【越前】霧幻のブナ林を行く 大小屋山から大曽地
Posted: 2023年1月18日(水) 20:17
【日 付】2023年1月15日(日)
【山 域】福井県池田町魚見周辺
【天 候】曇り(終日ガス)
【メンバー】sato、山日和
【コース】東俣駐車地8:40---9:10尾根取付き---11:10大小屋山11:15---12:15 Ca730mピーク13:30---14:00大曽地
---15:05 P735m15:20---16:20車道---16:55駐車地
この週末はどこを見ても冴えない天気予報である。雨さえ降らなければと福井県は池田町の魚見集落へ向かった。
名前だけは知っていたが、初めての新保ファミリースキー場を横目で見て国道476号を進む。この国道は南越前町の
杣木俣に続く道だが、今は当然ながら積雪のため通行止めである。
駐車地で用意をしていると地元の人と思しき車が止まって声を掛けられた。
「この辺に登る山あるの?」当然の質問だろう。普通に考えれば登山の対象になるような山はない地域である。
「大小屋山から尾根をぐるっと回るつもりです」と答えたが、そもそも大小屋山をご存じない様子。
「福井の出身か」とも聞かれたが、正真正銘の大阪生まれの大阪育ちである。「気を付けて」と見送ってくれたが
こんなマイナーなところへ大阪ナンバーがわざわざ来るとは、さぞ物好きなヤツだと思われたに違いない。
空は今にも雨が降り出しそうな重苦しい色である。まわりの山を見てもほとんど雪はない。去年の年末ならこの
あたりから雪景色の中を歩けただろうが、ここしばらくはまともに雪が降っていない。しかも昨日は高温で雨。
早くも一段と雪解けが進んだことだろう。
国道から林道へ入って、大小屋山へダイレクトに上がる尾根に乗った。予想通り植林の面白みのない尾根だ。
積雪は少ないが、ツボ足だとズブズブと潜ってしまうのでスノーシューを装着。ある意味、スノーシューの威力を
発揮する雪質でもある。
標高600mぐらいからようやく自然林に変わり、気分も上がってきた。木の根元は早くも雪融けの根開きで、まる
で春山のような風情だ。
大小屋山の標高は734mしかない。自然林になってわずかな登りで山頂に到着。登り始めからずっと一面のガスで
展望は皆無。もっとも樹林の中なので、晴れていても展望は期待できないのかもしれないが。
出遅れたので時刻はもう11時だ。ここから先の方がはるかに長い。かと言って元来た道を戻るわけにもいかない
ので先へ進む。
しばらくはいい雰囲気の広い尾根だったが、そのまま直進すると支尾根で谷へ下りてしまう。尾根の形が消えた左の
急斜面を下らないといけないのだが、尾根芯が放置植林の密生で、斜面もヤブっぽくなかなかペースが上がらない。
ずっとこんな調子ならとてもじゃないが明るいうちに下れないだろう。
いい加減嫌気がさしてきたところで平坦になると、急にスッキリした尾根に変わった。ブナ混じりの雑木の疎林で
いい雰囲気である。スノーシューの沈みもくるぶし程度。湿ってはいるが重さを感じない雪なのでペースが上がる。
次の目標は標高733.4mの三角点大曽地だが時間が掛かりそうだし、地形図で見る限りではなんとなく鬱陶しそうだ。
手前の無名のCa730mピークのあたりは広々として期待できる。そこでランチタイムにしようと行程を区切った。
進むほどにブナの割合が増えてきた。これは予想外にいい尾根である。
疎林の雪原となったCa730mピークは想像通りのいいところだった。今日は風もなく、腰を降ろす場所に迷う必要
もない。
地形図を見ると、この南側すぐのところに田倉川の芋ヶ平、蓮如上人の遺跡がある。芋ヶ平は金草岳へ向かうのに
何度も訪れている場所だが、反対側から登って来ると位置関係がピンと来ず、この下が芋ヶ平というのが不思議な感
じがした。
ここから南に延びる広い町境稜線はゆったりとした起伏の中にブナ林を配した魅力的な尾根に見えた。今度は機会を
作って芋ヶ平からの周遊コースを考えてみよう。
まったく見通しの利かない濃いガスの中、次に目指すのは三角点大曽地だ。
南西に向かって足を踏み出すと、行けども行けども途切れることのないブナ林が続いていたのはまったくの想定外だった。
期待してなかっただけに喜びもひとしおである。標高700m前後の里山にこれだけのブナ林が残されているとは。
まだまだ探せば自分の知らないブナの森がいくらでも見つけられるということだ。
全体的には若いブナが多いものの、たまにそれなりに大きな木もある。
三角点大曽地も予想に反して見事なブナ林の中にあった。
尾根上だけでなく、尾根を取り巻く谷の斜面にも緩やかな傾斜の中にブナの森が広がっている。
広い尾根ばかりではなく、やせた尾根に立つブナも存在感があり、展望ゼロのモノクロの世界の雪山歩きでも飽きる
ことがない。
その後もブナの尾根は続いたが、735m標高点まで来るとさすがに息切れして植林が現われた。
しかしこの周回ルートは見事に730m台のピークが並んでいる。ここから更に続く町境稜線には段ノ岳、金粕、唐木岳
という730m前後のピークがある。増永廸男氏の「福井の山150」にも書かれているが、こういう稜線は珍しいのでは
ないだろうか。
当初の予定ではここから北に延びる尾根を辿るつもりだったが、大小屋山への尾根の様子を考えると鬱陶しい部分
が現われるかもしれない。予定を変更して北西尾根を最短ルートで車道へ下りよう。
この尾根の上部はヤセ尾根が続き、中途半端に乗った雪と立ち木の障害物で、ちょっとしたバリハイ気分だ。
途中で林道に出合うのだが、林道にぶつかるところがガケになっている可能性がある。合流点の手前に下りられそう
な斜面(と言っても普通は下りたいと思わない急斜面だが)を見つけて、ストックとスノーシューを放り投げて立ち木
懸垂で林道に着地。尾根の末端を確かめるとやはりガケだった。
そこからは比較的歩きやすい尾根が続いた。
今度も車道にぶつかる末端の様子がわからないので、またも右手の急斜面を滑るように下りた。下りれば林道だと
思っていたのだが地図の読み違いで、林道は谷の対岸にあった。
下手をすれば危うく谷にダイブしてしまうところだった。
車道に出ればひと安心。気温が高い割には雪はそこそこ締まっていたので助かった。
最後は夕暮れ迫る、雪の積もったただっ広い国道を歩いて行く。
振り返る山稜は、朝と変わらず濃い霧に覆われていた。
山日和
【山 域】福井県池田町魚見周辺
【天 候】曇り(終日ガス)
【メンバー】sato、山日和
【コース】東俣駐車地8:40---9:10尾根取付き---11:10大小屋山11:15---12:15 Ca730mピーク13:30---14:00大曽地
---15:05 P735m15:20---16:20車道---16:55駐車地
この週末はどこを見ても冴えない天気予報である。雨さえ降らなければと福井県は池田町の魚見集落へ向かった。
名前だけは知っていたが、初めての新保ファミリースキー場を横目で見て国道476号を進む。この国道は南越前町の
杣木俣に続く道だが、今は当然ながら積雪のため通行止めである。
駐車地で用意をしていると地元の人と思しき車が止まって声を掛けられた。
「この辺に登る山あるの?」当然の質問だろう。普通に考えれば登山の対象になるような山はない地域である。
「大小屋山から尾根をぐるっと回るつもりです」と答えたが、そもそも大小屋山をご存じない様子。
「福井の出身か」とも聞かれたが、正真正銘の大阪生まれの大阪育ちである。「気を付けて」と見送ってくれたが
こんなマイナーなところへ大阪ナンバーがわざわざ来るとは、さぞ物好きなヤツだと思われたに違いない。
空は今にも雨が降り出しそうな重苦しい色である。まわりの山を見てもほとんど雪はない。去年の年末ならこの
あたりから雪景色の中を歩けただろうが、ここしばらくはまともに雪が降っていない。しかも昨日は高温で雨。
早くも一段と雪解けが進んだことだろう。
国道から林道へ入って、大小屋山へダイレクトに上がる尾根に乗った。予想通り植林の面白みのない尾根だ。
積雪は少ないが、ツボ足だとズブズブと潜ってしまうのでスノーシューを装着。ある意味、スノーシューの威力を
発揮する雪質でもある。
標高600mぐらいからようやく自然林に変わり、気分も上がってきた。木の根元は早くも雪融けの根開きで、まる
で春山のような風情だ。
大小屋山の標高は734mしかない。自然林になってわずかな登りで山頂に到着。登り始めからずっと一面のガスで
展望は皆無。もっとも樹林の中なので、晴れていても展望は期待できないのかもしれないが。
出遅れたので時刻はもう11時だ。ここから先の方がはるかに長い。かと言って元来た道を戻るわけにもいかない
ので先へ進む。
しばらくはいい雰囲気の広い尾根だったが、そのまま直進すると支尾根で谷へ下りてしまう。尾根の形が消えた左の
急斜面を下らないといけないのだが、尾根芯が放置植林の密生で、斜面もヤブっぽくなかなかペースが上がらない。
ずっとこんな調子ならとてもじゃないが明るいうちに下れないだろう。
いい加減嫌気がさしてきたところで平坦になると、急にスッキリした尾根に変わった。ブナ混じりの雑木の疎林で
いい雰囲気である。スノーシューの沈みもくるぶし程度。湿ってはいるが重さを感じない雪なのでペースが上がる。
次の目標は標高733.4mの三角点大曽地だが時間が掛かりそうだし、地形図で見る限りではなんとなく鬱陶しそうだ。
手前の無名のCa730mピークのあたりは広々として期待できる。そこでランチタイムにしようと行程を区切った。
進むほどにブナの割合が増えてきた。これは予想外にいい尾根である。
疎林の雪原となったCa730mピークは想像通りのいいところだった。今日は風もなく、腰を降ろす場所に迷う必要
もない。
地形図を見ると、この南側すぐのところに田倉川の芋ヶ平、蓮如上人の遺跡がある。芋ヶ平は金草岳へ向かうのに
何度も訪れている場所だが、反対側から登って来ると位置関係がピンと来ず、この下が芋ヶ平というのが不思議な感
じがした。
ここから南に延びる広い町境稜線はゆったりとした起伏の中にブナ林を配した魅力的な尾根に見えた。今度は機会を
作って芋ヶ平からの周遊コースを考えてみよう。
まったく見通しの利かない濃いガスの中、次に目指すのは三角点大曽地だ。
南西に向かって足を踏み出すと、行けども行けども途切れることのないブナ林が続いていたのはまったくの想定外だった。
期待してなかっただけに喜びもひとしおである。標高700m前後の里山にこれだけのブナ林が残されているとは。
まだまだ探せば自分の知らないブナの森がいくらでも見つけられるということだ。
全体的には若いブナが多いものの、たまにそれなりに大きな木もある。
三角点大曽地も予想に反して見事なブナ林の中にあった。
尾根上だけでなく、尾根を取り巻く谷の斜面にも緩やかな傾斜の中にブナの森が広がっている。
広い尾根ばかりではなく、やせた尾根に立つブナも存在感があり、展望ゼロのモノクロの世界の雪山歩きでも飽きる
ことがない。
その後もブナの尾根は続いたが、735m標高点まで来るとさすがに息切れして植林が現われた。
しかしこの周回ルートは見事に730m台のピークが並んでいる。ここから更に続く町境稜線には段ノ岳、金粕、唐木岳
という730m前後のピークがある。増永廸男氏の「福井の山150」にも書かれているが、こういう稜線は珍しいのでは
ないだろうか。
当初の予定ではここから北に延びる尾根を辿るつもりだったが、大小屋山への尾根の様子を考えると鬱陶しい部分
が現われるかもしれない。予定を変更して北西尾根を最短ルートで車道へ下りよう。
この尾根の上部はヤセ尾根が続き、中途半端に乗った雪と立ち木の障害物で、ちょっとしたバリハイ気分だ。
途中で林道に出合うのだが、林道にぶつかるところがガケになっている可能性がある。合流点の手前に下りられそう
な斜面(と言っても普通は下りたいと思わない急斜面だが)を見つけて、ストックとスノーシューを放り投げて立ち木
懸垂で林道に着地。尾根の末端を確かめるとやはりガケだった。
そこからは比較的歩きやすい尾根が続いた。
今度も車道にぶつかる末端の様子がわからないので、またも右手の急斜面を滑るように下りた。下りれば林道だと
思っていたのだが地図の読み違いで、林道は谷の対岸にあった。
下手をすれば危うく谷にダイブしてしまうところだった。
車道に出ればひと安心。気温が高い割には雪はそこそこ締まっていたので助かった。
最後は夕暮れ迫る、雪の積もったただっ広い国道を歩いて行く。
振り返る山稜は、朝と変わらず濃い霧に覆われていた。
山日和