【白山】湖水と雪渓の果てに・・・南白山
Posted: 2012年5月14日(月) 21:27
【日 付】2012年5月12日(土)
【山 域】白山支稜 南白山2168.7m
【天 候】曇りのち晴れ一時粉雪または小雨
【コース】平瀬ゲート4:48===6:06白水湖畔ロッジ6:41---地獄谷7:25---8:13 1235m 8:24---9:46曲り谷出合---
10:27箱谷出合---10:42別山谷二俣11:02---12:47南白山14:00---14:29別山谷二俣---15:09曲り谷出合
15:25---16:44地獄谷—17:08白水湖畔ロッジ17:27---18:06平瀬ゲート
ようやく明け始めた空は重苦しい灰色だった。霧雨まで降っている。明日にすればよかったと後悔の念がよぎる。
空の片隅に除いたわずかな青に背中を押されるようにしてDOCに跨った。これまでの暖かさとは一転して季節が逆戻り
したような寒い朝である。霧雨のせいもあり、雨具の上下とウールの帽子を着けてのスタートとなった。
今日は電池切れ対策も万全で、白水湖まで1時間20分掛からず到着した。まったく人影はない。登山口の休憩舎もト
イレも入口に板が打ち付けられて使えない。
静まり返った白水湖畔ロッジの軒先を借りてDOCをデポする。湖の上流奥には白い峰が見え、雲も薄く晴れてきそうな
予感だ。実はここに着くまで迷っていた。今日は雨の中を歩きたいコースではない。もっとも雨の中を歩きたいコースなん
てないのだが。
その風景に勇気付けられて左岸の林道を歩き出すとほどなく雨は止んだ。大白川温泉の源泉をふたつ通り過ぎる。
この湯が平瀬のしらみずの湯まで送水管で運ばれているのだ。
なかなか地獄谷に着かないなと思って歩いていたら、地獄谷沿いに上流へ向かっていた。ボーッとしていてはいけない。
適当なところで河原に下りて渡渉点を探る。
本日は万全の渡渉対策をしてきたつもりだ。モンベルのシンプルオーバーシューズ(但し縫い目は防水処理をしていな
い)を履いてその上からビニール袋を付けガムテープで留める。その内側はレインパンツにロングスパッツで固めている。
通常ならレインパンツを履かない季節だが、寒さと雨のおかげで履いていたのが幸いした。
地獄谷の水量は多からず少なからずというところか。さすがに石を飛んでというわけにはいかず、ひざあたりまで浸かっ
て速い流れに抗いながら渡り切った。対策は成功で足元はまったく濡らさずに済んだようだ。
湖畔に立つと、これまで平瀬道の上から眺めた時のような透明感のない緑色ではなく、透き通ったブルーの湖水が目
の前いっぱいに広がった。これから湖岸のへつりが始まる。
2年前から残雪期の歩き方が変わった。それまでは大型連休が終われば雪山も終わり。沢に切り替わるかしばらく新
緑の山歩きを楽しむのが常だった。ところが2年前にずっと憧れていた白山東面台地を初めて訪れたことと、たんぽぽさ
んの数々のレポを目にしたことが大きな転機となった。
「谷筋からの雪山」。これまでの自分の山登りにはなかった発想だった。もちろん時期を見誤れば雪崩や落石、クレバス
などのリスクを伴う。しかし大きな滝をも埋め尽くしてしまうようなこの山域の膨大な積雪は、ちょっと視点をずらせば谷を
稜線へ一直線に延びる障害物のない、効率のいい道へと変えてしまうのだ。
今日の目的地である南白山もそのひとつ。昨年たんぽぽさんととっちゃんが歩いた別山谷からのロングルートが心から
離れなかった。別山からわざわざ下りて行って辿り着くというのは頭になかった。それだと下山するのにまた登り返さな
くてはならない。たんぽぽさんのレポはまさに「目からウロコ」だった。白水湖の湖岸を歩いて行けるということは想像もし
なかったのである。
[attachment=0]P1070516_1.JPG[/attachment]
大小さまざまの石が積み重なった湖岸の斜面をトラバースして行く。20センチばかりの巾でそこはかとなくトレースがあ
るようなところもある。石は安定しておらず、不用意に足を踏み出すと、落石がガラガラッと音を立ててポシャンと湖水に転
がった。湖畔には枯れた巨木のオブジェが並んで面白い。
とりたてて危険なところもなく、バックウォーターの端まで辿り着いた。渡渉して広大な河原に降り立つ。
地図上ではここはまだ湖底として描かれている場所である。上流方向を見やると、まったく起伏のない河原がどこまでも
続いていた。
期待通り雲が切れ、河原はいっぱいの日を浴びて明るい。スタート時にはゼロに近かったモチメーターは今や振り切れ
そうだ。
このあたりでは湯谷という名の谷は、巾200~300mの広々とした荒れ河原が続く。湖水を背にそんな広い河原を歩くと
いうのは長い登山経験の中でも初めてと言っていい不思議な感覚だった。しかも両岸の支谷には雪が詰まっている。
ふ~たんコンビが去年歩いた焼滑への谷も出合いから雪が詰まっており、問題なく稜線へ達することができそうだ。
[attachment=6]P1070533_1.JPG[/attachment]
なんとも新鮮な経験だったがしばらく歩くと変化の無さに飽きてきた。何度となく軽い渡渉を繰り返して曲り谷の出合に
着いた。その手前から河原に雪が残り始めていたが、ここへ来て雪の面積の方が多くなった。
渡渉して左岸側から別山谷と名前を変えた本流を進むと、すぐに雪が谷を埋める。効率アップのためここでアイゼンを装
着した。
右岸から豪快に大滝を落とすタロタキ谷を過ぎるまで水流が覗いていたが、そこから上は完璧な雪渓だった。
もう谷のど真ん中を歩いて行ける。ここはディズニーランドより楽しいデブリーランドだ。
[attachment=5]P1070569_1.JPG[/attachment]
1477mの箱谷出合、Ca1600mの別山谷二俣と大きな出合が続いた。圧倒的な雪量が谷を埋め尽くしている。
二俣でひと息。見上げる側壁には危なっかしい雪のブロックもなく比較的安定した状態のようだが、音もなく飛んでくる落
石には注意が必要なので休憩は上流側を向いて取らなければいけない。
休んでいると白いものが舞い始めた。なんと粉雪だ。寒い日には違いないが雪まで降るとは思わなかった。
Ca1750mの二俣を左に取る。谷の巾は相変わらず広く、20~30mはあるだろうか。
いかにもゴルジュのありそうなクランク部分もただの急な雪の斜面だ。ピッケルを出すまでもなくダブルストックで軽快に
高度を上げる。
[attachment=4]パノラマ 2_1_1.JPG[/attachment]
Ca1900mの最後の二俣。たんぽぽルートは左だが、右の雪渓の果てに浮かぶ真っ白な稜線とその上に広がる青空に
心惹かれた。あそこまで登ろう。別山と南白山を結ぶ尾根にもまだしっかり雪が残っているようだ。
いよいよ傾斜が強まってきたが、どうしてもピッケルが欲しいという斜度でも雪質でもなく、ストックの2点支持で足場を交
互に固めて行けば問題ない。頭上のダケカンバに光るのは霧氷だろうか。
尾根に飛び出した。振り返れば別山から白山本峰への白い稜線が目の前に横たわる。この稜線も本峰山頂の一部を
除いて雲が消え、見事な景観を見せてくれた。
[attachment=3]パノラマ 3_1.JPG[/attachment]
[attachment=2]P1070627_1_1.JPG[/attachment]
尾根上はオオシラビソの林となっており、木立を避けて北寄りの斜面を進む。
わずかな登りで南白山の頂上に到達した。オオシラビソの並ぶ平凡な山頂だが、ここへ至る道程を思えば感慨深い。
思わずひとりガッツポーズを取った。この山頂に立つ人間は年間何人ぐらいいるのだろう。
風が強いので南側の斜面でオオシラビソを防風林としてランチタイムだ。別山や本峰は眺められないが、先週歩いた三ノ
峰から銚子ヶ峰へ至る白山南縦走路と、願教寺~小白山の県境稜線、丸山~大日の山稜を正面に望む満足できる場所
に陣取った。思ったより早く着いたのでゆっくりランチタイムを楽しもう。
これで5週連続の白山近辺通いである。果たせなかった奈良岳を除けば満足のいく山行が続けられた。いや、奈良岳も
山頂に立てなかったこと以外はいい山行だったと思う。自分の雪山シーズンはまだ終わりそうもない。
そろそろ行くかと山頂に戻るといつの間にか本峰方面はガスに覆われていた。あわよくば焼滑を経由して帰ろうと思って
いたが、その焼滑も雲の中。その気も一瞬で消え失せた。
下りはたんぽぽルートを選ぶ。ガスの湧き上がる急傾斜の雪面に飛び込んだ。足元はアイゼンが気持ち良く決まり、ス
リップの危険は感じない。ここでもストックのまま下りて行った。
先週の完全に夏道の下りだった欲求不満を一気に晴らすように、1600m二俣まで30分掛からず駆け下りた。
これだから雪渓下りはやめられない。
[attachment=1]P1070656_1.JPG[/attachment]
意外なことにタロタキ谷出合あたりに足跡が現れた。自分以外にこんなところへ来るやつがいるのか。どこから来てどこ
へ行ったのだろう。
登りに3時間を要した曲り谷出合まで1時間ほどで下りて来た。楽しい時間はここまでだ。
再び幾度となく渡渉を繰り返して下流に向かって進んだ。
同じように河原を歩くのも芸がないので、左岸側にある樹林に入ってみると、そこは小さな流れの脇に湿地が点在する落
ち着いた場所だった。河原のように石がゴロゴロしていないので格段に歩きやすい。山菜も豊富なようだがよく知らないの
が残念だ。このルートを選んで正解だった。往路のほんの少し横を歩くだけでまったく違う雰囲気を味わうことができた。
帰路は渡渉も効率よくこなし、特別なグッズのお世話にならずとも靴の中を濡らすことなく歩けた。スパッツと靴をガムテ
ープで留めたのが効果的だったようだ。
しかしすべてはうまくいかないもので、湖岸トラバースに移る渡渉点では水がスパッツを超えて浸水してしまった。靴の中
はドボドボである。こういう時は雨具を上にして、裾をガムテープで固定するのがいいかもしれない。
地獄谷からの帰り道、ひとり道端に座っている人がいた。傍らには猟銃があった。
話しかけてみると熊撃ちのハンターで、上流で見た足跡は彼の仲間のものだったようだ。湖畔にボートを積んだ軽トラがあ
ったところを見ると、バックウォーター端までボートで渡ったようである。
白水湖畔ロッジまで戻ると、南白山頂上と思しき白いピークを残照が浮かび上がらせていた。ベンチに座って眺めながら
今日の行程を反芻する。
さあ、平瀬ゲートまで40分のダウンヒルが待っている。
山日和
【山 域】白山支稜 南白山2168.7m
【天 候】曇りのち晴れ一時粉雪または小雨
【コース】平瀬ゲート4:48===6:06白水湖畔ロッジ6:41---地獄谷7:25---8:13 1235m 8:24---9:46曲り谷出合---
10:27箱谷出合---10:42別山谷二俣11:02---12:47南白山14:00---14:29別山谷二俣---15:09曲り谷出合
15:25---16:44地獄谷—17:08白水湖畔ロッジ17:27---18:06平瀬ゲート
ようやく明け始めた空は重苦しい灰色だった。霧雨まで降っている。明日にすればよかったと後悔の念がよぎる。
空の片隅に除いたわずかな青に背中を押されるようにしてDOCに跨った。これまでの暖かさとは一転して季節が逆戻り
したような寒い朝である。霧雨のせいもあり、雨具の上下とウールの帽子を着けてのスタートとなった。
今日は電池切れ対策も万全で、白水湖まで1時間20分掛からず到着した。まったく人影はない。登山口の休憩舎もト
イレも入口に板が打ち付けられて使えない。
静まり返った白水湖畔ロッジの軒先を借りてDOCをデポする。湖の上流奥には白い峰が見え、雲も薄く晴れてきそうな
予感だ。実はここに着くまで迷っていた。今日は雨の中を歩きたいコースではない。もっとも雨の中を歩きたいコースなん
てないのだが。
その風景に勇気付けられて左岸の林道を歩き出すとほどなく雨は止んだ。大白川温泉の源泉をふたつ通り過ぎる。
この湯が平瀬のしらみずの湯まで送水管で運ばれているのだ。
なかなか地獄谷に着かないなと思って歩いていたら、地獄谷沿いに上流へ向かっていた。ボーッとしていてはいけない。
適当なところで河原に下りて渡渉点を探る。
本日は万全の渡渉対策をしてきたつもりだ。モンベルのシンプルオーバーシューズ(但し縫い目は防水処理をしていな
い)を履いてその上からビニール袋を付けガムテープで留める。その内側はレインパンツにロングスパッツで固めている。
通常ならレインパンツを履かない季節だが、寒さと雨のおかげで履いていたのが幸いした。
地獄谷の水量は多からず少なからずというところか。さすがに石を飛んでというわけにはいかず、ひざあたりまで浸かっ
て速い流れに抗いながら渡り切った。対策は成功で足元はまったく濡らさずに済んだようだ。
湖畔に立つと、これまで平瀬道の上から眺めた時のような透明感のない緑色ではなく、透き通ったブルーの湖水が目
の前いっぱいに広がった。これから湖岸のへつりが始まる。
2年前から残雪期の歩き方が変わった。それまでは大型連休が終われば雪山も終わり。沢に切り替わるかしばらく新
緑の山歩きを楽しむのが常だった。ところが2年前にずっと憧れていた白山東面台地を初めて訪れたことと、たんぽぽさ
んの数々のレポを目にしたことが大きな転機となった。
「谷筋からの雪山」。これまでの自分の山登りにはなかった発想だった。もちろん時期を見誤れば雪崩や落石、クレバス
などのリスクを伴う。しかし大きな滝をも埋め尽くしてしまうようなこの山域の膨大な積雪は、ちょっと視点をずらせば谷を
稜線へ一直線に延びる障害物のない、効率のいい道へと変えてしまうのだ。
今日の目的地である南白山もそのひとつ。昨年たんぽぽさんととっちゃんが歩いた別山谷からのロングルートが心から
離れなかった。別山からわざわざ下りて行って辿り着くというのは頭になかった。それだと下山するのにまた登り返さな
くてはならない。たんぽぽさんのレポはまさに「目からウロコ」だった。白水湖の湖岸を歩いて行けるということは想像もし
なかったのである。
[attachment=0]P1070516_1.JPG[/attachment]
大小さまざまの石が積み重なった湖岸の斜面をトラバースして行く。20センチばかりの巾でそこはかとなくトレースがあ
るようなところもある。石は安定しておらず、不用意に足を踏み出すと、落石がガラガラッと音を立ててポシャンと湖水に転
がった。湖畔には枯れた巨木のオブジェが並んで面白い。
とりたてて危険なところもなく、バックウォーターの端まで辿り着いた。渡渉して広大な河原に降り立つ。
地図上ではここはまだ湖底として描かれている場所である。上流方向を見やると、まったく起伏のない河原がどこまでも
続いていた。
期待通り雲が切れ、河原はいっぱいの日を浴びて明るい。スタート時にはゼロに近かったモチメーターは今や振り切れ
そうだ。
このあたりでは湯谷という名の谷は、巾200~300mの広々とした荒れ河原が続く。湖水を背にそんな広い河原を歩くと
いうのは長い登山経験の中でも初めてと言っていい不思議な感覚だった。しかも両岸の支谷には雪が詰まっている。
ふ~たんコンビが去年歩いた焼滑への谷も出合いから雪が詰まっており、問題なく稜線へ達することができそうだ。
[attachment=6]P1070533_1.JPG[/attachment]
なんとも新鮮な経験だったがしばらく歩くと変化の無さに飽きてきた。何度となく軽い渡渉を繰り返して曲り谷の出合に
着いた。その手前から河原に雪が残り始めていたが、ここへ来て雪の面積の方が多くなった。
渡渉して左岸側から別山谷と名前を変えた本流を進むと、すぐに雪が谷を埋める。効率アップのためここでアイゼンを装
着した。
右岸から豪快に大滝を落とすタロタキ谷を過ぎるまで水流が覗いていたが、そこから上は完璧な雪渓だった。
もう谷のど真ん中を歩いて行ける。ここはディズニーランドより楽しいデブリーランドだ。
[attachment=5]P1070569_1.JPG[/attachment]
1477mの箱谷出合、Ca1600mの別山谷二俣と大きな出合が続いた。圧倒的な雪量が谷を埋め尽くしている。
二俣でひと息。見上げる側壁には危なっかしい雪のブロックもなく比較的安定した状態のようだが、音もなく飛んでくる落
石には注意が必要なので休憩は上流側を向いて取らなければいけない。
休んでいると白いものが舞い始めた。なんと粉雪だ。寒い日には違いないが雪まで降るとは思わなかった。
Ca1750mの二俣を左に取る。谷の巾は相変わらず広く、20~30mはあるだろうか。
いかにもゴルジュのありそうなクランク部分もただの急な雪の斜面だ。ピッケルを出すまでもなくダブルストックで軽快に
高度を上げる。
[attachment=4]パノラマ 2_1_1.JPG[/attachment]
Ca1900mの最後の二俣。たんぽぽルートは左だが、右の雪渓の果てに浮かぶ真っ白な稜線とその上に広がる青空に
心惹かれた。あそこまで登ろう。別山と南白山を結ぶ尾根にもまだしっかり雪が残っているようだ。
いよいよ傾斜が強まってきたが、どうしてもピッケルが欲しいという斜度でも雪質でもなく、ストックの2点支持で足場を交
互に固めて行けば問題ない。頭上のダケカンバに光るのは霧氷だろうか。
尾根に飛び出した。振り返れば別山から白山本峰への白い稜線が目の前に横たわる。この稜線も本峰山頂の一部を
除いて雲が消え、見事な景観を見せてくれた。
[attachment=3]パノラマ 3_1.JPG[/attachment]
[attachment=2]P1070627_1_1.JPG[/attachment]
尾根上はオオシラビソの林となっており、木立を避けて北寄りの斜面を進む。
わずかな登りで南白山の頂上に到達した。オオシラビソの並ぶ平凡な山頂だが、ここへ至る道程を思えば感慨深い。
思わずひとりガッツポーズを取った。この山頂に立つ人間は年間何人ぐらいいるのだろう。
風が強いので南側の斜面でオオシラビソを防風林としてランチタイムだ。別山や本峰は眺められないが、先週歩いた三ノ
峰から銚子ヶ峰へ至る白山南縦走路と、願教寺~小白山の県境稜線、丸山~大日の山稜を正面に望む満足できる場所
に陣取った。思ったより早く着いたのでゆっくりランチタイムを楽しもう。
これで5週連続の白山近辺通いである。果たせなかった奈良岳を除けば満足のいく山行が続けられた。いや、奈良岳も
山頂に立てなかったこと以外はいい山行だったと思う。自分の雪山シーズンはまだ終わりそうもない。
そろそろ行くかと山頂に戻るといつの間にか本峰方面はガスに覆われていた。あわよくば焼滑を経由して帰ろうと思って
いたが、その焼滑も雲の中。その気も一瞬で消え失せた。
下りはたんぽぽルートを選ぶ。ガスの湧き上がる急傾斜の雪面に飛び込んだ。足元はアイゼンが気持ち良く決まり、ス
リップの危険は感じない。ここでもストックのまま下りて行った。
先週の完全に夏道の下りだった欲求不満を一気に晴らすように、1600m二俣まで30分掛からず駆け下りた。
これだから雪渓下りはやめられない。
[attachment=1]P1070656_1.JPG[/attachment]
意外なことにタロタキ谷出合あたりに足跡が現れた。自分以外にこんなところへ来るやつがいるのか。どこから来てどこ
へ行ったのだろう。
登りに3時間を要した曲り谷出合まで1時間ほどで下りて来た。楽しい時間はここまでだ。
再び幾度となく渡渉を繰り返して下流に向かって進んだ。
同じように河原を歩くのも芸がないので、左岸側にある樹林に入ってみると、そこは小さな流れの脇に湿地が点在する落
ち着いた場所だった。河原のように石がゴロゴロしていないので格段に歩きやすい。山菜も豊富なようだがよく知らないの
が残念だ。このルートを選んで正解だった。往路のほんの少し横を歩くだけでまったく違う雰囲気を味わうことができた。
帰路は渡渉も効率よくこなし、特別なグッズのお世話にならずとも靴の中を濡らすことなく歩けた。スパッツと靴をガムテ
ープで留めたのが効果的だったようだ。
しかしすべてはうまくいかないもので、湖岸トラバースに移る渡渉点では水がスパッツを超えて浸水してしまった。靴の中
はドボドボである。こういう時は雨具を上にして、裾をガムテープで固定するのがいいかもしれない。
地獄谷からの帰り道、ひとり道端に座っている人がいた。傍らには猟銃があった。
話しかけてみると熊撃ちのハンターで、上流で見た足跡は彼の仲間のものだったようだ。湖畔にボートを積んだ軽トラがあ
ったところを見ると、バックウォーター端までボートで渡ったようである。
白水湖畔ロッジまで戻ると、南白山頂上と思しき白いピークを残照が浮かび上がらせていた。ベンチに座って眺めながら
今日の行程を反芻する。
さあ、平瀬ゲートまで40分のダウンヒルが待っている。
山日和
ようやく明け始めた空は重苦しい灰色だった。霧雨まで降っている。明日にすればよかったと後悔の念がよぎる。