【奥越】極上の無名峰逍遥 三ノ宿から岩ヶ谷山へ
Posted: 2021年3月01日(月) 23:59
【日 付】2021年2月27日(土)
【山 域】奥越 九頭竜湖北東
【天 候】晴れ
【コース】多母谷林道入口7:50---9:15林道分岐9:30---10:55三ノ宿11:40---12:35 P1260 14:40---15:15岩ヶ谷山15:40
---16:40 P996---17:05林道---17:40林道入口
三ノ宿(さんのしゅく)と言っても、どこにあるのか分かる人はほとんどいないだろう。
九頭竜湖の東端の北側にある山で、三角点名は「保谷奥」という。この山に向かって伸びる谷は、地図では田茂谷
と表記されているが、林道の標識は多母谷となっており、保谷と合わせて3つの名前がある。どれが本当なのだろう。
昔、この谷から美濃の長滝へ信仰の道があり、その途上に一ノ宿から四ノ宿まで休憩地のようなものがあったらしい。
そのひとつが三ノ宿だったようだ。
九頭竜川沿いでは中部縦貫道の工事が急ピッチで進められており、この林道入口も工事現場となっている。山腹に
は完成したトンネルの入口が見えた。
林道の除雪終了点でスノーシューを装着。雪はよく締まっており、ほとんど沈むことがない。長い林道歩きもこれ
なら楽である。
この谷は大きく開けた場所が多く、冷たい雪解け水も燦々と降り注ぐ陽光を浴びて、どこか温かみを感じさせる。
頭上には真っ青な空が広がり、もう春の真っただ中といった風情である。
林道の分岐点から斜面に取り付いた。杉林の中のかなりの急傾斜だが、スノーシューのヒールリフターを利かせれ
ば、まるで階段を登るように足を奥だけでピタッと決まってくれる。
傾斜が緩むと快適な雪尾根歩きが始まった。鬱陶しいだろう潅木もすべて雪の下。尾根上は自然林だが、あまり背
の高くない木がポツポツとある程度で、ブナの切り株も目立つ。左側の谷は皆伐状態だ。雪で隠れていなければ目を
覆うような光景なのかもしれない。
それでも見た目には雪原のような雪尾根を歩くのは快適だ。背後には越美国境稜線の滝波山、美濃平家、平家岳の御
三家が揃い踏みし、その右には屏風山がひときわ鋭角な山頂部を誇示するように聳えている。
右手に見える谷間に大きく開けた街並みはどこだろう。見慣れない場所からの展望は、位置関係が即座に判断でき
ず、とまどってしまう。高速道路らしき道が走っているところを見れば、高鷲から蛭ヶ野あたりだろう。奥の斜面の
スキー場は鷲ヶ岳か。
考えてみれば、背後はるか遠くに見える越美国境稜線が、今いる場所の先に繋がっているというのだから面白い。
三ノ宿の山頂はブナの疎林の大雪原になっていた。石徹白の山々と別山、白山から北アルプス、乗鞍、御嶽、中央
アルプスまで、展望を欲しいままにすることができる。
仕事の電話がかかってきたりもして、ここで40分もまったりとしてしまった。
山頂手前から古いワカンの足跡があった。山頂から先には続いていない。いったいどこから現れて、どこへ消えて
行ったのだろう。
三ノ宿から先も、胸のすくような展望を楽しみながら、ゆったりとした雪尾根歩きが続く。
実はカシミールで地図をコピーしてきたのだが、山旅倶楽部の地図はあまり更新されないので古く、この尾根上に林
道が走っていることを知らなかった。今歩いているのは、林道に積もった雪の上なのである。丸裸ではなく、樹林が
残されているので想像もしなかったのだ。
地形図を見ると林道だらけだが、黒々と見える木々が全部植林かと言えば、そうではないらしい。増永廸男氏の本に
よれば、この山の南北には天然杉の森が多いと言う。
雪はおそらく2m程度は積もっているはずだが、ところどころ地肌が見える場所があるのが不思議だ。フラットな
赤土の林道が姿を現しているところもあった。
ところどころに巨大なヒノキの奇木が見られるのもこの山域の特徴だ。木の真ん中をくぐれる根上がりのヒノキも
あったりして面白い。
ランチ場として選んだのは岩ヶ谷山手前のCa1260mピーク。木立の少ないここは、雪庇を越えた向こう側に極上の
レストランがあった。スノスコで硬い雪を掘ってランチ場を設営する。目の前に並ぶのは、枇杷倉、小白山、野伏、
薙刀、日岸、願教寺、越前三ノ峰、別山、白山、銚子ヶ峰といった何度も歩いて来た山々である。
左に目をやれば、木無と荒島から縫ヶ原の稜線も見える。この眺めがあればビールの肴は不要である。
風もほとんどなく、日差しがポカポカと暖かい。(後で聞いた話では、少し南の山では強風が吹いていたらしいが)
あまりの去り難い風景に2時間ものんびりしてしまった。もちろん、後の行程から逆算しての時間配分だが。
岩ヶ谷山へも同じような雪尾根が続くが、少しブナが増えてきたようだ。尾根の南側には雪庇が張り出している。
ランチ場ピークから30分ほどで岩ヶ谷山に到着。ブナ林のいい山頂だが、展望という面では先ほどのピークに劣る。
あそこで昼にして正解だった。
思いがけないことに、ここで登山者が現れた。京都から来たという山スキーヤーで、隣の林谷から西山を経由して
きたというから、なかなかの強者である。と言うより、なかなかの好事家と言うべきか。
やぶこぎネットもたまに見ているということなので、書き込んでくれるのを楽しみにしよう。
もう3時半を回ってしまったが、距離と標高差を考えれば、1時間半もあれば下山できるだろうと南の尾根へ踏み出
した。ところが、この下山ルートは一筋縄では行かなかった。最初は少し急なだけで、まあまあ快適なブナ林の尾根
だったが、やがて尾根は痩せ始め、潅木の上に雪が乗った不安定なところが増えてきた。危ないのでスノーシューを
脱いでツボ足歩行に切り替える。それなりに潜るが、スノーシューを履いて滑落するよりはマシである。
ブナ林が広がる安全地帯のP996mまで1時間もかかってしまった。
この先のP984mまで尾根を辿るつもりだったが、行く手を見ると右半分が植林のようで食指が動かない。
真東に伸びる尾根に針路変更して、早めに林道に下りるルートを選択した。
残照を浴びて光る対岸の山肌を見ながら林道に下り立つと、山頂で会ったスキーヤーのトレースが下流方向に伸び
ていた。P1252m経由で下ったのだろうが、さすがにスキーは速い。
山日和
【山 域】奥越 九頭竜湖北東
【天 候】晴れ
【コース】多母谷林道入口7:50---9:15林道分岐9:30---10:55三ノ宿11:40---12:35 P1260 14:40---15:15岩ヶ谷山15:40
---16:40 P996---17:05林道---17:40林道入口
三ノ宿(さんのしゅく)と言っても、どこにあるのか分かる人はほとんどいないだろう。
九頭竜湖の東端の北側にある山で、三角点名は「保谷奥」という。この山に向かって伸びる谷は、地図では田茂谷
と表記されているが、林道の標識は多母谷となっており、保谷と合わせて3つの名前がある。どれが本当なのだろう。
昔、この谷から美濃の長滝へ信仰の道があり、その途上に一ノ宿から四ノ宿まで休憩地のようなものがあったらしい。
そのひとつが三ノ宿だったようだ。
九頭竜川沿いでは中部縦貫道の工事が急ピッチで進められており、この林道入口も工事現場となっている。山腹に
は完成したトンネルの入口が見えた。
林道の除雪終了点でスノーシューを装着。雪はよく締まっており、ほとんど沈むことがない。長い林道歩きもこれ
なら楽である。
この谷は大きく開けた場所が多く、冷たい雪解け水も燦々と降り注ぐ陽光を浴びて、どこか温かみを感じさせる。
頭上には真っ青な空が広がり、もう春の真っただ中といった風情である。
林道の分岐点から斜面に取り付いた。杉林の中のかなりの急傾斜だが、スノーシューのヒールリフターを利かせれ
ば、まるで階段を登るように足を奥だけでピタッと決まってくれる。
傾斜が緩むと快適な雪尾根歩きが始まった。鬱陶しいだろう潅木もすべて雪の下。尾根上は自然林だが、あまり背
の高くない木がポツポツとある程度で、ブナの切り株も目立つ。左側の谷は皆伐状態だ。雪で隠れていなければ目を
覆うような光景なのかもしれない。
それでも見た目には雪原のような雪尾根を歩くのは快適だ。背後には越美国境稜線の滝波山、美濃平家、平家岳の御
三家が揃い踏みし、その右には屏風山がひときわ鋭角な山頂部を誇示するように聳えている。
右手に見える谷間に大きく開けた街並みはどこだろう。見慣れない場所からの展望は、位置関係が即座に判断でき
ず、とまどってしまう。高速道路らしき道が走っているところを見れば、高鷲から蛭ヶ野あたりだろう。奥の斜面の
スキー場は鷲ヶ岳か。
考えてみれば、背後はるか遠くに見える越美国境稜線が、今いる場所の先に繋がっているというのだから面白い。
三ノ宿の山頂はブナの疎林の大雪原になっていた。石徹白の山々と別山、白山から北アルプス、乗鞍、御嶽、中央
アルプスまで、展望を欲しいままにすることができる。
仕事の電話がかかってきたりもして、ここで40分もまったりとしてしまった。
山頂手前から古いワカンの足跡があった。山頂から先には続いていない。いったいどこから現れて、どこへ消えて
行ったのだろう。
三ノ宿から先も、胸のすくような展望を楽しみながら、ゆったりとした雪尾根歩きが続く。
実はカシミールで地図をコピーしてきたのだが、山旅倶楽部の地図はあまり更新されないので古く、この尾根上に林
道が走っていることを知らなかった。今歩いているのは、林道に積もった雪の上なのである。丸裸ではなく、樹林が
残されているので想像もしなかったのだ。
地形図を見ると林道だらけだが、黒々と見える木々が全部植林かと言えば、そうではないらしい。増永廸男氏の本に
よれば、この山の南北には天然杉の森が多いと言う。
雪はおそらく2m程度は積もっているはずだが、ところどころ地肌が見える場所があるのが不思議だ。フラットな
赤土の林道が姿を現しているところもあった。
ところどころに巨大なヒノキの奇木が見られるのもこの山域の特徴だ。木の真ん中をくぐれる根上がりのヒノキも
あったりして面白い。
ランチ場として選んだのは岩ヶ谷山手前のCa1260mピーク。木立の少ないここは、雪庇を越えた向こう側に極上の
レストランがあった。スノスコで硬い雪を掘ってランチ場を設営する。目の前に並ぶのは、枇杷倉、小白山、野伏、
薙刀、日岸、願教寺、越前三ノ峰、別山、白山、銚子ヶ峰といった何度も歩いて来た山々である。
左に目をやれば、木無と荒島から縫ヶ原の稜線も見える。この眺めがあればビールの肴は不要である。
風もほとんどなく、日差しがポカポカと暖かい。(後で聞いた話では、少し南の山では強風が吹いていたらしいが)
あまりの去り難い風景に2時間ものんびりしてしまった。もちろん、後の行程から逆算しての時間配分だが。
岩ヶ谷山へも同じような雪尾根が続くが、少しブナが増えてきたようだ。尾根の南側には雪庇が張り出している。
ランチ場ピークから30分ほどで岩ヶ谷山に到着。ブナ林のいい山頂だが、展望という面では先ほどのピークに劣る。
あそこで昼にして正解だった。
思いがけないことに、ここで登山者が現れた。京都から来たという山スキーヤーで、隣の林谷から西山を経由して
きたというから、なかなかの強者である。と言うより、なかなかの好事家と言うべきか。
やぶこぎネットもたまに見ているということなので、書き込んでくれるのを楽しみにしよう。
もう3時半を回ってしまったが、距離と標高差を考えれば、1時間半もあれば下山できるだろうと南の尾根へ踏み出
した。ところが、この下山ルートは一筋縄では行かなかった。最初は少し急なだけで、まあまあ快適なブナ林の尾根
だったが、やがて尾根は痩せ始め、潅木の上に雪が乗った不安定なところが増えてきた。危ないのでスノーシューを
脱いでツボ足歩行に切り替える。それなりに潜るが、スノーシューを履いて滑落するよりはマシである。
ブナ林が広がる安全地帯のP996mまで1時間もかかってしまった。
この先のP984mまで尾根を辿るつもりだったが、行く手を見ると右半分が植林のようで食指が動かない。
真東に伸びる尾根に針路変更して、早めに林道に下りるルートを選択した。
残照を浴びて光る対岸の山肌を見ながら林道に下り立つと、山頂で会ったスキーヤーのトレースが下流方向に伸び
ていた。P1252m経由で下ったのだろうが、さすがにスキーは速い。
山日和