【湖北】「いつか辿る日』は今日だった 江美国境稜線に立ち、輝く稜線を辿り横山岳へ

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sato
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登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

【湖北】「いつか辿る日』は今日だった 江美国境稜線に立ち、輝く稜線を辿り横山岳へ

投稿記事 by sato »

【日 付】 2021年1月25日(月)
【山 域】 湖北
【天 候】 晴れ
【コース】 八草トンネル滋賀県側入り口~土倉谷二俣~江美国境稜線1000mピークに延びる尾根
      ~1000ピーク~・950~・1006~横山岳東尾根~横山岳~東尾根~△865.1
      ~・722~金居原~八草トンネル入り口

こんもりと雪の積もった橋が見え、はぁーっ、とため息をつく。時計を見ると7時40分。
林道歩きに1時間10分かかった。

土日と降り続いた雨の後、うんと冷えて雪が締まってくれたらいいな、と思っていたが、
朝起きた時、寒さを感じなかったので、今日は重い雪だと覚悟は出来ていた。
スノーシューを履き、最初の一歩を踏み出すとズボリと潜り、やっぱりと苦笑した。

思った以上に時間がかかった。さて・・と考え始めるのを制止して、これから登る尾根の真下に立つ。
地図を見るときつそうな斜面。この尾根を見上げた時の情景がまぶたの裏に映し出される。
あの日、ここから猫ヶ洞を目指そうとしたものの、
不安定に見える雪に登る気が失せ、右俣に進み・622の尾根を登ったのだった。
今日は、すうっとラインを描ける。大丈夫だ。踏み込むと、調子よく登れる。雪は重いが林道歩きより楽。

時折、踏み抜きながらも、こつこつと歩みを重ねていく。
急斜面から見晴らしのいい尾根になり、さらに進んでいくと、傾斜が緩やかになり、
静謐さを湛えたうつくしいブナ林に迎えられた。たっぷりと雪の積もった緩やかな起伏の上に静かに佇むブナの木々。
頬が熱くなる。
これから出会う風景に胸が躍り、去りゆく風景に後ろ髪をひかれ、
右、左、後ろと何度も首を動かし、刹那の風景、一本いっぽんのブナの木をこころに焼き付けながら登っていく。

左に谷が迫ってきて、はっと息を呑む。尾根と谷が出会う地の絶妙な風景が、そこに展開していた。
わぁっと輝く谷の中に飛び込みたい衝動に駆られるが、江美国境稜線まで登るのだ、と言い聞かせ前を向く。
清々しいブナの木に囲まれた1000mピークに着きひと息つく。
三国岳、土蔵岳へとそれぞれ延びていくまっさらな雪の江美国境稜線と、辿ってきたわたしの足跡を順番に見つめる。
空を見上げた瞬間、横山岳に続く稜線の雪庇の煌めきがこころに突き刺さった。
s-DSC_1925.jpg
10時ちょっと前。よし、と登ってきた斜面を駆け降り、輝く谷に飛び込む。
若い木々の中にでんとした木が見える。近づくとトチの巨木だった。
びわ湖に注ぐ姉川のひとしずくが生まれる地のひとつ、ちいさな谷の始まりの地に立つ一本のトチ。
このトチの足元から生まれたひとしずくは、わたしの体内に浸み込まれているのだ。
むくむくと力が湧き、ぎゅっとストックを握りしめる。

よいしょと尾根に登り返すと、今までよりは潜りが浅くなった。
土日の雨で雪面はつぶつぶだが、
足元から続く踏み跡のない稜線を見つめ、とうとうやってきたのだ、としみじみとした気持ちになる。

江美国境稜線と横山岳を結ぶちいさな稜線に惹きつけられたのはいつの頃からだろう。
何度地図の中で旅したことだろう。
等高線を辿りながら、そこに広がっているであろう風景を想像し、いつか訪れる日が来るのだと夢見ていた。

ひろびろとした稜線の西斜面はしばらく植林されているが、目の前に映るのは、
ブナなどの広葉樹が立ち並ぶ情景とつるりとした雪原で、こころが和む。
林道が延びているので雪原は伐採地なのだろう。

木立ちの向こうに、ちいさくまっしろな峰が光り輝く。左千方?左千方だ。
素晴らしいブナの稜線の先にきりりとそびえる左千方は、
奥川並川を挟んだ稜線から眺めると、こんなにも気品のあるお姿なのだとうっとりする。

気になっていた地点に着いた。まあるいピークとピークの間にちいさな谷がはいりこんだ地形。
まっ平らな雪面を確認してうれしくなる。池のありそうな地形を見つけると確かめたくなる。
地図から浮かんだ風景と目に映る風景を並べて歩くのは面白い。
こころ弾ませながら歩いていると、しんとした空気の中、
凛としたブナの木が佇む透き通ったピークに足を踏み入れ、どきんとする。
s-DSC_1934.jpg
そして、こころに突き刺さった煌めく雪庇が目の前に。
このところの暖かさと雨で融けたのかちょっと不細工だが高揚感に包まれる。
遮るものが無い雪稜を登るしあわせ。振り返ると、江美国境稜線の裏から白いお山がひとつふたつと顔を出している。
あっ!?わくわくしながら足跡を刻んでいく。振り返る度に大きくなる白い峰みね。
高丸、烏帽子、三周、能郷白山・・・。ズボッと踏み抜き、また振り返ると、純白の絵の具を塗ったような白山。
何て素晴らしい風景なのだろう。何て素晴らしい稜線なのだろう。
今、今、今、この瞬間のよろこびをどう表現したらよいのだろう。頭がぼぉっとなる。

夢見心地になりながらも、うれしいうれしいと足は進んでいく。
勾配が緩やかになり、つるりとした台地を二つ越えると横山岳東峰が目の前まで近づいた。
最後はトラバースして東尾根に乗る。
11時50分、予想よりも早く着いた。お気に入りの場所でお昼にしようかと思ったが、
先ず山頂に行こうとそのまま歩みを進める。ラクダの背中のようなリッジを通り、ひと山越えると山頂だ。
s-DSC_1942.jpg
えっ?と目を疑う。ほんとうに?こころを落ち着かせ近づいていく。

・・・・・。

ぽかんと口を開け、真っ青な空と煌めく霧氷を見つめていた。
「ここでご飯にしよう」空腹を覚え、淡い霧氷で飾られた山頂まわりのブナの木の間をうろうろして、
北尾根に入って一段下がったところで腰を下ろす。

コーヒーを飲み終え、光り輝く白き峰みねを眺めながら、しょうこちゃんと何度も交わした言葉をつぶやく。
「旅に出る時期というのは、その人の中で決まっているのかもしれない。それを感じるか感じないかは置いておいて」
20代の頃、ネパールをひとり旅していた時、わたしと同じ年の日本人の女の子に出会った。しょうこちゃんだった。
偶然出会ったのだけど、お互い何年もネパールへの旅を想い描き、
ある時、旅に出る時がやって来たと感じ、日本を飛び出したのだった。
出会った時の倍の年を重ねた今も、わたしたちは深く繋がっている。

想い描いていた江美国境稜線から横山岳への雪山旅。
今までも、辿る機会はあったのに、何故向わなかったのだろう。
ぱら、ぱら、ぱら、と煌めく破片がからだに降り注ぐ。
儚く、鋭く、いとおしい光の洪水に包まれる。そう、今日が辿る日だったからなのだ。

13時。出発しよう。山の神様にありがとうございます、と頭を下げ、輝く山頂を後にする。
s-DSC_1950.jpg
横山岳の尾根はそれぞれ味わいがあるが、柔らかな起伏の地形、ひっそりと水を湛える池、清々しいブナ林、
眺望のきく細い尾根と表情豊かな東尾根に惹かれている。
雪の季節も二度歩いている。厄介な箇所はない。ゆったりと風景を味わいながら下ろう。
雪はべちゃべちゃになり、足は重いが、幸せな気持ちに包まれ、ふわふわと下っていく。
白き峰みねとお別れし、すっくと立ち並ぶブナの間を駆け降り、二重山稜、緩やかな起伏を楽しみ、
標高770mの雪に埋まったふたつめの池にごあいさつをして、・722の尾根に入る。

記憶は時に、今、にいじわるをする。
たったかと下った記憶が残っていた。今日もそのつもりになっていた。でも、甘かった。
陽当たりのよい急こう配の尾根の雪は腐っていて、これでもかというほど踏み抜く。
登山道を忠実に辿ったらましかな、と思うがどこが道なのか分からない。
最後の植林の斜面は、何度も尻餅をつき、スノーシューも外れる始末。
うつくしい着地を描いていたがとんでもなかった。

15時。国道に出て、大きく息を吐く。
八草トンネルまで、30分も歩けば着くだろう。30分か。
いつか、いつかと想い描いていた雪山旅。わたしは、あともう少しで確かなうつくしい円を描ききるのだ。
風景の中に、こころの中に。疲れているのに、あと30分で終わっちゃうのか、とちょっぴりさみしくなる。

sato
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山日和
記事: 3573
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【湖北】「いつか辿る日』は今日だった 江美国境稜線に立ち、輝く稜線を辿り横山岳へ

投稿記事 by 山日和 »

satoさん、こんばんは。

【日 付】 2021年1月25日(月)
【山 域】 湖北
【天 候】 晴れ



いい日を選んで登りましたね。羨ましい限りです。

こんもりと雪の積もった橋が見え、はぁーっ、とため息をつく。時計を見ると7時40分。
林道歩きに1時間10分かかった。

土日と降り続いた雨の後、うんと冷えて雪が締まってくれたらいいな、と思っていたが、
朝起きた時、寒さを感じなかったので、今日は重い雪だと覚悟は出来ていた。
スノーシューを履き、最初の一歩を踏み出すとズボリと潜り、やっぱりと苦笑した。


と思ったら、雪質はあまり良くなかったようですね。こりゃ先が思いやられる。 :D

思った以上に時間がかかった。さて・・と考え始めるのを制止して、これから登る尾根の真下に立つ。
地図を見るときつそうな斜面。この尾根を見上げた時の情景がまぶたの裏に映し出される。


この尾根は3回登って2回下ってますが、仕事は速いルートです。

急斜面から見晴らしのいい尾根になり、さらに進んでいくと、傾斜が緩やかになり、
静謐さを湛えたうつくしいブナ林に迎えられた。たっぷりと雪の積もった緩やかな起伏の上に静かに佇むブナの木々。


潅木帯が終わればゆったりしたブナの小台地が出迎えてくれます。
ここもいいところ。

清々しいブナの木に囲まれた1000mピークに着きひと息つく。
三国岳、土蔵岳へとそれぞれ延びていくまっさらな雪の江美国境稜線と、辿ってきたわたしの足跡を順番に見つめる。


このブナの台地は湖北の山の中でも5本の指に入るお気に入りの場所。
神又峰、猫ヶ洞、横山岳へと尾根を分ける交差点です。
スノーテーブルを作ってのんびり過ごしたくなりますね。 :D

10時ちょっと前。よし、と登ってきた斜面を駆け降り、輝く谷に飛び込む。
若い木々の中にでんとした木が見える。近づくとトチの巨木だった。
びわ湖に注ぐ姉川のひとしずくが生まれる地のひとつ、ちいさな谷の始まりの地に立つ一本のトチ。


リッカ谷川源頭の谷へ下りたということかな?この源頭の佇まいも素晴らしいですね。
以前、神又峰へ向かうつもりで間違えて入った北向きの尾根と江美国境稜線の間の谷も美しいラインを描いてました。
こちらは美濃側の神又谷の源頭です。

ひろびろとした稜線の西斜面はしばらく植林されているが、目の前に映るのは、
ブナなどの広葉樹が立ち並ぶ情景とつるりとした雪原で、こころが和む。
林道が延びているので雪原は伐採地なのだろう。


奥川並側は皆伐状態なので目を瞑るしかないですね。
稜線上はブナ林が残されてるのが救いか。

木立ちの向こうに、ちいさくまっしろな峰が光り輝く。左千方?左千方だ。
素晴らしいブナの稜線の先にきりりとそびえる左千方は、
奥川並川を挟んだ稜線から眺めると、こんなにも気品のあるお姿なのだとうっとりする。


そうそう。ここから見る左千方は見事としか言いようのない気高い容姿です。

気になっていた地点に着いた。まあるいピークとピークの間にちいさな谷がはいりこんだ地形。
まっ平らな雪面を確認してうれしくなる。池のありそうな地形を見つけると確かめたくなる。


この地形は気になりますね。池がありそうな感じ。
実際は林道がすぐそばまで来てるから、ただの伐採地なのかもしれないけど。

そして、こころに突き刺さった煌めく雪庇が目の前に。
このところの暖かさと雨で融けたのかちょっと不細工だが高揚感に包まれる。

いいですねえ。横山東峰に向かって自分だけのトレースを刻む快感。 :lol:

あっ!?わくわくしながら足跡を刻んでいく。振り返る度に大きくなる白い峰みね。
高丸、烏帽子、三周、能郷白山・・・。ズボッと踏み抜き、また振り返ると、純白の絵の具を塗ったような白山。
何て素晴らしい風景なのだろう。何て素晴らしい稜線なのだろう。
今、今、今、この瞬間のよろこびをどう表現したらよいのだろう。頭がぼぉっとなる。

ニコニコしながら歩くsatoさんが頭に浮かびます。 :D

11時50分、予想よりも早く着いた。お気に入りの場所でお昼にしようかと思ったが、
先ず山頂に行こうとそのまま歩みを進める。ラクダの背中のようなリッジを通り、ひと山越えると山頂だ。

えっ?と目を疑う。ほんとうに?こころを落ち着かせ近づいていく。

・・・・・。

ぽかんと口を開け、真っ青な空と煌めく霧氷を見つめていた。
「ここでご飯にしよう」空腹を覚え、淡い霧氷で飾られた山頂まわりのブナの木の間をうろうろして、
北尾根に入って一段下がったところで腰を下ろす。


霧氷まで出迎えてくれましたか。日頃の行いの賜物ですね。 :D

想い描いていた江美国境稜線から横山岳への雪山旅。
今までも、辿る機会はあったのに、何故向わなかったのだろう。
ぱら、ぱら、ぱら、と煌めく破片がからだに降り注ぐ。
儚く、鋭く、いとおしい光の洪水に包まれる。そう、今日が辿る日だったからなのだ。


人生、なんでもタイミングというのがありますよね。機会はいくらでもあったのに、なぜか足が向かない。
意識せずともその時をじっと待っていたのかも。

横山岳の尾根はそれぞれ味わいがあるが、柔らかな起伏の地形、ひっそりと水を湛える池、清々しいブナ林、
眺望のきく細い尾根と表情豊かな東尾根に惹かれている。
雪の季節も二度歩いている。厄介な箇所はない。ゆったりと風景を味わいながら下ろう。


東尾根は残雪期に一度辿っただけですが、若いながらもいいブナ林だった記憶があります。

たったかと下った記憶が残っていた。今日もそのつもりになっていた。でも、甘かった。
陽当たりのよい急こう配の尾根の雪は腐っていて、これでもかというほど踏み抜く。

年末の大ダワ状態でしたか。 :mrgreen:

登山道を忠実に辿ったらましかな、と思うがどこが道なのか分からない。

それはどこでも同じだと思うけど。

最後の植林の斜面は、何度も尻餅をつき、スノーシューも外れる始末。
うつくしい着地を描いていたがとんでもなかった。


そんなもんですよ。そんなに美味しい話ばかりじゃ面白くないし。 :mrgreen:

15時。国道に出て、大きく息を吐く。
八草トンネルまで、30分も歩けば着くだろう。30分か。


最後に国道歩き、それも登りが残ってるというのがちょっとね。 :oops:

            山日和
sato
記事: 417
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【湖北】「いつか辿る日』は今日だった 江美国境稜線に立ち、輝く稜線を辿り横山岳へ

投稿記事 by sato »

山日和さま

こんばんは。
コメントありがとうございます。
土日と雨で月曜日は晴れの予報でしたので、仕事場の社長に、
月曜日はお山に行きます、と数日前から宣言していました(月、木は家にいたら堅田まで配達にという感じなのです)。
雪が重いのは覚悟していましたが、二俣までどのくらいかかるのだろうと思いました。

1000mピークへの尾根は、稜線に向かい真直ぐに延びていますね。
急斜面を見ると、雪面に一歩一歩を刻むよろこびがむくむくと湧いてきます。
ズボズボ潜り何度もため息をつきましたが(笑)。
ひと登りした先の風景がまたこころに沁みいります。
この味わい深い尾根を「仕事が速い」尾根とおっしゃらないでください(笑)。

「神又峰、猫ヶ洞、横山岳へと尾根を分ける交差点」うつくしいブナに囲まれた1000mピークは、
これから向かう道、いつか辿る道への甘美な憧憬に包まれます。ゆっくりと味わいたい場所ですね。
山日和さんの湖北の山の中でも5本の指に入るお気に入りの場所ですか。あとの4つも、次にお会いした時、教えてください。
この日も、神又峰、猫ヶ洞への誘惑に駆られました。
神又谷源頭の風景はすごく気になりました。そして、いつか、江美国境稜線を左千方に向かう日を夢見ました。

飛び込んだ谷は、土倉谷左俣の枝谷です。あんまりにも輝いていたので飛び込んでしまいました(笑)。

わたしが池だと思った場所は、伐採地かもですか。まっ平らだったのですが・・・。
無積雪期に確認しに訪れようとは思いませんが(笑)。

・1006鞍部からの登り。もっさりした雪庇でしたが、わくわくする登りでした。
踏み跡のない稜線歩きは、しんどくても高揚感に包まれます。山とわたしをより強く、より深く感じます。
お山に出かける時、踏み跡がありませんようにと願ってしまいます。

しあわせな気持ちでしたが、ここでも何回か踏み抜きました。一度は太ももまで潜ってしまい、抜け出すまで一苦労でした。
ひとりの雪山旅で、怖いことのひとつは、踏み抜きです。
中崎尾根で脇の下まで潜ってしまい、自力では脱出出来ず、夫に引き上げてもらったことがあり、
それ以来、突然の踏み抜きに怖さを感じています。

山頂のブナの木々の霧氷には驚きました。
ぽかぽかした陽気でしたので、霧氷の「む」の字も想像していませんでした。
すぐに消えてしまいそうな淡い霧氷。
その夢のような儚い輝きに、最初はぽかんとして、そのあと、涙が出そうになりました。

「いつか辿る日は今日だった」理由は後からつけるものなのかもしれませんが、
山との出会いの中で、山日和さんがおっしゃるように
「機会はいくらでもあったのに、なぜか足が向かない。意識せずともその時をじっと待っていたのかも」
と感じたお山がいくつかあります。山日和さんとご一緒した、ダイラ、先日のミノマタもそうでした。

雪の横山岳東尾根は、歩きながら地形の妙を感じる味わい深い尾根です。
踏み跡が無い日に訪れることが出来たら夢見心地になります。
この日は、前の週に歩いた人がいたのかもしれませんが、雨が雪面を平らにしてくれていました。
雪質は悪かったですが、つるりと煌めく風景の中を歩くことが出来ました。
・722から先は、そう、大ダワ状態でした(笑)。登山道だと倒木や寝た木が少なくて踏み抜きが少ないかなぁと。
不格好な面白い思い出になりました。

最後の国道歩きも、楽しかったですよ。雪山旅は、ほんとうに、楽しいですね。

sato
yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

Re: 【湖北】「いつか辿る日』は今日だった 江美国境稜線に立ち、輝く稜線を辿り横山岳へ

投稿記事 by yamaneko0922 »

satoさん こんにちは

遅コメで失礼しますが、このrepに対しては様々な想いが去来し、自分の中でも全く整理がついてはいないのですが、そうしているうちに日が過ぎてしまいそうで、長々と雑文を綴ることをどうぞご容赦ください。

ところで、本題に入る前にこの日、satoさんが登山口に向かわれた時、湖北のあたりは濃い霧に覆われていませんでした? この日も私は朝、武奈ヶ岳の山頂にたち、琵琶湖の上を覆い尽くす雲海を朝陽が茜色に染めてゆく様を眺めていたのでした。

まずタイトルを見てどきりとしました。そして、repを読み進むうちに知らぬ間にsatoさんの文字が涙に霞むことになりました。

昨年に、自戒の意を込めて実に無残なrepをアップしたのですが、satoさんが出発されたところから土蔵岳、猫ヶ洞とピークを踏み、横山岳を目指したのは久しぶりにまとまった雪が降った後の絶好の好天に恵まれた日でした。

私もこの尾根がずっと気になっており、何度、地図を眺めてはシミュレーションを繰り返したことでしょう。そしてその前の週、横山岳の東尾根を訪れたのは雪に微睡む美しい二つの池を訪れるという目的のためだけではなく、自分のラッセルの速度を確認すると同時にこの尾根を観察するためでもありました。

当時のログを確認して見たのですが、ca1000mに到着したのは14時を少しまわったところ。そこから横山岳東嶺まで、satoさんが二時間もかからずたどり着いたところ、なんと4時間半以上の時間を要したのでした。おそらくsatoさんも何度も踏み抜いたことだと思いますが、それにしてもこの時間の差はあまりにも酷すぎますね。午後になって緩んだ新雪の深いラッセルと藪こぎに苦戦したというのが言い訳なのですが、様々な反省が残る山行となりました。

まずは第一の反省はca1000mに到着した時点で、satoさんが登られたコース、土蔵谷の出合へと至る尾根を下降するべきだったのですが、その可能性に思い至らず、自己の能力を過信して横山岳への東尾根へと飛び込んだのでした。
ca1000m.jpg
山日和導師が湖北の中でも五指に入ると評価されるこのピークのブナ林に驚嘆しない人はいないでしょうね。精霊が宿るかのような壮麗な森、こんなブナ林にここから先の尾根でも出遭えるのかも・・・そして遠目には美しく見える尾根への根拠のない期待もあり、未知の尾根にエスケープするという可能性に思い至りませんでした。

午後の西陽に照らされた横山岳への尾根を何度も見上げることになりました。当初はその尾根を辿る高揚感を感じつつ、そして次第に一向に尾根を進まぬうちに急速に陽が傾いていく焦燥に変わっていきました。

尾根から眺める上谷山、左千方、そして背後に辿ってきた猫ヶ洞が夕陽に照らされ、ピンク色に輝いたかと思うと、薄明の中に徐々に輪郭を失ってゆく様をみて、美しさと同時に後悔と絶望を感じながら、ながらまだまだ遠い尾根を歩んでいたのでした。途中でポールが折れたこともさらに事態を悪化させたのでした。藪の斜面を転がっていったポールの先端部がいまだに尾根の藪に埋もれているのだろうと思います。
夕陽に染まる左千方
夕陽に染まる左千方

昨年の山行以来、あの美しい尾根を再び辿るということが私の宿願となりました。山日和さんが「いい日を選んで登りましたね。羨ましい限りです。」とコメントされておられますが、その一言は私にはずしり重く響きました。私自身がこの山行に感じる羨望は半端なものではありません。

しかし、次にこの尾根を辿る時、それは私にとって単なるリベンジ山行、捲土重来といったものではなく、過去の悲惨な山行における自己との対峙をする旅にならざるを得ないのです。それは単に新雪の尾根を辿るよリもはるかに生易しいものではなく、重苦しい山旅のような気がします。これからも私は雪の季節を迎えるたびに「いつか辿る日」を探し求めることになるのでしょう・・・新たな旅を求める日は既に始まっているのですが。
同じ日の武奈ヶ岳の朝
同じ日の武奈ヶ岳の朝
山猫 🐾
sato
記事: 417
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【湖北】「いつか辿る日』は今日だった 江美国境稜線に立ち、輝く稜線を辿り横山岳へ

投稿記事 by sato »

山猫さま

こんばんは。
コメントで、山猫さんの江美国境稜線1000mピークと横山岳東峰を結ぶ稜線への思いをお聞きし、
あっ、と昨冬投稿されたレポを思い出しました。
いろいろな意味で(スミマセン)すごいなぁと思ったことを思い出しました。

わたしの山旅記をお読みくださり、おこころの整理がつかない状態と知り、
あらためて「土蔵岳~猫が洞~横山岳☆周回の果てに見た大展望と星空」を一字一句追いながら拝読しました。
山猫さんがこの雪山旅を言葉に紡ぎ、投稿された心情を思いました。
今回、拝読して、昨年とは違った思いに包まれました。

わたしにとって、旅は想像から始まります。旅を思う時間は甘美で、時に胸に痛みを覚えます。
そして、思い描いた旅に出発する時のこころの震え。
山猫さんも、地図を眺めてはシミュレーションを繰り返し、思いを募らせ、
その上、事前観察もされ、山に向かわれたのですね。
ca1000mに立った時、導かれるように横山岳へとお進みになられたのも、なんとなく分かります。
憧憬の山旅を、今、まさに実現しているのだ、横山岳東峰から先は歩いている、体力も落ちていない、大丈夫だと。

山に限らず、その時は確かな輝き、と進んでいったつもりが、冷静になってみると、何故?と思うこと、
あの時の自分は何だったのだろうと思うことを、
大なり小なり、わたしたちは経験していると思います。

想定外のことに見舞われながらも、山猫さんは壮大な円を描く雪山旅を実現しました。
思い描いたコースを「辿る」夢は叶いました。でも、わたしの山旅に羨望を・・・。
山猫さんは、山のお時間を大切に思っていらっしゃるからなのですね。
山とご自身のかけがえのない濃厚なお時間を。一期一会の出会いを。
山を歩き、山を味わい、山にいるご自身を感じることによろこびを感じられるのですね。
山猫さんとお会いした時の、第一印象は「たびびと」。やっぱり旅人、と思いました。

わたしの山旅記を、憧れのルートを、青空の下、素晴らしい眺望に恵まれ、重い雪にも負けず、
頑張って歩き通した充実感溢れる山旅だけではなく、
その奥にあるもの、そう感じるに至った過程があることを感じてくださったのかなぁと思いました。
「いつか辿る日は今日だった」と感じたのは、山猫さんがお抱えになられている重い気持ちとは違いますが
「自己との対峙」というお言葉と繋がるものがあります。
すべてから解放され、自由なこころで、山と濃厚な時間を過ごした、今在るわたしを強く感じた輝く一日でした。

そう、「いつか辿る日」は探し求めるものではないような気がします。ふっと、その時がやって来るような。

雪の山を歩く時間は計り知れませんね。
円を描こうと思った時は、こころ浮き立ちながらも、雪の状態を確認しながら時間を計算してします。
わたしは、あれこれ思いを巡らせながら歩くのが好きです。
ひとりの時の日帰りのお山は、お昼の休憩以外、登りではゆっくりと休むことはあまりないような。
歩いては、立ち止まり、ぽけっと風景に見入り、たまにリュックを降ろし、また歩く、の繰り返しという感じです。

この日の朝は、武奈ヶ岳の山頂に立たれていたのですね。
権現山に続き、素晴らしい朝のお時間をお過ごしになられたのですね。
山猫さんのご覧になられた太陽をわたしは見ることが出来ませんでした。
しんとした林道の中、重い雪にため息をつきながら歩いておりました。

冬の朝陽は、こころの奥底に訴えてくるものがありますね。
蛇谷ヶ峰の山頂で朝の光に包まれたいと何年間も思いつつ、まだ実現していません。
今週は・・・別のお山が浮かんでいます。

sato
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