【湖西】 ふたつの「青い海」を見つめ 山上の「白い海」を渡る わたしのアルカディアへの旅

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sato
記事: 564
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

【湖西】 ふたつの「青い海」を見つめ 山上の「白い海」を渡る わたしのアルカディアへの旅

投稿記事 by sato »

【日 付】 2025年2月7日
【山 域】 湖西 武奈ヶ嶽三重嶽周辺
【天 候】 曇り時々晴れ
【コース】 寒風トンネル入り口⇔武奈ヶ嶽⇔三重嶽

 
「わぁ・・・」
 からだの力が抜け、尾根から外れ、夢遊病者のようにふらふらと東側の浅い谷に吸い込まれていく。
吹き上げる風が運んできた雪粒がぴしぴしと頬に当たる。
夢ではない。確かに、わたしは、この夢のような光景を目の当たりにしているのだ。

 ここ何日間か、自宅での慣れない事務仕事で、頭とからだがなんとなくどんよりとした日が続いていた。
よし、山にいって元気をいただこうと、昨日スノーシューを担いで比良の山に向かった。
でも気にかかることがあり晴れ晴れとした気持ちになれず、最短で山頂まで行きそそくさと戻ってしまった。
こころここに在らずだった自分に落ち込んだ。愛するお山に申し訳なかった。
 帰宅して気になっていたことを片付け、明日こそは、お山を楽しみたいと思った。
どこに行こう。北の方は雪降りだ。鈴鹿方面はちょっと遠く、4時に起きる気力はない。それに積雪も少なそうだ。
 その時、白く煌めく滑らかな雪原と、びわ湖と日本海のふたつの「海」が浮かんだ。
そうだ、武奈ヶ嶽だ。ぱぁっとこころに光が差し込んだ。寒波が来ているが、高島市の日中の天気予報は晴れ。
今日も14時頃までマキノの山までは見渡せた。今晩から明け方にかけて、さらに降った雪で、お山はまっ白に輝くだろう。
のんびり景色を眺めながら登り、天気と時間をみて、歩けそうだったらブナ林を楽しみながら・674まで行こう。
帰りは・620か・334の尾根で。天気が崩れてきたり、ラッセルがきつかったら、その時点で戻ったらいい。
うん、武奈ヶ嶽だ。うれしくなって布団に潜り込んだ。

 我が家から登山口まで、路面が凍っていても1時間ぐらいか。朝、早いと雪が止んでいないかも。
目覚まし時計のアラーム無しで起きて、7時前に家を出た。
今津に入ると路肩に雪が現れ、朝の光を浴びた山やまが、雪を被った木々で白く輝いている。
 何度も何度も通っている道なのに、不思議の国に入り込んだような気分になる。
「わぁっ」と、昨日とは打って変わり、歩く前から高揚感のかたまりに。
 登山口に着くと陽が陰ってしまったが、わくわく勢いよく歩き始めた。

「やまものはらもわたぼうしかぶり かれきのこらずはながさく」
あぁ、ほんとうに、枯れ木残らず雪の花が咲いている。
綿帽子雪の木々を見上げ、気がつけば、鼻歌を口ずさみ、その声に促されるように足が進んでいた。
のんびり景色を楽しみながらと言っていたのに、新雪をぎゅっぎゅっと踏みしめ先へ先へと進んでいた。

 そして、出発して1時間あまり。標高700mにも満たない場所で見事な霧氷に飾られたブナの木々を、口を開けて見上げていた。
雪粒を浴びながら霧氷を見つめていると、雲間から青空が顔を出した。
くねくねとした幹から四方に思いきり伸ばした枝にたっぷりの氷を纏ったブナの木が、ぱぁっと純白に輝く。      
まっ青とまっ白の眩い世界。なんてうつくしいのだろう。望外のよろこびに包まれる。望外のよろこびを感じる自分にうれしくなる。
木々の間をゆらゆらと回り、今、ここにいるしあわせを噛みしめる。
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 夢のような風景は、この先も続いていった。びわ湖と日本海のふたつの「海」を見下ろすブナが佇むやわらかな尾根は、
降り積もった雪でさらにやわらかに広がり、東側の霧氷に飾られた木々の向こうに覗くびわ湖は青磁色の宝石のように輝いている。
 西側の天増川対岸の県境尾根、その向こうの若狭の山と里は、まるで氷の魔法にかけられたようだった。すべてが凍り付き青白色に光っている。
そして、空との境に広がる大いなる日本海は、濃淡神秘的な青色を描きながらきりりと冷たい冬空に溶け込んでいる。
 わたしが暮らす近江湖西の地の魅了されているお山で出会った厳寒の日の一期一会の神様からのプレゼントのような情景。
少し前に口ずさんでいた鼻歌も、わぁっという高揚感も、どこかに飛んでしまった。
ただただ、目の前に繰り広げられる雪と氷の清冽な世界に息を呑むばかりとなっていた。
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 まっさらな雪にふくらはぎの上ぐらいまで潜っていたが雪質がよく、風景に目を奪われながらラッセルしているうちに雪原に到着した。
749ピークだ。真ん前におおきな武奈ヶ嶽がそびえ立つ。ここから100mあまり高いだけなのに何という迫力なのだろう。

 立ち止まって仰ぎ見ていると、武奈ヶ嶽との想い出が次々と蘇ってきた。
 初めて雪の武奈ヶ嶽を訪れたのは、石田川ダムからだった。
大雪でダムまで車で入れず、角川の先から歩いていき、膝上まで潜りながらラッセルして稜線に出たが、
濃霧で何にも見えなかったので引き返してしまった。
 雪の山頂に立ったのは、それから数年後、今日と同じコース、寒風からKさんとご一緒させていただいた時だった。
山スキーでスイスイと進まれるお姿を追いながら登っていった。
そして、ここで武奈ヶ嶽を仰ぎ見て、その迫力にびっくりしたのだった。あの時、雪の武奈ヶ嶽への想いが始まった。
いつかまっ白な霧氷で飾られたお姿を見せてくださる日を夢見るようにもなった。
 今日、夢見た一面霧氷で飾られた武奈ヶ嶽をわたしは歩いている。ありがたい気持ちでいっぱいになる。

 尾根には立派な雪庇も出来ている。深呼吸をして滑らかな斜面を駆け下りる。
大波のような雪庇の横や下に足跡を刻んでいくよろこび。一歩一歩がいとおしい。
 尾根が細くなり谷が入り込んでいる地点は、踏みしめたスノーシューが新雪と古い雪の境に触れ、ずるりと滑りそうになるので慎重に。
右の尾根と合流してひと登りすると、山頂直下の大雪原だ。

 ふたつの「青い海」を見つめながら、山上の「白い海」を渡っているような気分になる。
 海の先には何があるのだろう。
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 辿り着いた武奈ヶ嶽山頂からは、穏やかな波のように見える、丸く張り出した雪庇に縁どられた白い道が延び、
両側には霧氷の海が広がっていた。
 奥には大きく左右に尾根を伸ばした三重嶽が白銀色の光を放ちずしりと佇んでいる。

 10時。雪質に恵まれ思ったよりも早く着いた。地図を見て、三重嶽を見つめ、空を見上げる。
ここから三重嶽にかけての尾根と谷が織りなす地形にもこころ惹かれている。
のんびりと言っていたけれど、やはり今日は、どんどんと歩きたい気分だ。
 13時に引き返そう。お湯を飲んで、動物の足跡もまだついていない、まっさらな白い道へと進んでいく。

 ・812まで、ちいさな登り下りのあるくねくねとした稜線を北上し、
右側の尾根に引きこまれないようにブナの木が立ち並ぶ北側の斜面を下ると標高650mの鞍部。
ほっと落ち着くやわらかな地形が広がっている。
 この先660mの小ピークからは、尾根が細くなり空気が変わる。雪が少ないとスノーシューがヤブに引っ掛かったりするのだが、
この寒波で埋まってくれたのですんなりと進んでいける。
 尾根が広がっていくと標高750m、天増川からの尾根との合流地点。振り返り武奈ヶ嶽からずいぶんと歩いてきたことを実感し、
まだ、武奈ヶ嶽よりも低い場所にいることに気づく。
 12時半には山頂に着かないか。でも、お昼の休憩を短くしたら大丈夫。
純白の三十三間山と白銀の三重嶽の尊いお姿を拝みながら一歩を刻んでいく。

 ・855からは、広々とした尾根にいくつもの浅い谷が入り組み、うつくしい起伏を描いていて、
降り積もった雪が地形の妙を際立たせ、天上の楽園のような風景が展開していく。
 3年前は、今日より重い雪をラッセルしながら登ってきて、この、のびやかでやさしい風景に包まれ、
山頂まで標高差100mを切ったあたりで、白く輝く三十三間山を眺めながら、まったりとお昼の時間を過ごしたい気分になり、
山頂は訪れなかった。
 今日は、霧氷のブナ林が呼んでいる。休まずに進んでいく。

 標高900m辺りから、くねくねとからだを曲げて合唱しているようなブナの林に入っていく。
左に谷が近づいてきて、そちらに曲がるのだと地図で確認していたのに、尾根の形に誘導されてしまう。
ラッセルで足が重くなっているので、気づいて、はぁ、とため息が出るが、せっかくなので960m小ピークに立つ。

 初めての雪の三重嶽もKさんとご一緒させていただいた時だった。ここから南に延びる尾根を登ってきた。
春の陽光が穏やかに降り注ぐ日で、山頂周辺の緩やかにうねる地形に見とれていた。
 失敗もあった。この緩やかな地形は霧に覆われると凹凸が分からなくなる。
一昨年、曇天の日に、この尾根を登ってきたら濃霧に包まれた。視界がきかない中を山頂まで行ったのだが、
戻る途中で段差か何かでつんのめり、変な転び方をして膝を痛めてしまった。

 また想い出に浸りはじめてしまった。刻んだ足跡を戻っていく。

 12時35分、白銀の霧氷で飾られたブナの木々が並ぶ細長い山頂の西端に辿り着いた。
凍雲かかる空の下に広がる青磁色のうみと鈴鹿の山なみを眺め、頑張ってよかったとしみじみと思う。
東側の三角点と看板があるあたりは、まっ平な雪原だ。ここから湖北方面が見渡せるが、山は厚い雲に覆われていた。

 西端の霧氷のブナの木の下に腰を下ろし、うみを眺めながらパンをほおばり、食べ終えると13時になっていた。
戻ると決めた時間だ。よし、と立ち上がり、リュックを背負い、霧氷の海を戻っていく。
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 天増川対岸の三十三間山は、午後になっても、斜面は白銀の霧氷に覆われ、稜線は白く気高く光り輝いていた。
『雪山を愉しむ』で出会った「我がアルカディア」というお言葉が浮かび上がる。
 アルカディア、理想郷・・・。
 愛する武奈ヶ嶽三重嶽で、わたしも、今、「アルカディア」を感じている。
 わたしの前と後ろに刻まれている足跡を、交互にいとおしく見つめる。
 そう、わたしは、今、「わたしのアルカディア」を旅しているのだ。

 しばらくすると鉛色の雲が広がってきた。でも、自分の足跡があるので心強い。

 15時15分過ぎ、武奈ヶ嶽山頂に戻ってきた。足が重いので30分まで少し休むことにする。
風をよけられる場所を見つけて、おやつを食べながら山頂の時間を楽しむ。

 17時までには下山したいので、登ってきた尾根を一気に下っていく。
若狭の山と里を覆っていた青白い氷はすっかりと消え、木々を飾っていた霧氷もほぼ無くなっていた。

 16時45分、国道に降り立った。駐車地の雪はほとんど融けていて、まわりの山肌も深緑色のスギや茶色い木々が立ち並ぶばかりだ。
 風景もわたしも魔法をかけられていたのだろうか。
頭がぼぉっとしかけたが、愛車に乗り込もうと持ち上げた足は、重くて、気だるくも心地よく、9時間歩いてきたことを物語っていて、
あぁ、わたしは、「わたしのアルカディア」を旅してきたのだ、と、あらためて深い感慨が湧き上がり、感謝の気持ちに包まれた。

sato
tsubo
記事: 272
登録日時: 2023年3月07日(火) 13:27
お住まい: 和歌山県

Re: 【湖西】 ふたつの「青い海」を見つめ 山上の「白い海」を渡る わたしのアルカディアへの旅

投稿記事 by tsubo »

satoさん、こんにちは。

気になることを抱えながら山に向かう。確かに晴れ晴れとした気持ちにはなれませんね。
そして気になる仕事を終えて、さあ、山に行こうと思うと、山が呼んでくれるように思えます。
さっと行く山も決まりますね。
私が先日行った桧塚奥峰がそうでした。

「やまものはらもわたぼうしかぶり かれきのこらずはながさく」
平仮名で描いてあると、やまもの はらもの ぼうしをかぶり・・・?がれきに残らず花が咲いたの?
なんだか意味がわかりませんでした。次を読んで、ああ山も野原も・・・の歌だとわかりました。(笑)

武奈ヶ嶽、ずっと比良山系の武奈ヶ岳だと思って読みました。で、地図を見たら何か違う!三重嶽なんてどこにあるの?
今津から寒風トンネル・・・
で、やっとわかりました。
後は地形図を見ながらふむふむと稜線をたどりながら読みました。

何度か登ったことのある山だと、その時のことを思い出しますね。
特に人と登った時のことは、あの時あの人がこんなことを言ったとか、一緒にあの景色に感動したとか。豊かな思い出がよみがえります。

このあたりの山は標高が低くても、今年はこんなに雪があるんですね。
日本海と琵琶湖の二つの青い海が見える白い山。普通、この時期に白と青の世界といったら雪や霧氷と青空の世界ですが、さらに二つの海の青が加わった世界。
なかなか出会えない世界ですね。
それがsatoさんにはアルカディアと感じられたんですね。
慣れない事務仕事を終えたご褒美ですね。
良かったです。
また、これをバネに事務仕事も頑張ってください。

tsubo
tsubo
記事: 272
登録日時: 2023年3月07日(火) 13:27
お住まい: 和歌山県

Re: 【湖西】 ふたつの「青い海」を見つめ 山上の「白い海」を渡る わたしのアルカディアへの旅

投稿記事 by tsubo »

追伸

satoさん、今わかりました。

ゆきやこんこ
あられやこんこ
ふってはふってはずんずんつもる
やまものはらもわたぼうしかぶり
かれきのこらずはながさく

satoさんにとってはひらがなでなくてはならない歌なんですね。
sato
記事: 564
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【湖西】 ふたつの「青い海」を見つめ 山上の「白い海」を渡る わたしのアルカディアへの旅

投稿記事 by sato »

tsuboさま

再度こんにちは。お昼ご飯を食べて、お返事を書き始めています。
午前中、まっ白な雪の花で飾られていた桜並木は、少し前からお顔を出した太陽の光で、あれよあれよという間に雪が落ちてしまいました。

「やまものはらもわたぼうしかぶりかれきのこらずはながさく」
そうです。「ゆきやこんこ」で始まる童謡です。
子供の頃、雪が降るとうれしくて口ずさんでいたのを思い出します。
私たちが子供の頃は、東京周辺も、毎年ではなかったかもしれませんが、雪が積もりましたよね。
朝起きたら雪が積もっていて、いつもの景色ががらりと変わっているのを見た時の胸の高鳴りは、むかしもいまも同じです。

私は、比良の武奈ヶ岳も、京都に来るまで知らず、野坂山地の武奈ヶ嶽は、
京都に住んでいた頃、草川啓三さんの「近江湖西の山を歩く」を読んで知りました。
人生って不思議なご縁が繋がっていくものなのですね。偶然暮らし始めた京都で、草川啓三さんの本に出会い、
近江の山の魅力、地図を見て想像し創造する山歩きの面白さを教えていただき、近江への思いが募り、
13年前、山とうみを感じる地へと移り住み、こうして近江の山を楽しんでいる私がいます。

そうですね。地元となった地の愛するお山で、青と白の夢のような世界に出会え、
その世界はうつくしいだけではなく、風景の物語、わたしの物語、様々な記憶、想い出が重なり、
こころの奥深くに訴えてくる静かな光に満ちていて、私の理想郷、「わたしのアルカディア」を感じたのですね。

湖西のお山は標高も低く、台高や鈴鹿のお山ほど霧氷には出会えませんし、霧氷お目当てでお山を選んでもいませんので、
霧氷はお山の女神さまからのプレゼントなのだなぁ、と感じます。出会えるとありがたい気持ちでいっぱいになります。

今回の寒波で、湖西のお山もまた雪が結構積もりました。
火曜日から暖かくなるようですので、前回みたいにどんどんと融けていってしまうかもしれませんが。

仕事があるのもありがたいことですよね。やりがいのある仕事ですので頑張ります。
コメントと励ましのお言葉ありがとうございました!

sato
宮指路
記事: 1075
登録日時: 2011年2月27日(日) 21:13

Re: 【湖西】 ふたつの「青い海」を見つめ 山上の「白い海」を渡る わたしのアルカディアへの旅

投稿記事 by 宮指路 »

さとさん、こんにちは

先ほど8割ほど書いたレスがちょっとした操作で全部消えてしまいました。
wordに下書きして保存したのですが何故かそれも消えてしまいましたので記憶の悪い頭を使いながらもう一度書いています。
「やまものはらもわたぼうしかぶり かれきのこらずはながさく」
これだけだと何か呪文のような言葉ですね。
雪やこんこんの童謡だとは思いもしませんでした。

あぁ、ほんとうに、枯れ木残らず雪の花が咲いている。
綿帽子雪の木々を見上げ、気がつけば、鼻歌を口ずさみ、その声に促されるように足が進んでいた。
のんびり景色を楽しみながらと言っていたのに、新雪をぎゅっぎゅっと踏みしめ先へ先へと進んでいた。
私は登り初めはいつもハアハアと息をしながら必死に登っています。

 
そして、出発して1時間あまり。標高700mにも満たない場所で見事な霧氷に飾られたブナの木々を、口を開けて見上げていた。
雪粒を浴びながら霧氷を見つめていると、雲間から青空が顔を出した。
くねくねとした幹から四方に思いきり伸ばした枝にたっぷりの氷を纏ったブナの木が、ぱぁっと純白に輝く。      
まっ青とまっ白の眩い世界。なんてうつくしいのだろう。望外のよろこびに包まれる。望外のよろこびを感じる自分にうれしくなる。
木々の間をゆらゆらと回り、今、ここにいるしあわせを噛みしめる。
途中からこんな素晴らしい霧氷が見れるなんて何とラッキーなんでしょう
綺麗な霧氷が見れると嬉しくなりますね。


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 夢のような風景は、この先も続いていった。びわ湖と日本海のふたつの「海」を見下ろすブナが佇むやわらかな尾根は、
降り積もった雪でさらにやわらかに広がり、東側の霧氷に飾られた木々の向こうに覗くびわ湖は青磁色の宝石のように輝いている。
日本海と琵琶湖に囲まれた湖西の山々は真っ白な冬景色と海の青さとマッチングしてなんて素晴らしいんだろうと思います。


 
西側の天増川対岸の県境尾根、その向こうの若狭の山と里は、まるで氷の魔法にかけられたようだった。すべてが凍り付き青白色に光っている。
そして、空との境に広がる大いなる日本海は、濃淡神秘的な青色を描きながらきりりと冷たい冬空に溶け込んでいる。
 わたしが暮らす近江湖西の地の魅了されているお山で出会った厳寒の日の一期一会の神様からのプレゼントのような情景。
私も御池岳で神様のプレゼントのような光景に出会ったことがありました。
それまでガスって何も見えなかったのに一瞬にして視界が開け目の前に真っ白な霧氷を目にしました。



 
立ち止まって仰ぎ見ていると、武奈ヶ嶽との想い出が次々と蘇ってきた。
 初めて雪の武奈ヶ嶽を訪れたのは、石田川ダムからだった。
大雪でダムまで車で入れず、角川の先から歩いていき、膝上まで潜りながらラッセルして稜線に出たが、
濃霧で何にも見えなかったので引き返してしまった。
山に登っているといろんな思いが胸に去来します。前回登った時のことも良く思い出します


 10時。雪質に恵まれ思ったよりも早く着いた。地図を見て、三重嶽を見つめ、空を見上げる。
ここから三重嶽にかけての尾根と谷が織りなす地形にもこころ惹かれている。
のんびりと言っていたけれど、やはり今日は、どんどんと歩きたい気分だ。
 13時に引き返そう。お湯を飲んで、動物の足跡もまだついていない、まっさらな白い道へと進んでいく。
目指す山頂に繋がる尾根を歩いていると気分が高揚しますね。


 
初めての雪の三重嶽もKさんとご一緒させていただいた時だった。ここから南に延びる尾根を登ってきた。
春の陽光が穏やかに降り注ぐ日で、山頂周辺の緩やかにうねる地形に見とれていた。
 失敗もあった。この緩やかな地形は霧に覆われると凹凸が分からなくなる。
一昨年、曇天の日に、この尾根を登ってきたら濃霧に包まれた。視界がきかない中を山頂まで行ったのだが、
戻る途中で段差か何かでつんのめり、変な転び方をして膝を痛めてしまった。
私も先日入道ヶ岳のヤブルートで急な斜面をトラバースしようとした時に掴んでいた枯れ木が折れて、変な体勢で転んだので
雪の下にあった岩に膝を打ち付けて、ヤバいと思いましたが打ち身で済みました。

 
天増川対岸の三十三間山は、午後になっても、斜面は白銀の霧氷に覆われ、稜線は白く気高く光り輝いていた。
『雪山を愉しむ』で出会った「我がアルカディア」というお言葉が浮かび上がる。
 アルカディア、理想郷・・・。
 愛する武奈ヶ嶽三重嶽で、わたしも、今、「アルカディア」を感じている。
 わたしの前と後ろに刻まれている足跡を、交互にいとおしく見つめる。
 そう、わたしは、今、「わたしのアルカディア」を旅しているのだ。
アルカディアとは何ぞやと思い調べてみましたが、生と死のはざ間という意味もあるようです。
宗教的な意味合いがあり聖杯にも関係があるようです。
 
 17時までには下山したいので、登ってきた尾根を一気に下っていく。
スノーシューを履いたまま一気に下ることができないのでついつい遅くなります。
特に急斜面だと慎重になってしまいます。


 
16時45分、国道に降り立った。駐車地の雪はほとんど融けていて、まわりの山肌も深緑色のスギや茶色い木々が立ち並ぶばかりだ。
 風景もわたしも魔法をかけられていたのだろうか。
きっとそうですね。

                               宮指路
sato
記事: 564
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【湖西】 ふたつの「青い海」を見つめ 山上の「白い海」を渡る わたしのアルカディアへの旅

投稿記事 by sato »

宮指路さま

こんにちは。
コメントありがとうございます。せっかく書いてくださった文が消えてしまい、
書き直してくださった文も消えてしまい、それでも、さらに書き直してくださったとは恐縮です。
私も、ヤブこぎネットに投稿する時、書いた文が突然消えてしまい、唖然とすることが何回かに一回あります。
レポとコメントは、Wordに下書きしたものをコピーして、手直しして投稿するのですが、
このレポも手直し中に消えてしまいました。何故消えてしまうのか謎です。

「山も野原も綿帽子かぶり、枯れ木残らず花が咲く」
と書けばいいのですが、tsuboさんがおっしゃってくださったように、私にとっては、ひらがなの世界でした。
確かにひらがなを並べると何かの呪文のような。

湖西のお山は標高が低く、雨や雪の翌日でも霧氷に出会えないことが多いので、
登り始めて1時間後、標高700mにも満たない地点から、こんなにも見事な霧氷に出会えるとは夢のようでした。
寒波で、朝まで雪が降り、風も強く、気温も低かったからこそ出会えたのか。
いや、それだけではない。お山の女神さまからのプレゼントですね。

そう、湖西のお山は、日本海とびわ湖が眺められるお山が多いです。
晴れた日の青く輝くふたつの「海」も素晴らしいですが、曇天の日の灰白色の「海」もこころ震えます。

霧氷は、人のこころを奪いますね。宮指路さんの御池岳での女神さまからの祝福。
うらやましい限りです。でも、これは、宮指路さんの御池岳への想いが女神さまに通じたからなのですね。
私とは想いの深さが違います。
私も、この日、武奈ヶ嶽への想いが女神さまに通じたのですね。ありがたいです。

そうそう、ひとりで山を歩いていると、いろいろなことを思い出したり、いろいろな感慨に包まれたり。
そして湧き出た思いを言葉にしたくなります。
アルカディアは、生と死のはざ間という意味もあるのですね。
一寸先は闇。私たちはみな生と死のはざ間で今日を生きている。理想郷はどこか遠いところにある手に届かぬ世界ではない。
ちいさな理想郷は、近くに潜んでいたりする。それを感じるか感じないか。そういう意味なのかな、と勝手に解釈しました。

山では何が起こるか分かりませんね。歩く時、一番緊張するのが急斜面のトラバース。
入道ケ岳では、ギョッとする体験をなさったのですね。
枯れ木は怖いですね。山日和さんも浮いた木に触ってバランスを崩されたので、掴む木には、より注意するようになりました。
打ち身も痛みが長引きますが、打ち身だけで済んでよかったと思います。

膝を痛めてから、下りも注意するようになりました。
ほどよい傾斜が多く、自分の足跡もあったので、休まず歩調が大きく乱れることなく下れました。
・749周辺に広がる大雪原で標高680mから右の尾根に少し入ってしまいましたが。

雪は魔法をかけたように風景を一変させますね。同じ山も訪れる度に違う表情を見せてくれます。
今週末は、スノー衆ですね。みなさまと雪の魔法を味わうのを楽しみにしております。

sato
アバター
山日和
記事: 3839
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【湖西】 ふたつの「青い海」を見つめ 山上の「白い海」を渡る わたしのアルカディアへの旅

投稿記事 by 山日和 »

satoさん、こんばんは。

 ここ何日間か、自宅での慣れない事務仕事で、頭とからだがなんとなくどんよりとした日が続いていた。

ツアーの事務仕事は気を遣うことが多くて大変ですね。ミスが許されないし。

 我が家から登山口まで、路面が凍っていても1時間ぐらいか。朝、早いと雪が止んでいないかも。

近いのがうらやましいです。

「やまものはらもわたぼうしかぶり かれきのこらずはながさく」
あぁ、ほんとうに、枯れ木残らず雪の花が咲いている。

なんのまじないかと思ったら「雪」の歌詞でしたね。 :lol:

くねくねとした幹から四方に思いきり伸ばした枝にたっぷりの氷を纏ったブナの木が、ぱぁっと純白に輝く。

湖北武奈は無雪期に一度登ったきりです。その時は三重嶽から来てダムの方へ下りましたが、
こちらにはこんな見事なブナがあるんですね。一度行かなくては。
      
 夢のような風景は、この先も続いていった。びわ湖と日本海のふたつの「海」を見下ろすブナが佇むやわらかな尾根は、降り積もった雪でさらにやわらかに広がり、東側の霧氷に飾られた木々の向こうに覗くびわ湖は青磁色の宝石のように輝いている。
 西側の天増川対岸の県境尾根、その向こうの若狭の山と里は、まるで氷の魔法にかけられたようだった。すべてが凍り付き青白色に光っている。
そして、空との境に広がる大いなる日本海は、濃淡神秘的な青色を描きながらきりりと冷たい冬空に溶け込んでいる。

素晴らしい風景ですね。先日の三十三間山同様、近いのにまだ知らない場所がまだまだありそう。

 まっさらな雪にふくらはぎの上ぐらいまで潜っていたが雪質がよく、風景に目を奪われながらラッセルしているうちに雪原に到着した。

satoさんがふくらはぎなら私ならヒザです。どこかでギブアップしてそう。 :oops:

いつかまっ白な霧氷で飾られたお姿を見せてくださる日を夢見るようにもなった。
 今日、夢見た一面霧氷で飾られた武奈ヶ嶽をわたしは歩いている。ありがたい気持ちでいっぱいになる。

去年から霧氷づいてますね。私はリハビリであまり雪山に行ってないとはいえ、霧氷に恵まれない境遇です。 :mrgreen:

 ふたつの「青い海」を見つめながら、山上の「白い海」を渡っているような気分になる。
 海の先には何があるのだろう。

いい表現ですね。雲の上をさまよい歩いているような感覚でしょうか。

 10時。雪質に恵まれ思ったよりも早く着いた。地図を見て、三重嶽を見つめ、空を見上げる。
ここから三重嶽にかけての尾根と谷が織りなす地形にもこころ惹かれている。


ラッセルして2時間余りで着いちゃいましたか。その足が欲しい・・・・

 ・855からは、広々とした尾根にいくつもの浅い谷が入り組み、うつくしい起伏を描いていて、降り積もった雪が地形の妙を際立たせ、天上の楽園のような風景が展開していく。

このあたりの広々とした雪原が続く尾根はいいですよね。
ちょうど1年前、南尾根から三重嶽に上がってここを南下してしましたが、雪が少なくてイマイチでした。
潅木が雪から頭を出していない風景を見たいものです。

 12時35分、白銀の霧氷で飾られたブナの木々が並ぶ細長い山頂の西端に辿り着いた。
凍雲かかる空の下に広がる青磁色のうみと鈴鹿の山なみを眺め、頑張ってよかったとしみじみと思う。

頑張りましたね。辿り着いたら頑張って良かったと思えるけど、根気が続きません。 :oops:

 西端の霧氷のブナの木の下に腰を下ろし、うみを眺めながらパンをほおばり、食べ終えると13時になっていた。

私も一年前はそのあたりで鍋ランチしてましたが、ガスの中でした。

 天増川対岸の三十三間山は、午後になっても、斜面は白銀の霧氷に覆われ、稜線は白く気高く光り輝いていた。
『雪山を愉しむ』で出会った「我がアルカディア」というお言葉が浮かび上がる。
 アルカディア、理想郷・・・。
 愛する武奈ヶ嶽三重嶽で、わたしも、今、「アルカディア」を感じている。

アルカディアを感じられるような風景に出会いたいものです。
先日の三十三間山は黒かったし。

 しばらくすると鉛色の雲が広がってきた。でも、自分の足跡があるので心強い。

これが往復コースのいいところですね。
しかし先が長いわ。

 16時45分、国道に降り立った。駐車地の雪はほとんど融けていて、まわりの山肌も深緑色のスギや茶色い木々が立ち並ぶばかりだ。

1時間余りで下りてしまうんですね。びっくりです。

 風景もわたしも魔法をかけられていたのだろうか。
頭がぼぉっとしかけたが、愛車に乗り込もうと持ち上げた足は、重くて、気だるくも心地よく、9時間歩いてきたことを物語っていて、あぁ、わたしは、「わたしのアルカディア」を旅してきたのだ、と、あらためて深い感慨が湧き上がり、感謝の気持ちに包まれた。

疲労困憊じゃなくて心地よい疲れというのがいいですね。
いい一日でしたね。 :D

                 山日和
sato
記事: 564
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【湖西】 ふたつの「青い海」を見つめ 山上の「白い海」を渡る わたしのアルカディアへの旅

投稿記事 by sato »

山日和さま

こんにちは。
昨日は、スノー衆ありがとうございました。
雪の里山の奥深さ、コースを描く楽しさをあらためて感じた一日でした。

お忙しい中、コメントくださりありがとうございました。
雪山に近い。そうです。近江の雪の山に魅了され、雪が降るところで暮らしたくて、この地に来ました。
「ゆきやこんこ あられやこんこ」と、雪を見て歌っていた子供の頃から、雪が好きだったのですね。
いつもの風景が、魔法にかかったような世界になっているのを見て、こころときめかせていました。

山日和さんは、無積雪期に湖北武奈ヶ嶽に登られたことがあるのですね。
私は、真夏には登ったことがありませんが、四季折々味わい深い表情に出会える素敵なお山だなぁと感じます。
寒風トンネルからのコースは、最初は伐採跡の植樹地と送電線巡視路ですが、その後は、開放感あふれる素敵な尾根になります。
この尾根から眺めるふたつの「海」が大好きです。
積雪期は、ほんとうに、そう、雲の上をさまよい歩いているようです。

この日は、寒波が来ていて気温が低く、ラッセルしていてもスノーシューの上に乗った雪が足を上げると落ちてくれる雪質でしたので、
休まず登っていました。
降雪直後は、いつもは雪をほおばりながらラッセルしているのに、一度も雪を食べませんでした。
それだけ寒かったのですね。風もありましたし、雲も多かったです。
それゆえに、あの見事な霧氷の海に出会えたのですね。

三重嶽山頂周辺の緩やかな地形は、雪が降り積もったうつくしい風景を想像してしまいますね。
雪が少ないと灌木が目立ってしまいますが。
3年前は、この日よりも雪が多く、暖かな日で、やさしい光に満ちていて、
山頂まで行って帰ってくる時間がもったいないと思い、ここでまったりしていました。
今回は、まったりするには寒く、何より霧氷が素晴らしかったので、足は疲れていましたが山頂まで頑張ろうと思いました。
3年前の方が、ラッセルはきつかったのですが、気持ちに余裕がありました。年々、体力は落ちてきていますね。
景色に見とれながらも、時間を気にしながらの歩みでした。
帰りも、アップダウンがあり、トレースがあっても疲れているので、行きよりしんどいですし。

戻る途中で、雪が降り出しそうな空模様になりました。想定時間内に武奈ヶ嶽に戻れてホッとしました。
そう、3年前は下山中に欲が出て、・749から・334の尾根に入り、最後、車道に降りるのに手こずったので、
登ってきた尾根を忠実に下りました。といいながら、・749の下で尾根を外してしまいましたが。

アルカディアは、ギリシャの山岳地帯にある地名で、牧人の楽園の伝承があり、理想郷の代名詞となったそうです。
私の思い浮かべる理想郷は、ちいさな理想郷で、それは、どこか遠い世界にあるものではなく、ふとした時に出会えるもの、感じるもの。
地元となった地の想い出が折り重なった愛するお山で、夢のような光景に出会えたからこそ、「わたしのアルカディア」を感じたのですね。
山日和さんも、山日和さんのアルカディアに出会っているのだなぁと思います。

あっという間に3月ですね。
越前とその周辺のお山の宝物も掬い上げていきたいです。
よろしくお願いいたします。

sato
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