【奥越】静寂のマイナーピークを歩く 細谷又山から越戸谷山へ

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山日和
記事: 3585
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

【奥越】静寂のマイナーピークを歩く 細谷又山から越戸谷山へ

投稿記事 by 山日和 »

【日 付】2024年2月3日(土)
【山 域】奥越 九頭竜湖周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】下大納7:15---8:25渡渉点----9:35 P827m9:55---12:10細谷又山13:35---14:30大納越戸谷源流---
     15:05越戸谷山15:20---16:25林道---17:00 P835m---17:50下大納

 よく冷え込んだ朝、霧氷を期待して眺めた九頭竜湖駅のまわりの山肌は黒かった。雪はずいぶん少ないようだ。
空は晴れ渡って雲海も見られない。しかし天気がいいだけでも良しとしよう。
 下大納の定位置に駐車して大納川にかかる橋を渡るとすぐに除雪が終わる。雪の壁も一昨年岩谷山~御伊勢山
を周回した時よりもだいぶ低い。
大納川の上流方向に目をやると、お気に入りの縫ヶ原山の切れ落ちた南面が朝日に輝いている。

P2030022_1.JPG

 雪はよく締まっており、スタートからスノーシューを履いて大納川の下流方向へ延びる林道を調子よく歩いて
いると、なにか様子がおかしい。大納越戸谷(おっとだに)沿いに歩くはずの林道がぐんぐん高度を上げて行く。
出だしでいきなり間違えてしまったようだ。引き返して正しい道に戻ったが、次の分岐でまたもや道間違い。
5年前の無雪期に歩いている道だが、記憶はおぼろである。
 結局30分ほどロスしたあげく、する必要のない渡渉までしてようやく目的の尾根に取り付いた。
ここから827mピークまで頑張れば目的地は射程圏内だ。

P2030038_1.JPG

 この尾根は仕事は速いのだが、林相は期待外れ。放置植林と潅木の面白みのない尾根だった。
827mピークまで来るとようやくブナの出迎えを受ける。ここへ来るのに九頭竜スキー場から鷲鞍山の肩を経由
するコースもあるが、鷲鞍山方面の尾根は真っ黒(つまり植林)だ。木の間越しに荒島岳の姿が見える。
 ここから鞍部へ向けて一旦下って行く。右側斜面は林道が延びてきているようで、これも放置植林だろう。
食害除けのテープを巻いたりはしているが、こんな曲がったスギは売れないだろう。

P2030058_1.JPG

 鞍部に下り立つとかなり風化したお地蔵さんがあった。横に標柱も立っているが判読不能だ。
かつてはここも峠越えの道があったのだろうか。自然林の広がる東側は九頭竜ダム湖のバックウォーターが食
い込んでおり、今は下からは辿ることができない。鷲鞍岳南面に延びる林道を伝えば到達可能だが、面白くも
なんともないだろう。ダムの底に沈んだ穴馬の集落から大納へ抜け、三坂峠を越えて若王子へという道が続い
ていたのかもしれない。

 ここからはブナ主体の本来の林相に変わる。と言っても大きな木は少なく、豊潤のブナ林歩きというわけに
はいかない。
ここまで来ても雪は少なく、尾根芯は地面が露出しているところがある。驚いたのは、明瞭な道が続いていた
ことである。ほとんどヤブのない道は、無雪期ならどこまで歩けるのだろう。
しばらく登るうちに再び雪に覆われて、確かめることはできなかった。まあ、確かめられるような積雪なら何
をしに来たかわからないのだが。


P2030137_1.JPG

 高度が上がるにつれ、背後の山々が大きく姿を現わして来た。ひと際大きく白いのは白山と別山だ。
石徹白の山々は手前に重なって同定することが難しい。
 頭上に反射板の姿を見えると山頂は近い。まず最初の反射板の前に立つと、まったく遮るもののない見事な
展望が開けた。ここでランチタイムでもいいかと思ったのだが、2つ目の反射板が立つ山頂へ向かう。

 1189.8mの細谷又山は、三角点名を「紐谷又」という。東側に落ちる谷が細谷だから、山名の方が正解なの
だろう。昔の三角点の名付け方は地元の聞き取りで、聞き違いがそのまま点名になったというケースが多い。
 山頂に立つとこれまで遮られていた南側の大パノラマが開ける。間近に迫る屏風山の姿は見慣れた三角錐よ
りは少し屏風っぽい姿をしていた。
目の前に大きく横たわる越美国境稜線は、この時期にはもっとも入りにくい部分である。山麓の集落が廃村と
なり、除雪されないためアプローチすることが不可能になった山々。国道や県道をひたすら歩けば不可能では
ないが現実的ではない。
 東に目を転じると、御嶽、乗鞍、北アルプス、中央アルプス、南アルプスまで全開だ。
ここはやはり白山に敬意を表して、白山遥拝ランチとしよう。
快晴微風の文句の付けようのないコンディションである。足りないのは霧氷だけだ。

P2030154_1.JPG
P2030181_1.JPG

 しかしあんまりのんびりとしてはいられない。(と言っても1時間半ぐらいはランチタイムを楽しんでいるの
だが)なんせ帰路の方が長いのだ。
 北側に大きな雪堤を張り出した尾根を進む。このあたりはそこそこのブナやミズナラも多く見られて林相は
満足できるものである。屏風山に見守られながら雪尾根漫歩を楽しんだ。
この尾根は御伊勢山へと続いているのだが、そこまで行く時間も体力もない。そこで考えたのが、尾根が南に
直角に折れた鞍部から西の大納越戸谷の源流へ下り、対岸の尾根を1151mの越戸谷山へ登り返すというルートだ。
 今の地形図からは消えているようだが、以前の地形図にはこの鞍部にまん丸の池マークが付けられていた。
しかも尾根の巾いっぱいの大きなものである。
さすがにそんなはずはなく、大納越戸谷の源流にある夫婦池(眼鏡池)の位置を間違えて記載していたのだろう。


P2030201_1.JPG

 鞍部からボブスレーコースのような細い雪の溝になった谷を下ると、すぐに大納越戸谷の本流に合流した。
雪を割って流れる穏やかな流れは美しく、やわらかい陽射しと相まって、もう春の訪れを感じさせる。
雪の夫婦池も見てみたいが時間が無い。対岸の尾根に取り付いて越戸谷山頂ダイレクトを目指す。標高差180m
ほどの辛抱だ。

 ヤブもなく順調に高度を上げて山頂に着いた。5年前の秋に大納越戸谷を遡行してここに立ったのだが、当然
ながら別の場所のようだ。ブナ林の素晴らしいのはその時も感じていたのだが、林床がヤブで腰を降ろせるよう
な場所もなかった。今日はヤブを埋めて広がる雪原の中にブナだけが見えている。


P2030221_1.JPG

 暗くなる前に下山するためには急がないといけない。最も手っ取り早いのは北西の尾根を辿って林道に出てか
らひたすら林道を歩くというコースだ。しかしそれでは愛想がない。
北への尾根を進んで989m、721mと経て林道に着地するというコースを選択した。
 この尾根もブナ林の続くいい尾根だったが、越戸谷山頂に着いた頃から空は雲に覆われ出した。
晴れていればもっといい印象だっただろうが、少し暗くてモノトーンに沈んでしまったのが残念だ。

 989mの先でガケになった末端を避けて、右から回り込んで林道に着地した。
ここで何を思ったのか、西への尾根に入らず北向きの尾根に乗ってしまった。
この尾根は距離的には最短で、林道を歩かずに済むという点ではいいのだが、835mピークへ90mの登り返しが
ある。
なんとかなるだろうと進むとすぐに835m手前の鞍部に到着。左側の斜面は若いブナ林で雰囲気は悪くない。
5方向に尾根が派生する835mからは北向きに進み、Ca680mあたりで左折すればスタート地点にピンポイントで
ある。
 まったく期待もしていなかったこの尾根が拾いもので、予想外のヤブなしの自然林が続いていた。
さすがに終盤は植林帯となる。そこまでスノーシュー無しでも歩けるぐらい雪が締まっていたので脱いでみると、
いきなり股まで潜って前進不能となった。再び履き直して、少し薄暗くなってきた植林の中を歩く。
橋が見えた。なんとか闇下を回避するギリギリの時間に帰着。
いい一日だった。

                       山日和
sato
記事: 422
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【奥越】静寂のマイナーピークを歩く 細谷又山から越戸谷山へ

投稿記事 by sato »

山日和さま

こんばんは。
「土曜日は、細谷又山と越戸谷山へ行ってみよう。霧氷も期待できるよ」とご連絡。
一昨年、下大納から岩谷山御伊勢山へ、雪と地形が織りなす造形美と素晴らしい展望に酔いしれながら、
早稲谷右俣を囲む尾根をくるりとまわる雪山旅を楽しみ、いつか、この味わい深い稜線の続きを歩きたいなぁ、と思っていました。
御伊勢山から細谷又山の稜線、下大納から細谷又山への尾根は、複雑、不思議で、どんな感じなのだろう、と気になっていました。
お話が挙がった時、うれしかったです。
でも、霧氷は山の神様からのプレゼント。気にはしていませんでした。いや、気にしないようにしていました。

下大納からお山を仰ぎ見た時、先ず思ったのが、雪が少ない!もう少し積もっていると思ったのですが。
最初の林道歩きは、歩いたことがあるという山日和さんのお言葉に甘え、完全に山日和さん任せで地図を見ていませんでした。
あれこれ30分も費やしてしまったのですね。私も気付かず、すみませんでした。

・827から下った鞍部では、雪が少なかったおかげで、お地蔵さまに出会えて感激しました。
この鞍部は、上杉喜寿さんの『峠のルーツ』によると、越戸峠と呼ばれ、明治の初めまで、
越前と美濃を結んだ三本の美濃街道穴馬道のうちの一本が通った峠とのことです。
大野~若王子峠~真名川ダムの下に沈んだ上若王子~三坂峠~下大納~越戸峠~九頭竜ダムの下に沈んだ影路、
大谷(17or18日開催のスノー衆パート1の登山口?ですね)と続き、油坂に至っていたそうです。

大野から若王子峠を経て若王子まで3里、三坂峠を越えて大納まで4里、越戸谷を越えて影路を経て大谷へは2里8町だったとか。
越戸峠のお地蔵さまと標柱は、江戸時代の頃のものなのでしょうね。
今は、「マイナーピークに至る尾根の途中」ですが、昔は、人々が行き来していた重要な峠だったのですね。
かつての幹線道路に思いを巡らせても、地図を見ると、集落や道のあった場所は、ダム湖の水色でぬりつぶされていて、
ぱぁっと情景が浮かんで来ず、せつないようなさみしいような、そんな気持ちになります。

この先のやせた尾根には、雪が無くて、えっ?と思いました。
でも、ここも、雪が無かったおかげで、道が付いていることが分かりましたね。

高度を上げるにつれ、まっ白な山並みが姿を現してきて、胸が高鳴りました。
反射板の立つ山頂からの眺めは素晴らしかったですね。人為的に因って得られた展望なのですが、北、中央、南アルプスまで一望。
どちらを向いて腰を下ろそうか悩んでしまいました。

食後は、より楽しみにしていたコース。
越戸谷山まで稜線を辿るのは、時間的に厳しいので、越戸谷に下り登り返すことに。
このコースがまた味わい深くワクワクドキドキしました。
雪の降り積もった谷の源頭は、しんと静まり返っているのですが、ふわっとあたたかさも感じ、
うつくしく不思議な夢を見ているようでした。
無積雪期はササで覆われているというブナの木が立ち並ぶ越戸谷山の山頂も素敵でしたね。
去り難くなる山頂でした。

下りは、先ず・989を目指して。順調に下っていき、林道着地もスムーズに出来、ホッとして、
次は・721へ、と思っていたら、手前の尾根に誘導されてしまいました。
でも、私は、こちらの尾根の方が、登り返しはあるけれど、林道を歩かなくて済むのでいいなぁ、
思っていましたので、にんまりでした。
間違って入った尾根ですが、歩きやすく、雰囲気もよく、結果的には、よかったですね。
ぎりぎりヘッドランプをつけずに駐車地にも戻れました。

片づけをしながら、いい山旅だったなぁ。次は、御伊勢山から越戸谷山のくねくねした稜線を歩きたいなぁ。
早くも次のコースを思い描いてしまう私でした。
しみじみと味わい深い山旅でした。ありがとうございます。


sato
アバター
山日和
記事: 3585
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【奥越】静寂のマイナーピークを歩く 細谷又山から越戸谷山へ

投稿記事 by 山日和 »

satoさん、どうもです。

でも、霧氷は山の神様からのプレゼント。気にはしていませんでした。いや、気にしないようにしていました。

期待しなければ裏切られることはない。常々人には言ってるんだけど、やっぱり期待してしまいますねえ。 :lol:
この日、おどさんは上谷山で素晴らしい霧氷に出会えたらしいです。

最初の林道歩きは、歩いたことがあるという山日和さんのお言葉に甘え、完全に山日和さん任せで地図を見ていませんでした。
あれこれ30分も費やしてしまったのですね。私も気付かず、すみませんでした。

私を過信してはいけませんよ。 :mrgreen:

・827から下った鞍部では、雪が少なかったおかげで、お地蔵さまに出会えて感激しました。
この鞍部は、上杉喜寿さんの『峠のルーツ』によると、越戸峠と呼ばれ、明治の初めまで、
越前と美濃を結んだ三本の美濃街道穴馬道のうちの一本が通った峠とのことです。
大野~若王子峠~真名川ダムの下に沈んだ上若王子~三坂峠~下大納~越戸峠~九頭竜ダムの下に沈んだ影路、大谷(17or18日開催のスノー衆パート1の登山口?ですね)と続き、油坂に至っていたそうです。


「越戸峠」いい響きですね。九頭竜ダムができる前はどんな風景が広がっていたのか。

越戸峠のお地蔵さまと標柱は、江戸時代の頃のものなのでしょうね。
今は、「マイナーピークに至る尾根の途中」ですが、昔は、人々が行き来していた重要な峠だったのですね。

お地蔵さまの顔も摩耗してましたね。隣の石柱は何と書いてあったのかなあ。

P2030059_1.JPG

この先のやせた尾根には、雪が無くて、えっ?と思いました。
でも、ここも、雪が無かったおかげで、道が付いていることが分かりましたね。

あそこまで雪が消えているとかえって爽やかですね。 :mrgreen:


パノラマ1_1_1.jpg


高度を上げるにつれ、まっ白な山並みが姿を現してきて、胸が高鳴りました。
反射板の立つ山頂からの眺めは素晴らしかったですね。人為的に因って得られた展望なのですが、北、中央、南アルプスまで一望。
どちらを向いて腰を下ろそうか悩んでしまいました。

想像以上の展望でした。霧氷はなかったけど、あれだけの展望が得られれば十分ですね。
屏風を見ながらと思ったけど、風がちょっと邪魔をしました。

P2030193_1.JPG

食後は、より楽しみにしていたコース。
越戸谷山まで稜線を辿るのは、時間的に厳しいので、越戸谷に下り登り返すことに。
このコースがまた味わい深くワクワクドキドキしました。
雪の降り積もった谷の源頭は、しんと静まり返っているのですが、ふわっとあたたかさも感じ、うつくしく不思議な夢を見ているようでした。


P2030205_1.JPG

御伊勢山への尾根は大きく迂回して、余計な登りもあるのでこれが省エネコース。
でもそれ以上の意味がありました。越戸谷の源流は実にいいところでしたね。

無積雪期はササで覆われているというブナの木が立ち並ぶ越戸谷山の山頂も素敵でしたね。
去り難くなる山頂でした。


こちらは展望はないけど、いいブナ林の山頂でした。無雪期が想像できないぐらいスッキリしてましたね。
時間が押してなければのんびりしたいところでした。


P2030225_1.JPG

下りは、先ず・989を目指して。順調に下っていき、林道着地もスムーズに出来、ホッとして、次は・721へ、と思っていたら、手前の尾根に誘導されてしまいました。
でも、私は、こちらの尾根の方が、登り返しはあるけれど、林道を歩かなくて済むのでいいなぁ、思っていましたので、にんまりでした。


あっ、そうだったの?satoさんの思惑にハマってしまいました。 :lol:

P2030262_1.JPG

間違って入った尾根ですが、歩きやすく、雰囲気もよく、結果的には、よかったですね。
ぎりぎりヘッドランプをつけずに駐車地にも戻れました。


まあ、最後はヘロヘロでしたが。 :mrgreen:

片づけをしながら、いい山旅だったなぁ。次は、御伊勢山から越戸谷山のくねくねした稜線を歩きたいなぁ。
早くも次のコースを思い描いてしまう私でした。

雪がもう少し欲しいところですね。

                     山日和
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