【中央アルプス】上松A〜麦草岳〜木曽前岳〜上松B☆紅葉の樹林から雪化粧の岩稜へ
Posted: 2021年11月18日(木) 22:24
【 日 付 】2021年11月6日(土曜日)
【 山 域 】中央アルプス
【メンバー】山猫, greenriverさん
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】木曽駒荘7:17〜11:18麦草岳11:27〜13:46木曽前岳14:04〜15:35金懸小屋15:40〜16:33敬神の滝16:44〜17:11上松Aコース登山口〜18:01木曽駒荘
先日、クロオさんのお誘いでオフ会にご参加されたGreenriverさん(以下GRさん)の最初の出会いは残雪期の金糞岳に家内と登った時、登山口でご夫妻にお会いしたのだった。二回目は今年のはじめ、トガスに登るつもりで訪れた夜叉龍神社で偶然にも再びご夫妻にお会いし、急遽、土蔵岳から大ダワへのの周回をご一緒させて頂いたのだった。
この一年間、ほとんどの出張の仕事がオンラインとなるが、久しぶりに名古屋への出張が入ったのでgreenriver(以下GR)さんにご連絡し、愛知県からアプローチ出来る山をご案内して頂くことをお願いする。山行先はGRさんに一任したところ、色々と思案して下さったらしい。出張前にお知らせ頂いた山行計画は上松B→Aという驚くべきコースであった。それなりのスピードを前提とした上で、核心部はこれらのコースを結ぶ麦草岳から木曽前岳の間の険阻な岩稜だろう。私一人では到底、考えが及びもつかないようなコースであるが、この機会にGRさんにご案内して頂くことにした。
早朝の4時過ぎに金山のホテルまで迎えに来て下さる。やがて空が明るくなると上空は雲のほとんどない秋空が広がっている。木曽の谷を北上するとやがて濃い朝霧の中へと入ってゆく。
上松Bコースの登山口に到着すると地図に記されているように木曽駒荘という旧い山荘がある。趣のある昭和風の建物ではあるが既に廃屋となって久しい感じだ。
最初は長い林道歩きから始まる。色とりどりの紅葉と時折現れる白樺の叢林に感嘆しながら早足気味に林道を進む。やがてca1400mのあたりで谷沿いの景色が大きく開ける、ここから上では紅葉は既に終わっている。山肌には裸木の白い幹がタペストリーの規則的な図柄のように浮かび上がっている。
林道が終点となり、谷の左岸の樹林へと入ってゆく登山道が見えたところで、広々とした谷奥を取り囲む壮麗な絶壁とその上から流れ落ちる一筋の滝が目に入る。その落差は50mはゆうにあるだろう。渇水期なので流量が少ないものと思われるが、水量が多いと相当な迫力であることが予想される。そして滝を取りまく屏風のような絶壁の青紫色を帯びた岩肌がこの景色をなんとも幻想的なものにしている。奇美世の滝という名前をつけられたのもなるほどと頷けるような奇観だ。この景色の美しさに見惚れ、しばし呆然と滝の前に佇む。
登山口からはすぐにもシラビソと思われる針葉樹の森の急登となり、つづら折りに斜面を登ってゆく。麦草岳から西に伸びる尾根に乗ると樹林の中に朝陽が差し込み始めると、鋭角的な木洩れ陽が林床の苔を鋭角的に照らし出す。単調な樹林の登りが続くが、普段、関西の山では見ることのない林相が新鮮に思われ、退屈することがない。
標高2300mを過ぎたあたりで、陽の当たらない北側斜面に入ると登山道は途端に雪が現れる。氷結している箇所が多いが道がなだらかなのでまだチェーンスパイクを使用するには及ばない。
やがて樹間からはハイマツに覆われたピークが見える。麦草岳の手前の偽ピークらしい。尾根の展望地からは背後にやはり冠雪した御嶽山、そしてその右手には乗鞍岳と北アルプスの展望が広がっている。そして御嶽山との間では下界には褐色に染まった紅葉の樹林が絨毯のように限りなく広がっている。
すぐにも樹林帯を抜けるのかと思いきや、樹高の低い針葉樹の樹林帯をなかなか抜けない。ようやく樹林を抜けてハイマツ帯になると背後に大きく眺望が広がるが、いつしか北アルプス方面には雲がかかっていた。背後の御嶽山との間にも瞬く間に雲が広がり、みるみるうちに山々の眺望を遮ってゆく。流れていく雲の速度がかなり速い。風が相当に強いようだ。ここでハードシェルを着用する。驚いたことに上空を見上げると一羽の蝶がこの強風の中を飛んでいた。
正面に三角点ピークと麦草岳を仰ぎなら正面に三角点ピークと麦草岳を仰ぎならがハイマツ帯を進む。ハイマツの上には早速にも雪が乗っている箇所が多く、そのお陰でハイマツの上を自在に闊歩することが出来る。
七合目避難小屋からの登山道(福島コース)との合流地点でいよいよ目の前には積雪した木曽前岳とその奥には木曽駒ヶ岳の壮麗なピークが姿を現す。
問題は手指が急速に悴んでしまったことだ。手袋は二枚、持参してきたが、GRさんが用意してくれた防寒テムレスを使わせて頂く。しかしなかなか回復せ、ここで指先を温めるためにかなり停滞してしまう。ハードシェルの中にダウンも着込んでようやく指先の感覚が戻ってきて安心する。
三角点のあるピークに達すると丁度、12本爪のアイゼンを装着した二人の男性の登山者が七合目から登って来られる。福島Aコースから登って来られたらしい。すぐ隣のピークを指してあちらが本当の山頂ですよとGRさんがご教示されると、「山頂を踏み損ねるところだった」と喜んで山頂に向かわれる。私たちもすぐにその後を追う。
木曽前岳にかけての吊り尾根を眺めると、そのほぼ中間地点あたりで通過を阻むよう大きな岩が二つ鋭く突き出ている。それが牙岩と呼ばれる岩であることは誰にもすぐ理解できるだろう。確かに天に向かって稜線からむき出しになった牙のようだ。私の手の悴みもすっかり治まったところで、いよいよGRに先導して頂いて、木曽前岳への吊尾根に足を踏み入れる。
急峻な斜面を下降すると風の影に入ったのだろう。急速に風が弱まり、暖かく感じられる。鞍部の手前は斜面が凍結しているとかなりの危険な箇所になるのだろうが、風が雪を吹き飛ばしたのだろう。登山道には全くといってもいいほど雪はなく、難なく通過することが出来る。
鞍部からは右手に荒々しい崩壊斜面が広がっている。ここからは積雪した北側斜面をトラバース気味に進むことになる。幸いここでも雪は凍結しておらず、順調に進む。牙岩の下にたどり着くと二段のアルミ梯子が設置されている。
梯子を登って二つの牙岩の間を通過する。牙岩の東側の急峻な斜面は麦草岳からの下りと同様に積雪がなく、無事に下降することが出来る。これで危険箇所は通過したとのことであるが、ここで目の前に聳える木曽前岳への登りはかなり急峻だ。
木曽前岳の登りに差し掛かると北側斜面から登ることになるが、やはりかなりの急斜面である。斜面の灌木かところどころで雪の下から露出しているロープの助けを借りて登ることが出来るが、もう少しでも雪が積もれば難易度はかなり高いものになるだろう。
木曽前岳の手前のピークに達すると一人の男性が休憩しておられた。上松Aコースを登って来られたらしい。ここからは積雪したなだらかな岩稜帯を歩いて木曽前岳のピークを踏みに行く。木曽前岳のピークはいくつかある小さな隆起の一つであり、ケルンがなければ気がつかずに通り過ぎてしまいそうな地味なピークであった。有難いことに麦草岳よりも風はだいぶ治まっている。山頂に到達すると私達の周りでは数羽の可愛らしい鳥が飛び回っている。ホシガラスだとGRさんが教えて下さる。携行した大福とキウィで休憩する。さほど長居をしたつもりもないのだが、気がついたら20分近くが過ぎていた。
先ほどの男性のおられた稜線の分岐のピークに戻ると下山は上松Aコースへと入る。尾根は日当たり良いせいか、ほとんど積雪はない。階段の整備された歩きやすい道が続いており、快適に下降する。
下るにつれ風もなくなり、休息の暑く感じられるようになる。標高2500mのあたりでハードシェルとチェーンアイゼンを収納する。やがて登りの尾根と同様のシラビソの樹林に入ってゆく。下山の尾根は緩やかではあるが距離が長い。それなりの快足で降っているつもりではあるが、なかなか高度が下がらない。
五合目にある金懸小屋を通りすぎて、つづら折りに斜面を下るようになると林相が変わり、針葉樹の間に色とりどりの紅葉の樹々が現れる。紅葉もさることながら、さすがは木曽の山林である。林の中は滅多にお目にかかれないようなアスナロや樅の大樹、ひときわ大きなトチノキの巨樹が次々と現れ、その樹々の立派さに感心する。
ようやく登山口が見えて来た頃、右手に現れた谷に小さな祠とその奥に数段の滝が見える。手前
の斜面を登ってゆく苔むした木製の梯子があるので、登ってみると急峻な斜面からは対岸に美しい六段の段瀑が紅葉の樹々の間から落ちている。
谷の祠は滝を祀るためのものであろう。滝下にも足を運んでみるが、滝下から眺めることが出来るのは下の四段のみであった。
林道に出ると周辺の樹林の紅葉が綺麗ではあるが、あたりは急速に暗くなってゆく。ここからは出発地点である上松Bコースの登山口まではおよそ6km近い道のりだ。北股沢を渡渉して、登山口に至る林道駒ヶ岳山麓線に入ると夜の帳が降りてくる。林道を取り巻く闇の中から時折、ヘッデンの光を反射する緑の双眸を目にしながら出発地に戻った。
登山口と下山口の二つの美しい滝、見事な紅葉にも恵まれ、そしてGRさんのお陰で私一人では足を踏み入れるようとは思わないような険阻な雪の稜線歩きを堪能し、盛りだくさんの山行であった。GRさんの車に乗り込み、木曽川沿いの国道を南下するとやがて雨が降り始める。女心と秋の空とはよく言ったものだ。
【 山 域 】中央アルプス
【メンバー】山猫, greenriverさん
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】木曽駒荘7:17〜11:18麦草岳11:27〜13:46木曽前岳14:04〜15:35金懸小屋15:40〜16:33敬神の滝16:44〜17:11上松Aコース登山口〜18:01木曽駒荘
先日、クロオさんのお誘いでオフ会にご参加されたGreenriverさん(以下GRさん)の最初の出会いは残雪期の金糞岳に家内と登った時、登山口でご夫妻にお会いしたのだった。二回目は今年のはじめ、トガスに登るつもりで訪れた夜叉龍神社で偶然にも再びご夫妻にお会いし、急遽、土蔵岳から大ダワへのの周回をご一緒させて頂いたのだった。
この一年間、ほとんどの出張の仕事がオンラインとなるが、久しぶりに名古屋への出張が入ったのでgreenriver(以下GR)さんにご連絡し、愛知県からアプローチ出来る山をご案内して頂くことをお願いする。山行先はGRさんに一任したところ、色々と思案して下さったらしい。出張前にお知らせ頂いた山行計画は上松B→Aという驚くべきコースであった。それなりのスピードを前提とした上で、核心部はこれらのコースを結ぶ麦草岳から木曽前岳の間の険阻な岩稜だろう。私一人では到底、考えが及びもつかないようなコースであるが、この機会にGRさんにご案内して頂くことにした。
早朝の4時過ぎに金山のホテルまで迎えに来て下さる。やがて空が明るくなると上空は雲のほとんどない秋空が広がっている。木曽の谷を北上するとやがて濃い朝霧の中へと入ってゆく。
上松Bコースの登山口に到着すると地図に記されているように木曽駒荘という旧い山荘がある。趣のある昭和風の建物ではあるが既に廃屋となって久しい感じだ。
最初は長い林道歩きから始まる。色とりどりの紅葉と時折現れる白樺の叢林に感嘆しながら早足気味に林道を進む。やがてca1400mのあたりで谷沿いの景色が大きく開ける、ここから上では紅葉は既に終わっている。山肌には裸木の白い幹がタペストリーの規則的な図柄のように浮かび上がっている。
林道が終点となり、谷の左岸の樹林へと入ってゆく登山道が見えたところで、広々とした谷奥を取り囲む壮麗な絶壁とその上から流れ落ちる一筋の滝が目に入る。その落差は50mはゆうにあるだろう。渇水期なので流量が少ないものと思われるが、水量が多いと相当な迫力であることが予想される。そして滝を取りまく屏風のような絶壁の青紫色を帯びた岩肌がこの景色をなんとも幻想的なものにしている。奇美世の滝という名前をつけられたのもなるほどと頷けるような奇観だ。この景色の美しさに見惚れ、しばし呆然と滝の前に佇む。
登山口からはすぐにもシラビソと思われる針葉樹の森の急登となり、つづら折りに斜面を登ってゆく。麦草岳から西に伸びる尾根に乗ると樹林の中に朝陽が差し込み始めると、鋭角的な木洩れ陽が林床の苔を鋭角的に照らし出す。単調な樹林の登りが続くが、普段、関西の山では見ることのない林相が新鮮に思われ、退屈することがない。
標高2300mを過ぎたあたりで、陽の当たらない北側斜面に入ると登山道は途端に雪が現れる。氷結している箇所が多いが道がなだらかなのでまだチェーンスパイクを使用するには及ばない。
やがて樹間からはハイマツに覆われたピークが見える。麦草岳の手前の偽ピークらしい。尾根の展望地からは背後にやはり冠雪した御嶽山、そしてその右手には乗鞍岳と北アルプスの展望が広がっている。そして御嶽山との間では下界には褐色に染まった紅葉の樹林が絨毯のように限りなく広がっている。
すぐにも樹林帯を抜けるのかと思いきや、樹高の低い針葉樹の樹林帯をなかなか抜けない。ようやく樹林を抜けてハイマツ帯になると背後に大きく眺望が広がるが、いつしか北アルプス方面には雲がかかっていた。背後の御嶽山との間にも瞬く間に雲が広がり、みるみるうちに山々の眺望を遮ってゆく。流れていく雲の速度がかなり速い。風が相当に強いようだ。ここでハードシェルを着用する。驚いたことに上空を見上げると一羽の蝶がこの強風の中を飛んでいた。
正面に三角点ピークと麦草岳を仰ぎなら正面に三角点ピークと麦草岳を仰ぎならがハイマツ帯を進む。ハイマツの上には早速にも雪が乗っている箇所が多く、そのお陰でハイマツの上を自在に闊歩することが出来る。
七合目避難小屋からの登山道(福島コース)との合流地点でいよいよ目の前には積雪した木曽前岳とその奥には木曽駒ヶ岳の壮麗なピークが姿を現す。
問題は手指が急速に悴んでしまったことだ。手袋は二枚、持参してきたが、GRさんが用意してくれた防寒テムレスを使わせて頂く。しかしなかなか回復せ、ここで指先を温めるためにかなり停滞してしまう。ハードシェルの中にダウンも着込んでようやく指先の感覚が戻ってきて安心する。
三角点のあるピークに達すると丁度、12本爪のアイゼンを装着した二人の男性の登山者が七合目から登って来られる。福島Aコースから登って来られたらしい。すぐ隣のピークを指してあちらが本当の山頂ですよとGRさんがご教示されると、「山頂を踏み損ねるところだった」と喜んで山頂に向かわれる。私たちもすぐにその後を追う。
木曽前岳にかけての吊り尾根を眺めると、そのほぼ中間地点あたりで通過を阻むよう大きな岩が二つ鋭く突き出ている。それが牙岩と呼ばれる岩であることは誰にもすぐ理解できるだろう。確かに天に向かって稜線からむき出しになった牙のようだ。私の手の悴みもすっかり治まったところで、いよいよGRに先導して頂いて、木曽前岳への吊尾根に足を踏み入れる。
急峻な斜面を下降すると風の影に入ったのだろう。急速に風が弱まり、暖かく感じられる。鞍部の手前は斜面が凍結しているとかなりの危険な箇所になるのだろうが、風が雪を吹き飛ばしたのだろう。登山道には全くといってもいいほど雪はなく、難なく通過することが出来る。
鞍部からは右手に荒々しい崩壊斜面が広がっている。ここからは積雪した北側斜面をトラバース気味に進むことになる。幸いここでも雪は凍結しておらず、順調に進む。牙岩の下にたどり着くと二段のアルミ梯子が設置されている。
梯子を登って二つの牙岩の間を通過する。牙岩の東側の急峻な斜面は麦草岳からの下りと同様に積雪がなく、無事に下降することが出来る。これで危険箇所は通過したとのことであるが、ここで目の前に聳える木曽前岳への登りはかなり急峻だ。
木曽前岳の登りに差し掛かると北側斜面から登ることになるが、やはりかなりの急斜面である。斜面の灌木かところどころで雪の下から露出しているロープの助けを借りて登ることが出来るが、もう少しでも雪が積もれば難易度はかなり高いものになるだろう。
木曽前岳の手前のピークに達すると一人の男性が休憩しておられた。上松Aコースを登って来られたらしい。ここからは積雪したなだらかな岩稜帯を歩いて木曽前岳のピークを踏みに行く。木曽前岳のピークはいくつかある小さな隆起の一つであり、ケルンがなければ気がつかずに通り過ぎてしまいそうな地味なピークであった。有難いことに麦草岳よりも風はだいぶ治まっている。山頂に到達すると私達の周りでは数羽の可愛らしい鳥が飛び回っている。ホシガラスだとGRさんが教えて下さる。携行した大福とキウィで休憩する。さほど長居をしたつもりもないのだが、気がついたら20分近くが過ぎていた。
先ほどの男性のおられた稜線の分岐のピークに戻ると下山は上松Aコースへと入る。尾根は日当たり良いせいか、ほとんど積雪はない。階段の整備された歩きやすい道が続いており、快適に下降する。
下るにつれ風もなくなり、休息の暑く感じられるようになる。標高2500mのあたりでハードシェルとチェーンアイゼンを収納する。やがて登りの尾根と同様のシラビソの樹林に入ってゆく。下山の尾根は緩やかではあるが距離が長い。それなりの快足で降っているつもりではあるが、なかなか高度が下がらない。
五合目にある金懸小屋を通りすぎて、つづら折りに斜面を下るようになると林相が変わり、針葉樹の間に色とりどりの紅葉の樹々が現れる。紅葉もさることながら、さすがは木曽の山林である。林の中は滅多にお目にかかれないようなアスナロや樅の大樹、ひときわ大きなトチノキの巨樹が次々と現れ、その樹々の立派さに感心する。
ようやく登山口が見えて来た頃、右手に現れた谷に小さな祠とその奥に数段の滝が見える。手前
の斜面を登ってゆく苔むした木製の梯子があるので、登ってみると急峻な斜面からは対岸に美しい六段の段瀑が紅葉の樹々の間から落ちている。
谷の祠は滝を祀るためのものであろう。滝下にも足を運んでみるが、滝下から眺めることが出来るのは下の四段のみであった。
林道に出ると周辺の樹林の紅葉が綺麗ではあるが、あたりは急速に暗くなってゆく。ここからは出発地点である上松Bコースの登山口まではおよそ6km近い道のりだ。北股沢を渡渉して、登山口に至る林道駒ヶ岳山麓線に入ると夜の帳が降りてくる。林道を取り巻く闇の中から時折、ヘッデンの光を反射する緑の双眸を目にしながら出発地に戻った。
登山口と下山口の二つの美しい滝、見事な紅葉にも恵まれ、そしてGRさんのお陰で私一人では足を踏み入れるようとは思わないような険阻な雪の稜線歩きを堪能し、盛りだくさんの山行であった。GRさんの車に乗り込み、木曽川沿いの国道を南下するとやがて雨が降り始める。女心と秋の空とはよく言ったものだ。