【越前】霧に煙るブナ林 桐ヶ平山
Posted: 2020年1月20日(月) 21:01
【日 付】2020年1月18日(土)
【山 域】越前 部子山周辺 桐ヶ平山1218.2m
【天 候】曇り
【メンバー】sato、山日和
【コース】林道駐車地8:25---10:50市境稜線---12:45桐ヶ平山14:00---17:10駐車地
桐ヶ平山。福井県の旧池田町と大野市の境に位置する、地形図に名のない山である。
大野市郊外の部子山と、越美国境稜線の冠山を繋ぐ尾根上にある山だ。
独立峰のように見える部子山と、分水嶺の冠山が尾根続きという事実は意外に感じるのではないだろうか。
ここを訪れたのは14年前。山頂周辺に広がる微妙な起伏が連続する地形に惹かれていた。
地形図を眺めてこういう地形を見つけると、いったいどんなところなのだろうと想像し、自分の目で確かめたく
なる。前回はガスであまりよくわからなかった。青空の下でもう一度見てみたい。そう思って訪れたのだが・・・
山麓の水海の集落は、まるで春の山村のような穏やかな空気に包まれていた。冬の山に向かう時、朝の身震い
するようなキリッとした寒さが、山に入る実感を感じさせてくれる。
今日の山はまったく緊張感のない、やわらかな空気の中からのスタートとなった。
普通ならどこまで除雪されているか気になる林道も、雪のカケラすら見られず、楽々と取付き点に到達するこ
とができた。ここは部子山へ延びる林道の分岐点だ。林道の先には牧場があり、シーズン中には牛が放牧されて
いるらしい。
アプローチが楽ということは、下部でヤブに苦しめられるかもしれないということの裏返しでもある。この
尾根はどうだろうか。
取付いてみると、植林の尾根だけあって杣道らしきものが続いていた。これなら苦労することもなさそうである。
雪が出始める地点まで道が続いてくれればいい。
植林が終わり、自然林に変わる頃から雪が出始めた。雑木林からブナの森へ。ただ、このあたりは若いブナば
かりで、細くスタイルのいいブナが、タテに何本も真っすぐ線を引いたように並んでいる。
下界を見ると、小さな雲海ができていた。ここはもう雲海の上なのだが、空は晴れる様子がない。
青空の下を歩くという目論見は叶えられないのだろうか。
積雪が増えてきたのでスノーシューを履く。雪は湿り気を感じる、やや重い雪質だった。
先週積もった雪が、週中の雨でグズグズになったのかもしれない。
高度を上げるにつれ、空は晴れるどころかガスの濃さが増して来た。こうなるともうあきらめの境地である。
開き直って、霧にむせぶブナ林を楽しもうと腹をくくった。
このあたりまで来ると、ブナはその大きさが明らかに変わってきた。幹回り3mを超す大木が、あたりまえのよ
うに、そこここに点在している。
霧の中から現われるブナは、何かを語りかけているようだ。晴天の下のブナは、風景の一部としてその大きさ
に感嘆したり、美しいと思ったりするのだが、霧の中に立つブナは、風景としてではなく、それそのものの存在
を感じることができるような気がする。
ブナの枝先に光るものがあった。霧氷だ。日が当たればすぐに消えてしまいそうな、小さな儚げな霧氷だが、
それがかえって心の襞に沁みてくるようだ。
山頂への尾根は単純ではなく、微妙な地形を読みながらの前進を余儀なくされる。ただ尾根芯を辿っていれば
山頂に到達するというのではなく、尾根から谷、谷から尾根へと、目まぐるしく乗り換えていかなければいけな
い。
積雪は50センチ以上はあるだろうか。雪はいつの間にか新雪に変わっていた。それでも潅木を埋め尽くすほど
ではないので、やや煩わしいところもある。
くるぶしからふくらはぎ程度の雪を、satoさんと交代しながらラッセルして行く。
今年初めての雪山らしい感覚が蘇ってきた。
山頂手前のブナ林は実に素晴らしく、実際どうかは知らないが、原生の森を思わせる荘厳な雰囲気がある。
多分にこの霧が寄与しているのだろうが。
想定外のラッセルと、度々のルート確認で、思ったより時間を食ってしまった。最初から岳の谷山への周回は
あきらめて、山頂先の地形の妙を楽しむつもりだったが、その時間もなくなってしまった。
ブナ林の中に腰を降ろして、少し短めのランチタイムとしよう。
下山は元のトレースを辿る。自分たちのトレースがなければ、どっちへ進めばいいのかわからない場所が続く。
昼から気温が下がってきたようだ。登りでは見なかったところに霧氷の花が咲いていた。それも登りで見たもの
より発達している。午後からできた霧氷というのも初めて見た。
空の色は相も変わらずだったが、巣原峠への尾根から別れるあたりまで来ると、部子山方面の斜面に柔らかい
午後の日が当たり始めた。
ケガの後遺症で左足首の可動域が少ないsatoさんは、スノーシューを履いての下りは歩きにくそうだ。
それでも痛みをこらえながらも楽しそうに歩いてくれるのが頼もしい。
静寂を切り裂くようにエンジン音がこだました。こんなところにバイク?と訝しく思っていると、対岸の林道
を走るスノーモービルの集団が見えた。違法ではないだろうし、人の趣味はそれぞれだからとやかくは言えない
が、静かな山でこういう騒音は勘弁してほしいものである。
雪は本当にあるのか。スノーシューが背中の重しになるだけではないかと危惧を抱いてスタートした山だった
が、久しぶりに雪山らしい雪山を楽しむことができた一日だった。
山日和
【山 域】越前 部子山周辺 桐ヶ平山1218.2m
【天 候】曇り
【メンバー】sato、山日和
【コース】林道駐車地8:25---10:50市境稜線---12:45桐ヶ平山14:00---17:10駐車地
桐ヶ平山。福井県の旧池田町と大野市の境に位置する、地形図に名のない山である。
大野市郊外の部子山と、越美国境稜線の冠山を繋ぐ尾根上にある山だ。
独立峰のように見える部子山と、分水嶺の冠山が尾根続きという事実は意外に感じるのではないだろうか。
ここを訪れたのは14年前。山頂周辺に広がる微妙な起伏が連続する地形に惹かれていた。
地形図を眺めてこういう地形を見つけると、いったいどんなところなのだろうと想像し、自分の目で確かめたく
なる。前回はガスであまりよくわからなかった。青空の下でもう一度見てみたい。そう思って訪れたのだが・・・
山麓の水海の集落は、まるで春の山村のような穏やかな空気に包まれていた。冬の山に向かう時、朝の身震い
するようなキリッとした寒さが、山に入る実感を感じさせてくれる。
今日の山はまったく緊張感のない、やわらかな空気の中からのスタートとなった。
普通ならどこまで除雪されているか気になる林道も、雪のカケラすら見られず、楽々と取付き点に到達するこ
とができた。ここは部子山へ延びる林道の分岐点だ。林道の先には牧場があり、シーズン中には牛が放牧されて
いるらしい。
アプローチが楽ということは、下部でヤブに苦しめられるかもしれないということの裏返しでもある。この
尾根はどうだろうか。
取付いてみると、植林の尾根だけあって杣道らしきものが続いていた。これなら苦労することもなさそうである。
雪が出始める地点まで道が続いてくれればいい。
植林が終わり、自然林に変わる頃から雪が出始めた。雑木林からブナの森へ。ただ、このあたりは若いブナば
かりで、細くスタイルのいいブナが、タテに何本も真っすぐ線を引いたように並んでいる。
下界を見ると、小さな雲海ができていた。ここはもう雲海の上なのだが、空は晴れる様子がない。
青空の下を歩くという目論見は叶えられないのだろうか。
積雪が増えてきたのでスノーシューを履く。雪は湿り気を感じる、やや重い雪質だった。
先週積もった雪が、週中の雨でグズグズになったのかもしれない。
高度を上げるにつれ、空は晴れるどころかガスの濃さが増して来た。こうなるともうあきらめの境地である。
開き直って、霧にむせぶブナ林を楽しもうと腹をくくった。
このあたりまで来ると、ブナはその大きさが明らかに変わってきた。幹回り3mを超す大木が、あたりまえのよ
うに、そこここに点在している。
霧の中から現われるブナは、何かを語りかけているようだ。晴天の下のブナは、風景の一部としてその大きさ
に感嘆したり、美しいと思ったりするのだが、霧の中に立つブナは、風景としてではなく、それそのものの存在
を感じることができるような気がする。
ブナの枝先に光るものがあった。霧氷だ。日が当たればすぐに消えてしまいそうな、小さな儚げな霧氷だが、
それがかえって心の襞に沁みてくるようだ。
山頂への尾根は単純ではなく、微妙な地形を読みながらの前進を余儀なくされる。ただ尾根芯を辿っていれば
山頂に到達するというのではなく、尾根から谷、谷から尾根へと、目まぐるしく乗り換えていかなければいけな
い。
積雪は50センチ以上はあるだろうか。雪はいつの間にか新雪に変わっていた。それでも潅木を埋め尽くすほど
ではないので、やや煩わしいところもある。
くるぶしからふくらはぎ程度の雪を、satoさんと交代しながらラッセルして行く。
今年初めての雪山らしい感覚が蘇ってきた。
山頂手前のブナ林は実に素晴らしく、実際どうかは知らないが、原生の森を思わせる荘厳な雰囲気がある。
多分にこの霧が寄与しているのだろうが。
想定外のラッセルと、度々のルート確認で、思ったより時間を食ってしまった。最初から岳の谷山への周回は
あきらめて、山頂先の地形の妙を楽しむつもりだったが、その時間もなくなってしまった。
ブナ林の中に腰を降ろして、少し短めのランチタイムとしよう。
下山は元のトレースを辿る。自分たちのトレースがなければ、どっちへ進めばいいのかわからない場所が続く。
昼から気温が下がってきたようだ。登りでは見なかったところに霧氷の花が咲いていた。それも登りで見たもの
より発達している。午後からできた霧氷というのも初めて見た。
空の色は相も変わらずだったが、巣原峠への尾根から別れるあたりまで来ると、部子山方面の斜面に柔らかい
午後の日が当たり始めた。
ケガの後遺症で左足首の可動域が少ないsatoさんは、スノーシューを履いての下りは歩きにくそうだ。
それでも痛みをこらえながらも楽しそうに歩いてくれるのが頼もしい。
静寂を切り裂くようにエンジン音がこだました。こんなところにバイク?と訝しく思っていると、対岸の林道
を走るスノーモービルの集団が見えた。違法ではないだろうし、人の趣味はそれぞれだからとやかくは言えない
が、静かな山でこういう騒音は勘弁してほしいものである。
雪は本当にあるのか。スノーシューが背中の重しになるだけではないかと危惧を抱いてスタートした山だった
が、久しぶりに雪山らしい雪山を楽しむことができた一日だった。
山日和