【奥美濃】 イチン谷左俣~千回沢山(1246m)~イチン谷右俣
Posted: 2011年12月20日(火) 22:26
【日 時】 10月9日(日)~10(月)
【地 図】 http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html ... 5.72362778
【同行者】 博士
【天 候】 晴れ
【ルート】 ①才ノ谷出合(8:40)~イチン谷出合(9:05)~684m二俣(11:55/12:16)~850m分岐(14:15)~1050m幕営地(15:18)
②幕営地(7:19)~山頂(9:11/45)~684m二俣(15:33)~イチン谷出合(19:00)~才ノ谷出合(19:59)
余裕のない出張はたまらん(-_-#)。広島・山口を鬼の形相で駆け抜けた三日間。さすがに同行した山好きな同僚も、週末は家で大人しくしているという。
駅弁買って新山口駅でのぞみに乗車。車中、週末をどうしようか迷う私に、同僚がきっぱり予言した。「あんたは明日の今頃は絶対山に登ってるはず」・・・何言ってんだ、こんなに疲れてんのに。明日は絶対ゆっくりしてやる!
夜遅くの帰還。言葉と裏腹にそそくさ山の準備をしている私。速攻で飯・フロ・寝るの三拍子。睡眠時間2時間半。しかし、結構集中して寝たぞ。エンジンスタート・・・いざ出発!
<第一日目>
あかん谷の平流をちゃぽちゃぽ歩く。イチン谷の出合を目指そう。この珍妙なる谷名は一ノ谷が転じたものだろうか。
サワグルミの大木を仰いで歩くと両岸が立ってくる。いささかゴルジュっぽくなった。さらに歩くと、ヤマボウシの赤い実が澄んだ流れにさらさら洗われている。
やがて魚止の滝。右岸の切り立った岩場を見ると、滝脇左側のスラブに古ぼけた固定ロープ。だましだまし掴んで登る。
至る所に廃棄されたワイヤが置き去りだ。さび付いて穴の開いたドラム缶まで転がっている。その先、緑のシャワーに包まれ、しばし平流に癒される。
2mほどの二条の滝。左岸を小さく巻く。溯行を続けると、行く手に倒木が詰まっている。これをジャングルジムしてみるが、ゴルジュの奥には深い釜を伴った滝が収まっていて通行不能。
左岸から慎重に巻いて沢筋に復帰。620m付近の支流が流れ込むポイントも意外に難関。水も冷たそうなので最終的には右岸の巻き。
陽光が射すと、谷の陰影が強調されて、匂い立つような美しさ。とうとうと流れ来る水流が、目に耳に優しい。
さて、684分岐だ。右俣には倒木が詰まっている。ここから左俣に踏み込む。
連瀑帯が始まった!トレンチの中の爆流、末広がり二段の美しい斜瀑4m。くらげ状の滝。透明度の高い釜奥のトユ状3m斜瀑。続いて2段5m。「そうめん流しの刑」に問われないよう気を使いながら、快適に登り詰める。
4m滝に詰まる。右辺でがっぷり勝負すべきだったが、寒いシャワーを避けて右岸の巻きを選んだのがとんだ粗相。思いの他厳しい。岩角にテープを掛け、ハンマー投げで抜け切る。
まだまだ続く。5mの黒い滝。先ほどの失敗もあるので、右辺をシャワーで直登。おー寒っ!まだまだ先は長い。
850m分岐で1155独標を狙って左俣する。途端に、何じゃこりゃの大滝2段20m。美しいねじれ滝だ。右から巻こう。ここは無難に巻き終えて河床に戻る。
これでもかの連瀑帯。先を急ごう。時間と勝負しながら、ようやく幕営地を選ぶ。
焚き火は成功するかな。燃えろよ、燃えろ。一旦ぶすぶすとくすぶって息絶え絶えだったが、不死鳥のように灰から甦った。煙が目にしみるぜ♪
<第二日目>
なななんと。台湾ラーメンの朝食で始まった朝。うひゃ、スープが煉瓦色だ。
ぽかぽか身体の芯から温まって、いざ出発。小振りになった滝場を粛々と登り詰める。それでも、先が見えた安心感から、心に余裕も生まれる。ダイモンジソウの清楚さに見とれたり、森の恵み(内緒♪)を頂いたりするゆとりも楽しむ。
いよいよ源流帯に踏み込む。心は軽やかだ。だが、やがて水が切れて水路跡を歩くようになると、どのタイミングで稜線に上がり込むかの戦略に心中忙しい。
タイミングを見計らってヤブに突っ込む。つらいヤブコギと枝渡りのアクロバティックな空中戦。身体のしなやかさが足りんなぁ、わし。
サルナシの甘さに癒される。これが泣けるくらいうまい。そしてようやく三角点に抜ける。博士とがっちり握手。
そういや、前回、千回沢山に登ったのは、徳山村がダム湖に沈みゆく前夜だった。門入から千回沢に入渓して山頂を攻略した後、不動谷右俣に降りたのだが、あれは帰路が大変だったなぁ。
下降はイチン谷右俣だ。すとーんと切れ落ちるような岩壁のルンゼは気を使う。そうこうするうち、博士が上から落ちてきた!ここは大根おろしのおろし金の上を滑ってくるようなもの。幸運にも私の目の前で止まってくれたから安堵する。
侮らず、こまめにロープを出そうということになる。後で聞けば、博士のお尻の青あざはそれはそれは見事なものだったらしい。時間の経過と共に色が微妙に変化し、赤紫と青と黒のグラデーションは神業的だったらしい。
思わず、人に見せたい気持ちになったようだ。彼は何と職場で後輩(ただし同性)に見せようとしたが、固く断られて落胆したらしい。
水流がちょろちょろする頃に大きな滝場が現れ、やにわに緊張感が漂う。とにかく、先ほどの教訓もあるので、時間はかかるが、丁寧にロープを出そうということに。
10m滝の懸垂。2本目は二段8mの懸垂。3本目は流木に支点を取って懸垂。これは8m幅広直瀑だ。4本目は流木が2本突き刺さった7m滝。5本目は流木が1本突っ立った細身の7m滝。6本目はルンゼを一気呵成に流下する荒くれ者の8m。7本目は両岸が苔むした8m滝。
何と何と、滝下で目撃したのが、兎夢さんの残置ロープの残骸だ。何とまぁ痛ましい姿だろう。中味の繊維がでろんと飛び出している。大岩に押しつぶされ、水流に洗われて悲惨な姿。
3mチョックストーンの滝。私はフリーで。博士は「なますを吹く」状態だったので小さく懸垂。8本目は流木が滝頭に詰まった5m滝。いずれの滝も懸垂支点に気を使ったが、9本目5mは落口付近にハーケン1。これにもう一本打ち重ねて、その二本にスリングを通して支点にした。下降してみると、岩の下が洞になっているのが見える。
ようやく684m分岐だ。懸垂に時間がかかり、時間的にはぎりぎりじゃん!しかし、日没までに「魚止の滝」を下れば、後は難所はないことがわかっている。時間読みしながら性急に下る。登りで苦労した所や巻きで苦労した箇所を一つ一つ後追いしながら・・・
魚止めの滝5時半。まだまだ薄暮。慎重に見極めながら固定ロープで下る。ここまで来れば先が読めるぞ。
イチン谷出合からは、あかん谷の悠長な流れを往くのだが、こう暗いとコース読みに気を使う。だが、悲壮感はない。安堵感と充実感半ばというところ。
満月が水先案内人を務めてくれる。ヘッデンの明かりを消して満月を楽しむ余裕さえ出てくる。
昨夜の、葉漏れの月に酔いしれた焚き火の夜が甦る。思わず笑みがこぼれる。
ふ~さん
【地 図】 http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html ... 5.72362778
【同行者】 博士
【天 候】 晴れ
【ルート】 ①才ノ谷出合(8:40)~イチン谷出合(9:05)~684m二俣(11:55/12:16)~850m分岐(14:15)~1050m幕営地(15:18)
②幕営地(7:19)~山頂(9:11/45)~684m二俣(15:33)~イチン谷出合(19:00)~才ノ谷出合(19:59)
余裕のない出張はたまらん(-_-#)。広島・山口を鬼の形相で駆け抜けた三日間。さすがに同行した山好きな同僚も、週末は家で大人しくしているという。
駅弁買って新山口駅でのぞみに乗車。車中、週末をどうしようか迷う私に、同僚がきっぱり予言した。「あんたは明日の今頃は絶対山に登ってるはず」・・・何言ってんだ、こんなに疲れてんのに。明日は絶対ゆっくりしてやる!
夜遅くの帰還。言葉と裏腹にそそくさ山の準備をしている私。速攻で飯・フロ・寝るの三拍子。睡眠時間2時間半。しかし、結構集中して寝たぞ。エンジンスタート・・・いざ出発!
<第一日目>
あかん谷の平流をちゃぽちゃぽ歩く。イチン谷の出合を目指そう。この珍妙なる谷名は一ノ谷が転じたものだろうか。
サワグルミの大木を仰いで歩くと両岸が立ってくる。いささかゴルジュっぽくなった。さらに歩くと、ヤマボウシの赤い実が澄んだ流れにさらさら洗われている。
やがて魚止の滝。右岸の切り立った岩場を見ると、滝脇左側のスラブに古ぼけた固定ロープ。だましだまし掴んで登る。
至る所に廃棄されたワイヤが置き去りだ。さび付いて穴の開いたドラム缶まで転がっている。その先、緑のシャワーに包まれ、しばし平流に癒される。
2mほどの二条の滝。左岸を小さく巻く。溯行を続けると、行く手に倒木が詰まっている。これをジャングルジムしてみるが、ゴルジュの奥には深い釜を伴った滝が収まっていて通行不能。
左岸から慎重に巻いて沢筋に復帰。620m付近の支流が流れ込むポイントも意外に難関。水も冷たそうなので最終的には右岸の巻き。
陽光が射すと、谷の陰影が強調されて、匂い立つような美しさ。とうとうと流れ来る水流が、目に耳に優しい。
さて、684分岐だ。右俣には倒木が詰まっている。ここから左俣に踏み込む。
連瀑帯が始まった!トレンチの中の爆流、末広がり二段の美しい斜瀑4m。くらげ状の滝。透明度の高い釜奥のトユ状3m斜瀑。続いて2段5m。「そうめん流しの刑」に問われないよう気を使いながら、快適に登り詰める。
4m滝に詰まる。右辺でがっぷり勝負すべきだったが、寒いシャワーを避けて右岸の巻きを選んだのがとんだ粗相。思いの他厳しい。岩角にテープを掛け、ハンマー投げで抜け切る。
まだまだ続く。5mの黒い滝。先ほどの失敗もあるので、右辺をシャワーで直登。おー寒っ!まだまだ先は長い。
850m分岐で1155独標を狙って左俣する。途端に、何じゃこりゃの大滝2段20m。美しいねじれ滝だ。右から巻こう。ここは無難に巻き終えて河床に戻る。
これでもかの連瀑帯。先を急ごう。時間と勝負しながら、ようやく幕営地を選ぶ。
焚き火は成功するかな。燃えろよ、燃えろ。一旦ぶすぶすとくすぶって息絶え絶えだったが、不死鳥のように灰から甦った。煙が目にしみるぜ♪
<第二日目>
なななんと。台湾ラーメンの朝食で始まった朝。うひゃ、スープが煉瓦色だ。
ぽかぽか身体の芯から温まって、いざ出発。小振りになった滝場を粛々と登り詰める。それでも、先が見えた安心感から、心に余裕も生まれる。ダイモンジソウの清楚さに見とれたり、森の恵み(内緒♪)を頂いたりするゆとりも楽しむ。
いよいよ源流帯に踏み込む。心は軽やかだ。だが、やがて水が切れて水路跡を歩くようになると、どのタイミングで稜線に上がり込むかの戦略に心中忙しい。
タイミングを見計らってヤブに突っ込む。つらいヤブコギと枝渡りのアクロバティックな空中戦。身体のしなやかさが足りんなぁ、わし。
サルナシの甘さに癒される。これが泣けるくらいうまい。そしてようやく三角点に抜ける。博士とがっちり握手。
そういや、前回、千回沢山に登ったのは、徳山村がダム湖に沈みゆく前夜だった。門入から千回沢に入渓して山頂を攻略した後、不動谷右俣に降りたのだが、あれは帰路が大変だったなぁ。
下降はイチン谷右俣だ。すとーんと切れ落ちるような岩壁のルンゼは気を使う。そうこうするうち、博士が上から落ちてきた!ここは大根おろしのおろし金の上を滑ってくるようなもの。幸運にも私の目の前で止まってくれたから安堵する。
侮らず、こまめにロープを出そうということになる。後で聞けば、博士のお尻の青あざはそれはそれは見事なものだったらしい。時間の経過と共に色が微妙に変化し、赤紫と青と黒のグラデーションは神業的だったらしい。
思わず、人に見せたい気持ちになったようだ。彼は何と職場で後輩(ただし同性)に見せようとしたが、固く断られて落胆したらしい。
水流がちょろちょろする頃に大きな滝場が現れ、やにわに緊張感が漂う。とにかく、先ほどの教訓もあるので、時間はかかるが、丁寧にロープを出そうということに。
10m滝の懸垂。2本目は二段8mの懸垂。3本目は流木に支点を取って懸垂。これは8m幅広直瀑だ。4本目は流木が2本突き刺さった7m滝。5本目は流木が1本突っ立った細身の7m滝。6本目はルンゼを一気呵成に流下する荒くれ者の8m。7本目は両岸が苔むした8m滝。
何と何と、滝下で目撃したのが、兎夢さんの残置ロープの残骸だ。何とまぁ痛ましい姿だろう。中味の繊維がでろんと飛び出している。大岩に押しつぶされ、水流に洗われて悲惨な姿。
3mチョックストーンの滝。私はフリーで。博士は「なますを吹く」状態だったので小さく懸垂。8本目は流木が滝頭に詰まった5m滝。いずれの滝も懸垂支点に気を使ったが、9本目5mは落口付近にハーケン1。これにもう一本打ち重ねて、その二本にスリングを通して支点にした。下降してみると、岩の下が洞になっているのが見える。
ようやく684m分岐だ。懸垂に時間がかかり、時間的にはぎりぎりじゃん!しかし、日没までに「魚止の滝」を下れば、後は難所はないことがわかっている。時間読みしながら性急に下る。登りで苦労した所や巻きで苦労した箇所を一つ一つ後追いしながら・・・
魚止めの滝5時半。まだまだ薄暮。慎重に見極めながら固定ロープで下る。ここまで来れば先が読めるぞ。
イチン谷出合からは、あかん谷の悠長な流れを往くのだが、こう暗いとコース読みに気を使う。だが、悲壮感はない。安堵感と充実感半ばというところ。
満月が水先案内人を務めてくれる。ヘッデンの明かりを消して満月を楽しむ余裕さえ出てくる。
昨夜の、葉漏れの月に酔いしれた焚き火の夜が甦る。思わず笑みがこぼれる。
ふ~さん