【鈴鹿】第三者検証委員会 馬の背尾根から鎌ヶ岳へ
Posted: 2011年12月19日(月) 00:59
【日 付】2011年12月17日(土)
【山 域】鈴鹿中部 鎌ヶ岳周辺
【天 候】曇り一時雪
【コース】駐車地8:28---8:40三岳寺---9:26湯ノ峰---10:24白ハゲ---10:43カズラ谷分岐10:59---11:33鎌ヶ岳12:43---
13:05打越陰尾根分岐---13:51三ツ口谷14:01---14:24駐車地
菰野のコンビニで買い物と用足しを済ませて外に出ると、晴れていたはずの空から白いものが降っていた。
少し気落ちしながらも登山口へ向かう。
今日の目的は話題沸騰した馬の背尾根との第三者検証である。当事者による検証レポは上がったものの、やはり身び
いきの恐れ無しとしない。ここは完全な第三者である私の出番であろう。
冷静かつ客観的にコースのポイントを検証していこう。ついでに鎌へ上がって話題の打越陰尾根を下山路に使えば充実
した一日になりそうだ。
すっかり雪化粧をした温泉街の急坂を登って行く。スタッドレスに履き替えておいて正解だ。
車道終点手前のスペースに駐車、坂を下って登山口の三岳寺に向かう。積もった雪に足を取られて転倒しないよう慎重
に歩く。
三岳寺は勝手な予想と違ってひなびた感じはなかった。ここには「ミニ西国三十三ヵ所」を巡る遊歩道がある。
「ミニ四国八十八ヶ所」と共に、あちこちの寺でよく見られるものだが、お手軽にこれを巡って御利益があるのだろうか。
5センチほど積もった雪には新しい足跡が付いていた。まさか検証目的ではないだろうが、冬のこんな日に馬の背尾根
を辿る登山者もいるものだ。
この登山道は松が多い。林相としてはあまり好みではないが、雰囲気は悪くない。
722m標高点の「湯の峰」まで来ると正面に鎌、右手に御在所、左手に雲母峰が見えてなかなかの眺めである。木々が
葉を落としたこの季節は好展望だが、それ以外の時はどうなのだろう。
ところでこのピークには「湯の峰722m」の標識と、観光協会が立てた「湯の峰717.1m」の標識がある。これはどういう
ことか。三重県が独自に計測した「正確な」標高なのかもしれないが、地形図の記載と異なる表示はいたずらに登山者
を混乱させるだけではないだろうか。標識が「遭難防止」のためのものであるならば、これは本末転倒と言うべきだろう。
[attachment=4]P1040265_1.JPG[/attachment]
細かいアップダウンはあるものの、たおやかな尾根が続く。湯の峰から一旦下って登り返すあたりが「馬の背」だろうか。
この尾根は距離は長いが到達点の標高は低い。従って相対的な傾斜はこの近辺の登山道では一番緩いと言える。
問題の場所はどこだろう。それらしいところを見つけられないうちに、岳峠~雲母峰稜線の最後の急登にかかった。
右を見ると道らしきものがトラバース気味に付けられており、その先には赤テープも見えた。
これだな。標高780m地点である。但し、進むべき尾根にもテープはふんだんに付けられている。自分が尾根を辿ってい
る意識があれば右へ進む選択肢はないだろう。それにここから長石谷までの標高差はわずか30~40m。間違いに気づ
いて戻ったところで知れている。今は雪が積もっているので判定の難しいところはあるが、ここで間違う方がどうかしてい
るという結論に達した。
ひと登りでちょっとしたピークに出た。ここは白ハゲから見た時に、雲母峰へ続く尾根よりも立派で高い尾根なので主尾
根と勘違いしそうなところだ。岳峠から来れば雲母峰へ行くのに間違えて入りそうなところである。その分岐には立派な
道標があるので間違えようもないが、逆に馬の背尾根に入りたい向きにはなおさら自然に導かれるだろう。
白ハゲに立つ。風がやや強くなってきた。鎌方面は完全にガスの中。もう展望は期待できないがここでやめるわけにも
いかない。
カズラ谷の分岐で今日初めての休憩を取る。このあたりのササはまだ元気なようで、中途半端に積もった雪に押されて道
を塞ぎかけているので、ササを押し分ける度に雪を被る。
岳峠へのトラバース道は完全にササで塞がれていたので尾根通しに迂回。トラバース道を使えばカズラ谷分岐から岳峠
まで10分ほどだろう。「カズラ谷を下るしかなかった。」というのも理解不能である。
小さいながら霧氷が現われ始めた。これが出てくれば展望がなくても楽しめるというもの。バックが青空なら申し分ない
が贅沢は言うまい。
岳峠から見上げる鎌の南壁は霧氷が着いてなかなかの迫力だ。気温も低くなり、さっきレインパンツを履いて正解だった。
スパッツを持って来なかったのは失敗だったが、雪はサラサラのパウダーなので足元がびしょびしょになることもない。
[attachment=3]P1040312_1.JPG[/attachment]
鎌の山頂は予定通り何も見えなかった。積雪は20センチほどか。
武平峠から来たらしい登山者がひとり。寒いし何も見えないのでメシも食わずに下りようかと思ったが、その人がコンロを
出して食事の用意を始めたので隣に腰を降ろした。続いてその仲間もふたり上がってきた。
今日は鍋ではなくカップうどんだ。湯がすぐ冷めるせいか、なかなか柔らかくならずあまりおいしくなかった。やはり冬は鍋
に限る。
3人パーティーと入れ替わるように岳峠からひとり上がって来て、20年物だというヤカンで酒を燗し始めた。
話をすると、雪の季節は奥美濃へ入り浸りだという。それもテントを担いで通行止めの林道を歩いて行くというからかなり
の猛者だ。越美国境の山々も岐阜県側から登ることにこだわっているらしく、「雪の冠山に登りたいんですよ~」と話して
いた。今年は天狗・黒津・蕎麦粒・湧谷のゴールデン周回コースも狙っていたと言う。
しばらくするともうひとり上がってきた。その人の連れらしい。宮妻から冬の鎌尾根経由で鎌まで4時間ほどというから健
脚である。ぬる燗のお相伴に預かり楽しいひと時を過ごした。
ファッショナブル登山雑誌「ランドネ」の表紙から出て来たような若いカップルが上がってきたのを潮に、山頂を辞する。
緑水さんがレポしていた山頂直下の岩場を避ける巻き道を歩いてみよう。
山頂の南端に道標があり、武平峠への道を示している。道は通称西鎌尾根を少し下った後右の谷へトラバース、そのま
ま下り気味に巻きながら三ツ口谷源頭のガレ場へ出るというルートだ。山頂西面の樹林はなかなかのもので、今日は一
面の霧氷が見事だ。
[attachment=2]P1040323_1.JPG[/attachment]
この時間になってまた若い登山者が3人上がってきた。「あれが山頂ですか」とすぐ上に見えるピークを指すので、「あれ
は違うけどもうすぐ。」と答える。この「もうすぐ」という言葉は曲者で、人によって受け取り方が違う。彼らは何分ぐらいが
「もうすぐ」と受け取っただろうか。私はここまで15分ぐらい下りて来ている。自分の若い頃を思い出して微笑ましく感じた。
打越陰尾根の入口は、溝状になった登山道の縁にありややわかりにくい。一度通り過ぎてしまった。入口には例の警告
表示があり、トラロープで通せんぼしてある。
入ってみると、まず問題のない「道」になっていた。テープもふんだんにあり、迷う心配もないだろう。間違える可能性があ
るとすれば、Ca910mピークの尾根の分岐点と、尾根末端の急斜面部分ぐらいか。北面にある顕著なガレの頭あたりには
露岩が散在し、御在所方面と鈴鹿スカイラインが一望できる。この岩場付近がやや足元が悪いだけで、他はまずまず登
山道と言えるレベルである。途中の樹林の雰囲気も悪くないので、鎌への登路としては十分使えるルートだろう。
[attachment=0]パノラマ 2_1_1.JPG[/attachment]
三ツ口谷側の入口には問題の標識があるが、設置者は菰野の観光協会だ。それなのに警告表示にも観光協会は名前
を連ねている。
問題なのはペンキマークやテープなどではなく、この標識ではないのか。「難路」と断ってはいるものの、「三ツ口尾根 県
境稜線」と書いてあれば行ってみようと思っても不思議はない。この標識がなければマーキングがあったとしても普通の登
山者は入らないだろう。
検証作業はこれにて終了。三ツ口谷の大堰堤の上でザックを降ろす。堰堤の向こうには四日市の街並みが日に照らされ
ている。どうやら天気の巡り合わせが少しずれてしまったようだ。
谷沿いの道を下って車道に出ると、朝の雪はカケラもなくなっていた。
山日和
【山 域】鈴鹿中部 鎌ヶ岳周辺
【天 候】曇り一時雪
【コース】駐車地8:28---8:40三岳寺---9:26湯ノ峰---10:24白ハゲ---10:43カズラ谷分岐10:59---11:33鎌ヶ岳12:43---
13:05打越陰尾根分岐---13:51三ツ口谷14:01---14:24駐車地
菰野のコンビニで買い物と用足しを済ませて外に出ると、晴れていたはずの空から白いものが降っていた。
少し気落ちしながらも登山口へ向かう。
今日の目的は話題沸騰した馬の背尾根との第三者検証である。当事者による検証レポは上がったものの、やはり身び
いきの恐れ無しとしない。ここは完全な第三者である私の出番であろう。
冷静かつ客観的にコースのポイントを検証していこう。ついでに鎌へ上がって話題の打越陰尾根を下山路に使えば充実
した一日になりそうだ。
すっかり雪化粧をした温泉街の急坂を登って行く。スタッドレスに履き替えておいて正解だ。
車道終点手前のスペースに駐車、坂を下って登山口の三岳寺に向かう。積もった雪に足を取られて転倒しないよう慎重
に歩く。
三岳寺は勝手な予想と違ってひなびた感じはなかった。ここには「ミニ西国三十三ヵ所」を巡る遊歩道がある。
「ミニ四国八十八ヶ所」と共に、あちこちの寺でよく見られるものだが、お手軽にこれを巡って御利益があるのだろうか。
5センチほど積もった雪には新しい足跡が付いていた。まさか検証目的ではないだろうが、冬のこんな日に馬の背尾根
を辿る登山者もいるものだ。
この登山道は松が多い。林相としてはあまり好みではないが、雰囲気は悪くない。
722m標高点の「湯の峰」まで来ると正面に鎌、右手に御在所、左手に雲母峰が見えてなかなかの眺めである。木々が
葉を落としたこの季節は好展望だが、それ以外の時はどうなのだろう。
ところでこのピークには「湯の峰722m」の標識と、観光協会が立てた「湯の峰717.1m」の標識がある。これはどういう
ことか。三重県が独自に計測した「正確な」標高なのかもしれないが、地形図の記載と異なる表示はいたずらに登山者
を混乱させるだけではないだろうか。標識が「遭難防止」のためのものであるならば、これは本末転倒と言うべきだろう。
[attachment=4]P1040265_1.JPG[/attachment]
細かいアップダウンはあるものの、たおやかな尾根が続く。湯の峰から一旦下って登り返すあたりが「馬の背」だろうか。
この尾根は距離は長いが到達点の標高は低い。従って相対的な傾斜はこの近辺の登山道では一番緩いと言える。
問題の場所はどこだろう。それらしいところを見つけられないうちに、岳峠~雲母峰稜線の最後の急登にかかった。
右を見ると道らしきものがトラバース気味に付けられており、その先には赤テープも見えた。
これだな。標高780m地点である。但し、進むべき尾根にもテープはふんだんに付けられている。自分が尾根を辿ってい
る意識があれば右へ進む選択肢はないだろう。それにここから長石谷までの標高差はわずか30~40m。間違いに気づ
いて戻ったところで知れている。今は雪が積もっているので判定の難しいところはあるが、ここで間違う方がどうかしてい
るという結論に達した。
ひと登りでちょっとしたピークに出た。ここは白ハゲから見た時に、雲母峰へ続く尾根よりも立派で高い尾根なので主尾
根と勘違いしそうなところだ。岳峠から来れば雲母峰へ行くのに間違えて入りそうなところである。その分岐には立派な
道標があるので間違えようもないが、逆に馬の背尾根に入りたい向きにはなおさら自然に導かれるだろう。
白ハゲに立つ。風がやや強くなってきた。鎌方面は完全にガスの中。もう展望は期待できないがここでやめるわけにも
いかない。
カズラ谷の分岐で今日初めての休憩を取る。このあたりのササはまだ元気なようで、中途半端に積もった雪に押されて道
を塞ぎかけているので、ササを押し分ける度に雪を被る。
岳峠へのトラバース道は完全にササで塞がれていたので尾根通しに迂回。トラバース道を使えばカズラ谷分岐から岳峠
まで10分ほどだろう。「カズラ谷を下るしかなかった。」というのも理解不能である。
小さいながら霧氷が現われ始めた。これが出てくれば展望がなくても楽しめるというもの。バックが青空なら申し分ない
が贅沢は言うまい。
岳峠から見上げる鎌の南壁は霧氷が着いてなかなかの迫力だ。気温も低くなり、さっきレインパンツを履いて正解だった。
スパッツを持って来なかったのは失敗だったが、雪はサラサラのパウダーなので足元がびしょびしょになることもない。
[attachment=3]P1040312_1.JPG[/attachment]
鎌の山頂は予定通り何も見えなかった。積雪は20センチほどか。
武平峠から来たらしい登山者がひとり。寒いし何も見えないのでメシも食わずに下りようかと思ったが、その人がコンロを
出して食事の用意を始めたので隣に腰を降ろした。続いてその仲間もふたり上がってきた。
今日は鍋ではなくカップうどんだ。湯がすぐ冷めるせいか、なかなか柔らかくならずあまりおいしくなかった。やはり冬は鍋
に限る。
3人パーティーと入れ替わるように岳峠からひとり上がって来て、20年物だというヤカンで酒を燗し始めた。
話をすると、雪の季節は奥美濃へ入り浸りだという。それもテントを担いで通行止めの林道を歩いて行くというからかなり
の猛者だ。越美国境の山々も岐阜県側から登ることにこだわっているらしく、「雪の冠山に登りたいんですよ~」と話して
いた。今年は天狗・黒津・蕎麦粒・湧谷のゴールデン周回コースも狙っていたと言う。
しばらくするともうひとり上がってきた。その人の連れらしい。宮妻から冬の鎌尾根経由で鎌まで4時間ほどというから健
脚である。ぬる燗のお相伴に預かり楽しいひと時を過ごした。
ファッショナブル登山雑誌「ランドネ」の表紙から出て来たような若いカップルが上がってきたのを潮に、山頂を辞する。
緑水さんがレポしていた山頂直下の岩場を避ける巻き道を歩いてみよう。
山頂の南端に道標があり、武平峠への道を示している。道は通称西鎌尾根を少し下った後右の谷へトラバース、そのま
ま下り気味に巻きながら三ツ口谷源頭のガレ場へ出るというルートだ。山頂西面の樹林はなかなかのもので、今日は一
面の霧氷が見事だ。
[attachment=2]P1040323_1.JPG[/attachment]
この時間になってまた若い登山者が3人上がってきた。「あれが山頂ですか」とすぐ上に見えるピークを指すので、「あれ
は違うけどもうすぐ。」と答える。この「もうすぐ」という言葉は曲者で、人によって受け取り方が違う。彼らは何分ぐらいが
「もうすぐ」と受け取っただろうか。私はここまで15分ぐらい下りて来ている。自分の若い頃を思い出して微笑ましく感じた。
打越陰尾根の入口は、溝状になった登山道の縁にありややわかりにくい。一度通り過ぎてしまった。入口には例の警告
表示があり、トラロープで通せんぼしてある。
入ってみると、まず問題のない「道」になっていた。テープもふんだんにあり、迷う心配もないだろう。間違える可能性があ
るとすれば、Ca910mピークの尾根の分岐点と、尾根末端の急斜面部分ぐらいか。北面にある顕著なガレの頭あたりには
露岩が散在し、御在所方面と鈴鹿スカイラインが一望できる。この岩場付近がやや足元が悪いだけで、他はまずまず登
山道と言えるレベルである。途中の樹林の雰囲気も悪くないので、鎌への登路としては十分使えるルートだろう。
[attachment=0]パノラマ 2_1_1.JPG[/attachment]
三ツ口谷側の入口には問題の標識があるが、設置者は菰野の観光協会だ。それなのに警告表示にも観光協会は名前
を連ねている。
問題なのはペンキマークやテープなどではなく、この標識ではないのか。「難路」と断ってはいるものの、「三ツ口尾根 県
境稜線」と書いてあれば行ってみようと思っても不思議はない。この標識がなければマーキングがあったとしても普通の登
山者は入らないだろう。
検証作業はこれにて終了。三ツ口谷の大堰堤の上でザックを降ろす。堰堤の向こうには四日市の街並みが日に照らされ
ている。どうやら天気の巡り合わせが少しずれてしまったようだ。
谷沿いの道を下って車道に出ると、朝の雪はカケラもなくなっていた。
山日和