【湖北】ブナの回廊を行く 下谷山から音波へ
Posted: 2020年2月17日(月) 21:19
【日 付】2020年2月15日(土)
【山 域】湖北 江越国境
【天 候】曇りのち晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】中河内7:40---8:10大音波橋---9:45大音波10:05---12:25下谷山13:50---15:20音波15:50---
16:40栃ノ木---17:20国道365号---18:00中河内
滋賀県下でも名うての豪雪地帯である、長浜市余呉の中河内。多い時には4メートルを超す雪が積もり、
平年でも2メートルぐらいの積雪は珍しくないところである。
しかし、今年の積雪はゼロ。住民にとってはありがたいことだが、登山者にとっては寂しい話だ。
まったく雪の無い、菅並への県道を歩く。2年前に来た時には、欄干が見えなかった大音波橋を渡った
ところが取付きだ。ちなみに、その時には中河内からスノーシューを履いて歩いて来た。
獣道のような踏み跡を辿って急斜面を這い上がり、尾根に乗る。
少し雪が出てきたものの、スノーシューを履くほどでもなく、グサグサのシャーベットのような雪である。
817.6mの三角点大音波は開けたブナ林の台地になっている。しかし、ここも台風の影響か倒木が目立っ
ていた。ここは針川からの尾根が合流するジャンクション。こちらの尾根もなかなかの樹林が続いて、魅
力的な尾根だ。
ここからは延々とブナ林の山旅が始まる。一度伐採を受けたのか、若いブナが多く、狭い間隔で文字通
り林立するブナの群れは勢いが感じられる。
873m標高点まで来て、やっとスノーシューを履ける雪量になった。天気予報では朝から週日晴れのはず
だったが、11時を過ぎても晴れる気配がない。
ブナ林は、晴れていなければいっそのことガスに包まれている方が趣きがある。曇り空の下のブナは被写
体としても、もうひとつ冴えないので写真にするのが難しい。しかし、ここからの広がりを見せる尾根の
微妙な起伏は美しく、早足で通り過ぎるのはもったいない。
江越国境稜線の手前からしばらくは潅木帯となり、雪で埋もれていない今は、潅木をかわしながらの前
進となる。
そして、Ca950mピークで右折して、折り返すように国境稜線へ入るのだが、このあたりの地形の複雑さは
特筆すべきものがある。国境稜線はまるで谷間に潜り込んでいくように低い場所を通り、対面する小台地
へ渡る廊下のように伸びる。そこへ四方から谷の源頭が緩やかに上がり、周りはすべて見上げるように尾
根が存在している、なんとも不思議な地形なのである。稜線とは一番高いところであるという概念を覆さ
れるような風景だ。初めてここを訪れた時、いったい何がどうなっているのかわからなかった。
しかし、ここは確かに中央分水嶺。右に流れ出す谷は日本海へ、左に落ちる谷は琵琶湖へと続いている。
鬱陶しい潅木を漕いで山頂に向かうと、ブナの幹の間から真っ白な山が見えた。白山だ。寡雪とはいえ、
さすがにこの時期の白山は白い。
下谷山の山頂に立つ木を久しぶりに見た。2年前に来た時は、まったく何も障害物のない、真っ白な雪の
ドームだったのだ。
南面の展望は全開なので、南を向いてランチタイムとしよう。朝よりは少し空も明るくなったようだ。
大黒山、妙理山、安蔵山、横山岳といった湖北の山々を眺めながらビールで乾杯。
satoさんは、栃ノ木峠からは何度か訪れているらしいが、この南尾根からは初めての登頂だ。
山頂直下の複雑な地形はsatoさんもお気に入りのようで、こういう嗜好は相通ずるものがある。
食後は栃ノ木峠への国境稜線を辿る。件の渡り廊下を通って、小ピークへ。再び若いブナ林が延々と続
く縦走路を行く。シカのラッセル跡がどこまでも続き、それがほとんど道のラインと一致しているのが面
白い。雪が積もっていればどこを歩いても同じはずだが、動物は同じラインを歩く習性があるのだろう。
歩いても歩いても同じようなブナ林が続くので、少し食傷気味になってしまうのは贅沢というものだろ
うか。緩やかなアップダウンと屈曲を繰り返しながら進むと、いつの間にか日が差し始めた。今頃予報通
りの天気になってきたのか。遅すぎるとはいえ、やはり青空の下を歩くのは気分がいいものである。
音波のピーク付近は灌木が密生して少し歩き辛い。ここも平年なら純白のドームになっている山頂だ。
千手観音のブナは健在だが、かなり倒木が目立つのが痛々しい。
潅木をかき分けて猫の額ほどに開けた山頂に立つと、ここでも南側に180度の展望が得られる。日差しを
浴びながら、のんびり展望を楽しんでいると、もう夕刻が迫ってきた。
少し前に比べると日が長くなっているのと、ここから先も勝手知ったる道だということで、慌てる要素は
ない。気楽なものである。
ここからはスノーシューを脱いでツボ足で歩く。ヤブが少々鬱陶しいのと、目に見えて雪量が減ってき
たからだ。尾根芯の潅木を避けながら、道らしきところを選んで進む。
去年のスノー衆でスノーテーブルを作ったランチ場は、ただの草原になっていた。
無線中継所の建つ栃ノ木の三角点を過ぎると、強引に切り開いたような林道が続く。そろそろ日が傾き
始めた林道を急ぎ足で下って行った。
スキー場が営業していないので、ほとんど車の通らない国道は、ど真ん中を歩いても轢かれる心配がない。
中河内へ着く頃には、日はすっかり山の端へ落ちていた。
山日和
【山 域】湖北 江越国境
【天 候】曇りのち晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】中河内7:40---8:10大音波橋---9:45大音波10:05---12:25下谷山13:50---15:20音波15:50---
16:40栃ノ木---17:20国道365号---18:00中河内
滋賀県下でも名うての豪雪地帯である、長浜市余呉の中河内。多い時には4メートルを超す雪が積もり、
平年でも2メートルぐらいの積雪は珍しくないところである。
しかし、今年の積雪はゼロ。住民にとってはありがたいことだが、登山者にとっては寂しい話だ。
まったく雪の無い、菅並への県道を歩く。2年前に来た時には、欄干が見えなかった大音波橋を渡った
ところが取付きだ。ちなみに、その時には中河内からスノーシューを履いて歩いて来た。
獣道のような踏み跡を辿って急斜面を這い上がり、尾根に乗る。
少し雪が出てきたものの、スノーシューを履くほどでもなく、グサグサのシャーベットのような雪である。
817.6mの三角点大音波は開けたブナ林の台地になっている。しかし、ここも台風の影響か倒木が目立っ
ていた。ここは針川からの尾根が合流するジャンクション。こちらの尾根もなかなかの樹林が続いて、魅
力的な尾根だ。
ここからは延々とブナ林の山旅が始まる。一度伐採を受けたのか、若いブナが多く、狭い間隔で文字通
り林立するブナの群れは勢いが感じられる。
873m標高点まで来て、やっとスノーシューを履ける雪量になった。天気予報では朝から週日晴れのはず
だったが、11時を過ぎても晴れる気配がない。
ブナ林は、晴れていなければいっそのことガスに包まれている方が趣きがある。曇り空の下のブナは被写
体としても、もうひとつ冴えないので写真にするのが難しい。しかし、ここからの広がりを見せる尾根の
微妙な起伏は美しく、早足で通り過ぎるのはもったいない。
江越国境稜線の手前からしばらくは潅木帯となり、雪で埋もれていない今は、潅木をかわしながらの前
進となる。
そして、Ca950mピークで右折して、折り返すように国境稜線へ入るのだが、このあたりの地形の複雑さは
特筆すべきものがある。国境稜線はまるで谷間に潜り込んでいくように低い場所を通り、対面する小台地
へ渡る廊下のように伸びる。そこへ四方から谷の源頭が緩やかに上がり、周りはすべて見上げるように尾
根が存在している、なんとも不思議な地形なのである。稜線とは一番高いところであるという概念を覆さ
れるような風景だ。初めてここを訪れた時、いったい何がどうなっているのかわからなかった。
しかし、ここは確かに中央分水嶺。右に流れ出す谷は日本海へ、左に落ちる谷は琵琶湖へと続いている。
鬱陶しい潅木を漕いで山頂に向かうと、ブナの幹の間から真っ白な山が見えた。白山だ。寡雪とはいえ、
さすがにこの時期の白山は白い。
下谷山の山頂に立つ木を久しぶりに見た。2年前に来た時は、まったく何も障害物のない、真っ白な雪の
ドームだったのだ。
南面の展望は全開なので、南を向いてランチタイムとしよう。朝よりは少し空も明るくなったようだ。
大黒山、妙理山、安蔵山、横山岳といった湖北の山々を眺めながらビールで乾杯。
satoさんは、栃ノ木峠からは何度か訪れているらしいが、この南尾根からは初めての登頂だ。
山頂直下の複雑な地形はsatoさんもお気に入りのようで、こういう嗜好は相通ずるものがある。
食後は栃ノ木峠への国境稜線を辿る。件の渡り廊下を通って、小ピークへ。再び若いブナ林が延々と続
く縦走路を行く。シカのラッセル跡がどこまでも続き、それがほとんど道のラインと一致しているのが面
白い。雪が積もっていればどこを歩いても同じはずだが、動物は同じラインを歩く習性があるのだろう。
歩いても歩いても同じようなブナ林が続くので、少し食傷気味になってしまうのは贅沢というものだろ
うか。緩やかなアップダウンと屈曲を繰り返しながら進むと、いつの間にか日が差し始めた。今頃予報通
りの天気になってきたのか。遅すぎるとはいえ、やはり青空の下を歩くのは気分がいいものである。
音波のピーク付近は灌木が密生して少し歩き辛い。ここも平年なら純白のドームになっている山頂だ。
千手観音のブナは健在だが、かなり倒木が目立つのが痛々しい。
潅木をかき分けて猫の額ほどに開けた山頂に立つと、ここでも南側に180度の展望が得られる。日差しを
浴びながら、のんびり展望を楽しんでいると、もう夕刻が迫ってきた。
少し前に比べると日が長くなっているのと、ここから先も勝手知ったる道だということで、慌てる要素は
ない。気楽なものである。
ここからはスノーシューを脱いでツボ足で歩く。ヤブが少々鬱陶しいのと、目に見えて雪量が減ってき
たからだ。尾根芯の潅木を避けながら、道らしきところを選んで進む。
去年のスノー衆でスノーテーブルを作ったランチ場は、ただの草原になっていた。
無線中継所の建つ栃ノ木の三角点を過ぎると、強引に切り開いたような林道が続く。そろそろ日が傾き
始めた林道を急ぎ足で下って行った。
スキー場が営業していないので、ほとんど車の通らない国道は、ど真ん中を歩いても轢かれる心配がない。
中河内へ着く頃には、日はすっかり山の端へ落ちていた。
山日和