【湖北】懸案の源流探索 大音波川から下谷山へ
Posted: 2021年11月15日(月) 23:41
【日 付】2021年11月13日(土)
【山 域】湖北 下谷山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】大音波川橋7:30---9:35ベルク余呉二俣---10:05音波二俣---11:40間違えた谷源頭---11:55目的の谷---
12:45江美国境稜線14:20---14:35下谷山---16:05大音波---17:15県道---17:40駐車地
道路際の気温表示は2℃。もう沢を歩く気の起こらない気温である。
今年の沢納めに選んだのは懸案の大音波川。検索してもまったく記録は見当たらない。いわゆるハズレ沢の可能
性が大なのだが、下谷山直下の源頭の佇まいを見れば、いつかは行かねばならない谷だと思っていた。
あの県境稜線でありながら谷底にいるような、不思議な感覚の場所へ詰め上がる谷は、どんな表情を見せるのだ
ろう。
昨年の夏、この源頭に向かい合うように福井県側から上がる美土路川を遡行した。まあ、予想通り何もない谷だ
ったのだが、源流の最初の一滴がここというのが何より素晴らしいのである。
どちらの谷もほとんど傾斜のないゆるゆるとした源頭部が、このパラダイスへと導いてくれる。
大音波川橋から釣り師が設置したと思われるトラロープで谷へ下りる。地形図をみればわかることだが、この
谷は延々と平流が続き、4キロの間に稼ぐ標高差はわずかに180mしかないのだ。谷幅も広く、まさに川と言うに
ふさわしい。何かがあると思う方が不思議だろう。
水の中に足を踏み入れるとさすがに冷たく、今日はできるだけ水に入らずに歩こうと心に決めた。
ようやく谷に日が差し始めると、背中がポカポカと温かい。標高の低いまわりの山肌は色付きもピークを迎え
ていた。谷が広いおかげで河原も広く、昔からの道があるようで、その踏み跡を辿ってできるだけ水を避けて進
む。
たまに土管や訳の分からない廃材の残骸が転がっているのは、左俣上流にあったベルク余呉スキー場の工事の名
残りだろう。土砂を全部谷へ捨てたという荒っぽい工事で建設されたらしいスキー場も、バブルが終わってスキ
ーブームが去ると同時に客が減ってしまったのか、10年ほど前に閉鎖され放置されたままになっている。
Ca560mの二俣に着いた。左は三角点音波へ向かう谷である。ここを右に取り、さらにCa640mで北へ伸びる大
きな谷と別れて東へ針路を取るのだが、源流の明瞭な谷の形と比して、いかにも微妙な等高線の入り具合が悩ま
しい。源頭からそのまま地形図の窪みを辿って行くと、谷の形は斜面に吸収されてしまう。恐らくその南側の谷
地形がそこに接続しているだろうと見当を付けた。
これまでほとんど標高を上げていない分、胸を衝くような傾斜になったが滝はほとんどなくガラガラした岩屑
の谷が続いた。ヤブっぽさがないのが救いというところか。
急な分仕事も早く。葉を落としたブナ林の向こうの青空が近付いてきた。いよいよあそこを右に曲がれば源流の
ゆるゆる地帯に突入か。と思ったら、谷はいきなりそこで終わっていた。GPSで確認すると、予定の谷の南側の
谷の源頭に立っていた。途中に分岐はなかった。と言うことは、この谷は予定の谷とは繋がっていなかったので
ある。
ならば、予定の谷はどこへ流れているのか。もうひと登りで下谷山北西の山稜に乗るのだが、このまま終わって
しまうわけにはいかない。北隣の谷へとトラバースを開始。これが意外に悪く、時間を食ってしまった。
トラバースの末に見下ろした目的の谷は素晴らしい雰囲気を持っていた。屈曲した完全なV字谷の佇まいとま
わりの樹林の美しさは申し分ない源流の形を見せていた。
では、この谷の続きはどうなっているのか。確かめずにはおれず、下流へと足を運ぶ。
谷が2度カーブした先に滝が落ちていた。10mほどだろうか。ここがちょうど地形図の谷の形がなくなるあたり
だ。この下にも滝が連続してるのかどうかはわからなかった。
結論は、地形図が間違っているわけでもなく、地形図に表しきれない微妙な谷の形がここにはあったということ
である。最初に進んだ谷も、先ほどの源頭部に向かってはいるが、途中からこの谷に繋がっているのだろうと勝
手に想像していただけなのだ。
完全に疑問が氷解したわけではないが、自分の中では答が見つかったので満足だ。
さあ、源流のパラダイスへ向かおう。V字の谷は続き、まもなく源頭の平流部かと思いきや、予想外の滝が現れた。
10m足らずだろうか、階段状なので問題なく直登。ところがまたも5mほどの滝に阻まれた。これは直登不可能で、
右岸のズルズルの斜面を這い上がって巻く。その上にも小滝が続いており、まとめて巻いて再び流れに下り立った。
ここから先は何度も目にした優しい源流だ。まったく石が見えない、土だけでできたような炭焼窯跡があった。
下の方で茶碗のカケラが落ちていて驚いたのだが、かつてここで仕事をしていた人の痕跡なのだろうか。
斜面には昨日の冷え込みの名残りの雪がまだ残っていた。1000m足らずのこの山でも初雪が降ったようだ。
目の高さの先に国境稜線が見えている。
谷底のような県境稜線(江越国境稜線)は定番のランチ場だ。ブナ林に囲まれているが、まったく閉塞感のない
心落ち着く場所である。日溜まりに腰を降ろして至福の一杯を楽しむ。
食後は下谷山頂へご挨拶。積雪期と違ってあまり展望の利かない山頂だが、南側だけは開けている。
さっきの雪を見れば、白山は真っ白に冠雪しているだろうと思ったが、残念ながらその姿を見ることはできなか
った。
ここからは何度も歩いている三角点大音波への南尾根を辿る。ずっとブナ林が続くお気に入りの尾根なのだが、
ちょっと気になることがあった。白いビニールテープが延々と張られており、道と関係なさそうなところにピン
クのテープが付けられている。これは栃ノ木峠からの県境稜線に計画されている風力発電の絡みだろうか。
庄部谷山近辺といい、自分の愛するブナ林の山々が失われて行くのは身を切られるように悲しい。地球環境のた
めに自然を破壊する矛盾をおかしいと思わないのか、見て見ぬふりをしているのか。
大音波もいい山頂だ。余呉トレイルはここから南西の尾根に拓かれており、駐車地の大音波川出合への最短
ルートである。しかし、ここはあえて南東の針川へ向かう尾根を選択した。この尾根は2度歩いているが、ブナ
林が続く広く緩やかな尾根で、余呉トレイルよりも遥かに優れていると思う。なぜこちらに設定しなかったの
か不思議に思ったものだ。
尾根上にはところどころに素敵なブナのコバが点在しており、もう少し明るいうちならじっくり歩きたいと
ころだが、日没が迫ってきたので足も速くならざるを得ないのが残念だ。
徐々に標高が下がってくると、葉を落としていた木々に赤みが戻ってきた。夕刻の残照を受けて、一日の終わ
りの燃えるような輝きを放っていた。もうすぐ日が沈む。
最後は地形図通りの巡視路なので安心だ。やや足元が見にくくなってきたのでヘッデン点灯。
すっかり暮れなずんだ県道を駐車地へと戻った。
山日和
【山 域】湖北 下谷山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】大音波川橋7:30---9:35ベルク余呉二俣---10:05音波二俣---11:40間違えた谷源頭---11:55目的の谷---
12:45江美国境稜線14:20---14:35下谷山---16:05大音波---17:15県道---17:40駐車地
道路際の気温表示は2℃。もう沢を歩く気の起こらない気温である。
今年の沢納めに選んだのは懸案の大音波川。検索してもまったく記録は見当たらない。いわゆるハズレ沢の可能
性が大なのだが、下谷山直下の源頭の佇まいを見れば、いつかは行かねばならない谷だと思っていた。
あの県境稜線でありながら谷底にいるような、不思議な感覚の場所へ詰め上がる谷は、どんな表情を見せるのだ
ろう。
昨年の夏、この源頭に向かい合うように福井県側から上がる美土路川を遡行した。まあ、予想通り何もない谷だ
ったのだが、源流の最初の一滴がここというのが何より素晴らしいのである。
どちらの谷もほとんど傾斜のないゆるゆるとした源頭部が、このパラダイスへと導いてくれる。
大音波川橋から釣り師が設置したと思われるトラロープで谷へ下りる。地形図をみればわかることだが、この
谷は延々と平流が続き、4キロの間に稼ぐ標高差はわずかに180mしかないのだ。谷幅も広く、まさに川と言うに
ふさわしい。何かがあると思う方が不思議だろう。
水の中に足を踏み入れるとさすがに冷たく、今日はできるだけ水に入らずに歩こうと心に決めた。
ようやく谷に日が差し始めると、背中がポカポカと温かい。標高の低いまわりの山肌は色付きもピークを迎え
ていた。谷が広いおかげで河原も広く、昔からの道があるようで、その踏み跡を辿ってできるだけ水を避けて進
む。
たまに土管や訳の分からない廃材の残骸が転がっているのは、左俣上流にあったベルク余呉スキー場の工事の名
残りだろう。土砂を全部谷へ捨てたという荒っぽい工事で建設されたらしいスキー場も、バブルが終わってスキ
ーブームが去ると同時に客が減ってしまったのか、10年ほど前に閉鎖され放置されたままになっている。
Ca560mの二俣に着いた。左は三角点音波へ向かう谷である。ここを右に取り、さらにCa640mで北へ伸びる大
きな谷と別れて東へ針路を取るのだが、源流の明瞭な谷の形と比して、いかにも微妙な等高線の入り具合が悩ま
しい。源頭からそのまま地形図の窪みを辿って行くと、谷の形は斜面に吸収されてしまう。恐らくその南側の谷
地形がそこに接続しているだろうと見当を付けた。
これまでほとんど標高を上げていない分、胸を衝くような傾斜になったが滝はほとんどなくガラガラした岩屑
の谷が続いた。ヤブっぽさがないのが救いというところか。
急な分仕事も早く。葉を落としたブナ林の向こうの青空が近付いてきた。いよいよあそこを右に曲がれば源流の
ゆるゆる地帯に突入か。と思ったら、谷はいきなりそこで終わっていた。GPSで確認すると、予定の谷の南側の
谷の源頭に立っていた。途中に分岐はなかった。と言うことは、この谷は予定の谷とは繋がっていなかったので
ある。
ならば、予定の谷はどこへ流れているのか。もうひと登りで下谷山北西の山稜に乗るのだが、このまま終わって
しまうわけにはいかない。北隣の谷へとトラバースを開始。これが意外に悪く、時間を食ってしまった。
トラバースの末に見下ろした目的の谷は素晴らしい雰囲気を持っていた。屈曲した完全なV字谷の佇まいとま
わりの樹林の美しさは申し分ない源流の形を見せていた。
では、この谷の続きはどうなっているのか。確かめずにはおれず、下流へと足を運ぶ。
谷が2度カーブした先に滝が落ちていた。10mほどだろうか。ここがちょうど地形図の谷の形がなくなるあたり
だ。この下にも滝が連続してるのかどうかはわからなかった。
結論は、地形図が間違っているわけでもなく、地形図に表しきれない微妙な谷の形がここにはあったということ
である。最初に進んだ谷も、先ほどの源頭部に向かってはいるが、途中からこの谷に繋がっているのだろうと勝
手に想像していただけなのだ。
完全に疑問が氷解したわけではないが、自分の中では答が見つかったので満足だ。
さあ、源流のパラダイスへ向かおう。V字の谷は続き、まもなく源頭の平流部かと思いきや、予想外の滝が現れた。
10m足らずだろうか、階段状なので問題なく直登。ところがまたも5mほどの滝に阻まれた。これは直登不可能で、
右岸のズルズルの斜面を這い上がって巻く。その上にも小滝が続いており、まとめて巻いて再び流れに下り立った。
ここから先は何度も目にした優しい源流だ。まったく石が見えない、土だけでできたような炭焼窯跡があった。
下の方で茶碗のカケラが落ちていて驚いたのだが、かつてここで仕事をしていた人の痕跡なのだろうか。
斜面には昨日の冷え込みの名残りの雪がまだ残っていた。1000m足らずのこの山でも初雪が降ったようだ。
目の高さの先に国境稜線が見えている。
谷底のような県境稜線(江越国境稜線)は定番のランチ場だ。ブナ林に囲まれているが、まったく閉塞感のない
心落ち着く場所である。日溜まりに腰を降ろして至福の一杯を楽しむ。
食後は下谷山頂へご挨拶。積雪期と違ってあまり展望の利かない山頂だが、南側だけは開けている。
さっきの雪を見れば、白山は真っ白に冠雪しているだろうと思ったが、残念ながらその姿を見ることはできなか
った。
ここからは何度も歩いている三角点大音波への南尾根を辿る。ずっとブナ林が続くお気に入りの尾根なのだが、
ちょっと気になることがあった。白いビニールテープが延々と張られており、道と関係なさそうなところにピン
クのテープが付けられている。これは栃ノ木峠からの県境稜線に計画されている風力発電の絡みだろうか。
庄部谷山近辺といい、自分の愛するブナ林の山々が失われて行くのは身を切られるように悲しい。地球環境のた
めに自然を破壊する矛盾をおかしいと思わないのか、見て見ぬふりをしているのか。
大音波もいい山頂だ。余呉トレイルはここから南西の尾根に拓かれており、駐車地の大音波川出合への最短
ルートである。しかし、ここはあえて南東の針川へ向かう尾根を選択した。この尾根は2度歩いているが、ブナ
林が続く広く緩やかな尾根で、余呉トレイルよりも遥かに優れていると思う。なぜこちらに設定しなかったの
か不思議に思ったものだ。
尾根上にはところどころに素敵なブナのコバが点在しており、もう少し明るいうちならじっくり歩きたいと
ころだが、日没が迫ってきたので足も速くならざるを得ないのが残念だ。
徐々に標高が下がってくると、葉を落としていた木々に赤みが戻ってきた。夕刻の残照を受けて、一日の終わ
りの燃えるような輝きを放っていた。もうすぐ日が沈む。
最後は地形図通りの巡視路なので安心だ。やや足元が見にくくなってきたのでヘッデン点灯。
すっかり暮れなずんだ県道を駐車地へと戻った。
山日和
そのうち行ってみようかなとか思いつつ、足の向いていない場所です。