【飛騨】 憧れの地、白山へと繋がる道 あらたな白い物語 野谷荘司山

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sato
記事: 417
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

【飛騨】 憧れの地、白山へと繋がる道 あらたな白い物語 野谷荘司山

投稿記事 by sato »

【日 付】   2020年3月17日(火)
【山 域】   飛騨 白山北方稜線
【メンバー】  夫、sato
【天 候】   晴れのち曇り一時小雪
【ルート】   荒谷林道入り口~野谷馬狩林道~・1324経由の東尾根~鶴平新道・1602~野谷荘司山~・1780~くるみ谷右岸尾根分岐
        ~・1491~・1128~くるみ谷林道~駐車地


白鳥のスーパーマーケットで買い物を済ませ外に出ると、ぴりっとした風とともに、紙ふぶきのような雪が襲ってきた。
店に入る時に見上げた青い空は、薄い膜が張られたように薄ぼんやりとした水色になっている。
白川郷は雪かな。期待と微かに浮かび上がる不安を胸に抱え、小走りで車に戻り、北へと車を走らせる。
ひるがの高原に近づくと、ねずみ色の空から噴き出す横殴りの雪が、世界を白く塗り潰している。
完全に雪国の風景だ。どこまで雪が増えるのだろう、不安が期待の上に覆いかぶさっていく。

白く煌めくリッジをそろそろと歩く私を夢見てやってきて、お望みのまっ白な稜線が雲の中にあるはずなのだが、
車中泊地の飛騨白山道の駅に着いた時には、計画した三方崩山は日帰りでは無理だろうと、きっぱりとあきらめていた。
それよりも、降りしきる雪に、明朝、駐車場から出られるのだろうかという不安に駆られてしまう。

山との出会いは唐突であったりもする。未知の山との出会いではない。
山名を知っている、眺めたことがある、さらには登ったことのある山。それらの山が、ある時、強烈な光となり、胸に突き刺さる。

雪の季節になると、近江の山から白山へと連なる白い山やま、白い稜線がこころに描かれ、
憧れの地白山を感じながら歩く私を想像する。そしてその想像のかけらを自らの足で辿る。この冬もそうだった。
そんなある日、地図を見ていると、白山の北の山、私の家から見ると、白山から続く山やまが、まばゆい光を放ち訴えてきた。
後日、スノー衆で辿った野々俣谷左岸尾根からその山やまを眺めた時、その光は確固たるものとして目に焼き付いた。
以来、白く煌めく稜線が私を捉えて離さず、9日後、また白川郷にやって来たのだった。

私が情熱的に三方崩山の計画を持ちかけたので、行けるところまで登って戻ろうかと、夫は言ってくれたが、
今回はご縁がなかったのだなと感じている。ダメだと思った瞬間、ご縁は遠ざかったのだろう。
でも、残念ではない。もうひとつの光が私を照らしていた。野谷荘司山だ。
山日和さんから、くるみ谷から妙法山、野谷荘司山を周回したお話を聞き、こころときめくルートが頭に描かれていたのだ。
地図も用意していた。気持ちは野谷荘司山になっていた。
問題は林道入り口に車を停められるかだ。駄目なら馬狩から登ろう。
車を停められても、この雪では野谷荘司山も、どこまで行けるか分からないが。
まぁ、なるようになるのだと夜ごはんを食べ、眠りにつく。

DSC_1875_resized_20200326_083728935.JPG

雪は夜半には止んだようだった。5時に目が覚め、外を覗くと、駐車場にはそれほどは積もっていない。
ほっと胸をなでおろし、朝ご飯を食べ、登山口へと向かう。
林道は入れなかったが、国道脇のスペースに何とか車を停めることが出来た。
予定より少し遅れ、6時25分に、スノーシューを装着して出発する。
東尾根の取り付きの馬狩に延びる林道は、最初大きく迂回しているので、ショートカットで荒れた植林の斜面をよじ登り、林道に出る。

尾根に取りつくと、根雪の無い斜面に積もった新雪の膝下ラッセル。雪の間から灌木がニョキニョキと飛びだしていて歩きにくい。
思うように進めないなぁと、ため息をつきかけた時、木々の間に朝の光が差し込み、一面が温かなオレンジ色に染まった。
あぁ、レモンティーの色・・・。
子供の頃、レモンティーという美しい響きにうっとりとし、母に入れてもらった紅茶に、レモンの輪切りをそっと沈め、
茶色からオレンジ色へ、鮮やかな色に変わった瞬間を目にした時の胸の高鳴りが突然甦る。
小さなちいさな甘い記憶が、我慢の登りを後押ししてくれる。

DSC_1879_resized_20200326_083729356.JPG

枝をかき分け、時折ふとももまで踏み抜き、のそのそと歩みを重ね、標高1000m地点に。
時計を見ると2時間が経過していた。
山頂はおろか、馬狩からの登山道合流点もまだまだ遠い。ひと息つき、先のことは考えず、今を重ねていく。
ふっと、赤マークのついたブナの木が点々と続いているのに気が付く。赤マークの木のラインはヤブが薄いような気がする。
杣道が延びているのだろうか。
辺りの景色は、灌木のヤブから健やかなブナ林へと移り、膝上まで潜る雪に、息が切れるが、気持ちは軽くなる。

・1324の台地で、鋭く尖った白い峰に目が釘付けになった。・1602ピークだ。
その後ろにまあるい野谷荘司山の山頂を捉える。
限りなく白く冷たく美しく延びる稜線を目で追う。私は、何を見ているのだろうと、一瞬、分からなくなる。
アルプスではない、2000mに満たない山を、今、私たちは歩いているのだ。
雪と風が織りなす、気高く、祈りのような光景を前に、ぽかんと口を開け、立ち尽くす。
想像を超えた、野谷荘司山の美しき世界に出会えたよろこびに身震いする。

DSC_1889_resized_20200326_083729248.JPG

あともう少しで登山道という時、頭上に人が現れびっくりする。スノーボーダーのお兄さんだった。
馬狩から登ってきて、少し下の谷を下るそうだ。
まっさらな雪はここまでだ。残念な気持ちとほっとした気持ちが入り混じる。

11時15分、標高1480m、登山道合流地点に着く。
足元からは、純白の・1602ピークに向かって、ミシン目のように一筋の足跡が続いている。
足跡の主はピークの登りに差し掛かっていた。ボーダーのお兄さんは山頂へは向かわなかったようだ。
ラッセルから解放され、有難くトレースを辿らせていただく。スムーズに足を運べることが、今はうれしい。

輝くピークのてっぺんで少しだけ休もうと思ったが、直前で、どんよりとした雲が押し寄せ、
青と白の煌めく世界は、一気に灰色の世界に支配されてしまった。
先行者の男性はすぐ目の前にいらっしゃる。
何も見えなくなってしまったので、立ち止まるのををやめて追いつき、ラッセル交替しながら山頂を目指す。

12時40分、傾斜が無くなり山頂に着いたことが分かる。私たち二人だったら何時になっていたのだろう。
男性はこの山域にとても詳しい方だった。今日はスキーで下る谷の偵察とのこと。
野谷荘司山は海外のスキーヤーにも人気があるとおっしゃる。ほんとうに美しい山だもの、うん、うんと相槌を打つ。

風を避け、シラビソの木の横に立ち、パンをかじりながらお話していたが、
ごぉっと冷ややかな風が肌を刺し、出発の時を知らせてくれる。
13時。引き返すか、進むか。
妙法山と下る尾根の分岐までは、ピークを二つ越えなければならない。
タイムリミットは15時。膝ラッセルでも間に合うのではという夫の判断で、引き返す男性とお別れし、進むことにする。

DSC_1901_resized_20200326_083729138.JPG

だだっ広い山頂から雪庇を砕いて稜線に出る。下りだが雪が重く、のしのしとした歩みになる。
小山を越え、一つ目のピークの登りの途中から、細くなった尾根に雪庇が張り出し、危ないので、
尾根を避けてシラビソの斜面をトラバースする。
氷化した雪面に新雪が4,50センチ積もっている箇所があり、緊張する。
木を掴みながらの亀の歩みで一つ目のピークに到着。ここから広い鞍部に向かう。
複雑な地形が広がり、視界もあまり効かないので、GPSで確認しながらゆっくりと進む。

二つ目のピークとその先は、登山道は県境稜線より東につけられているが、稜線の方が安全と、ピークを踏み鞍部へ。
そこから東に進み、登山道の尾根を乗り越え、下りの尾根に乗る。時計を見ると14時45分。
想定時間内に到着出来て、ほっとする。

ここからも・1491までいくつか尾根が枝分かれしているので注意しなければならない。
思ったよりも急こう配の斜面が続く。
大きな杉が、細くなった尾根を塞いでいたので、斜面に避けて戻ったつもりが、南の尾根に乗ってしまい、疲れがどっとでる。
登り直し辿り着いた・1491はのびのびとしたブナが立ち並ぶ、気持ちの和らぐ台地だった。
荷物をおろし、山頂で食べ残したパンをかじる。

見下ろした鳩谷ダムはまだ小さい。急いでお湯を飲み、リュックを背負う。ブナ林の下りは順調。
17時半には下山出来るねと、夫に声をかける。しかし、物事はそう思い通りにはいかない。
灌木が邪魔をし始め、植林地に入ると、倒木や蔓までもが行く手を遮ってくる。
スノーシューが引っ掛り、尻餅をつき、もたついてしまう。でも、ツボ足では踏み抜きの連続になるだろう。
スノーシューのまま歩き続ける。何回目かの尻餅の後、杉の向こうに白い平坦地が見えた。林道だ。

17時半過ぎ、なんとか明るい内に辿り着けた。あとはダラダラと歩くだけだ。車が見えたのは18時。
へとへとだったが、夢と希望とよろこびがごちゃごちゃになった豊かな気持ちで満ち溢れ、駆け出したくなってしまった。

夕闇迫る道を荘川に向かう。薄灰色の空に野々俣谷左岸尾根が浮かんでいる。
その夢見るような柔らかな尾根に、今日の山旅の報告をする。
何にも見えない野谷荘司山の山頂に着いた時、私は、この尾根から見つめた、
吸い込まれていきそうな美しいリッジを描く三方崩山、
大門・赤摩木古・見越・奈良・大笠・笈・三方岩と連なる白く煌めく山並み、
そして憧れの地、白山を、
足元の先、灰色の雲の中に見ていたのだと。

憧れの地である白山へと繋がる白い道。私はこれからどんな道を辿るのだろう。
集落のぽつぽつと明かりの灯った家々を眺めながら、
戻った日常の中で、あらたな白い物語を描いていく私を感じ、こころが躍る。
想像は限りなく自由に限りなく続くのだ。

sato
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わりばし
記事: 1753
登録日時: 2011年2月20日(日) 16:55
お住まい: 三重県津市

Re: 【飛騨】 憧れの地、白山へと繋がる道 あらたな白い物語 野谷荘司山

投稿記事 by わりばし »

おはようございます、satoさん。

私が情熱的に三方崩山の計画を持ちかけたので、行けるところまで登って戻ろうかと、夫は言ってくれたが、
今回はご縁がなかったのだなと感じている。ダメだと思った瞬間、ご縁は遠ざかったのだろう。
でも、残念ではない。もうひとつの光が私を照らしていた。野谷荘司山だ。
山日和さんから、くるみ谷から妙法山、野谷荘司山を周回したお話を聞き、こころときめくルートが頭に描かれていたのだ。
地図も用意していた。気持ちは野谷荘司山になっていた。

これが出来るのがスゴイ。
私の場合、山以外の見たい場所や地酒にお土産とセットで考えてしまうので
急な変更はしたことないなあ。
不純な要素が満載なので・・
:mrgreen:

子供の頃、レモンティーという美しい響きにうっとりとし、母に入れてもらった紅茶に、レモンの輪切りをそっと沈め、
茶色からオレンジ色へ、鮮やかな色に変わった瞬間を目にした時の胸の高鳴りが突然甦る。
小さなちいさな甘い記憶が、我慢の登りを後押ししてくれる。

レモンティーといえば粉状の「名糖のレモンティー」しか浮かばない私とは大違いだなあ。
昔は原価が安かったので、定価で売って障害者作業所の運営資金づくりに使ってました。


・1324の台地で、鋭く尖った白い峰に目が釘付けになった。・1602ピークだ。
その後ろにまあるい野谷荘司山の山頂を捉える。
限りなく白く冷たく美しく延びる稜線を目で追う。私は、何を見ているのだろうと、一瞬、分からなくなる。
アルプスではない、2000mに満たない山を、今、私たちは歩いているのだ。
雪と風が織りなす、気高く、祈りのような光景を前に、ぽかんと口を開け、立ち尽くす。
想像を超えた、野谷荘司山の美しき世界に出会えたよろこびに身震いする。

やはり白山です。
景色が違います。


あともう少しで登山道という時、頭上に人が現れびっくりする。スノーボーダーのお兄さんだった。
馬狩から登ってきて、少し下の谷を下るそうだ。
まっさらな雪はここまでだ。残念な気持ちとほっとした気持ちが入り混じる。

その気持ちよくわかります。
登る気持ちの持ちようが違ってきますね。
雪が多ければラッキーですが・・


輝くピークのてっぺんで少しだけ休もうと思ったが、直前で、どんよりとした雲が押し寄せ、
青と白の煌めく世界は、一気に灰色の世界に支配されてしまった。
先行者の男性はすぐ目の前にいらっしゃる。
何も見えなくなってしまったので、立ち止まるのををやめて追いつき、ラッセル交替しながら山頂を目指す。

よかったですね、先行者がいて。
いるのといないのではかかる時間が違ってきます。


12時40分、傾斜が無くなり山頂に着いたことが分かる。私たち二人だったら何時になっていたのだろう。
男性はこの山域にとても詳しい方だった。今日はスキーで下る谷の偵察とのこと。
野谷荘司山は海外のスキーヤーにも人気があるとおっしゃる。ほんとうに美しい山だもの、うん、うんと相槌を打つ。

白山は山スキーの人が多いですね。
いい斜面が多いからかな?


だだっ広い山頂から雪庇を砕いて稜線に出る。下りだが雪が重く、のしのしとした歩みになる。
小山を越え、一つ目のピークの登りの途中から、細くなった尾根に雪庇が張り出し、危ないので、
尾根を避けてシラビソの斜面をトラバースする。
氷化した雪面に新雪が4,50センチ積もっている箇所があり、緊張する。
木を掴みながらの亀の歩みで一つ目のピークに到着。ここから広い鞍部に向かう。
複雑な地形が広がり、視界もあまり効かないので、GPSで確認しながらゆっくりと進む。

ここがポイントでしたか。
雪山ならではです。


見下ろした鳩谷ダムはまだ小さい。急いでお湯を飲み、リュックを背負う。ブナ林の下りは順調。
17時半には下山出来るねと、夫に声をかける。しかし、物事はそう思い通りにはいかない。
灌木が邪魔をし始め、植林地に入ると、倒木や蔓までもが行く手を遮ってくる。
スノーシューが引っ掛り、尻餅をつき、もたついてしまう。でも、ツボ足では踏み抜きの連続になるだろう。
スノーシューのまま歩き続ける。何回目かの尻餅の後、杉の向こうに白い平坦地が見えた。林道だ。
17時半過ぎ、なんとか明るい内に辿り着けた。あとはダラダラと歩くだけだ。車が見えたのは18時。
へとへとだったが、夢と希望とよろこびがごちゃごちゃになった豊かな気持ちで満ち溢れ、駆け出したくなってしまった。

スノー衆の時期はもう少し早いので、この時間帯で闇下したことが何度かあります。

憧れの地である白山へと繋がる白い道。私はこれからどんな道を辿るのだろう。
集落のぽつぽつと明かりの灯った家々を眺めながら、
戻った日常の中で、あらたな白い物語を描いていく私を感じ、こころが躍る。
想像は限りなく自由に限りなく続くのだ。

お疲れさまでした。
充実の山行でしたね。

学生時代は夜汽車の急行で山に行くことが多く
山村集落の灯りを見て、人の営みがこんな所にあるんだと思いつつ
灯りの下では家族団欒の光景が広がっているのだろうと思いをはせたもんです。


                                わりばし
sato
記事: 417
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【飛騨】 憧れの地、白山へと繋がる道 あらたな白い物語 野谷荘司山

投稿記事 by sato »

わりばしさま

こんばんは。
コメント、ありがとうございます。
私は、この山、このルートと決めて家を出ても、車の中で気が変わったり、
歩き始めて、やっぱりこっちのルートにしようと思ったりすることが時々あります。
夫は、感覚的で気分屋の私の性格を知っているので、ハイハイという感じです(笑)。

粉状の名塘のレモンティー?どんな味なのかしら。
今は、どれを選んだらいいのか悩んでしまうくらい沢山の粉末の紅茶、コーヒーがお店に並んでいますよね。
わりばしさんは作業所でも働いていらっしゃったのですね。
作業所の方々が作ったお菓子を見かけると買ってしまいます。素材がよくておいしいです。
ぱっと目に飛び込んだ色彩や、どこからもなく漂ってくる匂いが、ふいに、埋もれていた記憶を呼び覚ましたりしませんか。
私はよくあるのですが・・・。
色彩や匂いで甦る記憶は、写真で甦る記憶よりも、より鮮やかだったりします。また忘れてしまうのですが。

朝、林道から光り輝く野谷荘司山、妙法山の稜線を見上げた時、まっ白なアルペン的なラインにクラクラしてしまいました。
この時期、雪稜というとアルプスに目が向いていた私には、衝撃的な光景でした。

雪の山に出かける時、まっさらな雪を夢見てしまいます。
ラッセルは、より、山に分け入り、山と語らい、山に溶け込んでいくような感じがして、
しんどいけれど、踏み跡の無い雪面をラッセルしながら登りたいなぁと思ってしまいます。
でも、怖い稜線や、大雪だと、トレースがあってよかったと(笑)。
野谷荘司山では、この山域を愛していらっしゃる方にお会いできてうれしかったです。

地図を見て、面白い地形にワクワクしていた稜線歩きでしたが、
霧が出たり、雪が舞ったりして、全体が見渡せず、どんな風景か分かりませんでした。
でも、緊張感と想像の世界を味わうことが出来ました。

「人の営みがこんなところにあるんだと思いつつ、灯りの下では家族団欒の光景が広がっているのだろうと思いをはせる」
そう、そうですね。
私にとって、山と麓の集落はひとつながりです。
山の行き帰りに集落の家々を覗き見、そこに生きる人の暮らしを垣間見たり、想像したりするのが好きです。
ふと目にした、あるいは、感じた、何気ない日常の光景に、小さな人間の深い営みを感じ、じんとなったりします。
当たり前のようで奇蹟のような輝きに。
そして、こうして、私たちが山歩きを楽しめるのも、平穏な日常があるからこそなのだなぁとしみじみ思います。

そう、今回の山旅の楽しみのひとつが、わりばしさんが購入されたどぶろくを買うことでした。
ところが、行きも帰りも時間が合わず買えませんでした。残念。次のお楽しみです。

それから、白山道の駅で素敵なご夫婦(73歳!)とお会いしました。
お二人とも釣りが大好きで、三日間、道の駅で車中泊しながら、近辺の谷で釣をしているとおっしゃっていました。
25センチ強のヤマメを見せていただきました。
ナマズのようにでっぷりして、これがヤマメ?と思いましたが、ヤマメでした。ミミズで釣ったとか。
白川郷にはこんなにも大きなヤマメが生息しているのですね。

sato
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山日和
記事: 3573
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【飛騨】 憧れの地、白山へと繋がる道 あらたな白い物語 野谷荘司山

投稿記事 by 山日和 »

satoさん、こんばんは。

それよりも、降りしきる雪に、明朝、駐車場から出られるのだろうかという不安に駆られてしまう。

そんなに降ってたんですか。出られなったら本日終了ですね。 :mrgreen:

雪の季節になると、近江の山から白山へと連なる白い山やま、白い稜線がこころに描かれ、
憧れの地白山を感じながら歩く私を想像する。

これは私とも共通する心情。季節を追うように低山から中高山へ。しかし今年はそんな目論見も
外れてしまうシーズンでしたね。

山日和さんから、くるみ谷から妙法山、野谷荘司山を周回したお話を聞き、こころときめくルートが頭に描かれていたのだ。

そうでしたか。このルートは私の中でも会心のルートとなってました。以前にたんぽぽさんが
往復していたのが参考になりました。

ほっと胸をなでおろし、朝ご飯を食べ、登山口へと向かう。
林道は入れなかったが、国道脇のスペースに何とか車を停めることが出来た。

ゲート前まで入れませんでしたか。雪で国道にスペースがないと大変です。

思うように進めないなぁと、ため息をつきかけた時、木々の間に朝の光が差し込み、一面が温かなオレンジ色に染まった。
あぁ、レモンティーの色・・・。

レモンティーに例えるところがsatoさんらしい。チャイの色でなくてよかったですね。 :mrgreen:

枝をかき分け、時折ふとももまで踏み抜き、のそのそと歩みを重ね、標高1000m地点に。
時計を見ると2時間が経過していた。
山頂はおろか、馬狩からの登山道合流点もまだまだ遠い。ひと息つき、先のことは考えず、今を重ねていく。

しかし、のっけから厳しいラッセルでしたねえ。私ならこのあたりでランチタイムのことを考えてます。 :lol:

11年前の赤頭山と野谷荘司
11年前の赤頭山と野谷荘司

・1324の台地で、鋭く尖った白い峰に目が釘付けになった。・1602ピークだ。
その後ろにまあるい野谷荘司山の山頂を捉える。

このあたりはいいブナ林が広がります。こちらから仰ぎ見る赤頭山(P1602)から野谷荘司への雪稜は、
たっぷり雪が積もっていれば神々しいばかりの美しさですね。

あともう少しで登山道という時、頭上に人が現れびっくりする。スノーボーダーのお兄さんだった。
馬狩から登ってきて、少し下の谷を下るそうだ。
まっさらな雪はここまでだ。残念な気持ちとほっとした気持ちが入り混じる。

こういう状況でも単独で上がって来るとは凄いですね。新雪雪崩は恐くないのかな?

ラッセルから解放され、有難くトレースを辿らせていただく。スムーズに足を運べることが、今はうれしい。

ここまでラッセルしただけでお腹いっぱいでしょう。 :D

12時40分、傾斜が無くなり山頂に着いたことが分かる。私たち二人だったら何時になっていたのだろう。

ここまで来て視界ゼロとは残念です。見事な展望が楽しめる山頂なのに。

6年前の山頂からの眺め
6年前の山頂からの眺め

13時。引き返すか、進むか。
妙法山と下る尾根の分岐までは、ピークを二つ越えなければならない。
タイムリミットは15時。膝ラッセルでも間に合うのではという夫の判断で、引き返す男性とお別れし、進むことにする。

ええっ、先へ進むんですか!! 往復で十分じゃないの? :o


木を掴みながらの亀の歩みで一つ目のピークに到着。ここから広い鞍部に向かう。
複雑な地形が広がり、視界もあまり効かないので、GPSで確認しながらゆっくりと進む。

この尾根は晴れていれば楽しいところ。展望もないヒザラッセルとは・・・

二つ目のピークとその先は、登山道は県境稜線より東につけられているが、稜線の方が安全と、ピークを踏み鞍部へ。

まあ、この時期登山道は関係ないですからね。

登り直し辿り着いた・1491はのびのびとしたブナが立ち並ぶ、気持ちの和らぐ台地だった。
荷物をおろし、山頂で食べ残したパンをかじる。

ここもいいところです。下から登って来た時、ほっこりとしてひと息付きました。
その後でクマの足跡が点々と続いているのに遭遇しましたが。(^^;)

6年前のP1491付近
6年前のP1491付近

17時半には下山出来るねと、夫に声をかける。しかし、物事はそう思い通りにはいかない。
灌木が邪魔をし始め、植林地に入ると、倒木や蔓までもが行く手を遮ってくる。
スノーシューが引っ掛り、尻餅をつき、もたついてしまう。でも、ツボ足では踏み抜きの連続になるだろう。

私が登った時は最下部以外は植林の記憶がないんだけど、ルートが違ったのかな?

17時半過ぎ、なんとか明るい内に辿り着けた。あとはダラダラと歩くだけだ。車が見えたのは18時。
へとへとだったが、夢と希望とよろこびがごちゃごちゃになった豊かな気持ちで満ち溢れ、駆け出したくなってしまった。

よく頑張りましたと言うか、ちょっとマネできませんわ。
とにかくお疲れさまでした。

何にも見えない野谷荘司山の山頂に着いた時、私は、この尾根から見つめた、
吸い込まれていきそうな美しいリッジを描く三方崩山、
大門・赤摩木古・見越・奈良・大笠・笈・三方岩と連なる白く煌めく山並み、
そして憧れの地、白山を、
足元の先、灰色の雲の中に見ていたのだと。

何も見えなかったが故に、それらの山々への思いがふくらんで行きますね。 :D

                 山日和
sato
記事: 417
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【飛騨】 憧れの地、白山へと繋がる道 あらたな白い物語 野谷荘司山

投稿記事 by sato »

山日和さま

こんにちは。
今シーズンは、思い描いた白山へと連なる白い山の、ちょこっとしか辿れず、夢のノートでじんわりと光を放っています。
温暖化といわれますが、こんなに雪の少ない年は、この後も続くのかなぁと心配になってしまいます。
雪山を思うように愉しむことが出来ないのも残念ですが、私たちの暮らしにいろいろな影響を及ぼすのではないかと。

16日は、白鳥までは晴れで、山には雪のかけらもなかったのですが、いきなり雪国の風景になりました。
夫の愛車は、お嬢さまなので、ちょっと雪が増えたり、アイスバーンになると、だだをこねます。
山日和さんの車だったら心配ないです(笑)。
実は、下山後、帰りに大変な目にあいました。道の駅で車中泊して、朝、ひるがの高原を通ったのですが、
霧氷、霧氷、霧氷の世界にこころを奪われ、帰り道から外れ、別荘地の方へ走ってしまい、アイスバーンの坂道でスリップしました。
脱出するのに1時間40分くらいかかりました。山中では使わなかった、ピッケルとジェットボイルが大活躍でした(汗)。

白山から北に続く山やまは、笈ヶ岳しか見ていなかったと思います。
一里野と中宮から訪れ、次は三方岩岳からと夢見ていましたが、笈ヶ岳から北の山、荘川の東側の山は、
山名は知っていても、頭の中にとどまることのない山やまでした。
白山北縦走路は、私の中では秋山のイメージしかありませんでした。
山日和さんから、妙法山、野谷荘司山周回、(三方崩山もですね)のお話を聞いた時はドキドキしました。
スノー衆で野々俣谷左岸尾根を辿った時は、豊穣な世界の展開にクラクラしました。

山日和さんは時計回りでしたが、私はやっぱり白山に近づく高揚感を味わいたかったので反時計回りを描いていました。
でも、17日は時間を見ながら考えようと歩き始めました。
2時間ラッセルして400mかぁと思いましたが、1時間で100mを登れなかった時もあるので、今日は山頂までは行けるかなという感じでした。

子供の頃はレモンティーに憧れましたが、今は紅茶と言えば甘~いチャイです!

登山口の標高が100m違いますが、この時間に下ってくる方がいるとはびっくりしました。
爽やかな笑顔のお兄さんで、鮮やかなシュプールを描いて去っていきました。

山頂では、それほど残念な気持ちにはなりませんでした。辿り着いたといううれしさに包まれていたからかなぁ。
ひと時ですが、この山域に詳しい男性と、三人でラッセルしたというのも大きいです。
灰色の空を眺めながら、次、その次と夢を繋いでいく幸せな時間を、夢を描く楽しみを、山の神様が与えてくださったのだって思いました。
そして、早くも、次のルートを妄想していました(笑)。
夫も、天気や眺望にはあまり執着がない人でよかったです。逆に視界があまり効かない稜線に、面白いと、歩く気が増したようです。
天気はこれ以上は悪くならない、時間も大丈夫だろう、そして、
下りは全く未知の尾根ではなく、山日和さんが登っている、行き詰らずに下れるだろうと。ロープも持っていましたし。

クマの足跡を見かけたのですね。山日和さんが登られたのは4月でしたっけ?クマの足跡って大きいですよね。
登りで見てしまったら、落ち着かなくなります。一人だったら、下ってしまうかも。

尾根は、ブナ林、広葉樹と続き、細い杉と灌木の混じる植林になり、最後は背の高い杉の植林でした。
歩きにくかったので時間が長く感じたのかもしれません。雪が無かったら杣道に気づいたかもしれませんが。

山日和さんからマネできないとはおっしゃられたくないです(笑)。
ヘットランプを使わずに下山しましたよ(笑)。

素敵な写真をありがとうございました。より、次への思いが深まりました。

sato
たんぽぽ
記事: 708
登録日時: 2011年2月20日(日) 11:54

Re: 【飛騨】 憧れの地、白山へと繋がる道 あらたな白い物語 野谷荘司山

投稿記事 by たんぽぽ »

こんばんは、satoさん。
天候が良くない新雪の中で、野谷庄司からよく南進しましたね。
くるみ谷右岸尾を下るのも難儀だったでしょう、ガスってると支尾根に入りやすいです。
標高差も1,000mありますからね。
お疲れさまでした。
DSC03961.JPG
sato
記事: 417
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【飛騨】 憧れの地、白山へと繋がる道 あらたな白い物語 野谷荘司山

投稿記事 by sato »

たんぽぽさま

こんにちは。
コメントありがとうございます。
お写真の尖がった山は妙法山ですね。
ブナの木の向こうに光り輝いているのが三方崩山・・・。晴れていたら、うっとり風景に見入ってしまう尾根なのですね。
・1602の神々しいお姿も拝めるのでしょうね。
霧の中に時折、微かに浮かぶ、儚い影のような稜線を見つめ、いつかこの稜線を辿る日を夢見ながら下りました。

野谷荘司山頂までは、ラッセルで6時間15分かかりました。
この雪の状態で、稜線の登り下りを2時間、尾根の下りを3時間で歩けるか考えました。
視界は良くないけれど、天気はこれ以上悪くはならないと思いました。地形を見て、迷わなければ大丈夫と思いました。
お互いの体力、力量が分かっているので進めました。
下りの尾根へは神経を集中していたので、すっと入れました。
その先も気をつけなければいけないと、高度計で確認しながら下っていたのに、間違えてしまいました。
障害物をよけた時、進むべき方向からそれてしまいがちです。

山日和さんからお聞きしているのですが、
たんぽぽさんは、残雪期、雪で覆われた谷から稜線に向かう山登りを愉しまれていらっしゃるのですね。
谷から稜線という眼差しを持つと、雪の山の世界はまた広がりますね。
私は、谷は雪崩が気になり、辿るのは尾根がほとんどなので、とても興味があります。
5月のオフ会で、たんぽぽさんの山登りのお話しをお聞きしたいなぁと思っていましたが、中止になってしまい残念です。
秋のオフ会を楽しみにしています。

sato
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