【鈴鹿】朝明からイブネへ 沢音の山旅
Posted: 2011年12月12日(月) 23:50
【日 付】2011年12月10日(土)
【山 域】鈴鹿中部 イブネ周辺
【天 候】晴れのち曇り一時雪または雨
【コース】朝明7:22---8:19中峠8:31---8:51大瀞---9:28オゾ谷鉱山跡9:45---10:48クラシ---11:04イブネ---11:36銚子
12:28---13:22高昌山---13:58高昌鉱山跡---14:17千種街道14:48---15:40根の平峠---16:21朝明
寒い朝。思わず吉永小百合を思い出してしまいそうな冷え込みである。
朝明の駐車場はまだ車もまばら。愛想のいい集金のおじさんによれば、12月に入って登山者の数もぐっと減ったようだ。
大阪ナンバーを見て、「遠いところからわざわざありがとうございます」とねぎらい?の言葉を掛けてくれた。
中峠への道は10年振りだ。最近10年振りのところが多い。伏木谷の下部にはちゃんとした橋が掛けられ、一旦登って
急降下するところはトラバース道ができていて驚いた。
曙滝を巻いて落ち口を覗きこむと、歩き出した時にはまったく差していなかった日が背中を暖めるようになってきた。今日
は正真正銘の晴れのようだ。
中峠の手前は溝のような道をササのトンネルをくぐって歩いたはずだが面影もない。右寄りに付け替えられた道を辿る
と伏木谷源頭の崩壊地が丸裸。峠の周囲も大きな広場のようになっていた。遠くに浮かぶ山塊は御岳や中央アルプス
だろうか。
[attachment=4]P1040064_1.JPG[/attachment]
下水晶谷に入るとあまり変わりはないようで、1分も下れば水が流れ出すのは県境滋賀県側の特徴だ。
大瀞鉄橋に迂回路の標識があり、右に回り込むように神崎川本流へ導かれる。鉄橋の様子はどんなものかと見に行くと、
かなり傾いた橋は真ん中あたりで折れ曲がっていた。神に祈りながら渡れないこともないかもしれないが、無宗教者なの
でやめた。
本流の水量は普通で、石が頭を出しているので渡渉は簡単だ。と思ったら、石の上に置いた左足がズルズルと滑り始め
て着水してしまった。浅いので被害は最小限で済んだものの油断大敵である。
オゾ谷へ入る。ここは7年振りだ。やっと10年振りから離れられた。今日は未踏のマキガヒラ谷からクラシへ上がる予定
だ。足が遠のいていた鈴鹿の足跡を残していない部分を少しずつ辿って行こうという、言わば落穂拾いの山行の一環で
ある。
オゾ谷の鉱山跡は日当たりも良く、二次林の美しい落ち着ける場所だ。マキガヒラ谷の出合にはわかりやすい標識があ
り、迷うこともない。谷筋はガレガレの急傾斜が続き、うっすらと雪が覆っていた。
右俣の20m以上はありそうな連瀑を見送り、早や源頭部のような雰囲気の谷を上がって行く。マーキングが谷を離れて右
の斜面に続いていた。予想よりずいぶん早く谷を離れるようだ。谷をそのまま詰めようかともおもったが、とりあえずマーキ
ングに従う。下りに取れば難儀しそうなグズグズの急斜面を息も絶え絶えに登るとシャクナゲの多い支尾根に乗った。
傾斜がやっと緩むとブナ混じりのちょっとしたコバに出た。イブネの奥に雨乞が頭を出している。
ここにやたら親切な標識があった。それによると、ここは「クラシ東尾根」と「クラシ北東尾根」の合流点ということだが、
北東尾根が東尾根の南側にあるというのは意味不明である。あえて言うなら「北東尾根」と「東北東尾根」というところだろ
うが無理やり名前を付ける必要もない。
樹林のいいところを選んで歩いていたらクラシの標識のある山頂を飛ばしてしまったようだ。
1145mピークに立つと、イクチョトライアングルの雄大な眺めが広がった。背丈を没するほどのササはほとんど痕跡もなく、
草とコケ類で覆われている。20年ばかり前、初めてクラシ谷から上がって来た時、どっちがイブネなのかさっぱりわからな
かったのが夢物語のようだ。
今日はイブネは割愛して、熊ノ戸平から銚子あたりを徘徊してランチ場を探すつもりだったが、イブネ方面に白く光るもの
を見て気が変わった。霧氷だ。こちら側も銚子方面も霧氷のカケラすら見当たらないのに、イブネだけは白い森になってい
た。
風が吹くと金属音を立てて霧氷がバラバラと落ちる。今シーズン初霧氷である。予想していなかっただけにうれしい出会い
だ。
[attachment=3]P1040142_1.JPG[/attachment]
イブネの標識は以前あったところより西寄りのおかしなところに付けられていた。1160mの標高点からずれているし、一
見して一番高いところではないことがわかる。最近はよくわからん登山者が多い。
風は強いというほどではないが冷たい。それに水がないのでここでランチというわけにいかない。北面へ下りる。
すぐにブナ林が広がり、クチクマ谷右俣の源流部へと誘われた。
(谷名は永源寺町史の「永源寺町の山と谷」に拠る。「鈴鹿の山と谷」では熊ノ戸谷。後出のクキオ谷、杉ノ谷も出典は同
じ。) 実にいいところだ。樹林の雰囲気は左俣の熊ノ戸平よりもいい。尾根をひとつ乗り越して左俣へ下りる。2ヶ月前に
佐目子谷を遡行して辿り着いた源流だ。水を汲んで大きなブナを愛でながら銚子へ向かう。
[attachment=2]P1040172_1.JPG[/attachment]
意外に風がないので銚子の山頂で腰を降ろした。今日はちゃんと家からザックの底に入れてきたビールを開け、鍋がぐ
つぐつと煮え出すと日が陰って風が出てきた。しかし今更動けない。
持ってきた衣類を全部着込んで寒さをしのぐ。雨具に代えて冬用のアウターを持ってきたのは正解だった。真冬の雪山で
もやらない4枚重ね着でなんとか耐えることができた。但し下はズボン1枚なのでチト寒いが、レインパンツを履くのも面倒
だ。とにかく空が青いのが何よりである。少々寒くとも心の中まで晴れ渡っている。
少し短めのランチを終えて、再びクラシ方面へ向かうが左俣の最源頭部が気になって谷へ下りて行った。前回はナメが
終わって杉林が出てきたところでやめてしまったので再確認である。
源頭は枝分かれした水流の間に疎林の台地が広がり、下部よりも伸びやかな場所だった。源流を横切って尾根に乗る。
ここはイクチョの展望台。言わば熊ノ戸中央高原といった風情である。熊ノ戸サラウンド劇場と言ってもいいだろう。
[attachment=1]P1040186_1.JPG[/attachment]
イブネ東端に単独者がいた。寒そうに手袋をはめているところだったが、やや薄着のようだ。挨拶して1125mの高昌山
へ向かう。晴れていた空がウソのように、どんよりしてきたかと思うと白いものが降り始めた。
アウターのフードを被ってブナの尾根を行く。小峠への尾根を左に分けると、高昌山とのコルから落ちる猪子谷の右俣が
実にいい雰囲気で上がってきていた。一見太そうなブナが見えたので思わず谷まで下ってみたがたいしたものではなか
った。この谷は源頭部は優しげだが下部には連瀑帯を擁しているらしい。
高昌山からは猪子谷の左俣を回り込むように伸びる尾根を使う。潅木のヤブっぽい尾根は面白みには欠けるが、その
多くが道になってしまった鈴鹿の尾根の中ではバリハイ気分が残る尾根だろう。
末端手前で尾根を外してしまったようで、左下すぐに見えるガレた谷に苦労なく下り立つと、そこには石垣があった。
事前勉強をまったくしていなかったので面食らったが、これは高昌鉱山の跡だった。うまいところへ下りてきたものだ。
ボタ山を駆け降りると更に大規模な石垣が次々と現れ、広場にはトロッコの車輪や一升瓶が転がっていた。神崎川本流
上流の御池鉱山はさらに大規模で、学校まであったという。
この静まり返った谷あいの狭い土地に、多くの人が働き暮らしていたとは想像もできない。
段々畑のような石垣を見送ると、小峠へトラバースする踏み跡があった。そっちへ行ってもいいが、ここは本流へ下りる
方を選択した。再び尾根に乗って快適な疎林を辿ると本流の瀬音が大きくなってきた。
手前に大きく開けた台地があり、奥に石組があったが炭焼窯ふうではなかった。ヤブオフでもできそうないいところだ。
千種街道へ出て本流を渡る。実に落ち着いた河原だ。ここでランチタイムに飲まなかったコーヒーを淹れよう。
闇下は嫌いなので、明るいうちに朝明へ着くための時間を逆算してみる。4時半までに下山するとすれば、3時50分に根の
平峠にいれば大丈夫だ。時間は十分ある。
穏やかな流れが奏でる水音を聞きながら、広濶な二次林に包まれて味わうコーヒーは格別だ。ゆっくりと時間が流れる。
ところがのんびりしていると今度は雨が降り出した。鈴の音が近づいてきたと思ったら、上流からイブネ東端で会った登山
者が下りて来た。仕方なく店じまいして出発すると、5分ほどで止んでしまった。
[attachment=0]P1040235_1.JPG[/attachment]
考えてみれば、朝明を出発してから伏木谷、下水晶谷、神崎川本流、オゾ谷、マキガヒラ谷、クチクマ谷、猪子谷と、常に
沢音を聞いて歩いた。そしてここからもコクイ谷、上水晶谷、クキオ谷、杉ノ谷、タケ谷と渡り、最後に伊勢谷を経て朝明へ
戻るのだ。
すべての生命が生きる源である水。その水を無意識のうちに求める心がそうさせるのか。沢登りではなく、普通の尾根歩き
であっても、雪山であってもいつも「水音」に耳を澄ませる自分がいるような気がする。
コクイ谷の出合を過ぎ、数多くの流れを横切りながらクネクネと続く千種街道は素晴らしい道だ。山の端をひとつ回り込む
たびに水音が消えてはまた聞こえ出す。圧倒的な二次林の佇まいと姿の見えない神崎川本流の存在感はこの道を行く人
を魅了してやまないだろう。「最良の鈴鹿」と形容するのに何のためらいも覚えない空間がここにはある。
根の平峠に着いた。ほぼ予定通りだ。
峠越えの風情がやや失われた伊勢谷の道を早足で歩き、薄暗くなった車道に出る頃にはまた雨が降り始めた。
山日和
【山 域】鈴鹿中部 イブネ周辺
【天 候】晴れのち曇り一時雪または雨
【コース】朝明7:22---8:19中峠8:31---8:51大瀞---9:28オゾ谷鉱山跡9:45---10:48クラシ---11:04イブネ---11:36銚子
12:28---13:22高昌山---13:58高昌鉱山跡---14:17千種街道14:48---15:40根の平峠---16:21朝明
寒い朝。思わず吉永小百合を思い出してしまいそうな冷え込みである。
朝明の駐車場はまだ車もまばら。愛想のいい集金のおじさんによれば、12月に入って登山者の数もぐっと減ったようだ。
大阪ナンバーを見て、「遠いところからわざわざありがとうございます」とねぎらい?の言葉を掛けてくれた。
中峠への道は10年振りだ。最近10年振りのところが多い。伏木谷の下部にはちゃんとした橋が掛けられ、一旦登って
急降下するところはトラバース道ができていて驚いた。
曙滝を巻いて落ち口を覗きこむと、歩き出した時にはまったく差していなかった日が背中を暖めるようになってきた。今日
は正真正銘の晴れのようだ。
中峠の手前は溝のような道をササのトンネルをくぐって歩いたはずだが面影もない。右寄りに付け替えられた道を辿る
と伏木谷源頭の崩壊地が丸裸。峠の周囲も大きな広場のようになっていた。遠くに浮かぶ山塊は御岳や中央アルプス
だろうか。
[attachment=4]P1040064_1.JPG[/attachment]
下水晶谷に入るとあまり変わりはないようで、1分も下れば水が流れ出すのは県境滋賀県側の特徴だ。
大瀞鉄橋に迂回路の標識があり、右に回り込むように神崎川本流へ導かれる。鉄橋の様子はどんなものかと見に行くと、
かなり傾いた橋は真ん中あたりで折れ曲がっていた。神に祈りながら渡れないこともないかもしれないが、無宗教者なの
でやめた。
本流の水量は普通で、石が頭を出しているので渡渉は簡単だ。と思ったら、石の上に置いた左足がズルズルと滑り始め
て着水してしまった。浅いので被害は最小限で済んだものの油断大敵である。
オゾ谷へ入る。ここは7年振りだ。やっと10年振りから離れられた。今日は未踏のマキガヒラ谷からクラシへ上がる予定
だ。足が遠のいていた鈴鹿の足跡を残していない部分を少しずつ辿って行こうという、言わば落穂拾いの山行の一環で
ある。
オゾ谷の鉱山跡は日当たりも良く、二次林の美しい落ち着ける場所だ。マキガヒラ谷の出合にはわかりやすい標識があ
り、迷うこともない。谷筋はガレガレの急傾斜が続き、うっすらと雪が覆っていた。
右俣の20m以上はありそうな連瀑を見送り、早や源頭部のような雰囲気の谷を上がって行く。マーキングが谷を離れて右
の斜面に続いていた。予想よりずいぶん早く谷を離れるようだ。谷をそのまま詰めようかともおもったが、とりあえずマーキ
ングに従う。下りに取れば難儀しそうなグズグズの急斜面を息も絶え絶えに登るとシャクナゲの多い支尾根に乗った。
傾斜がやっと緩むとブナ混じりのちょっとしたコバに出た。イブネの奥に雨乞が頭を出している。
ここにやたら親切な標識があった。それによると、ここは「クラシ東尾根」と「クラシ北東尾根」の合流点ということだが、
北東尾根が東尾根の南側にあるというのは意味不明である。あえて言うなら「北東尾根」と「東北東尾根」というところだろ
うが無理やり名前を付ける必要もない。
樹林のいいところを選んで歩いていたらクラシの標識のある山頂を飛ばしてしまったようだ。
1145mピークに立つと、イクチョトライアングルの雄大な眺めが広がった。背丈を没するほどのササはほとんど痕跡もなく、
草とコケ類で覆われている。20年ばかり前、初めてクラシ谷から上がって来た時、どっちがイブネなのかさっぱりわからな
かったのが夢物語のようだ。
今日はイブネは割愛して、熊ノ戸平から銚子あたりを徘徊してランチ場を探すつもりだったが、イブネ方面に白く光るもの
を見て気が変わった。霧氷だ。こちら側も銚子方面も霧氷のカケラすら見当たらないのに、イブネだけは白い森になってい
た。
風が吹くと金属音を立てて霧氷がバラバラと落ちる。今シーズン初霧氷である。予想していなかっただけにうれしい出会い
だ。
[attachment=3]P1040142_1.JPG[/attachment]
イブネの標識は以前あったところより西寄りのおかしなところに付けられていた。1160mの標高点からずれているし、一
見して一番高いところではないことがわかる。最近はよくわからん登山者が多い。
風は強いというほどではないが冷たい。それに水がないのでここでランチというわけにいかない。北面へ下りる。
すぐにブナ林が広がり、クチクマ谷右俣の源流部へと誘われた。
(谷名は永源寺町史の「永源寺町の山と谷」に拠る。「鈴鹿の山と谷」では熊ノ戸谷。後出のクキオ谷、杉ノ谷も出典は同
じ。) 実にいいところだ。樹林の雰囲気は左俣の熊ノ戸平よりもいい。尾根をひとつ乗り越して左俣へ下りる。2ヶ月前に
佐目子谷を遡行して辿り着いた源流だ。水を汲んで大きなブナを愛でながら銚子へ向かう。
[attachment=2]P1040172_1.JPG[/attachment]
意外に風がないので銚子の山頂で腰を降ろした。今日はちゃんと家からザックの底に入れてきたビールを開け、鍋がぐ
つぐつと煮え出すと日が陰って風が出てきた。しかし今更動けない。
持ってきた衣類を全部着込んで寒さをしのぐ。雨具に代えて冬用のアウターを持ってきたのは正解だった。真冬の雪山で
もやらない4枚重ね着でなんとか耐えることができた。但し下はズボン1枚なのでチト寒いが、レインパンツを履くのも面倒
だ。とにかく空が青いのが何よりである。少々寒くとも心の中まで晴れ渡っている。
少し短めのランチを終えて、再びクラシ方面へ向かうが左俣の最源頭部が気になって谷へ下りて行った。前回はナメが
終わって杉林が出てきたところでやめてしまったので再確認である。
源頭は枝分かれした水流の間に疎林の台地が広がり、下部よりも伸びやかな場所だった。源流を横切って尾根に乗る。
ここはイクチョの展望台。言わば熊ノ戸中央高原といった風情である。熊ノ戸サラウンド劇場と言ってもいいだろう。
[attachment=1]P1040186_1.JPG[/attachment]
イブネ東端に単独者がいた。寒そうに手袋をはめているところだったが、やや薄着のようだ。挨拶して1125mの高昌山
へ向かう。晴れていた空がウソのように、どんよりしてきたかと思うと白いものが降り始めた。
アウターのフードを被ってブナの尾根を行く。小峠への尾根を左に分けると、高昌山とのコルから落ちる猪子谷の右俣が
実にいい雰囲気で上がってきていた。一見太そうなブナが見えたので思わず谷まで下ってみたがたいしたものではなか
った。この谷は源頭部は優しげだが下部には連瀑帯を擁しているらしい。
高昌山からは猪子谷の左俣を回り込むように伸びる尾根を使う。潅木のヤブっぽい尾根は面白みには欠けるが、その
多くが道になってしまった鈴鹿の尾根の中ではバリハイ気分が残る尾根だろう。
末端手前で尾根を外してしまったようで、左下すぐに見えるガレた谷に苦労なく下り立つと、そこには石垣があった。
事前勉強をまったくしていなかったので面食らったが、これは高昌鉱山の跡だった。うまいところへ下りてきたものだ。
ボタ山を駆け降りると更に大規模な石垣が次々と現れ、広場にはトロッコの車輪や一升瓶が転がっていた。神崎川本流
上流の御池鉱山はさらに大規模で、学校まであったという。
この静まり返った谷あいの狭い土地に、多くの人が働き暮らしていたとは想像もできない。
段々畑のような石垣を見送ると、小峠へトラバースする踏み跡があった。そっちへ行ってもいいが、ここは本流へ下りる
方を選択した。再び尾根に乗って快適な疎林を辿ると本流の瀬音が大きくなってきた。
手前に大きく開けた台地があり、奥に石組があったが炭焼窯ふうではなかった。ヤブオフでもできそうないいところだ。
千種街道へ出て本流を渡る。実に落ち着いた河原だ。ここでランチタイムに飲まなかったコーヒーを淹れよう。
闇下は嫌いなので、明るいうちに朝明へ着くための時間を逆算してみる。4時半までに下山するとすれば、3時50分に根の
平峠にいれば大丈夫だ。時間は十分ある。
穏やかな流れが奏でる水音を聞きながら、広濶な二次林に包まれて味わうコーヒーは格別だ。ゆっくりと時間が流れる。
ところがのんびりしていると今度は雨が降り出した。鈴の音が近づいてきたと思ったら、上流からイブネ東端で会った登山
者が下りて来た。仕方なく店じまいして出発すると、5分ほどで止んでしまった。
[attachment=0]P1040235_1.JPG[/attachment]
考えてみれば、朝明を出発してから伏木谷、下水晶谷、神崎川本流、オゾ谷、マキガヒラ谷、クチクマ谷、猪子谷と、常に
沢音を聞いて歩いた。そしてここからもコクイ谷、上水晶谷、クキオ谷、杉ノ谷、タケ谷と渡り、最後に伊勢谷を経て朝明へ
戻るのだ。
すべての生命が生きる源である水。その水を無意識のうちに求める心がそうさせるのか。沢登りではなく、普通の尾根歩き
であっても、雪山であってもいつも「水音」に耳を澄ませる自分がいるような気がする。
コクイ谷の出合を過ぎ、数多くの流れを横切りながらクネクネと続く千種街道は素晴らしい道だ。山の端をひとつ回り込む
たびに水音が消えてはまた聞こえ出す。圧倒的な二次林の佇まいと姿の見えない神崎川本流の存在感はこの道を行く人
を魅了してやまないだろう。「最良の鈴鹿」と形容するのに何のためらいも覚えない空間がここにはある。
根の平峠に着いた。ほぼ予定通りだ。
峠越えの風情がやや失われた伊勢谷の道を早足で歩き、薄暗くなった車道に出る頃にはまた雨が降り始めた。
山日和
山さん、何時代の人ですか? 203高地で旗を立ててたの山さんじゃないの。