【湖北】 残暑厳しい長月の横山岳で掬いあげた秋の煌き
Posted: 2024年10月07日(月) 22:00
【日 付】 2024年9月17日
【山 域】 横山岳
【天 候】 晴れ
【コース】 杉野白谷登山口~白谷コース~横山岳~三高尾根~鳥越峠~P
【メンバー】 Kさん sato
何度目の再訪になるのだろう。
古くから近江と美濃を結ぶ道が通り、明治から大正時代に養蚕業でさかえた面影を残す家々が並ぶ杉野の集落から、
まだところどころ稲を育てている田んぼが広がる網谷林道を進んで行くと、麗しき横山岳の白谷登山口に着いた。
大きな駐車場には一台も車は見あたらない。車のドアを開けて外に出ると、まだ8時台なのにもわっとした熱気に包まれる。
9月半ばを過ぎても今日も猛暑の予報。
直射日光が降り注ぐ開けた谷から急こう配の尾根へと続いていく道を、こんな暑い日に歩くのはわたし達くらいか。
ちょっと笑いがこみあげてきて、同時に、秘密の風景への旅が始まるのだと胸が高鳴る。
リュックを背負い、白谷に沿った道に入った途端、わぁっとこころが躍る。
ミゾソバ、ミズヒキ、キンミズヒキ・・・かわいい花ばなのお出迎え。
緑の草の間からふわりとお顔を出す淡いピンク色のお花と目が合う。コフウロだとKさんから教えていただく。
ちいさなまあるいフキのような葉の上に白い花を咲かせた草は何という名前なのだろう。たくさんたくさん咲いている。
どのお花もちいさくて控えめなのだけど、目を近づけて見ると、うつくしい宝石のようでうっとりとなる。
両岸が開けて水際を歩くようになると、鮮やかな赤紫色のツリフネソウが増えてくる。
なんとも不思議な形で、先端をくるりと巻いているのが面白くて、出会うといつも見入ってしまう。つぼみは金魚の赤ちゃんのようだ。
淡紫色のまんまるのつぼみと、優雅に弧を描く雄しべと雌しべが印象的なカリガネソウも随所で見られる。
日本の秋の風情を描いているようで、ほてったからだに涼風が立つ。
草むらを覗き、Kさんに草花についていろいろ教えていただきながらゆっくりと歩いていると、たくさんの煌きに気づかされる。
この時期の横山岳に、こんなにも様々なお花が咲いていたとは。
薄紫色の花を段々と車状に咲かせているのはシソ科のクルマバナ。似た花にはミヤマトウバナがある。
枝分かれした茎の先に白い花をたくさんつけているのはオトコエシ。黄色い花のオミナエシより逞しいか?
4個の萼片をくるりと外巻きした愛らしい淡紫色の花はクサボタン。
青紫色の細くて長い花弁をくねくねと躍らせている花はシデシャジン。シデとはしめ縄や御幣、玉串につけて垂らす紙のこと。
斜面には、長く伸びた茎に二つずつホタルブクロを細長くさせたような形のピンク色の花を咲かせているタニジャコウソウも見られる。
鮮やかな朱色のフシグロセンノウにも出会えた。越前の越坂峠で教えていただいた妖艶なお花ハグロソウも咲いている。
そして足元には、ウマノミツバ、チヂミザサ、ナベナ、ヨツバムグラ、そして名前の分らないちいさな花ばなが続いていく。
お花の名前と特徴をお聞きしながら、これまで見過ごしてきたものの多さを思う。
谷音が大きくなり経ノ滝が現れた。横山岳は、杉野川沿いの人々にとって水源の神様であり、山岳信仰の霊場としてもさかえ、
この付近に横山明神をまつる神社があったという。少し上流の岩壁には、空から流れ落ちてきたような五銚子ノ滝と呼ばれる滝が架かり、
横山神社に捧げるお神酒を入れる銚子をこの滝で清めたそうだ。
うだるような暑さの中、滝の周辺は凛とした空気が張り詰め、まっしろなサラシマショウマが、清浄さを際立たせていた。
滝の上部から谷を離れ300m余りの急登に入る。クロバナヒキオトシ、モミジハグマ、ヤマトウバナ・・・。
尾根でも花ばなに出迎えられ、汗ダクダクになりながらKさんに花の名前をお聞きし続ける。
花は、人間に見てほしいとかきれいに咲こうとか思って咲いているのではなく、ただただ一生懸命に生きて花を咲かせている。
花の名前を知り、その名を呟くと、一生懸命に生きているその花のこころを感じるような、
その花とわたしが繋がるようなあたたかな気持ちになる。その花についてもっと知りたくなる。
そして、いのちを育む山への思いがますます深まっていくのを感じる。また、その日の山旅がきらりと印象づけられる。
見覚えのあるブナの木が見えた。額から流れ落ちる汗を充分汗を吸ってしっとりとなった手拭いで拭い、
ひと登りして誰もいない広い山頂にポンと出た。
ブナの木陰でお昼の休憩を楽しんだ後、京都大学の前身である旧制第三高等学校の山岳部によって登られたことから名付けられた
三高尾根を下っていく。こちらは、最初に道の真ん中でヤマジノホトトギスに出会ってからは、ほとんどお花は見かけなかったが、
立派なブナが立ち並んでいて見とれてしまう。
ぱっと開けた展望地では、あっ、と息を呑んで、足が止まる。
もくもくと白い雲が湧き上がる青い空の下、少し色あせた緑の山が連なり、その向こうに薄水色のうみが輝き、
空との境には比良の山やまがうみを見守るように並んでいる。
谷間には杉野の集落が、山中には余呉湖が、静かに穏やかに浮かんでいる。
なんてこころに沁みる風景なのだろう。わたしの暮らす近江のうつくしさに胸が熱くなる。
しみじみとした思いを胸に、急坂を重力に任せて下り、杉野と菅並を結んだ鳥越峠に降り立ち、ひと息ついて駐車地に戻った。
帰りに車窓から眺めた横山岳は、行きに眺めた時よりも、よりおおきく、よりやさしく、ずっしりとして見えた。
四季折々楽しませていただいている大好きな横山岳をKさんとご一緒し、
秋のちいさな煌めきの数々を掬いあげることが出来たよろこびを言葉に残したくなった。
sato
【山 域】 横山岳
【天 候】 晴れ
【コース】 杉野白谷登山口~白谷コース~横山岳~三高尾根~鳥越峠~P
【メンバー】 Kさん sato
何度目の再訪になるのだろう。
古くから近江と美濃を結ぶ道が通り、明治から大正時代に養蚕業でさかえた面影を残す家々が並ぶ杉野の集落から、
まだところどころ稲を育てている田んぼが広がる網谷林道を進んで行くと、麗しき横山岳の白谷登山口に着いた。
大きな駐車場には一台も車は見あたらない。車のドアを開けて外に出ると、まだ8時台なのにもわっとした熱気に包まれる。
9月半ばを過ぎても今日も猛暑の予報。
直射日光が降り注ぐ開けた谷から急こう配の尾根へと続いていく道を、こんな暑い日に歩くのはわたし達くらいか。
ちょっと笑いがこみあげてきて、同時に、秘密の風景への旅が始まるのだと胸が高鳴る。
リュックを背負い、白谷に沿った道に入った途端、わぁっとこころが躍る。
ミゾソバ、ミズヒキ、キンミズヒキ・・・かわいい花ばなのお出迎え。
緑の草の間からふわりとお顔を出す淡いピンク色のお花と目が合う。コフウロだとKさんから教えていただく。
ちいさなまあるいフキのような葉の上に白い花を咲かせた草は何という名前なのだろう。たくさんたくさん咲いている。
どのお花もちいさくて控えめなのだけど、目を近づけて見ると、うつくしい宝石のようでうっとりとなる。
両岸が開けて水際を歩くようになると、鮮やかな赤紫色のツリフネソウが増えてくる。
なんとも不思議な形で、先端をくるりと巻いているのが面白くて、出会うといつも見入ってしまう。つぼみは金魚の赤ちゃんのようだ。
淡紫色のまんまるのつぼみと、優雅に弧を描く雄しべと雌しべが印象的なカリガネソウも随所で見られる。
日本の秋の風情を描いているようで、ほてったからだに涼風が立つ。
草むらを覗き、Kさんに草花についていろいろ教えていただきながらゆっくりと歩いていると、たくさんの煌きに気づかされる。
この時期の横山岳に、こんなにも様々なお花が咲いていたとは。
薄紫色の花を段々と車状に咲かせているのはシソ科のクルマバナ。似た花にはミヤマトウバナがある。
枝分かれした茎の先に白い花をたくさんつけているのはオトコエシ。黄色い花のオミナエシより逞しいか?
4個の萼片をくるりと外巻きした愛らしい淡紫色の花はクサボタン。
青紫色の細くて長い花弁をくねくねと躍らせている花はシデシャジン。シデとはしめ縄や御幣、玉串につけて垂らす紙のこと。
斜面には、長く伸びた茎に二つずつホタルブクロを細長くさせたような形のピンク色の花を咲かせているタニジャコウソウも見られる。
鮮やかな朱色のフシグロセンノウにも出会えた。越前の越坂峠で教えていただいた妖艶なお花ハグロソウも咲いている。
そして足元には、ウマノミツバ、チヂミザサ、ナベナ、ヨツバムグラ、そして名前の分らないちいさな花ばなが続いていく。
お花の名前と特徴をお聞きしながら、これまで見過ごしてきたものの多さを思う。
谷音が大きくなり経ノ滝が現れた。横山岳は、杉野川沿いの人々にとって水源の神様であり、山岳信仰の霊場としてもさかえ、
この付近に横山明神をまつる神社があったという。少し上流の岩壁には、空から流れ落ちてきたような五銚子ノ滝と呼ばれる滝が架かり、
横山神社に捧げるお神酒を入れる銚子をこの滝で清めたそうだ。
うだるような暑さの中、滝の周辺は凛とした空気が張り詰め、まっしろなサラシマショウマが、清浄さを際立たせていた。
滝の上部から谷を離れ300m余りの急登に入る。クロバナヒキオトシ、モミジハグマ、ヤマトウバナ・・・。
尾根でも花ばなに出迎えられ、汗ダクダクになりながらKさんに花の名前をお聞きし続ける。
花は、人間に見てほしいとかきれいに咲こうとか思って咲いているのではなく、ただただ一生懸命に生きて花を咲かせている。
花の名前を知り、その名を呟くと、一生懸命に生きているその花のこころを感じるような、
その花とわたしが繋がるようなあたたかな気持ちになる。その花についてもっと知りたくなる。
そして、いのちを育む山への思いがますます深まっていくのを感じる。また、その日の山旅がきらりと印象づけられる。
見覚えのあるブナの木が見えた。額から流れ落ちる汗を充分汗を吸ってしっとりとなった手拭いで拭い、
ひと登りして誰もいない広い山頂にポンと出た。
ブナの木陰でお昼の休憩を楽しんだ後、京都大学の前身である旧制第三高等学校の山岳部によって登られたことから名付けられた
三高尾根を下っていく。こちらは、最初に道の真ん中でヤマジノホトトギスに出会ってからは、ほとんどお花は見かけなかったが、
立派なブナが立ち並んでいて見とれてしまう。
ぱっと開けた展望地では、あっ、と息を呑んで、足が止まる。
もくもくと白い雲が湧き上がる青い空の下、少し色あせた緑の山が連なり、その向こうに薄水色のうみが輝き、
空との境には比良の山やまがうみを見守るように並んでいる。
谷間には杉野の集落が、山中には余呉湖が、静かに穏やかに浮かんでいる。
なんてこころに沁みる風景なのだろう。わたしの暮らす近江のうつくしさに胸が熱くなる。
しみじみとした思いを胸に、急坂を重力に任せて下り、杉野と菅並を結んだ鳥越峠に降り立ち、ひと息ついて駐車地に戻った。
帰りに車窓から眺めた横山岳は、行きに眺めた時よりも、よりおおきく、よりやさしく、ずっしりとして見えた。
四季折々楽しませていただいている大好きな横山岳をKさんとご一緒し、
秋のちいさな煌めきの数々を掬いあげることが出来たよろこびを言葉に残したくなった。
sato
秘密の風景への旅が始まるのだと胸が高鳴る。