【若狭】妙芽谷左俣右谷にあった未知の桃源郷

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山日和
記事: 3585
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

【若狭】妙芽谷左俣右谷にあった未知の桃源郷

投稿記事 by 山日和 »

【日 付】2023年6月10日(土)
【山 域】若狭 大御影山周辺
【天 候】曇り
【メンバー】sato、山日和
【コース】妙芽谷出合8:40---9:10二俣---9:45奥の二俣---11:40近江坂11:55---12:20ブナ並木13:45---14:15下降点
     ---15:20駐車地

 美浜耳川流域の谷もそろそろ落穂拾いの段階に入ってきた。今回探索するのは能登又谷支流の妙芽谷左俣だ。
右俣はたまに紹介されているが、二俣にかかる大滝と続く連瀑以外は源流まで穏やかな渓相が続く癒しの谷である。
左俣の方は記録が見られないがどんな谷だろうか。
 昨春、登山靴で左俣の奥の二俣まで歩き、二俣の中間尾根を近江坂へ登り詰めた。その時の印象では二俣から
上部は等高線の詰まり具合から見ても少しは沢らしいように見えたがどうだろう。

P6100012_1.JPG

 妙芽谷にかかる橋の袂から入渓する。いつもなら右岸の杣道で時間短縮を図るのだが、今日は最初から水流沿い
に探索開始。別にどうということのない流れの中に、たまに美しい小滝が現れる。
倒木が邪魔をするところが多く、意外に時間を食ってしまった。

P6100037_1.JPG
P6100048_1.JPG

 二俣で妙芽谷の大滝と対峙する。10mほどだが見栄えのいい滝である。シャワー覚悟なら右から左へ直登できる
だろう。
 右岸にカツラの大木が5m滝を見下ろす左俣へ入る。しばらくは穏やかな流れが続き、カツラの巨樹が出迎えて
くれる優しい谷だ。特に左から大きくガレた谷が入る斜面に立つカツラは、長く伸びた根が谷底まで届く見事な
巨樹である。

P6100061_1.JPG

 谷は少しゴルジュの様相を呈し始めた。ほどなく奥の二俣に到着。左谷には8mほどの滝が落ちる。
ここは去年、ゴルジュの手前から大きく巻いて、8M滝の上に下りたところだ。
右谷の小滝を登って行くと、左からスダレ状の美しい10m滝が落ちていた。手前の斜面にはコアジサイが満開で、
薄むらさきのお花畑から香りが漂ってくるようだ。
正面のガレたルンゼが巻き上がる。途中でショウキランが2株咲いていた。

P6100067_1.JPG

 滝の上はまた癒しの渓相となった。去年歩いたゴンニャクのワサ谷を思い起こす。
大きく広がった谷の左端に滝とも呼べない小さな落差を配して、右側の台地に炭焼き窯跡、その奥にトチの巨木
という、神の作り給うた造形と人為の配置が、これ以上ないと思えるような絶妙な空間として目の前に現れた。
ここに立っただけで今日の目的は果たしたと言ってもいいだろう。

P6100085_1.JPG

 気を良くして遡行を続ける。その後は目立った滝もなく、V字型に切れ込んだ強い傾斜の谷が続いた。
谷芯の変化は乏しいが、両岸に展開する森が素晴らしい。トチやカツラ、サワグルミの巨木が次々に現れ、ブナ
の大木も水辺近くまで下りてきている。
 トチも5mクラスがあたり前のように散見され、6mオーバーと目される巨樹もあった。
同じ能登又谷流域のハゲノ谷や茶屋谷と同様、この流域でのスタンダードな林相と言えるだろう。
沢登りよりもこの深い森の佇まいを楽しむ谷だ。


P6100105_1.JPG

 源頭はさすがに急傾斜となり、左の小尾根に逃げれば一面のブナ林の中、足元にギンリョウソウの群落を見な
がら大日南側の近江坂へ飛び出す。
ここで登山靴に履き替えた。何度となく歩いている近江坂の道はブナの道である。

 高島トレイルのテープと並んで若狭美浜トレイルのテープがぶら下がっているが、この醜い付け方はなんとか
ならないものか。美しいブナ林を毀損しているとは思わないのだろうか。目に入るものはブナだけで十分だ。

P6100180_1.JPG

 いつものブナ並木でランチタイムとする。今日は気温が高い予報だったが、曇り空に適度な風で涼しいのがあ
りがたい。よく冷えたビールが喉に沁みる。

 下山は未踏の谷を下るつもりだったが、すっかりその気もなくなってしまい、ハゲノ谷と茶屋谷を分ける登山
道のある尾根を選択した。
ここも上部はブナの大木が並ぶ尾根なのだが、風害の影響で倒木が目立つのが残念だ。
 傾斜が急な分、仕事も速く、程なく右からハゲノ谷、左から茶屋谷の流れの音が近づいてきた。
下り立った場所は茶屋谷とイヤ谷の出合で、ここも実にいいところだ。
 今日は未知の桃源郷を発見できたが、自分の庭のようなこの山域に、まだ見ぬパラダイスはあるだろうか。

                 山日和
sato
記事: 422
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【若狭】妙芽谷左俣右谷にあった未知の桃源郷

投稿記事 by sato »

山日和さま

こんにちは。
私の愛する野坂山地の谷で出会った夢のような風景。緑に覆われたちいさな谷で、ひっそり静かに展開するうつくしき世界。
山に分け入り掬い上げることの出来た風景。
沢山旅のよろこびを感じた山旅だったなぁ、と、感慨に浸っているうちに日にちが過ぎていました。
感想、今日に至ってしまい(いつも遅いですね(汗))すみません。

茗荷谷右俣は、ひとりで遡った思い出の谷でもあります。
うつくしい流れと源流のやわらかな風景に魅了され、登山靴でも何度か歩いています。
左俣の右谷は、そうですね、標高500~550mあたりは広くて緩やかですが、上流は急、詰めも急斜面。
右俣よりは、すっ、とした感じの風景が浮かびました。
ところで「嶺南の谷」では、妙芽谷と記載されていますが、どちらなのでしょうね。
茗荷は大好きですが(庭にも植えています)、妙なる芽が芽吹く谷?も素敵ですね。

この谷は、山日和さんがおっしゃるように、別にどうということのない流れに、なんともいえないうつくしさを感じます。
穏やかな地形で、炭焼き窯跡も多く、山仕事に使われてきた谷なのですね。秋や、初冬や芽吹き前の風景も味わい深いです。
白い飛沫を優美にあげる大滝は、絵になりますね。緑滴る季節は、より優美さを感じます。

左俣は、大きなカツラが出迎えてくれました。と思ったら、もっと大きなカツラが次々と。
トチ、サワグルミの大樹も。カツラとトチとサワグルミのうつくしい森が続いていきましたね。
そして、コアジサイで埋め尽くされた林床。ちょうど開花の時で、薄紫色に彩られた谷は、よい香りで包まれ、
お山の夢の中を旅しているような不思議な感覚でした。
私は、コアジサイのお花が好きで、透き通った薄紫色の茎に魅了されています。
なんてうつくしいのだろう。眺めているとしあわせな気持ちになります。
ショウキランとの出会いもうれしかったですね。
滝の横の斜面を登りかけたらズルズルで諦めて、出会うことが出来ました。

滝の上では、立ち尽くしてしまいました。静かな感動に震えていました。
「神の作り給うた造形と人為の配置が、これ以上ないと思えるような絶妙な空間として目の前に現れた」
絶妙なお言葉。まさに、そうでした。こんな地が展開していたとは。
その後も、こころに染み入る風景が続いていきましたね。何度も振り返り、ため息をついていました。
大きなトチやカツラは、見上げた姿も素晴らしいですが、斜面を這う根に、より、こころに迫るものを感じました。

辿り着いた近江坂。何度訪れても、わぁ、と感激します。
大日から国境稜線にかけて、ほんとうに素晴らしいブナ林の尾根ですね。
大日の大きなブナが何本も切られてしまい、胸が痛みます。

木々に、競い合うかのように巻かれている、若狭美浜トレイルと高島トレイルのテープ。
ほんとうに迷いそうな所にテープを巻くのは分かりますが、この巻き方は何なのだろう、と思ってしまいますね。
この稜線は、我が町のトレイルだぞ、と、お互い主張している印象を受けてしまいます。

ハゲノ谷と茶屋谷の間の尾根も、いい尾根ですね。私も、前回歩いた時よりも倒木が多いな、と感じました。
そう、そう、この尾根は、谷に降り立った時が、またいいですよね。

山日和さんのお庭のような山域、私にとっても愛着のある山域で出会った輝き。
歩いて、出会うことが出来た風景。
こんな風景に出会うと、何度も訪れている山域の、木々で覆われた山中の、まだ見ぬ光と陰の数々を思い、ドキドキします。
山歩きは、ほんとうに面白く味わい深いですね。
今回も、ゆたかで深いお山の世界を感じさせてくれた沢山旅でした。ありがとうございます。

sato
アバター
山日和
記事: 3585
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【若狭】妙芽谷左俣右谷にあった未知の桃源郷

投稿記事 by 山日和 »

satoさん、どうもです。

私の愛する野坂山地の谷で出会った夢のような風景。緑に覆われたちいさな谷で、ひっそり静かに展開するうつくしき世界。
山に分け入り掬い上げることの出来た風景。
沢山旅のよろこびを感じた山旅だったなぁ、と、感慨に浸っているうちに日にちが過ぎていました。
感想、今日に至ってしまい(いつも遅いですね(汗))すみません。

毎度のことなんで慣れました。 :mrgreen:

うつくしい流れと源流のやわらかな風景に魅了され、登山靴でも何度か歩いています。
左俣の右谷は、そうですね、標高500~550mあたりは広くて緩やかですが、上流は急、詰めも急斜面。
右俣よりは、すっ、とした感じの風景が浮かびました。

右俣の美しい風景が左俣でも味わえるのではないかと思いました。
左俣の左谷も気になりますね。


P6100141_1_1.JPG

ところで「嶺南の谷」では、妙芽谷と記載されていますが、どちらなのでしょうね。
茗荷は大好きですが(庭にも植えています)、妙なる芽が芽吹く谷?も素敵ですね。

新庄の地図を見ても妙芽谷でした。ご指摘ありがとさんです。 :D
ちなみにこの左俣右谷はセイロ谷と書かれてました。左谷はヨミヤ(コミヤ?)谷となっています。

この谷は、山日和さんがおっしゃるように、別にどうということのない流れに、なんともいえないうつくしさを感じます。
穏やかな地形で、炭焼き窯跡も多く、山仕事に使われてきた谷なのですね。秋や、初冬や芽吹き前の風景も味わい深いです。
白い飛沫を優美にあげる大滝は、絵になりますね。緑滴る季節は、より優美さを感じます。


美浜の谷全般に言えることですが、「動」よりも「静」、躍動感ではなく落ち着いた佇まいを楽しむ谷ですね。
何気ない風景に美しさを見出せる感性が何よりも大切です。 :D

P6100045_1.JPG
P6100098_1.JPG

左俣は、大きなカツラが出迎えてくれました。と思ったら、もっと大きなカツラが次々と。
トチ、サワグルミの大樹も。カツラとトチとサワグルミのうつくしい森が続いていきましたね。
そして、コアジサイで埋め尽くされた林床。ちょうど開花の時で、薄紫色に彩られた谷は、よい香りで包まれ
、お山の夢の中を旅しているような不思議な感覚でした。

甲森谷は別格として、なかなか見事なカツラの多い谷でしたね。
左俣出合のカツラは門番のように立っていました。

P6100128_1.JPG

ショウキランとの出会いもうれしかったですね。
滝の横の斜面を登りかけたらズルズルで諦めて、出会うことが出来ました。


落ち口へまっすぐトラバースしていたら出会えませんでしたね。グズグズの悪い斜面が幸いしました。 ;)

滝の上では、立ち尽くしてしまいました。静かな感動に震えていました。
「神の作り給うた造形と人為の配置が、これ以上ないと思えるような絶妙な空間として目の前に現れた」
絶妙なお言葉。まさに、そうでした。こんな地が展開していたとは。


頭がボーっとなってしまいそうな「風景との出会い」でしたね。
判官堂湿原へ飛び出した時もそうでしたが、いきなり目に飛び込んでくる思いもよらない風景の印象は鮮烈です。






大きなトチやカツラは、見上げた姿も素晴らしいですが、斜面を這う根に、より、こころに迫るものを感じました。

長く伸びた根は生命への執念みたいなものを感じますね。

大日から国境稜線にかけて、ほんとうに素晴らしいブナ林の尾根ですね。
大日の大きなブナが何本も切られてしまい、胸が痛みます。


だから庄部谷山は自分の目で見るのが恐くて行けません・・・

P6100177_1.JPG

木々に、競い合うかのように巻かれている、若狭美浜トレイルと高島トレイルのテープ。
ほんとうに迷いそうな所にテープを巻くのは分かりますが、この巻き方は何なのだろう、と思ってしまいますね。
この稜線は、我が町のトレイルだぞ、と、お互い主張している印象を受けてしまいます。


ああいう類のマーキングは、迷いそうな要所にあれば十分です。美しい風景を損ねる異物だという自覚も感性もないんでしょうね。
昔はバリエーションルートのマーキングも、細い枝に小さくきちんと巻いたテープが忘れたころに現れて安心するというパターンが多かったですが、最近は汚らしくヒラヒラとぶら下げられたどぎつい色のテープが数メートルおきに付けられたりしていることが多いです。


P6100184_1.JPG

ハゲノ谷と茶屋谷の間の尾根も、いい尾根ですね。私も、前回歩いた時よりも倒木が多いな、と感じました。
そう、そう、この尾根は、谷に降り立った時が、またいいですよね。

このイヤ谷と茶屋谷の出合の台地も絶妙ですね。美しい場所です。

P6100209_1.JPG

山日和さんのお庭のような山域、私にとっても愛着のある山域で出会った輝き。
歩いて、出会うことが出来た風景。
こんな風景に出会うと、何度も訪れている山域の、木々で覆われた山中の、まだ見ぬ光と陰の数々を思い、ドキドキします。


大抵のところは知ってると思うけど、まだ見ぬ桃源郷があるかな? :lol:

               山日和
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