのない靴では決して登りやすいとはいえない雪質であった。

白鬚岳の山頂はガスで今回は全く視界はない。ここからはいよいよ最後の下りであるが、山と高原地図では実線となるので、さぞかし歩きやすい登山路が待っていることだろうと期待したのだが、その期待はどうやら甘かったようだ。まずは雪の急斜面の下りである。緩く登り返して1286m峰に至るのだが、問題はこのピークから北西に延びる尾根からの二箇所の下りである。急峻な上に薄く雪が積もったヤセ尾根の斜面は滑りやすく、緊張が強いられる。特に2つ目の下りは今回のルートの中で最も厳しい下りであった。

尾根上の最後のピーク高尾からは一転して、杉林の中の歩きやすい作業道となる。尾根の下部に至ると踏み跡は左手の北斜面へと降りてゆく。それまでは頻繁にテープがあり、登山路の曲がり角では道標もあったのであるが、何故かここへ来て下山路を示す道標もテープもない。国土地理院の地図では尾根芯を下る破線が記されているので、尾根を少し下ってみるが、このあたりから途端に急峻になる尾根に踏み跡はなさそうだ。北側の急斜面を降りる踏み跡を辿ると、積雪してはいるもののジグザグに斜面を降りる道を見極めることはさほど難しくなく、無事、林道の終点に辿り着く。

時間は間もなく16時半になろうかというところ、しかし、ここからの林道歩きが意外と長長かった。家内の実家にいる子供達も心配するのでなるべく早く電波圏内に辿り着きたいので、二人共早足で黙々と歩く。深い谷間では暗くなるのが早い。早々にヘッデンのライトをつけることになる。

突如、道が消えたかと思うと、林道が大きく崩落しているのだった。法面に沿って靴幅分のコンクリートを辿って、崩落地点の対岸に辿り着くことが出来たが、この法面が崩落するのも時間の問題だろう。やがて水力発電所と思われる建物に出ると、広い駐車場があり、ここからは舗装路となる。暗闇の中から間断なく聞こえてくる沢の音を聞きながら、鬼火のような中奥集落の明かりを再び山中に見たのは18時を過ぎたところだった。

車に乗り込んで、吉野の山間を抜けると空はすっかり晴れて、多くの星が瞬いている。明日は北陸に至るまで関西一円、天気が良さそうだ。家内の実家に辿り着くと流石に全身の筋肉が疲れを訴えているのだった。
最後に編集したユーザー yamaneko0922 on 2019年1月09日(水) 09:24 [ 編集 3 回目 ]

シュークリーム
記事: 1568
登録日時: 2012年2月26日(日) 17:35
住所: 三重県津市

Re: 【台高】霧氷の回廊を行く 中奥川源流周回(山猫version)

投稿記事 by シュークリーム » 2019年1月08日(火) 08:44

yamanekoさん、はじめまして。シュークリームと言います。
このところの元気な山レポ、興味深く拝見しています。それにしてもすごい高頻度の山行ですね。

私も一頃雪中テント泊をよくやっていたんですが、一度途絶えてしまうと再開するのが面倒くさくなってしばらく行っていません。昨年からはサンデー毎日になったので、またテン泊山行を再開したいと思っているところです。

私も台高は好きでよく行きますが、いつも三重県側からばかりで奈良県側からはほとんど入ったことがありません。今回の山行記録も地図を見ながらようやくルートを把握することができました。そんなことで、山レポそのものに対するレスができませんが、ごめんなさいね。

やぶこぎネットは昔のニフティーのネットコミュニティーを引き継いでできたコミュニティということですが、その頃の投稿を見るとみなさん若くて、レスなども非常に盛んに行われていたことがわかります。その頃に比べると、メンバーが皆高齢化してきてだんだん勢いがなくなってきているのがよくわかります。

そんな中で、yamanekoさんのレポがやぶこぎネットを盛り上げてくれていることを歓迎します。今後も遠慮なくどんどん投稿してくださいね。
やぶこぎネットはネットだけでなく、年2回のオフ会、山日和さん主催のスノー衆、やぶこぎネットの公式行事ではないですが今はグーさんが主催している台高の春の山菜闇天や秋のきのこ闇天などもありますので、良かったら参加してみてください。

では、またどこかの冬山で。
                         @シュークリーム@

yamaneko0922
記事: 53
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39

Re: 【台高】霧氷の回廊を行く 中奥川流域周回(山猫version)

投稿記事 by yamaneko0922 » 2019年1月08日(火) 10:01

シュークリームさん

温かい歓迎のコメント、どうも有難うございます。

山日和さんと山中でお会いし、このサイトにお邪魔させて頂くようになってからまだ日が浅い新参者ではありますが、山日和さんをはじめ皆様方から頂く温かいコメントや貴重な情報の有難さが身に滲みる今日この頃です。

先日の比良の山行へのグーさんのコメントでもレスさせて頂いたのですが、今はオフシーズンで少し仕事に余裕があるのです。言葉に甘えさせて頂いて、レポをアップさせて頂きたいと思います。また、次のオフ会はなんとかして予定を確保したいと思いますので、皆様方にお会い出来ますこと、非常に楽しみにしております。

今後共どうぞよろしくお願い致します。

グー(伊勢山上住人)
記事: 1673
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:10
連絡を取る:

Re: 【台高】霧氷の回廊を行く 中奥川流域周回(山猫version)

投稿記事 by グー(伊勢山上住人) » 2019年1月08日(火) 23:11

yamanekoさん、こんばんは。
よ~け歩かれ、よ~け書かれた力作ですね。

でも、アップする前に目通しをされましたか?
yamanekoさんは一時も早くアップしておいて、後から修正する主義なのかな?

中奥でなく「中森川」「中森集落」って言うのですか。グーは全くの不案内です。
白鬚岳に登った時に山中の集落に「まるでマチュピチュ」と感じました。
(マチュピチュがどんな所なのかは知りませんが)

可愛らしい梟の絵が印象的であった。

どなたが作成されたのかかなり前からグーもこの山名板を見てます。
ただ、この山名板がノコギリで切られているのもよく見ます。
ノコギリを入れた人の心のうちは?

初冬から真冬へと深まりつつある冬のグラデーションの中を彷徨っているような感覚を抱く。

出ましたyamaneko文学。美しい表現ですね。

このあたりでは風が舞うのだろう。四方八方に様々な方向に成長した霧氷が風に舞う様は新種の有棘植物のようである。

エビの尻尾や金平糖よりも、この縫い針よりも細くトキトキに尖がった霧氷がグーは好きです。

この日はどうも家内の足取りがいつもに比し、かなり遅い。
平坦で歩きやすい尾根道のはずなのだが、家内の足取りはさらに遅くなり、牛歩の如くである。


+家内さんの体調が心配です。

時折、吹きつける風には細かい霧氷が含まれているせいだろう、肌に突き刺さる風は痛みを伴う。

ですです。顔をそむけ、風上側のほっぺに手袋を当てながらの歩きになります。

牛タンと霜降り平茸のソテー チゲ味噌鍋でえのき茸、ネギ、白菜、木綿豆腐
砂ズリとセセリ 花巴(はなともえ)のうすにごりと篠峯の雄町米による山廃純米吟醸


ザックが重そう!!

幽界の中を彷徨うかの如くだ。勿論、そんな経験はないのだが・・・。

いいですね~。天地の境も分からない幻想的な空間に包まれて。

不注意にも右手の斜面をトラバースするトレースを辿ってしまう。

? 右手の斜面はグーはトラバースようしません。

踏み跡が尾根から下ってくる別のトレースと合流して左手に曲がっていくのを見て気がついた。
明神岳の北斜面をトラバースして桧塚に向かうトレースを辿ってしまっていたのだ。尾根に登る


? 明神岳の北斜面をそのまま真っすぐ高度を下げずにトラバースすればまた縦走路に合流するのでは?

念の為、探してみたが、流石にグーさんは今回はおられなかった。やはり伊勢山上にいらっしゃるのだろうか

ありがとうございます。住人として伊勢山上の宣伝もさせてください。
20181231-19.jpg
伊勢山上のご朱印。カッコイイでしょ。


笹ヶ峰を越えると、雲の下で東の空が淡い薔薇色に染まっている。

おお!峰さんばりのいい色が撮れましたね。グーもこんな絵を撮りたいな。
ところで、ここヤブネットの場を構築して頂いている通風山さんから
「添付の画像は1枚200kb程度でお願いします」とのことです。(1回8枚までだったかな?)
yamanekoさんの画像はでか過ぎです。横幅800から1000ピクセルほどに縮小してから貼ってください。

千石山東峰まで辿って、この尾根を下るもの一法であった。

アケボノツツジの頃にまたお越しください。

次こそは山頂かもしれないと期待しながらピークを登り詰めるが、山頂ではなかったという失念を繰り返し味わうことになる。

ありますね~。ガックリと疲労感に襲われます。

だが尾根を下りはじめて私が驚いたのは、突然の家内の体調の快復である。

よかった よかった。 シンドかっただろうによく頑張る+家内さんです。

グーさんが主催している台高の春の山菜闇天や秋のきのこ闇天などもありますので、良かったら参加してみてください。

グーは声が大きいので主催しているようにみえますが、zippさんが創始者で、今はあめちゃんが段取り係です。
連絡係りとしてあめちゃんにあきんちょのメアドを伝えたのは吉だった・・・・・?


                   グー(伊勢山上住人)

yamaneko0922
記事: 53
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39

Re: 【台高】霧氷の回廊を行く 中奥川流域周回(山猫version)

投稿記事 by yamaneko0922 » 2019年1月09日(水) 12:10

グーさん コメント有難うございます。

>でも、アップする前に目通しをされましたか?
yamanekoさんは一時も早くアップしておいて、後から修正する主義なのかな?


バレバレですね。以降も連日、登山をしていたせいもあるのですが、ようやく出来上がったのが7日の深夜を過ぎたところで、今回は(も)確認しておりませんでした。 :o

>中奥でなく「中森川」「中森集落」って言うのですか。グーは全くの不案内です。

失礼しました。訂正させて頂きました。

>白鬚岳に登った時に山中の集落に「まるでマチュピチュ」と感じました。

その山中の集落、とても興味があるのですが、神之谷でしょうか?登った時のルートを教えて頂けないでしょうか?

>どなたが作成されたのかかなり前からグーもこの山名板を見てます。
ただ、この山名板がノコギリで切られているのもよく見ます。
ノコギリを入れた人の心のうちは?


信じられないことをする人がいるものですね。心が痛むお話です。
大鯛山の山名標は人為的なのか自然のせいなのか、見直しましたが、よくわかりませんでした。
P1028640s.jpg
P1038794s.jpg

>エビの尻尾や金平糖よりも、この縫い針よりも細くトキトキに尖がった霧氷がグーは好きです。


全くの同感です。しかし、トキトキという形容詞は始めて知りました。さすがグー文学ですね。
P1028659s.jpg
>>時折、吹きつける風には細かい霧氷が含まれているせいだろう、肌に突き刺さる風は痛みを伴う。

>ですです。顔をそむけ、風上側のほっぺに手袋を当てながらの歩きになります。

肌→頬に訂正させて頂きました。次回からそうしてみたいと思います。 :D

>>幽界の中を彷徨うかの如くだ。勿論、そんな経験はないのだが・・・。

>いいですね~。天地の境も分からない幻想的な空間に包まれて。


普段はトレースのある雪の上は歩きたくないのですが、この時ばかりはトレースが欲しくなりました。

? 右手の斜面はグーはトラバースようしません。

失礼しました。左です。訂正させて頂きました。左右に極端に弱い山猫でした。

? 明神岳の北斜面をそのまま真っすぐ高度を下げずにトラバースすればまた縦走路に合流するのでは?

仰ると通りです。視界が確保できれば間違いなくそうしたいと思います。しかし、わずか数m先までしか見えない幽界においてはトラバースを続ける勇気がありませんでした。

>ところで、ここヤブネットの場を構築して頂いている通風山さんから
「添付の画像は1枚200kb程度でお願いします」とのことです。(1回8枚までだったかな?)
yamanekoさんの画像はでか過ぎです。横幅800から1000ピクセルほどに縮小してから貼ってください。

なんと!認識しておりませんでした。 :o
以降、そうさせて頂きます。

>おお!峰さんばりのいい色が撮れましたね。グーもこんな絵を撮りたいな。

有難うございます。それではついでにもう一枚。
今度は画像のサイズを小さくしてみました。
P1038726s.jpg
>アケボノツツジの頃にまたお越しください。

有難うございます。アケボノツツジを楽しみにしておりました。

>グーは声が大きいので主催しているようにみえますが、zippさんが創始者で、今はあめちゃんが段取り係です。

了解いたしました。
あめちゃん、どうぞ宜しくお願いします。

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