【江越国境】ブナの回廊 船ヶ洞山から下谷山
Posted: 2021年2月17日(水) 21:10
【日 付】2021年2月14日(日)
【山 域】江越国境 下谷山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】駐車地7:45---10:20船ヶ洞山---12:15江美国境稜線---12:20下谷山直下13:45---13:55下谷山---
15:00 Ca900m分岐---16:30 P594m---17:30駐車地
八飯と宇津尾の集落の間で駐車地を探した。広野ダムへの県道は車線分だけしか除雪されていない。
雪解けで路肩に少し広がった空きスペースに車を止めた。朝の眩しい光に目を細めて見る白いピークは美濃俣丸だ。
快晴が約束された今日は、広野ダム近辺は賑わうのだろうか。
一面雪に覆われた畑を、スノーシューを手にぶら下げて歩く。雪はボソボソでガボリまくる(福井弁で潜るという
意味)。最初から履けばよかったのだが、向こうに見える尾根の取付きあたりに地肌が見えたので我慢したのが失敗
だった。常日頃からライトニングエクスプローラーの着脱性の良さを喧伝しているくせに、こういう時に変に我慢
してイライラを昂じさせてしまうのだからお粗末な話だ。
雪のない尾根の末端でスノーシューを装着した。アホ丸出しである。
積雪は少なく、地肌が出ているところも多いが、履いて歩く方が精神衛生上はいい。
やがて植林が切れると雪も繋がり始めた。今日は気温が高く、冬用ではない薄手のシャツでも暑いぐらいだ。
休憩を取るのも日陰を探すような始末である。まだ2月の半ばだというのにどうなっているのだろう。
Ca510mあたりで傾斜が緩んで、ゆったりとした雪尾根歩きとなった。
船ヶ洞山から下谷山へ伸びる長い尾根は、ゆるゆると高度を上げて江越国境稜線へと続く。船ヶ洞山は以前から気
にはなっていたのだが、この山に登るコースのイメージが湧かず、ずっと後回しになっていた。
去年、美土路川を遡行した時に下山した左岸尾根を使えば周回ルートが取れる。
尾根の痩せた部分でところどころ地肌が出ているのを見れば、無雪期でも歩ける道があるようだ。
タムシバの花芽が春の訪れを感じさせる。降り注ぐ日差しも、どこか生暖かいような風も、とても厳冬期のそれと
は思えない。グサグサの湿った重い雪でラッセルを強いられるかもと思っていたが、意外に沈みは少なく、足にか
かる負担も少ないのがありがたい。
標高600mを超えるとブナが姿を見せ始めた。正直なところ、林相については大して期待をしていなかった。
しかし、目の前に展開するブナ林は期待を大きく超えるものだった。特に船ヶ洞山頂直手前の、左から食い込む谷
と尾根が絶妙なカーブで交わるあたりの造形がこころを揺さぶった。
4mクラスの巨木が立つ斜面を上がると、いよいよ山頂である。直下の複雑な地形も面白く、隣の谷を越えて対岸
の尾根を登ろうか、あるいはもう一つ谷を越えて北東からの尾根に乗ろうかと、いろんな思いが頭の中を駆け巡る。
現実には、今歩いている尾根の快適さに満足してしまい、そのまま山頂へ飛び出してしまうのだった。
船ヶ洞山の山頂は広大な疎林の雪原となっている。やぶこぎのオフ会を開催したいぐらいの気持ちのいい広場だ
った。
ここからの尾根はさらに伸びやかで広々としている。緩やかに続く雪尾根は、江越国境稜線まで3.5キロほどの間
にわずか150mしか高度を上げない。まさに稜線漫歩である。しかもそのほとんどがブナ林だ。若いブナが多いが、
時折そこそこの大木が彩りを沿えている。
越美国境稜線方面の展望も良く、わずかに沈むスノーシューを引きずりながらのんびり歩くことができた。
ただ、東側は地形図にある通り林道が縦横に走っており、皆伐後の杉林が広がっている。上谷山に伸びる江美国境
稜線も同様に、杉の黒っぽい影で風采が上がらないのが残念だ。
しかし、杉が固まって立つ真っ黒な林ではなく、点描のように白い雪の中にポツポツと立っている姿が面白い。
江越国境稜線が近付いてきた。国境を目の前にして一旦下るのだが、その鞍部付近の樹林も素晴らしい。
そして少し登り返せば国境稜線に合流である。遮られていた南側の展望が一気に開けるが、ゆっくり眺めるのは山
頂まで取っておこう。
先ほどから少し風が出てきた。本来なら山頂でランチタイムといきたいところだが、南からの風がまともに吹き
抜けて落ち着けないだろう。
山頂直下の鞍部にお誂え向きの場所があった。ここは以前来た時に、いいブナ林を見た記憶があった。
緩やかに上がってくる美土路川の源頭を見下ろし、大きく手を広げたようなブナの巨樹の向こうに白く輝く連なり
は、加越国境の山々だろう。
展望だけを取れば限られた範囲しか見えないが、これだけ落ち着ける場所は他にはなさそうである。
先週の縫ヶ原と違い、まずまずの時間で来れたので、今日はのんびりできる。とは言え、帰路もそれなりの長丁場
なのだが。
ゆっくりとランチタイムを楽しんだ後は、下谷山への無木立の白い斜面に最後のステップを刻む。
山頂からは遮るもののない大展望が広がった。わが愛する若狭、湖北の山々。野坂岳の右手には敦賀湾も見える。
快晴の予報の割には雲が多いが、思ったより暑くないのでちょうどいいだろう。
北に目を転ずれば、越美国境稜線と、部子山の奥には白山の姿を捉えることができた。
ヤブ山ならどこでもそうだろうが、この下谷山は無雪期と積雪期で印象がガラッと変わる。
何度も立っている山頂だが、やはり雪の時期はいいなと思う。無雪期にはあれほど風采の上がらない山頂が、純白
のドームに生まれ変わってしまうのである。
山頂北側のブナ林は、ここまでとまったく違う。行儀よく整列した若いブナではなく、一本一本が違う表情を持
ち、幾星霜の間風雪に耐えて生きてきたのだろう風格を湛えている。
林床を潅木に覆われた無雪期と違って、滑らかな雪面からスックと立つブナの立ち姿は、美しいという言葉が陳腐
に思えるほどの気品に満ちているのである。
最低鞍部まで下れば、越前側と近江側からの谷が合流しそうな、稜線でありながら周りの方が高いという不思議
な地形に出会うことができる。何度訪れても飽きることのない場所である。
ここで周りのブナに見下ろされながらランチタイムを楽しむのも一興だ。
栃ノ木峠への稜線もずっとブナ林が続くが、ほとんどが若い木ばかりなので見劣りがしてしまうのはやむを得な
いところか。あと50年もすれば素晴らしい森になるだろう。自分の孫に確かめてもらうしかない。
若いブナ林にも段階があるのが面白い。幼生と思われるヒョロヒョロした背の低いブナ林だなと思っていたら、い
つの間にかスラっと伸びた青年の姿になっている。
P902の先で北への尾根に入った。ここは美土路川右俣の左岸尾根。昨年の遡行時の下山に使った尾根で、問題な
く下山できるという安心感がある。時刻はもう3時だが、暗くなる前には下山できるだろう。
この尾根も前半は見事なブナ林が続く。夕刻前の斜光線を浴びたブナが雪面に描き出す縞模様が、なんとも言え
ず美しい。
昨年やや苦労した伐採跡のヤブも、苦も無く通過することができた。さすがに雪は腐り気味になってきたが、これ
は想定の範囲内。
508.9mからは地形図にない林道を北東に向けて歩く。林道に積もった雪がまるで雪稜のようなラインを描いてい
て面白い。こんな林道なら大歓迎だ。
最後の下りはさすがに雪がなくなってきたが、植林の中に明瞭な杣道が続いた。今日はアトラクションは抜きと思
っていたが、最後の最後で伐採跡のとんでもない急斜面を転げるように下りて、美土路川の林道に下り立った。
出発する時、逆光の中に聳えていた美濃俣丸は、今日最後の陽光を浴びて輝いていた。
山日和
【山 域】江越国境 下谷山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】駐車地7:45---10:20船ヶ洞山---12:15江美国境稜線---12:20下谷山直下13:45---13:55下谷山---
15:00 Ca900m分岐---16:30 P594m---17:30駐車地
八飯と宇津尾の集落の間で駐車地を探した。広野ダムへの県道は車線分だけしか除雪されていない。
雪解けで路肩に少し広がった空きスペースに車を止めた。朝の眩しい光に目を細めて見る白いピークは美濃俣丸だ。
快晴が約束された今日は、広野ダム近辺は賑わうのだろうか。
一面雪に覆われた畑を、スノーシューを手にぶら下げて歩く。雪はボソボソでガボリまくる(福井弁で潜るという
意味)。最初から履けばよかったのだが、向こうに見える尾根の取付きあたりに地肌が見えたので我慢したのが失敗
だった。常日頃からライトニングエクスプローラーの着脱性の良さを喧伝しているくせに、こういう時に変に我慢
してイライラを昂じさせてしまうのだからお粗末な話だ。
雪のない尾根の末端でスノーシューを装着した。アホ丸出しである。
積雪は少なく、地肌が出ているところも多いが、履いて歩く方が精神衛生上はいい。
やがて植林が切れると雪も繋がり始めた。今日は気温が高く、冬用ではない薄手のシャツでも暑いぐらいだ。
休憩を取るのも日陰を探すような始末である。まだ2月の半ばだというのにどうなっているのだろう。
Ca510mあたりで傾斜が緩んで、ゆったりとした雪尾根歩きとなった。
船ヶ洞山から下谷山へ伸びる長い尾根は、ゆるゆると高度を上げて江越国境稜線へと続く。船ヶ洞山は以前から気
にはなっていたのだが、この山に登るコースのイメージが湧かず、ずっと後回しになっていた。
去年、美土路川を遡行した時に下山した左岸尾根を使えば周回ルートが取れる。
尾根の痩せた部分でところどころ地肌が出ているのを見れば、無雪期でも歩ける道があるようだ。
タムシバの花芽が春の訪れを感じさせる。降り注ぐ日差しも、どこか生暖かいような風も、とても厳冬期のそれと
は思えない。グサグサの湿った重い雪でラッセルを強いられるかもと思っていたが、意外に沈みは少なく、足にか
かる負担も少ないのがありがたい。
標高600mを超えるとブナが姿を見せ始めた。正直なところ、林相については大して期待をしていなかった。
しかし、目の前に展開するブナ林は期待を大きく超えるものだった。特に船ヶ洞山頂直手前の、左から食い込む谷
と尾根が絶妙なカーブで交わるあたりの造形がこころを揺さぶった。
4mクラスの巨木が立つ斜面を上がると、いよいよ山頂である。直下の複雑な地形も面白く、隣の谷を越えて対岸
の尾根を登ろうか、あるいはもう一つ谷を越えて北東からの尾根に乗ろうかと、いろんな思いが頭の中を駆け巡る。
現実には、今歩いている尾根の快適さに満足してしまい、そのまま山頂へ飛び出してしまうのだった。
船ヶ洞山の山頂は広大な疎林の雪原となっている。やぶこぎのオフ会を開催したいぐらいの気持ちのいい広場だ
った。
ここからの尾根はさらに伸びやかで広々としている。緩やかに続く雪尾根は、江越国境稜線まで3.5キロほどの間
にわずか150mしか高度を上げない。まさに稜線漫歩である。しかもそのほとんどがブナ林だ。若いブナが多いが、
時折そこそこの大木が彩りを沿えている。
越美国境稜線方面の展望も良く、わずかに沈むスノーシューを引きずりながらのんびり歩くことができた。
ただ、東側は地形図にある通り林道が縦横に走っており、皆伐後の杉林が広がっている。上谷山に伸びる江美国境
稜線も同様に、杉の黒っぽい影で風采が上がらないのが残念だ。
しかし、杉が固まって立つ真っ黒な林ではなく、点描のように白い雪の中にポツポツと立っている姿が面白い。
江越国境稜線が近付いてきた。国境を目の前にして一旦下るのだが、その鞍部付近の樹林も素晴らしい。
そして少し登り返せば国境稜線に合流である。遮られていた南側の展望が一気に開けるが、ゆっくり眺めるのは山
頂まで取っておこう。
先ほどから少し風が出てきた。本来なら山頂でランチタイムといきたいところだが、南からの風がまともに吹き
抜けて落ち着けないだろう。
山頂直下の鞍部にお誂え向きの場所があった。ここは以前来た時に、いいブナ林を見た記憶があった。
緩やかに上がってくる美土路川の源頭を見下ろし、大きく手を広げたようなブナの巨樹の向こうに白く輝く連なり
は、加越国境の山々だろう。
展望だけを取れば限られた範囲しか見えないが、これだけ落ち着ける場所は他にはなさそうである。
先週の縫ヶ原と違い、まずまずの時間で来れたので、今日はのんびりできる。とは言え、帰路もそれなりの長丁場
なのだが。
ゆっくりとランチタイムを楽しんだ後は、下谷山への無木立の白い斜面に最後のステップを刻む。
山頂からは遮るもののない大展望が広がった。わが愛する若狭、湖北の山々。野坂岳の右手には敦賀湾も見える。
快晴の予報の割には雲が多いが、思ったより暑くないのでちょうどいいだろう。
北に目を転ずれば、越美国境稜線と、部子山の奥には白山の姿を捉えることができた。
ヤブ山ならどこでもそうだろうが、この下谷山は無雪期と積雪期で印象がガラッと変わる。
何度も立っている山頂だが、やはり雪の時期はいいなと思う。無雪期にはあれほど風采の上がらない山頂が、純白
のドームに生まれ変わってしまうのである。
山頂北側のブナ林は、ここまでとまったく違う。行儀よく整列した若いブナではなく、一本一本が違う表情を持
ち、幾星霜の間風雪に耐えて生きてきたのだろう風格を湛えている。
林床を潅木に覆われた無雪期と違って、滑らかな雪面からスックと立つブナの立ち姿は、美しいという言葉が陳腐
に思えるほどの気品に満ちているのである。
最低鞍部まで下れば、越前側と近江側からの谷が合流しそうな、稜線でありながら周りの方が高いという不思議
な地形に出会うことができる。何度訪れても飽きることのない場所である。
ここで周りのブナに見下ろされながらランチタイムを楽しむのも一興だ。
栃ノ木峠への稜線もずっとブナ林が続くが、ほとんどが若い木ばかりなので見劣りがしてしまうのはやむを得な
いところか。あと50年もすれば素晴らしい森になるだろう。自分の孫に確かめてもらうしかない。
若いブナ林にも段階があるのが面白い。幼生と思われるヒョロヒョロした背の低いブナ林だなと思っていたら、い
つの間にかスラっと伸びた青年の姿になっている。
P902の先で北への尾根に入った。ここは美土路川右俣の左岸尾根。昨年の遡行時の下山に使った尾根で、問題な
く下山できるという安心感がある。時刻はもう3時だが、暗くなる前には下山できるだろう。
この尾根も前半は見事なブナ林が続く。夕刻前の斜光線を浴びたブナが雪面に描き出す縞模様が、なんとも言え
ず美しい。
昨年やや苦労した伐採跡のヤブも、苦も無く通過することができた。さすがに雪は腐り気味になってきたが、これ
は想定の範囲内。
508.9mからは地形図にない林道を北東に向けて歩く。林道に積もった雪がまるで雪稜のようなラインを描いてい
て面白い。こんな林道なら大歓迎だ。
最後の下りはさすがに雪がなくなってきたが、植林の中に明瞭な杣道が続いた。今日はアトラクションは抜きと思
っていたが、最後の最後で伐採跡のとんでもない急斜面を転げるように下りて、美土路川の林道に下り立った。
出発する時、逆光の中に聳えていた美濃俣丸は、今日最後の陽光を浴びて輝いていた。
山日和
>【山 域】江美国境 下谷山周辺