何せ尾根専ですから。オネェ専ではございません。(使い古されたフレーズですが・・・。)
さて、ヤブのみなさんの精力的な活動には刺激されっぱなし。
okuさんのレポを見ていなければ、軟弱な私のことだから、恐らく不動山にトライすることは無かったであろうし、今回の未踏の山 若丸にチャレンジして水戸納豆(みとうなった)のも、keikokuさんの100kmウルトラマラソンにしびれてしまったから。
【山域】奥美濃
【日付】7月16日(月)
【天候】曇りのち晴れ
【メンバー】単独
【ルート】塚4:05→若丸への稜線分岐(地点A)6:15→Ca916m7:05→Ca1072m7:55→9:15若丸山1285.7m10:00→南への尾根分岐11:15→梨平分岐(地点A)13:20→下山口14:30
若丸山は残雪期(今年4月)にたんぽぽさんが単独で、また、無雪期には3年ほど前、大垣山岳協会(OSK)さんがグループ行でこのコースを使い登頂していらっしゃる。
濃密なヤブ山のイメージがあるため、無雪期は沢登りが常識的な山行と考えられていたが、ダム湖により、沢は越前側からしか遡行できなくなったようだ。
美濃側からの登山にこだわりを持ってみえるOSKさんがこの尾根で登られたレポを見た瞬間、即決である。
ヤブにまみれてのビバーク(=翌日の無断欠勤)を避け、日の出前の登山開始を担保するため、車中前泊とする(車中で寝過ごせば同じことか)。
長いトンネルを抜け、塚に着くと、広い駐車場、きれいな公衆トイレ、ミニポケットパーク。
えー、こんな山奥に・・・。
若丸がブームになりつつあるとたんぽぽさんのレポにあったが、このことだったのか。
ならば、それほどヤブの心配はしなくていいのかな。
丑三つ時、目が覚める。確か塚の名の由来は、落人伝説と関係があるとか・・・、ぶるっ。
なーに、こちとら、なりきり牛若丸、亡霊の一人や二人・・・、ぶるぶるっ。
AM3:30、準備にかかる。ふと、山の取り付き場所を知らないことに気づく。
まっ、いいか、テキトーに取り付けばそのうち何とかなるだろうー。(私はハリマオさんのアバウト教の信者。)
4:05出発、暗い。
この時間ならもう少し薄明かりがあってもよさそうなものだが。
どっちみち、取り付きもわからないことだし、盲蛇におじずで、いこっと。
もさもさの急斜面を喘ぎながらよじ登ってゆく。
やらしい潅木密生地があったりして、いきなり手強い。
しかーし、私は以前のか弱い私ではない。経験は人を強くする。この程度は織り込み済み。
一方で、30分もこの状態が続いたため、心臓があぶってきた。
しまった、経験は人を強くするが、肉体の経年劣化は人を年寄りにする。
とすると、イーブンか。
頻繁に休憩を取りながら水分補給し、体を正常状態へ戻そうとするが、容易にはもとに戻らない。
ふと、「山の突然死」というタイトルの本を思い出した。
まっ、若丸は逃げないし、チャンスは何度でもある、無理することもないか。
登山開始後40分程度で緩やかな斜面に出る。
ルートもはっきりしており、ブナの樹林がいい感じになってきた。
しばらく歩を進めるうちに、もとの体に戻ってきたことを感じる。
ブナはヒトに対して、メンタル面、フィジカル面ともによき効能を与えるに違いない。
正直、意外だった。
ヤブ山のイメージが強かったのに、こんなすばらしい雰囲気を味わうことが出来るとは。
うれしい誤算。
吹き抜ける風もひんやりとして新鮮。
取り付き区間とは雲泥の差。
まあしかし、あの苦しみがあったからこそ、この空間をより天国に近く感じさせてくれるのかもしれない。(決して昇天しかかっているのではない)
さて、問題は若丸へと続く稜線への取り付き部(梨平分岐)である。
メジャーな山ではないので、ポイントの見極めを慎重にしなくてはならない。
意識して丘陵台地の北端を歩くうち、だいぶ先にその稜線を見つける。
距離感が一致するところにたどり着くとピンクテープが巻いてある。
ここにもブームの片鱗が。
最初、細尾根を下るが、後はアップダウンも少なく、朝の稜線散歩に吹く涼風は気持ちいい。
尾根沿いは源流域だけにブナ林が続く。
こんな雰囲気いいコースなら必ずしもピークハントにこだわらず、この森を 彷徨 するだけでも訪ねた価値がある。
きっと、私が歩いた後は花の 芳香 が漂い、猿と雉が 奉公 いたしますと寄ってきそう。
ここで、 方向 転換、妄想から現実へ。
細尾根の後半、笹薮が現れるが大したことなく、若干の登りを経てちょっとした台地(916m)に到着。
残念ながら、曇天で薄もやがかかり、ピークは見えない。
どんどん歩を進め傾斜を詰めた先1072mまで、意外なほどヤブに悩まされない。
全くという訳ではないが、okuさん流に言うと「明々白々な道」かな。
獣のメインストリートということもあるのだろうが、ひょっとするとヤブマニアの間で秘かにブームになっているのかもしれない。
OSKレポでは此処からが核心部。
じょじょにヤブが顕著になってきて、ついに獣道(ルート)をはずしてしまった。
石楠花を主体にした激ヤブに突入。
しかも急斜面。
ここで、ブナ林で蓄えたエネルギーを一気に放出。
かろうじて若丸山から南東へ続く稜線に出た頃は、ふらふら状態。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。
此処から先も強烈なヤブは続くのだが、獣道プラスアルファのそこはかとないルートを発見。
恐らく、OSKさんが残してくれた切り開きであろう。
これは消耗した心身に大きな贈り物となった。
まだピークまでは距離があったが、この心強い支援に励まされながらずんずん進むと、ついに頂上の切り開きに。
ヤブにお邪魔していなければ、この頂上を見ることは無かっただろうことを思うにつけ、刺激をいただいたヤブの方々の飽くことなき探究心、冒険心、チャレンジスピリットに感謝である。
そして、導いていただいたOSKさんに。m(--)m
さて、山々の童貞に入るか。
およよ。何一つみえない。雲、霧、霞、靄。
こんな大事なときに、日頃の行いが・・・。
同定(どうってぃ)こたぁないさ、一眠りして目覚めれば晴天になっており、見事なまでに広がる奥美濃パノラマに息を呑むことだろう。
「若、若、目覚められよ。最後の撮影シーンでおじゃる。」
渋い声に目覚めると、烏帽子を冠ったbiwaさんが傍らに・・・。
一方、自らの額に手をやればねじり鉢巻、シャツはオレンジ・・・、いつの間にかヤブの加藤文太郎ことたんぽぽさんになってしまっている。
腕時計で日付けを確認すると、4月8日。
あっ、そうか。今日は「若丸 点の記」のクランクアップの日だった。
シーン1285.7 『盟友からのエール』
苦労の末たどり着いた若丸山のピークで、これまでの道のりに思いを馳せ、しばしの感慨にふけった後、ふと、南に目をやると、烏帽子山頂上で紅白の手旗信号を操っている人らしき影が見える。
目を凝らすとヤブの島崎三歩こと山日和さんではないか。
「ヨ、ク、ガ、ン、バ、ッ、タ」
頬に一筋の光るものがつたう。
ここで目が覚める。
不思議な既視感のある夢だった。
周囲を見回しても相変わらず何もみえない。
昼から晴れる予報だったが、それまで待つには時間がありすぎる。
待って晴れる保証もない。
世界の名だたる登山家も下山時に遭難するケースが多いと聞く。
地方の名も無き素人山屋であればなおのこと、注意が必要だろう。
道迷い、登り返しの時間ロスを考え、下山することにする。
降りはじめ最初はかすかな切り開きルートをたどっていたが、ついに道を見失ってしまう。
なだらかに続くこの尾根筋を進めばそのうちまた道が現れるだろう。
しかし、いっこうに現れず、どうも行きと雰囲気が違う。
地図を見る。
やらかしたー。
そう、事前の地図チェックで気をつけねばならぬと考えていた頂上から南東尾根への誤誘導ライン(そのまま進むと滝又谷か)に完全にはまってしまった。
その際、下山時の最重要チェックポイントとしてあれほど注意していたはずの南へのびる稜線への分岐が全くわからない。
考えてみれば、すでに行きのルートを見失い恐怖の石楠花群落との戦いに精魂尽き果て、やっとのことでたどり着いた若丸への南東尾根に安堵感いっぱいで、分岐点チェックを行う余裕が全く無かった。
これは非常にやばい状態になったぞ。
登りは間違っても最後はピークへたどり着くが、下りのルート間違いは命取りになる可能性が・・・。
失敗すると、ヒン谷へ下りてしまい、ツギツギタキが現れる。
高巻をしようにも、最近の雨によりお肌つるつるすべすべで、アカン。
仮に河口までたどり着けたとしてもダム湖があるため、塚の岸辺までザックを背に古式泳法で泳ぎ着かねばならない。タマラン。
しかも、落人伝説の地だけに那須与一が湖上の私を狙って弓を射てくるかもしれない。
マトリックスのように体を反転させよけきれる自信がない。シヌ。
ここで覚醒する。夢か。
いや、夢ではない。このヤブ危機からの脱出は、マジ危険が危ない。頭痛が痛い。馬から落ちて落馬する・・・。
とにかく、道迷いの原則どおり、南東尾根ルートを登り返す。
なんとなく切り開きルートに戻ってきたような気がする。
再度下りだす。また、見失う。
これを繰り返すうちにあることに気がついた。
鉈目である。
ときどき目に触れる。(なため油は台所で目に触れるが・・・)
ルート自体はあるようなないようなはっきりしないものだが、鉈目は間違えようの無い人的加工。
そうだ、これを水先案内にすれば。
再度、鉈目に細心の注意を払いながら、行きつ戻りつを繰り返す。
そうすると、ほのかにラインが浮かんできた。
これか。
1時間以上の試行錯誤が希望の未来を紡ぎだしたのである。
確信ではないが、かなりの確率(5割以上)でいけそうな気がする。
最初は、いちかぱちかの世界だったことを思うと、もう生還した気分である。
いざとなれば、再度登り返すだけ。
時間的余裕、体力的余裕が、精神的な余裕につながっている。
分岐点と思われる箇所から下降してしばらくはそれらしきルートと思われたが、また、見失う。
ヤブをかき分け左右に大きくトラバースをかけながら、ルートらしきものに復帰する。
行きの記憶にあるような道をたどっているとはっきり確信した瞬間、脳内快感物質が溢れ出す。
ちょうど、寒い冬の夜に温かいお風呂に浸かった瞬間の鳥肌といえば分かりやすいだろうか。
後は、癒しのブナ空間をゆったり、のんびり、味わい、楽しみながら下山口へ。 下山口へ到着したところで目が覚め、この登山自体が泡沫の夢だったら、ショックだろうな。
このレポ書いてること自体、夢だったりして
カッチャン
【ルート】塚4:05→若丸への稜線分岐(地点A)6:15→Ca916m7:05→Ca1072m7:55→9:15若丸山1285.7m10:00→南への尾根分岐11:15→梨平分岐(地点A)13:20→下山口14:30