【北ア】「夢のアドベンチャーワールド」 新・伊藤新道

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アオバ*ト
記事: 283
登録日時: 2019年9月23日(月) 08:40

【北ア】「夢のアドベンチャーワールド」 新・伊藤新道

投稿記事 by アオバ*ト »

◆山行日 2023年8月11日〜13日
◆山域 北アルプス 湯俣川周辺
◆天候 3日間とも快晴
◆メンバー 平、育、アオバ*ト
◆ルート
8/11 七倉温泉〜高瀬ダム〜湯俣〜伊藤新道・ワリモ沢出合
8/12 ワリモ沢出合〜新第三吊橋〜槍ヶ岳展望台〜赤沢〜白い谷出合〜ワリモ沢出合
8/13 ワリモ沢出合〜湯俣〜高瀬ダム〜七倉温泉

 山と高原地図には、湯俣川の噴湯丘辺りに「地獄」と言う地名が記されている。
三俣山荘のITO−SHINDO TRAIL MAP 2022には、ビバーク適地「火星」と記された場所がある。
どちらも好奇心と想像力を大きくかき立てる。
でもこの2つは、夢のアドベンチャーワールドのほんのごく一部に過ぎない。

 復活途上の伊藤新道、昨年9月と10月に2回チャレンジして、2回とも「火星」付近で撤退した。
2日間の日程で、2日間では足りないとわかりつつ、行けるところまで行ってみたかった。

 知人にこの伊藤新道の話をしたら、2022年9月22日付けの日経新聞の切り抜きを送ってくれた。
 かつて伊藤正一さんは多くの人が歩けるように沢沿いにトラバースの道を付けて、
対岸に渡らなければならないところには吊橋をかけた。それが高瀬ダムの建設後次第に岩盤が崩れ橋は全部落ちた。
息子の伊藤圭さんが復活させようとしているのは、河原の巨石を乗り越え水線を渡渉しながら進んで尾根筋を目指す新しい伊藤新道。
かつて5つあった吊橋も3つにとどめ、極力ひとの手を加えない自然のままの道なき道を自己の力を総動員して楽しんでほしい、

というようなことが書かれていた。
 元々は、伊藤正一さんが山賊(猟師たち)から麓へ下る最短の道として教えてもらった道だったそうだ。
 
(あらためて「黒部の山賊」を読み返すと、初めて三俣山荘で山賊に会って、帰りはこの湯俣川沿いに降りるといいと教えてもらい、
この道なき道を下りながら、自分が整備しようと思ったという一節があった。)

 チャンスは思わぬところから降ってきた。
8/11から8/15の夏休み、当初5日間目一杯の別の計画があった。そこへ台風7号がやって来た。計画は変更を余儀なくされた。
しかし場所を変えて山小屋の予約を取り直すのは容易でない。5月の連休の時のようにまたテントを背負って、
テント場も予約なしで行けるところを探さなければならなくなった。
8/10朝、思い切って三俣山荘に電話してみた。
「伊藤新道、公式開通前ですが、通行してもいいですか?途中でテント張ってもいいですか?」
この夏休み、きっと水量が少ないだろうからチャンスだと思ってはいたのだが、
公式開通は8/20とアナウンスされていたので、お盆休みの計画からは外していた。
ところが、返ってきた返事は、
「通れます。水量も少なくてちょうどいいと思います。登山届だけちゃんと出して下さい。」
こんなふうにして、山行の1日前に、伊藤新道行きは決まった。

 七倉温泉の無料駐車場は、朝の4時過ぎには満車状態で、路駐も溢れていたが、運よく隣の人に詰めてもらって停めることができた。
少し仮眠して7時前に高瀬ダムまでのタクシーに乗る。
運転手さんによると、コロナ禍も過ぎて今日は山の日でもあり特別賑やかになったようだ。
けれどほとんどの人はブナ立尾根を登り、湯俣に行く人は少ない。静かな湯俣までの水平道を歩く。
高瀬川を眺めながら、のんびり歩く。雲ひとつない空の色が、高瀬川の色をさらに美しくしているのだった。
林道終点からは、山側の針葉樹と広葉樹の混じり合う森の様子も森から溢れ出る枝沢のきらめきも美しかった。

 湯俣に近づくと、毎度のことだが、河原に大きな重機が何台か停まっていた。
湯俣山荘は、9月の新装オープンに向けて工事の終盤のようだ。
伊藤新道に入るには、このまま右岸の道を進んでゆけばよいのだが、水を汲むために対岸の晴嵐荘に立ち寄る。
今年から発電所の工事の関係で放流制限していないため渡渉が難しいのでジップラインのブランコで渡ってくるようにとのことだったが、
遠目に前の人が利用しているのを見るとめんどくさそうなので、水の少なそうなところを探してジャブジャブと渡った。

 発電所の設備の先で、湯俣川は水俣川と出合い、高瀬川となってダムを経て麓に流れてくる。
この湯俣川と水俣川の出合はとても印象的だ。水俣川にはまた別の美しさがあるが、
湯俣川の乳白色を帯びた摩訶不思議な青い色が一瞬のうちに心をとらえる。
この湯俣ブルーと呼ばれる美しい色を目にして魅了されない人はいないだろうと思う。
 水俣川にかけられた吊橋を渡り、山の神さまにお祈りして、アドベンチャーワールドの冒険は始まる。
私たち以外に歩いているパーティはない。もっと早い時間に入った人たちはいるようだったが、貸し切り同然。
水量はかなり少ないと思う。IKUさんが初めてなので、適当なところで左岸に渡り、噴湯丘を見てから先に進む。
ここまではファミリーハイキングの人たちもたくさん入って来るようだ。その先は沢装備がないと難しい。
渡渉も水量少ないとは言え、流れが急なので、慣れるまでは緊張するところもある。

 何度か渡渉しながら進むと新しい第一吊橋が見えてくる。昨年一度架けられた後に大雨で流され、再び架けられた。
三俣山荘の方々の熱い思いがヒシヒシと伝わってくるのだった。

 この先大きな難所が待ち受ける。
ガンダム岩手前.jpg
「ガンダム岩」と呼ばれているところ。昨年、岩にタラップが設置された。
水量多く沢中を通過するのが危険な時は、このタラップを登り下りするといいということで設置されたようだ。
胸下くらいまで浸かるだけで済むなら、水の中へつるように進み、
ガンダム岩の下のツルンとしながらもフリクション良好な岩を登る方が怖くないと、私は思う。
けど、水量少なくてもわざわざタラップを登り下りするのが好きなヒトもいるようだ。
難所は連続する。そのままガレ場の岩を乗り越えつつ高巻きするのであるが、
(ここは崩れ易いところのようで、昨年初めて通過した時と様子が変わっていた)私は全行程中、この高巻きがいちばん怖い。
とにかく、いたるところ尖った不安定な石ばっかりで、絶対に転んだり滑ったりできない。

 緊張感が解けたところでひと休みしていたら、男女ペアのパーティに追いつかれた。
ちょうど対岸に笹薮を高巻くようにマーキングされているところで、
今日は水量少ないので、私たちは水線を行こうとしていたら彼らは迷うことなく高巻き道に入って行った。
(後で会った時に聞くと、高巻き道を通ってみたかったとのことだった)
水流は見た目より強くて押し流されそうになり、自分たちもやっぱり高巻き道使うかと、戻ろうとしたら、
また別の二人組が追いついて来て、彼らは颯爽と水流を越えて行った。
ほんのちょっとしたコツがいるようで、真似してみたらクリアできた。
左岸が開けて一面ガレた茶褐色の世界が広がった。さっきの男女ペアがテントを張っていた。
最初のビバークポイント「火星」だった。

 「火星」の先に、新しい第2吊橋が架けられている。
かつては岩壁に赤字で「雨天時は勇気を持って引き返せ(下降時)」と書かれていた場所らしい。
昨年の10月に架けられた直後に渡りたくて、でもここまで届かなかった。
新第二吊橋.jpg
かなり高いところに付けられていて、渡っている途中ももちろんだが、
川底から高いところまで登って行って最初の橋板のプレートに足を置くまでのワクワク感半端なかった。
 夕方4時頃、今日の目的地、ワリモ沢出合のビバークポイントに着いた。
どうしてここにテントを張ることにしたかと言うと、
周回ではなく行きも帰りも湯俣川を歩きたかったのと、2日目は軽装備で楽できると思ったからだ。
何張りも張れる訳ではないので、ここはやはりビバークポイントに過ぎず、公式開通後は、テント張りっぱなしは良くないなと思った。
砂地の上に張ったのだが、夜は寝ていても地面から冷気が上がってくることはなく、じんわりと暖かいのだった。
薄手のダウンジャケットとダウンパンツをはいてテントの中に寝っ転がり、朝方少し冷えてきたらインナーシーツにくるまった。
慌ただしく決まった計画だったので、食事に関しては贅沢なことはできなかったが、
IKUさんが晴嵐荘から缶ビールを3人分担ぎ上げてくれ、パスタを茹でてくれ、火を起してくれ、
いつものことながら彼はテント場では大活躍なのだった。

 翌朝、濡れたままのネオプレンソックスと沢シューズをはいて、水の中に入って行った。
服は上下ともファイントラックの下着の上に同フラッドラッシュを着用していたが、焚き火している間にほとんど乾いてしまって、
寝ている間も着替えずに済んだ。ファイントラックのウェアはやっぱりすばらしい。
 少し進むと右岸のやや幅広の高台で、昨日追い越して行った男性二人組がタープを張っていた。
弥助沢で釣りをするのが目的のようだ。
この後はさらに渡渉が多くなり、渡渉好きにはもうたまらない楽しさだったが進むに連れて水量はますます少なくなり、
難儀することはひとつもなく物足りないくらいだった。
河原が開けると、新しい第三吊橋が見えた。吊橋の先、赤沢出合の手前に、沢から離れて三俣山荘へと向かう地点に新しい道標が立てられていた。
湯俣川本流の左岸を大きく巻くように複雑な地形の中に道は付けられていて、いったん赤沢に下りてから尾根に取り付いて行く。
この尾根に取り付いてから展望台までは、地形図以上に厳しいものがあり、(と感じるのは私たちだけかもしれないが)、
三俣山荘まで往復して、通行料の代わりにTシャツと手ぬぐいを買って帰ろうという思いは届かなかった。
槍ヶ岳展望台で撤退。
展望台.jpg
赤沢まで戻ってそのまま赤沢を下って湯俣川に再び合流する。
 赤茶けたガレの世界を上流に向かって歩いて行く。
沢は二股となり、この世のものと思えない光景が広がる。

硫黄の噴き出す死の世界と隣り合わせの、この世の果てにこの美しい場所はある。
白い谷出合②.jpg
乳白色の支流の先にはまぼろしの白い滝があるという。今日はチャンスなのかもしれない。
白い谷出合③.jpg
でもなんとなく豪快に落ちる出合の滝のすぐ上を渡渉するのが躊躇われて、というか何ていうか、
誰もムリに行こうとは言わなかった。諦めてテント場に帰る。

 第三吊橋を再び渡る。下を見るとタイラさんがジャブジャブと渡っている。そうか今日は水量少ないから、水の中も渡れるな。
第二吊橋の手前で、私も水の中渡ってみた。超絶楽しすぎた。
渡渉.jpg
 テント場に戻るとまだ2時前、台風はいつやってくるのか、帰ろうと思えば晴嵐荘まで帰れるだろう。
今日は火星で張るっていう手もあった。でも疲れた足でガンダム岩の手前の高巻きをしたくない、
たぶんもう誰も登って来ないだろうし、七倉温泉の登山口ポストで計画書を出す時もここで2泊すると説明して了解を得てきたし、
やっぱり今日もここでいいじゃんということになり、水浴びしたり、岩の上でお昼寝したり、好きに過ごした。
タイラさんは、ちょうどいい岩室を見つけたとのことで、今日はそこで寝てみると楽しそうだ。
テント場.jpg
今夜も満天の星が見られた。
山の端の針葉樹の枝越しに三日月のお月さま。放射状に空いっぱいに広がるお星さま。
テント泊ってやっぱりいいなぁと思うのだった。

 最終日、お天気は下り坂だと思っていたのに晴れた。
今日は誰も登って来ないだろうと思っていたのに登って来た人たちもいた。お天気はもう少し持つようだ。
行きでは使わなかった新しい桟橋を伝ってみた。3つの吊橋よりもスリリングだった。
桟橋.jpg
ガンダム岩と第一吊橋を越えて岩陰でコーヒーを淹れていると、男女混成の若者6人パーティが下りてきた。
稜線まで湯俣川本流を詰めて下りてきたそうだ。
カッコいいなぁ。うらやましいなぁ。と思いながら、ブクブク温泉の湧く地獄まで下りてきた。
自分たちは川の中の温泉に浸かりはしなかったけど、
湯気の立つ川の中の温泉ではしゃぐ若者たちを眺めているだけで、こっちも楽しくなってくるのだった。
最後は透き通った水俣川を渡ってゴール。何度も振り返る。    
 炎天下、七倉温泉まで帰路の水平道を汗を拭き拭き、時おり立ち止まって風に吹かれながら歩く。
トンネルを抜けると楽しかった冒険はもうおしまいだ。また来よう。次はどんなできごとに出会えるだろうか。

追記:新しい吊橋について、下から順に、第一、第二、第三と書きましたが、
それぞれ、旧の第一、第三、第五の場所に架けられています。

    アオバ*ト
最後に編集したユーザー アオバ*ト [ 2023年11月01日(水) 23:46 ], 累計 1 回
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わりばし
記事: 1767
登録日時: 2011年2月20日(日) 16:55
お住まい: 三重県津市

Re: 【北ア】「夢のアドベンチャーワールド」〜新・伊藤新道

投稿記事 by わりばし »

おはようございます、アオバトさん。

 復活途上の伊藤新道、昨年9月と10月に2回チャレンジして、2回とも「火星」付近で撤退した。
2日間の日程で、2日間では足りないとわかりつつ、行けるところまで行ってみたかった。

伊藤新道に先取りで行ってきましたか。
情報が早い。


(あらためて「黒部の山賊」を読み返すと、初めて三俣山荘で山賊に会って、帰りはこの湯俣川沿いに降りるといいと教えてもらい、
この道なき道を下りながら、自分が整備しようと思ったという一節があった。)

satoさんからの返信を受けて「黒部の山賊」を読んだところなのでわかります。

 「通れます。水量も少なくてちょうどいいと思います。登山届だけちゃんと出して下さい。」
こんなふうにして、山行の1日前に、伊藤新道行きは決まった。

意外にていねいに対応してくれるんだ。

 七倉温泉の無料駐車場は、朝の4時過ぎには満車状態で、路駐も溢れていたが、運よく隣の人に詰めてもらって停めることができた。
少し仮眠して7時前に高瀬ダムまでのタクシーに乗る。

ヤッパ北アだなあ。
裏銀座の入口ですね。
昔はそうでもなかった場所ですが・・

 
水流は見た目より強くて押し流されそうになり、自分たちもやっぱり高巻き道使うかと、戻ろうとしたら、
また別の二人組が追いついて来て、彼らは颯爽と水流を越えて行った。
ほんのちょっとしたコツがいるようで、真似してみたらクリアできた。

複数でスクラム組めば安定しますよ。

左岸が開けて一面ガレた茶褐色の世界が広がった。さっきの男女ペアがテントを張っていた。
最初のビバークポイント「火星」だった。

 周回ではなく行きも帰りも湯俣川を歩きたかったのと、2日目は軽装備で楽できると思ったからだ。
何張りも張れる訳ではないので、ここはやはりビバークポイントに過ぎず、公式開通後は、テント張りっぱなしは良くないなと思った。
砂地の上に張ったのだが、夜は寝ていても地面から冷気が上がってくることはなく、じんわりと暖かいのだった。
薄手のダウンジャケットとダウンパンツをはいてテントの中に寝っ転がり、朝方少し冷えてきたらインナーシーツにくるまった。
慌ただしく決まった計画だったので、食事に関しては贅沢なことはできなかったが、
IKUさんが晴嵐荘から缶ビールを3人分担ぎ上げてくれ、パスタを茹でてくれ、火を起してくれ、
いつものことながら彼はテント場では大活躍なのだった。

この時期に静かな北アルプスを満喫できるなんて
贅沢な時間です。
正式開通しちゃうとこうはいかないかな。

 
 湯気の立つ川の中の温泉ではしゃぐ若者たちを眺めているだけで、こっちも楽しくなってくるのだった。
最後は透き通った水俣川を渡ってゴール。何度も振り返る。    
 炎天下、七倉温泉まで帰路の水平道を汗を拭き拭き、時おり立ち止まって風に吹かれながら歩く。
トンネルを抜けると楽しかった冒険はもうおしまいだ。また来よう。次はどんなできごとに出会えるだろうか。

いい沢旅ができましたね。
これに釣りがからめば最強です。
お疲れさまでした。


                                    わりばし

biwaco
記事: 1423
登録日時: 2011年2月22日(火) 16:56
お住まい: 滋賀県近江八幡市

Re: 【北ア】「夢のアドベンチャーワールド」〜新・伊藤新道

投稿記事 by biwaco »

アオバトさん、こんにちは。
相変わらず、アドベンチャーワールドにチャレンジしてますね~、羨ましいけ限りです(^_-)

高瀬ダムか~、もうずいぶん前にブナ立尾根を下ってきたときのこと、思い出しました。扇沢から蓮華を越えて周回してきたのですが、確かめたら2008年でした。まだ、なんとかテント縦走もできたころの思い出です。
高瀬ダムから先(南)には、いつか必ず!とボンヤリ頭にあったのですが、気がついたらもう無理な体になってしまいました。
せめて湯俣から野口五郎へグルリンポンできたらなあ…、山小屋2泊なら可能かな? なんて、地図を睨んだりしておりますが…。(@_@;)
息子の伊藤圭さんが復活させようとしているのは、河原の巨石を乗り越え水線を渡渉しながら進んで尾根筋を目指す新しい伊藤新道。
かつて5つあった吊橋も3つにとどめ、極力ひとの手を加えない自然のままの道なき道を自己の力を総動員して楽しんでほしい、
伊藤兄弟による伊藤新道復活プロジェクトの話はきいてましたが、8月も終わりそうな今日はすでに開通してるんですね。あとでネットのレポでも見てみましょう。
「地獄」は何となくイメージできますが「火星」となると、想像不能の世界です。
少し仮眠して7時前に高瀬ダムまでのタクシーに乗る。
私は逆に高瀬ダムから七倉へ下ったのですが、登山道を下ってきたらタクシーの運転手さんが手を振って待っていました。当時から、人気の登山口だったんでしょう。
湯俣山荘は、9月の新装オープンに向けて工事の終盤のようだ。
いつか、晴嵐荘かどちらかに泊ってみたいもんです。
この湯俣川と水俣川の出合はとても印象的だ。水俣川にはまた別の美しさがあるが、湯俣川の乳白色を帯びた摩訶不思議な青い色が一瞬のうちに心をとらえる。
この湯俣ブルーと呼ばれる美しい色を目にして魅了されない人はいないだろうと思う。
う~ん! 蒼い清流と乳白色の急流ですか~! そうだ、ここまでなら今の自分でも行けそうだ。今年がダメでも体力の残債をつぎ込んでいってみたくなってきたゾ(^_-)
最初のビバークポイント「火星」だった。
 「火星」の先に、新しい第2吊橋が架けられている。
かなり高いところに付けられていて、渡っている途中ももちろんだが、
川底から高いところまで登って行って最初の橋板のプレートに足を置くまでのワクワク感半端なかった。
写真見るだけで股間に震えが走りそう(>_<)
大雨のあとはこの下まで水位が上がるんでしょうね。
 夕方4時頃、今日の目的地、ワリモ沢出合のビバークポイントに着いた。
地図で分岐を確認しました。自分で行ったこともないのに、軌跡を追ってみても仕方ないのですが、記事と合わせて想像するのも楽しいもんです。

1988年の昭文社マップがあったので開いてみました。
第1つり橋(衝立岩のところ)から大高巻きして唐谷へ下り、ワリモ谷出合が第2つり橋となっています。ただし、すでに伊藤新道のつり橋は83年台風の洪水で赤沢出合までの5本のつり橋が流され、最後の左岸に渡る旧第5つり橋が第3つり橋になっています。ワリモ出合の第2つり橋は旧第4つり橋ということです。
今回の復活プロジェクトによる再建は88年地図とは同じ位置かどうかわかりませんが、こんな大変なプランに挑む人、そのルートに入り込む登山者は、私には垂涎の思いで見ているしかありません。

ちなみに、到達点の「展望台」はどのあたりかな?と探してみたら、赤沢出合から尾根を詰めた2250m辺りに表記がありました。西鎌,北鎌両尾根の頂点に突き出す槍の穂先を見上げてみたいものです。
三俣山荘まで往復して、通行料の代わりにTシャツと手ぬぐいを買って帰ろうという思いは届かなかった。
槍ヶ岳展望台で撤退。
展望台から2500m辺りからは緩い稜線歩きになりそうですね。いつか通行手形のTシャツと手ぬぐいを買いに行って下さい。

最後の川遊び、流されなくてよかったです。(^_-)
また、アドベンチャーワールドの突貫レポ、楽しませて下さい。
                     ~びわ爺
skywalk
記事: 521
登録日時: 2011年3月07日(月) 21:33

Re: 【北ア】「夢のアドベンチャーワールド」〜新・伊藤新道

投稿記事 by skywalk »

アオバトさん、こんにちは。
でもこの2つは、夢のアドベンチャーワールドのほんのごく一部に過ぎない。
「地獄」も「火星」もごく一部って、他には一体何が出てくることやら。

復活途上の伊藤新道、昨年9月と10月に2回チャレンジして、2回とも「火星」付近で撤退した。
2回もチャレンジしてなおも成功を目指すとは何とも執念深い(いや、失礼)そのくらいのモチベーションを保たないと成功しないということですね。

伊藤新道の再興のドキュメンタリーはテレビで見ました。いきなり深い沢にドボンと飛び込んで渡渉していくのを見て私向きのルートではないと確信しましたが、そこにアオバトさんが挑戦したと知りびっくり。アオバトさんってアマゾネス軍団の一員だったのですね。凄いわ。

テント場も予約なしで行けるところを探さなければならなくなった。
ところが、返ってきた返事は、
「通れます。水量も少なくてちょうどいいと思います。登山届だけちゃんと出して下さい。」
こんなふうにして、山行の1日前に、伊藤新道行きは決まった。

こういうの不幸中の幸いとは言わないと思いますが、もはや使命だと思って行くしかない。

湯俣に近づくと、毎度のことだが、河原に大きな重機が何台か停まっていた。
湯俣には行ったことないけどアオバトさんにはお馴染みのところですね。

湯俣川の乳白色を帯びた摩訶不思議な青い色が一瞬のうちに心をとらえる。
この湯俣ブルーと呼ばれる美しい色を目にして魅了されない人はいないだろうと思う。

へぇ~見てみたい。

何度か渡渉しながら進むと新しい第一吊橋が見えてくる。昨年一度架けられた後に大雨で流され、再び架けられた。
三俣山荘の方々の熱い思いがヒシヒシと伝わってくるのだった。

やはり難コースを整備するのは一筋縄にはいかないのですね。

(ここは崩れ易いところのようで、昨年初めて通過した時と様子が変わっていた)私は全行程中、この高巻きがいちばん怖い。
とにかく、いたるところ尖った不安定な石ばっかりで、絶対に転んだり滑ったりできない。

本当やばそう。景色が変わるほど岩が動いていたら不安定な岩ばかりでしょうね。

自分たちもやっぱり高巻き道使うかと、戻ろうとしたら、
また別の二人組が追いついて来て、彼らは颯爽と水流を越えて行った。

ほんのちょっとしたコツがいるようで、真似してみたらクリアできた。

私だったら迷うことなく引き返します。

最初のビバークポイント「火星」だった。
火星は赤茶色の世界という訳だ。

かつては岩壁に赤字で「雨天時は勇気を持って引き返せ(下降時)」と書かれていた場所らしい。
まさしく秘境ですね。

IKUさんが晴嵐荘から缶ビールを3人分担ぎ上げてくれ、パスタを茹でてくれ、火を起してくれ、
いつものことながら彼はテント場では大活躍なのだった。

いいお方、必須メンバーだわ。

翌朝、濡れたままのネオプレンソックスと沢シューズをはいて、水の中に入って行った。
沢伯なんて経験ありませんが、色んな意味でタフですね。

この後はさらに渡渉が多くなり、渡渉好きにはもうたまらない楽しさだったが進むに連れて水量はますます少なくなり、
難儀することはひとつもなく物足りないくらいだった。

もはやタフを通り越してM系ですね。

硫黄の噴き出す死の世界と隣り合わせの、この世の果てにこの美しい場所はある。
あの世に召される前に見ておきたいです。でも無理だな、

第二吊橋の手前で、私も水の中渡ってみた。超絶楽しすぎた。
やっぱり本物だ。

湯気の立つ川の中の温泉ではしゃぐ若者たちを眺めているだけで、こっちも楽しくなってくるのだった。
若いっていいですね。羨ましい。

最後は透き通った水俣川を渡ってゴール。何度も振り返る。
夢のアドベンチャー成功おめでとうございます。
アオバ*ト
記事: 283
登録日時: 2019年9月23日(月) 08:40

Re: 【北ア】「夢のアドベンチャーワールド」〜新・伊藤新道

投稿記事 by アオバ*ト »

 
 わりばしさん、こんばんは。
レスありがとうございます。

>伊藤新道に先取りで行ってきましたか。
情報が早い。

 何年も前から憧れの場所でしたので、情報はつねにチェックしていました。
本当は新しい吊橋がかけられる前にチャレンジしてみたかったのですが、
なかなかチャンスがやって来ませんでした。

>satoさんからの返信を受けて「黒部の山賊」を読んだところなのでわかります。
 この本は本当に面白いですね。
やさしい言葉で誰にでもわかりやすく書かれていて、あまり山の本らしくないところも好きです。
初めて読んだのはいつだったか、今になって読み返すと、なんか面白さ倍増してます。

*「通れます。水量も少なくてちょうどいいと思います。登山届だけちゃんと出して下さい。」
こんなふうにして、山行の1日前に、伊藤新道行きは決まった。

>意外にていねいに対応してくれるんだ。
そうですね、臨機応変に対応して下さり、本当にありがたかったです、

>ヤッパ北アだなあ。
裏銀座の入口ですね。
昔はそうでもなかった場所ですが・・

 他の登山口のことを思うと、今でもここは静かなほうかもしれません。

>複数でスクラム組めば安定しますよ。
 そうですね。でも今回は、そこまでしなくても全然大丈夫な水量でした。

>この時期に静かな北アルプスを満喫できるなんて
贅沢な時間です。
正式開通しちゃうとこうはいかないかな。

 3日間ともすれ違ったり追い越していくパーティは何パーティかあったものの、
片手で数えられるくらい。
テント場は貸し切り。拍子抜けするくらい静かで、なんとも贅沢な山旅でした。
正式開通するとどうなるでしょうね。沢装備とロープが必要なことは変わりないので、
行ってみたくても躊躇する人たちも多いかもしれません。

>いい沢旅ができましたね。
これに釣りがからめば最強です。
お疲れさまでした。

 ありがとうございます。
硫黄沢出合より上流は、イワナも棲んでいるみたいです。
次は、そこまで行ってみたいなと思います。

  アオバ*ト
アオバ*ト
記事: 283
登録日時: 2019年9月23日(月) 08:40

Re: 【北ア】「夢のアドベンチャーワールド」〜新・伊藤新道

投稿記事 by アオバ*ト »

 
 びわ爺さま、こんばんは。じゃなくて、おはようございます、かな。
レスありがとうございます。

>高瀬ダムか~、もうずいぶん前にブナ立尾根を下ってきたときのこと、思い出しました。
扇沢から蓮華を越えて周回してきたのですが、確かめたら2008年でした。まだ、なんとかテント縦走もできたころの思い出です。
高瀬ダムから先(南)には、いつか必ず!とボンヤリ頭にあったのですが、気がついたらもう無理な体になってしまいました。
せめて湯俣から野口五郎へグルリンポンできたらなあ…、山小屋2泊なら可能かな? なんて、地図を睨んだりしておりますが…。(@_@;)

 2008年ですか。私はまだ山の会一年生でした。
扇沢から針ノ木岳〜蓮華岳〜北葛岳〜七倉岳〜船窪岳〜不動岳〜南沢岳〜烏帽子岳ですか?
めちゃロングで険しそう。これテントって、びわ爺さまもやっぱりM系ですね。
湯俣から野口五郎岳に上がる竹村新道は、またまた超Mですよ。

>伊藤兄弟による伊藤新道復活プロジェクトの話はきいてましたが、8月も終わりそうな今日はすでに開通してるんですね。
あとでネットのレポでも見てみましょう。
「地獄」は何となくイメージできますが「火星」となると、想像不能の世界です。

 北アルプスのラストフロンティアだそうです。限りなく地球の果てにあるような。

>いつか、晴嵐荘かどちらかに泊ってみたいもんです。
この湯俣川と水俣川の出合はとても印象的だ。水俣川にはまた別の美しさがあるが、
湯俣川の乳白色を帯びた摩訶不思議な青い色が一瞬のうちに心をとらえる。
この湯俣ブルーと呼ばれる美しい色を目にして魅了されない人はいないだろうと思う。

>う~ん! 蒼い清流と乳白色の急流ですか~! そうだ、ここまでなら今の自分でも行けそうだ。
今年がダメでも体力の残債をつぎ込んでいってみたくなってきたゾ(^_-)

 三俣山荘グループの山小屋は、なかなか予約取れません。
湯俣山荘もきっと人気の小屋になるのでしょうね。
 晴嵐荘のテント場は、予約無しで張れます。ここなら、高瀬ダムから、3.5時間、水平道を歩くだけ。
びわ爺さまもきっと大丈夫と思います。ワタクシ的には超オススメ極上テント場です。
小屋閉め直前10月初旬から中旬がいいかなぁ。テント張って、噴湯丘見に行って、帰って来て晴嵐荘の内湯を使わしてもらって、
小屋の売店でおでんと熱燗を買って・・・。続きは行ってのお楽しみ〜。

*「火星」の先に、新しい第2吊橋が架けられている。
かなり高いところに付けられていて、渡っている途中ももちろんだが、
川底から高いところまで登って行って最初の橋板のプレートに足を置くまでのワクワク感半端なかった。

>写真見るだけで股間に震えが走りそう(>_<)
大雨のあとはこの下まで水位が上がるんでしょうね。

 つり橋好きには、もうたまらない楽しさでした。

>1988年の昭文社マップがあったので開いてみました。
第1つり橋(衝立岩のところ)から大高巻きして唐谷へ下り、ワリモ谷出合が第2つり橋となっています
。ただし、すでに伊藤新道のつり橋は83年台風の洪水で赤沢出合までの5本のつり橋が流され、
最後の左岸に渡る旧第5つり橋が第3つり橋になっています。ワリモ出合の第2つり橋は旧第4つり橋ということです。
今回の復活プロジェクトによる再建は88年地図とは同じ位置かどうかわかりませんが、
こんな大変なプランに挑む人、そのルートに入り込む登山者は、私には垂涎の思いで見ているしかありません。
ちなみに、到達点の「展望台」はどのあたりかな?と探してみたら、赤沢出合から尾根を詰めた2250m辺りに表記がありました。
西鎌,北鎌両尾根の頂点に突き出す槍の穂先を見上げてみたいものです。
展望台から2500m辺りからは緩い稜線歩きになりそうですね。いつか通行手形のTシャツと手ぬぐいを買いに行って下さい。

 普通は伊藤新道というと、湯俣から三俣山荘まで行きますよね。あるいは三俣山荘から降りてくる。
でも私は湯俣川でずっと遊ぶほうがよかったので、森のパートは展望台で切り上げました。
いつか、最終日に出会った若者たちのように沢を詰めて三俣山荘まで行ってみたいです。
正一さんは、多くの人が歩けるように、上半分は、鷲羽の森に道を付けたようですが、
山賊たちは、上からずっと沢筋を伝って降りて来てたのかも。
 伊藤新道の復活は、お父さんの正一さんの宿願だったそうです。
息子の圭さんは、当初山は好きでも嫌いでもなかったそうですが、
伊藤新道だけは楽しいと思っていたと、最近どこかで読みました。

>最後の川遊び、流されなくてよかったです。(^_-)
また、アドベンチャーワールドの突貫レポ、楽しませて下さい。

 ありがとうございます。
また楽しいところに行ってきたら、レポします。

   アオバ*ト
アオバ*ト
記事: 283
登録日時: 2019年9月23日(月) 08:40

Re: 【北ア】「夢のアドベンチャーワールド」〜新・伊藤新道

投稿記事 by アオバ*ト »

 skywalkさん、こんばんは。
レス、ありがとうございます。
レス返遅くなって、すみません。

>「地獄」も「火星」もごく一部って、他には一体何が出てくることやら。
 高熱地獄、激流渡渉、スリル満点吊橋桟橋、火星のザレと尖った岩々、
沢から離れて分け入った森も、ルーファイ必至、トラロープ多数、
アトラクション満載の楽しいところです。

>2回もチャレンジしてなおも成功を目指すとは何とも執念深い(いや、失礼)
そのくらいのモチベーションを保たないと成功しないということですね。

成功を目指すというより、単に、気に入ったらそればっかりというか。

>アオバトさんってアマゾネス軍団の一員だったのですね。凄いわ。
アマゾネスは、あんまりです〜。山女でも沢女でもないのに〜。

>こういうの不幸中の幸いとは言わないと思いますが、もはや使命だと思って行くしかない。
使命というか、懲りないというか。

>湯俣には行ったことないけどアオバトさんにはお馴染みのところですね。
びわ爺さまにも書きましたけど、ここは地獄だけど、極楽浄土です。

*湯俣川の乳白色を帯びた摩訶不思議な青い色が一瞬のうちに心をとらえる。
この湯俣ブルーと呼ばれる美しい色を目にして魅了されない人はいないだろうと思う。

>へぇ~見てみたい。
これもびわ爺さまにも書きましたけど、これを見ないで死んだら後悔します。

>やはり難コースを整備するのは一筋縄にはいかないのですね。
これからも維持が大変だろうなと思います。

>本当やばそう。景色が変わるほど岩が動いていたら不安定な岩ばかりでしょうね。
最初行った時、心もとない細い木にロープかけて、
足の裏三分の一くらいしか置けないところをトラバースしたのですが、
その部分無くなってました。

>私だったら迷うことなく引き返します。
skywalkさんて、毎週沢に行ってるイメージあるのですが、
そういうヒトのセリフじゃないですよね〜。

*IKUさんが晴嵐荘から缶ビールを3人分担ぎ上げてくれ、パスタを茹でてくれ、火を起してくれ、
いつものことながら彼はテント場では大活躍なのだった。

>いいお方、必須メンバーだわ。
です。です。彼のような人は、女性にモテると思います。

>沢伯なんて経験ありませんが、色んな意味でタフですね。
skywalkさんて、毎週沢泊してるようなイメージですけど。

*硫黄の噴き出す死の世界と隣り合わせの、この世の果てにこの美しい場所はある。
>あの世に召される前に見ておきたいです。でも無理だな、
毎週沢に行ってるのに、無理なわけないでしょう。

>夢のアドベンチャー成功おめでとうございます。
稜線まで行っていないものを成功とはいい難いと思いますが、充実した山行ではありました。
ありがとうございます。

      アオバ*ト
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