【白山北方】清水平から笈ヶ岳
Posted: 2011年9月25日(日) 22:41
【日 付】2011年9月24日(土)
【山 域】白山北方 笈ヶ岳1841.4m
【天 候】晴れ
【コース】林道駐車地5:35---6:09取水ダム---7:31水晶谷---8:27尾根取付き---9:27西尾根1420m---10:11岩壁基部
---11:27笈ヶ岳12:31---14:37尾根取付き---15:15水晶谷---16:34取水ダム---17:13駐車地
夜明けとともに歩き出そうと思っていた。車が2台、ヘッドライトで闇を照らして通り過ぎた。意外に登山者が多いのか。
林道終点手前で工事が行われていた。関係者なのか数台の車が止まっている。さっき通り過ぎた車はなぜか見当たらない。
林道は地形図よりも延びており、対岸の大規模ながけ記号の前あたりで終わっていた。
ここから645m標高点先にある取水ダムまでは北陸電力の巡視路を辿る。極めてよく整備された歩道で、50mごとに距離
表示がある。道の造作も自然で、頭上に被さる樹林の美しさと相まって、渓谷の遊歩道を歩いているような風情がある。
あるHPでは黒部の下の廊下のようだと書いていたが、それは言い過ぎだろう。
30分ほどで取水ダムに到着した。ダムへ上がる階段にはチェーンが掛けられ、看板がぶら下がっていた。「関係者以外立
ち入り禁止。登山道を利用される方は十分注意して通行して下さい。」なにかずいぶん矛盾した言い方だが、要するに通っ
てもいいということだろう。
ダムを右岸に渡ると本格的な登山道が始まる。一度河原に下りた道は、ソリクラ谷の出合にかかるワイドな滝を見ながら
高度を上げて行き、源頭部に大規模なガケ記号を持つ谷へ入って行った。
ホントに合っているのかと心配になるぐらい、支谷沿いに高度を稼ぐ。足元はやや不安定だが、十分にいい道と言えるだろう。
途中で3人パーティーを追い越した。荷物の大きさから見てテント泊のようだ。
870mあたりまで登ったところで道は谷を渡って対岸の尾根へ伸びていた。結局970mまで上がってやっと水平道となった。
はるか下に見えなくなった雄谷が大ゴルジュを形成している部分である。木が繁っているので高度感はないものの、落ちる
ことは許されない道だ。
再び水音が聞こえ出すと水晶谷への急降下が始まる。固定ロープが実にありがたい、滑りやすい下りだ。
水晶谷には鉄板2枚の赤い橋が掛けられている。歩くとボヨンボヨンとたわむので気持ちが悪い。この下流には地形図にも
記載されている黒滝がある。
橋を渡って尾根の鼻を回り込むと、よく踏まれた広い道に変わった。清水谷の流れが近付く。ちょうど滝記号のあるあたり
だ。水量は多く、轟々と音を立てて流れている。
ここからが清水平のブナ林の始まりである。と言ってもブナの純林ではなく、トチやサワグルミ、カエデ等との混生林だが、
巨樹の多いことと森そのものの佇まいが素晴らしい。この森に遊ぶだけでもここまで来る価値があるかもしれない。
それにしてもずいぶんいい道が続いているが、西尾根への取り付きはどの辺にあるんだろう。
途中の小沢でランチ用の水を補給した。
清水谷の1128m標高点のあたりで道が左へ分岐した。木の枝にはテープと赤ペンキ。ここだな。HPでよく見かける小屋は
どこにあるんだろう。(帰路、下りてきてここに着いた時正面に見えた。直進するのが小屋への道だった。)
左折して急傾斜の尾根に取り付く。ここも見事なブナの多い尾根だが、ひたすら急傾斜である。相変わらず道はしっかりと付
けられている。
傾斜が緩んだ。笈ヶ岳西尾根に乗ったのだ。北側に頭を覗かせているのは大笠山だ。
尾根芯にヒノキの繁るヤセ尾根を通過すると踏み跡が細くなってきた。と同時にヤブが被り始める。とは言え、足元はしっかり
踏まれているので進路を見失うことはない。
ヤブを掴みながら急登すると目の前に岩壁が立ちはだかった。Ca1620m付近である。正面突破は不可能。ここは岩壁の
基部を右に回り込んで回避する。トラバースの途中で白山が姿を見せた。いい天気だ。その手前には積雪期のルートとなる
冬瓜山からシリタカ山の稜線が横たわる。 このトラバースルートはいい道とは言えない。岩壁が尽きたところでミニルンゼ状の急斜面にルートが引かれていた。固定ロ
ープが連続して現われる。あまり下りたいとは思わない急傾斜だ。40mほど上がったところで尾根に復帰した。
笈ヶ岳西尾根の真髄はここからだった。すぐそこに見えている山頂までの距離はわずか500m。標高差も170mばかり残す
のみである。まさか山頂まで1時間も要するとは思わなかった。
ルートは完全に背丈を越すヤブに没している。それでも足元に踏まれた跡があるのが救いだ。尾根自体は細いので進むべ
き方向ははっきりしている。
前方から声が聞こえた。どうやら下山パーティーのようだ。こちらはクマ鈴を鳴らしているのでわかっていると思っていたが、
目の前まで来てびっくりされた。「ついに出たかと思いましたよ。」鈴を付けていない人に驚かれるとは。
クマ鈴を付けたクマがいたらお目にかかりたいものである。
ずいぶん早い下山だと思ったら、清水平でのテント泊だったようだ。本日の日帰り組は私ひとりだけらしい。
ヤブはますます濃く、足元も怪しくなってきた。スピードはまったく上がらず牛の歩みの如くである。ササや潅木を掴む手も
疲れてきた。すぐそこに見えていたはずの山頂はいくら経ってもなかなか近付かない。
最後の最後くらいは腰高のササをルンルンと山頂に到達というのを想像していたのだが、そんなに甘くはなかった。
うまくいけば11時には登頂と踏んでいたがなんのなんの。
ついに目の前のヤブが切れてぽっかり切り開かれた空間に飛び出した。笈ヶ岳の山頂だ。
結局岩壁の巻き終わりから1時間。時速500mのヤブコギだった。
予想外にさっきの7人パーティーと最初の3人の計10人に会ってしまったが、山頂は貸切りだ。
笈ヶ岳1841.4m。長い間憧れていた山頂だった。20年ばかり前、山と渓谷社から出ていた「諸国名山案内 中部編」とい
うガイドブックにこの山のことが載っていた。それはその本の中で異彩を放つガイド文だった。
他の山がすべて一般登山道でほぼ日帰りで紹介されているのに対して、この山だけは違っていた。
直海谷川から奈良岳、大笠山を経て山頂に至り、さらに三方岩岳まで縦走するという、積雪期限定のテント泊2泊コースとし
て紹介されていたのだ。そこに並んでいた写真に圧倒され、魅了されてしまった。
14年前に柳川洞吹氏と桂湖から大笠山経由で目指したことがあった。しかしその時は思わぬ体調不良で断念。大笠山か
らその姿を眺めるだけで終わってしまった。
その後南側のジライ谷からルートが開かれ、残雪期なら簡単に日帰りできる山になった。200名山ブーム、中高年登山ブー
ムと相まって、人の姿を見ない方が稀な山になってしまった。できるだけ人に会わなくて済む方法を考えていた。
残念ながら白山は雲の中に隠れてしまい、アルプス方面もわずかに御岳と乗鞍が姿を見せる程度。別山、猿ヶ馬場、籾糠、
人形、三ヶ辻、大笠、奈良、猿ヶ山といった山々はよく見える。
ぬるいビールでも極上の旨さだ。ゆっくり食事する余裕がないかもしれないと、コンロを置いていこうかとも思ったが持ってきて
よかった。清水平の美味い水で食後のコーヒーも楽しむ。
山頂まで6時間を要したがほぼ予定通り。12時半には出発したい。下りもあの道を戻らねばならないと思うとのんびりしては
いられない。
ヤブの中に飛び込む。20分ほど下ったところで朝の3人パーティーと再会。清水平でテントを張ってきたようだ。あとどれくらい
ですと聞かれると答え辛い。このヤブの中を歩くスピードは個人差が大きいのだ。
岩壁の巻きを慎重に下り、基部からの下りでルートを失ってしまった。似たような踏み跡らしきものが錯綜しており、気が付
けば真南へ下り始めていた。早めの処置でルートへ復帰して事なきを得た。
水晶谷からの登り返しは、どれだけ登らせるんやと思うぐらい疲れた足には辛いものがある。それでもここを乗り切れば登り
は終了。取水ダムからの遊歩道は今日の山行を反芻するには持って来いのプロムナードだった。
車に戻った時、西の山の端に沈みかけた夕日が眩い最後の光を放っていた。
山日和
【山 域】白山北方 笈ヶ岳1841.4m
【天 候】晴れ
【コース】林道駐車地5:35---6:09取水ダム---7:31水晶谷---8:27尾根取付き---9:27西尾根1420m---10:11岩壁基部
---11:27笈ヶ岳12:31---14:37尾根取付き---15:15水晶谷---16:34取水ダム---17:13駐車地
夜明けとともに歩き出そうと思っていた。車が2台、ヘッドライトで闇を照らして通り過ぎた。意外に登山者が多いのか。
林道終点手前で工事が行われていた。関係者なのか数台の車が止まっている。さっき通り過ぎた車はなぜか見当たらない。
林道は地形図よりも延びており、対岸の大規模ながけ記号の前あたりで終わっていた。
ここから645m標高点先にある取水ダムまでは北陸電力の巡視路を辿る。極めてよく整備された歩道で、50mごとに距離
表示がある。道の造作も自然で、頭上に被さる樹林の美しさと相まって、渓谷の遊歩道を歩いているような風情がある。
あるHPでは黒部の下の廊下のようだと書いていたが、それは言い過ぎだろう。
30分ほどで取水ダムに到着した。ダムへ上がる階段にはチェーンが掛けられ、看板がぶら下がっていた。「関係者以外立
ち入り禁止。登山道を利用される方は十分注意して通行して下さい。」なにかずいぶん矛盾した言い方だが、要するに通っ
てもいいということだろう。
ダムを右岸に渡ると本格的な登山道が始まる。一度河原に下りた道は、ソリクラ谷の出合にかかるワイドな滝を見ながら
高度を上げて行き、源頭部に大規模なガケ記号を持つ谷へ入って行った。
ホントに合っているのかと心配になるぐらい、支谷沿いに高度を稼ぐ。足元はやや不安定だが、十分にいい道と言えるだろう。
途中で3人パーティーを追い越した。荷物の大きさから見てテント泊のようだ。
870mあたりまで登ったところで道は谷を渡って対岸の尾根へ伸びていた。結局970mまで上がってやっと水平道となった。
はるか下に見えなくなった雄谷が大ゴルジュを形成している部分である。木が繁っているので高度感はないものの、落ちる
ことは許されない道だ。
再び水音が聞こえ出すと水晶谷への急降下が始まる。固定ロープが実にありがたい、滑りやすい下りだ。
水晶谷には鉄板2枚の赤い橋が掛けられている。歩くとボヨンボヨンとたわむので気持ちが悪い。この下流には地形図にも
記載されている黒滝がある。
橋を渡って尾根の鼻を回り込むと、よく踏まれた広い道に変わった。清水谷の流れが近付く。ちょうど滝記号のあるあたり
だ。水量は多く、轟々と音を立てて流れている。
ここからが清水平のブナ林の始まりである。と言ってもブナの純林ではなく、トチやサワグルミ、カエデ等との混生林だが、
巨樹の多いことと森そのものの佇まいが素晴らしい。この森に遊ぶだけでもここまで来る価値があるかもしれない。
それにしてもずいぶんいい道が続いているが、西尾根への取り付きはどの辺にあるんだろう。
途中の小沢でランチ用の水を補給した。
清水谷の1128m標高点のあたりで道が左へ分岐した。木の枝にはテープと赤ペンキ。ここだな。HPでよく見かける小屋は
どこにあるんだろう。(帰路、下りてきてここに着いた時正面に見えた。直進するのが小屋への道だった。)
左折して急傾斜の尾根に取り付く。ここも見事なブナの多い尾根だが、ひたすら急傾斜である。相変わらず道はしっかりと付
けられている。
傾斜が緩んだ。笈ヶ岳西尾根に乗ったのだ。北側に頭を覗かせているのは大笠山だ。
尾根芯にヒノキの繁るヤセ尾根を通過すると踏み跡が細くなってきた。と同時にヤブが被り始める。とは言え、足元はしっかり
踏まれているので進路を見失うことはない。
ヤブを掴みながら急登すると目の前に岩壁が立ちはだかった。Ca1620m付近である。正面突破は不可能。ここは岩壁の
基部を右に回り込んで回避する。トラバースの途中で白山が姿を見せた。いい天気だ。その手前には積雪期のルートとなる
冬瓜山からシリタカ山の稜線が横たわる。 このトラバースルートはいい道とは言えない。岩壁が尽きたところでミニルンゼ状の急斜面にルートが引かれていた。固定ロ
ープが連続して現われる。あまり下りたいとは思わない急傾斜だ。40mほど上がったところで尾根に復帰した。
笈ヶ岳西尾根の真髄はここからだった。すぐそこに見えている山頂までの距離はわずか500m。標高差も170mばかり残す
のみである。まさか山頂まで1時間も要するとは思わなかった。
ルートは完全に背丈を越すヤブに没している。それでも足元に踏まれた跡があるのが救いだ。尾根自体は細いので進むべ
き方向ははっきりしている。
前方から声が聞こえた。どうやら下山パーティーのようだ。こちらはクマ鈴を鳴らしているのでわかっていると思っていたが、
目の前まで来てびっくりされた。「ついに出たかと思いましたよ。」鈴を付けていない人に驚かれるとは。
クマ鈴を付けたクマがいたらお目にかかりたいものである。
ずいぶん早い下山だと思ったら、清水平でのテント泊だったようだ。本日の日帰り組は私ひとりだけらしい。
ヤブはますます濃く、足元も怪しくなってきた。スピードはまったく上がらず牛の歩みの如くである。ササや潅木を掴む手も
疲れてきた。すぐそこに見えていたはずの山頂はいくら経ってもなかなか近付かない。
最後の最後くらいは腰高のササをルンルンと山頂に到達というのを想像していたのだが、そんなに甘くはなかった。
うまくいけば11時には登頂と踏んでいたがなんのなんの。
ついに目の前のヤブが切れてぽっかり切り開かれた空間に飛び出した。笈ヶ岳の山頂だ。
結局岩壁の巻き終わりから1時間。時速500mのヤブコギだった。
予想外にさっきの7人パーティーと最初の3人の計10人に会ってしまったが、山頂は貸切りだ。
笈ヶ岳1841.4m。長い間憧れていた山頂だった。20年ばかり前、山と渓谷社から出ていた「諸国名山案内 中部編」とい
うガイドブックにこの山のことが載っていた。それはその本の中で異彩を放つガイド文だった。
他の山がすべて一般登山道でほぼ日帰りで紹介されているのに対して、この山だけは違っていた。
直海谷川から奈良岳、大笠山を経て山頂に至り、さらに三方岩岳まで縦走するという、積雪期限定のテント泊2泊コースとし
て紹介されていたのだ。そこに並んでいた写真に圧倒され、魅了されてしまった。
14年前に柳川洞吹氏と桂湖から大笠山経由で目指したことがあった。しかしその時は思わぬ体調不良で断念。大笠山か
らその姿を眺めるだけで終わってしまった。
その後南側のジライ谷からルートが開かれ、残雪期なら簡単に日帰りできる山になった。200名山ブーム、中高年登山ブー
ムと相まって、人の姿を見ない方が稀な山になってしまった。できるだけ人に会わなくて済む方法を考えていた。
残念ながら白山は雲の中に隠れてしまい、アルプス方面もわずかに御岳と乗鞍が姿を見せる程度。別山、猿ヶ馬場、籾糠、
人形、三ヶ辻、大笠、奈良、猿ヶ山といった山々はよく見える。
ぬるいビールでも極上の旨さだ。ゆっくり食事する余裕がないかもしれないと、コンロを置いていこうかとも思ったが持ってきて
よかった。清水平の美味い水で食後のコーヒーも楽しむ。
山頂まで6時間を要したがほぼ予定通り。12時半には出発したい。下りもあの道を戻らねばならないと思うとのんびりしては
いられない。
ヤブの中に飛び込む。20分ほど下ったところで朝の3人パーティーと再会。清水平でテントを張ってきたようだ。あとどれくらい
ですと聞かれると答え辛い。このヤブの中を歩くスピードは個人差が大きいのだ。
岩壁の巻きを慎重に下り、基部からの下りでルートを失ってしまった。似たような踏み跡らしきものが錯綜しており、気が付
けば真南へ下り始めていた。早めの処置でルートへ復帰して事なきを得た。
水晶谷からの登り返しは、どれだけ登らせるんやと思うぐらい疲れた足には辛いものがある。それでもここを乗り切れば登り
は終了。取水ダムからの遊歩道は今日の山行を反芻するには持って来いのプロムナードだった。
車に戻った時、西の山の端に沈みかけた夕日が眩い最後の光を放っていた。
山日和
【山 域】白山北方 笈ヶ岳1841.4m