【奥越】悦楽の雪回廊を行く 岩谷山から御伊勢山へ
Posted: 2022年3月15日(火) 20:41
【日 付】2022年3月12日(土)
【山 域】奥越 大納川流域
【天 候】曇りのち晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】下大納7:00---8:50クロカン尾根合流点---11:00岩谷山11:20---12:00林道---13:10御伊勢山14:55
---16:45ワサ谷林道---17:30駐車地
ちょうど12年前の今頃、このコースを歩いた。奥越の岩谷山から御伊勢山へ周回するコースである。
干支がひと回りした今、同じように歩くことができるだろうか。
前回は上大納のクロカンスキー場からのスタートだったが、今回は下大納の尾根末端に取り付いた。地形図で
見ると、緩やかでゆったりした尾根が続いており、前回この尾根に合流した時、こっちから上がればよかったか
なと思ったのだ。
地形図にない林道を2回横切って尾根に乗ると、予想通りの緩やかな尾根が始まった。
いきなりのブナ林というわけにはいかず、左側が植林、尾根芯と右側は自然林という尾根だが、雰囲気は悪くない。
高曇りであまり明るさのない天気だが、予報を信じればそのうち青空が広がるだろう。
雪はたっぷり積もっており、スノーシューがわずかに沈む程度の好コンディション。スノーシューを外すとヒザ
まで潜る、湿り気たっぷりの雪なのだが、こういう雪質がスノーシューの得意とする場面である。
やがて植林が切れ、クロカンスキー場からの尾根を合わせる頃には少しずつ日が差し始めた。雪面に映る木の影
や自分の影を見るのはうれしいものだ。のっぺりしていた山肌にも陰影が表情を付け、山全体が生き生きとしてく
る。これは人間の勝手な感想で、山は日が当たろうが当たるまいが変わらないのだが。
植林が切れた左側は展望が開け、目指す御伊勢山がはるか遠くに見える。この好展望は伐採のなせる業なのだろ
うが、雪が積もっていれば殺伐とした感じは覆い隠されている。
尾根の右側は大きなブナやミズナラが目立つ豊かな森になってきた。
出発からちょうど4時間で岩谷山頂に立った。12年前よりも長い道程で同じコースタイムなら悪くはないだろう。
岩谷山は大きく開け、雪原が広がる明るい山頂である。
思わずのんびりしたくなる場所だが、後の行程を考えればゆっくりしていられない。
山頂から南へ伸びる尾根に足を踏み出した。南西方向に展望が開けると、他の山と異質な大きな山塊に目を奪わ
れた。姥ヶ岳から能郷白山へと続く白い山並みである。特に能郷白山は白さが際立っている。
今日は春霞で景色がはっきりしないのが残念だ。西には堂ヶ辻山と銀杏峰を木の間越しに望むことができた。
尾根上にはこの山域の特徴のひとつであるヒノキの巨木が現れる。ヒノキはヤセ尾根を好む場合が多く、尾根の
ど真ん中で通せんぼするように立ちはだかることがある。
尾根は東に向きを変えて、御伊勢山へのアプローチが始まる。
このあたりはこれまで見られなかった若いブナの純林になっており、広い尾根にびっしりと立ち並ぶ細いブナの間
を進む。南側に横たわるのは越美国境稜線だ。特に目を惹くのは屏風山の姿である。端正な三角錐のイメージが強
いこの山は、見る角度によって姿を変える。このあたりから見る屏風山は横に広く、まさに屏風のイメージである。
考えてみれば、屏風が三角錐というのもおかしな話なのだ。
林道が尾根を横切る地点は深い切通しになっており、うっかり直進すれば転落してしまう。左から巻いて林道へ
下りるのだが、法面のガケはとんでもない高さで、よくこれだけ切り取ったものだと感心してしまうほどである。
少しずつ御伊勢山が近付いてきた。距離は少しあるものの、山頂までの標高差はもう100mあまりしかない。
南側に発達した雪庇に気を遣いながら、山頂の白い姿がだんだん大きくなってくるのがうれしい。
林道から先の尾根には高い木がなく、ひと筋の雪の街道が御伊勢山に向かって緩やかに伸びて行く。
左右とも全開の展望を楽しみながらのビクトリーロードを進む。北に目を遣れば純白の荒島岳が縫ヶ原山を従えて
神々しいばかりの姿で鎮座している。はるか彼方にうっすらと白山の姿も認めることができた。
目の前を黒いかたまりが横切って行った。一瞬クマかと思ったらカモシカだった。通常なら立ち止まってじっと
こちらを見つめてくれるのだが、このカモシカは一散に谷の方へ下りて行ってしまった。写真が間に合わなかった
のが残念だ。
進むにつれ屏風のような屏風山がその姿を三角錐に変えて行くのが面白い。手前に控えるのは鍋又山という笹生
川上流域の渋い山々だ。
最後のひと登りで御伊勢山の北峰に立つ。三角点のある南峰は指呼の間だ。その間に豊かなブナ林の中を緩やか
に上がって来るのがワサ谷の左俣である。22年前に遡行してここへ辿り着いた。その時はやたら虫が飛び回る鬱陶
しい場所でそそくさと昼飯を済ませたものだ。当時はまだ蚊取り線香を使っていなかった。
北峰と南峰を結ぶ広い尾根とワサ谷源頭が作り出す、雪に覆われた地形のうねりが美しく、思わず見惚れてしまっ
たのは12年前と同じだ。
少し風があるので、雪壁の一番段差の少ないところから滑り降りて、南峰との中間点でランチタイムとしよう。
霞がちながら能郷白山を正面に、豊潤なブナ林に包まれて過ごすひと時は、至福という以外の言葉が見当たらない。
今日は全国的に気温が高く、風がなければまさにポカポカ陽気だ。ここまで手袋も着けずに腕まくりをして歩いて
来たが、長いランチタイムの間も上着を着る必要もない。春の日差しをいっぱいに受けて、ビールが心地よくのど
を通過して行く。もうそろそろ鍋シーズンも終了だろうか。
南峰からは一段と見事なパノラマが展開した。屏風山から続く越美国境稜線には平家岳と美濃平家が頭をもたげ
て、昨秋の沢歩きを思い出させてくれる。
北峰へ戻って北側を眺めると、白山と加越国境の経ヶ岳、大長山、赤兎山と石徹白の山々。
そして正面に圧倒的な存在感で聳える荒島岳の姿が美し過ぎるぐらい美しい。
時刻はもう3時。またも12年前と同じである。
予定のルートを変更して、北へ真っ直ぐ下る尾根を選んだ。この尾根は終始荒島岳に見守られながら、ブナの森を
一直線に下って行く素晴らしいルートだ。目の高さより少し上に見ていた荒島が、どんどん見上げる高さに変わっ
て行く。今日の豊かな山旅のフィナーレにふさわしい下りである。
最後は尾根の末端の手前で左折して、林道の橋があるところへ向かう支尾根を腐り切った雪に足を取られながら
転げるように下った。末端まで進んでしまうと渡渉を余儀なくされるのである。
1mほど雪の積もった林道に下り立てばひと安心。雪解け水が勢いよく迸る流れを見下ろして、谷間を飾る雪の
造形を楽しみながら歩けば下大納の集落は近い。
山日和
【山 域】奥越 大納川流域
【天 候】曇りのち晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】下大納7:00---8:50クロカン尾根合流点---11:00岩谷山11:20---12:00林道---13:10御伊勢山14:55
---16:45ワサ谷林道---17:30駐車地
ちょうど12年前の今頃、このコースを歩いた。奥越の岩谷山から御伊勢山へ周回するコースである。
干支がひと回りした今、同じように歩くことができるだろうか。
前回は上大納のクロカンスキー場からのスタートだったが、今回は下大納の尾根末端に取り付いた。地形図で
見ると、緩やかでゆったりした尾根が続いており、前回この尾根に合流した時、こっちから上がればよかったか
なと思ったのだ。
地形図にない林道を2回横切って尾根に乗ると、予想通りの緩やかな尾根が始まった。
いきなりのブナ林というわけにはいかず、左側が植林、尾根芯と右側は自然林という尾根だが、雰囲気は悪くない。
高曇りであまり明るさのない天気だが、予報を信じればそのうち青空が広がるだろう。
雪はたっぷり積もっており、スノーシューがわずかに沈む程度の好コンディション。スノーシューを外すとヒザ
まで潜る、湿り気たっぷりの雪なのだが、こういう雪質がスノーシューの得意とする場面である。
やがて植林が切れ、クロカンスキー場からの尾根を合わせる頃には少しずつ日が差し始めた。雪面に映る木の影
や自分の影を見るのはうれしいものだ。のっぺりしていた山肌にも陰影が表情を付け、山全体が生き生きとしてく
る。これは人間の勝手な感想で、山は日が当たろうが当たるまいが変わらないのだが。
植林が切れた左側は展望が開け、目指す御伊勢山がはるか遠くに見える。この好展望は伐採のなせる業なのだろ
うが、雪が積もっていれば殺伐とした感じは覆い隠されている。
尾根の右側は大きなブナやミズナラが目立つ豊かな森になってきた。
出発からちょうど4時間で岩谷山頂に立った。12年前よりも長い道程で同じコースタイムなら悪くはないだろう。
岩谷山は大きく開け、雪原が広がる明るい山頂である。
思わずのんびりしたくなる場所だが、後の行程を考えればゆっくりしていられない。
山頂から南へ伸びる尾根に足を踏み出した。南西方向に展望が開けると、他の山と異質な大きな山塊に目を奪わ
れた。姥ヶ岳から能郷白山へと続く白い山並みである。特に能郷白山は白さが際立っている。
今日は春霞で景色がはっきりしないのが残念だ。西には堂ヶ辻山と銀杏峰を木の間越しに望むことができた。
尾根上にはこの山域の特徴のひとつであるヒノキの巨木が現れる。ヒノキはヤセ尾根を好む場合が多く、尾根の
ど真ん中で通せんぼするように立ちはだかることがある。
尾根は東に向きを変えて、御伊勢山へのアプローチが始まる。
このあたりはこれまで見られなかった若いブナの純林になっており、広い尾根にびっしりと立ち並ぶ細いブナの間
を進む。南側に横たわるのは越美国境稜線だ。特に目を惹くのは屏風山の姿である。端正な三角錐のイメージが強
いこの山は、見る角度によって姿を変える。このあたりから見る屏風山は横に広く、まさに屏風のイメージである。
考えてみれば、屏風が三角錐というのもおかしな話なのだ。
林道が尾根を横切る地点は深い切通しになっており、うっかり直進すれば転落してしまう。左から巻いて林道へ
下りるのだが、法面のガケはとんでもない高さで、よくこれだけ切り取ったものだと感心してしまうほどである。
少しずつ御伊勢山が近付いてきた。距離は少しあるものの、山頂までの標高差はもう100mあまりしかない。
南側に発達した雪庇に気を遣いながら、山頂の白い姿がだんだん大きくなってくるのがうれしい。
林道から先の尾根には高い木がなく、ひと筋の雪の街道が御伊勢山に向かって緩やかに伸びて行く。
左右とも全開の展望を楽しみながらのビクトリーロードを進む。北に目を遣れば純白の荒島岳が縫ヶ原山を従えて
神々しいばかりの姿で鎮座している。はるか彼方にうっすらと白山の姿も認めることができた。
目の前を黒いかたまりが横切って行った。一瞬クマかと思ったらカモシカだった。通常なら立ち止まってじっと
こちらを見つめてくれるのだが、このカモシカは一散に谷の方へ下りて行ってしまった。写真が間に合わなかった
のが残念だ。
進むにつれ屏風のような屏風山がその姿を三角錐に変えて行くのが面白い。手前に控えるのは鍋又山という笹生
川上流域の渋い山々だ。
最後のひと登りで御伊勢山の北峰に立つ。三角点のある南峰は指呼の間だ。その間に豊かなブナ林の中を緩やか
に上がって来るのがワサ谷の左俣である。22年前に遡行してここへ辿り着いた。その時はやたら虫が飛び回る鬱陶
しい場所でそそくさと昼飯を済ませたものだ。当時はまだ蚊取り線香を使っていなかった。
北峰と南峰を結ぶ広い尾根とワサ谷源頭が作り出す、雪に覆われた地形のうねりが美しく、思わず見惚れてしまっ
たのは12年前と同じだ。
少し風があるので、雪壁の一番段差の少ないところから滑り降りて、南峰との中間点でランチタイムとしよう。
霞がちながら能郷白山を正面に、豊潤なブナ林に包まれて過ごすひと時は、至福という以外の言葉が見当たらない。
今日は全国的に気温が高く、風がなければまさにポカポカ陽気だ。ここまで手袋も着けずに腕まくりをして歩いて
来たが、長いランチタイムの間も上着を着る必要もない。春の日差しをいっぱいに受けて、ビールが心地よくのど
を通過して行く。もうそろそろ鍋シーズンも終了だろうか。
南峰からは一段と見事なパノラマが展開した。屏風山から続く越美国境稜線には平家岳と美濃平家が頭をもたげ
て、昨秋の沢歩きを思い出させてくれる。
北峰へ戻って北側を眺めると、白山と加越国境の経ヶ岳、大長山、赤兎山と石徹白の山々。
そして正面に圧倒的な存在感で聳える荒島岳の姿が美し過ぎるぐらい美しい。
時刻はもう3時。またも12年前と同じである。
予定のルートを変更して、北へ真っ直ぐ下る尾根を選んだ。この尾根は終始荒島岳に見守られながら、ブナの森を
一直線に下って行く素晴らしいルートだ。目の高さより少し上に見ていた荒島が、どんどん見上げる高さに変わっ
て行く。今日の豊かな山旅のフィナーレにふさわしい下りである。
最後は尾根の末端の手前で左折して、林道の橋があるところへ向かう支尾根を腐り切った雪に足を取られながら
転げるように下った。末端まで進んでしまうと渡渉を余儀なくされるのである。
1mほど雪の積もった林道に下り立てばひと安心。雪解け水が勢いよく迸る流れを見下ろして、谷間を飾る雪の
造形を楽しみながら歩けば下大納の集落は近い。
山日和
あらまあ鈴鹿とはえらい違いです。