【若丹国境】タケガダン〜オバタケダン〜五波峠☆霧の若丹国境尾根で宇宙人ブナに遭う
Posted: 2019年10月12日(土) 12:28
【 日 付 】2019年9月16日 月曜日
【 山 域 】若丹国境
【メンバー】山猫、家内、HBさん
【 天 候 】曇り時々俄雨
【 ルート 】知見集落奥の林道入り口7:48〜9:12タケガダン9:16〜9:54オバタケダン9:59〜11:30 721m峰12:08〜13:16知井坂分岐〜13:38八ヶ峰〜14:59五波峠
そろそろ秋風が吹き、山の上が涼しくなる季節だ。オバタケダンから若丹国境を縦走して八ヶ峰を目指すことにする。昨秋の山日和さんの後追いになるが、山毛欅の葉のある季節の表情を見てみたかったのである。久しぶりにHB氏も山行にご一緒して頂くことになり、車が二台あるので、一台を五波峠にデポして八ヶ峰から若丹国境尾根を東に辿る計画とする。
この日は京都市内は35度を超える猛暑日の予報であるが、嶺南地方は天気予報のサイトにより天気予報はかなり異なるようだ。R162を北上し待ち合わせた周山に至るとほぼ完全に曇天の空模様となった。五波峠への細い道は鬱蒼として薄暗い自然林の中を進んでゆく。もう少し季節が進むと紅葉が美しそうだ。
HBさんの車を峠にデポすると知見の集落を目指す。知見はこの美山の中でも芦生と同様、最奥部に位置するものだろう。狭い谷間に付けられた細い道を抜けて集落に至るとかろうじて耕作が可能な小さな山あいに長閑な集落の風景が広がる。集落の最奥部、林道のゲートの前の広地に車を停めていざ出発である。
歩き出すと早々に右手の植林地の中に整然とした段が設けられていることに気がつく。棚田の跡のようだが、少なくとも杉の樹々は数十年は育っているであろうから、かなり古いものだろう。この狭い谷あいではわずかばかりの平地は貴重なものであった筈だ。苔むした林道の周囲は繁茂する羊歯の緑が美しい。
林道も終点に近づくl頃、右手の谷筋をよく見ると繁茂した蕨の下に見慣れたプラスチック階段があることに気がつく。事前にここに送電線巡視路があることを教えていたのだが、その情報がなければ下草が繁茂する季節、ここに道があるとは思いもよらないだろう。
完全に蕨の中に隠れている黒いプラスチックを探し出しながら沢の左岸を登ってゆく。行く手の尾根は植林地が広がっているが、すぐ西側、谷の右岸尾根は下草は全くない自然林であり、尾根の勾配もそれほど急ではなさそうだ。谷を渡って隣の尾根に乗り換えましょうかとHBさんに声をかける。しかし「隣の尾根はよく見える」という法則がある。地図を確認すると尾根を少し登ったところで急勾配が待っているようだ。ここは思い留まって、巡視路を忠実に辿ることにする。
プラスチック階段のお陰で急斜面を効率的に登り、尾根筋に乗ると植林は終わり、快適なアカマツ林となり、まもなく送電線鉄塔にたどり着く。鉄塔を過ぎるとジグザグと尾根を登ってゆく明瞭な掘割の古道が現れる。知見の集落と若狭の口坂本を結ぶ生活道であったことが窺われる。
空気は湿り気があるが、尾根上は涼しい。間断なく風が吹いており、登りでもほとんど汗をかかずにすむ。樹間から垣間見える稜線の上の方は雲がかかっているようだ。登りの勾配が緩やかになるとタケガダンへと続くなだらかな尾根となり、山毛欅の木々が目立つようになる。尾根上の踏み跡は不明瞭となるが、下草のほとんど見られない林床は快適に歩くことができる。足元には多くのキノコを目にする。HB氏はキノコにお詳しく、キノコを次々と同定しては教えて下さる。
山頂に近くなると快適な山毛欅の美林が広がる。山毛欅の葉はわずかに色づいている。タケガダンの山頂直下では樹にかけられた小さなプレートが目に入る。西の棚野坂へと至るこのルートを西畑越えと呼称されたようだ。
タケガダンの山頂を過ぎたあたり、三鈷杵のような風変わりなキノコがある。私は有り難さが全くわからないが、HB氏も初めてお目にかかるという非常に珍しいキノコだそうで、どうやらサンコタケというらしい。
オバタケダンへと向かうなだらかな尾根を辿ると、尾根には霧がかかり始める。尾根上には展望が開ける箇所があるが、霧の中から樹々のシルエットが淡く浮かびあがるばかりだ。時折、小雨がパラつくが、本格的に降る気配はないようだ。雨雲レーダーを確認するがこのあたりに雨雲は出てはいない。
オバタケダンの山頂の手前ではいくつかのタマゴタケに出会うことが出来た。今回の山行のもう一つの秘かな目的であった。早速、ランチのためにいくつかのタマゴタケを摘み取らせて頂く。
オバタケダンの山頂は西側が開けているが、この日は何も見えない。いつか天気の良い日に再訪したいものだ。山頂を後にするといよいよ若丹国境尾根に入る。尾根上は急に風が強くなる。この尾根のお陰でタケガダンからの尾根は風の陰に入っていたのだろう。
しばらく進むと「頭巾山→」と記された大きな道標が樹に架けられている。そのプレートには誰かが小さな文字で「堀越峠を越えてずっとずっと先」とうっすらと書き添えてあるのが読み取れる。オバタケダンと記すのはわかるがここに頭巾山への道標を懸けるのは果たして如何なものかと思ってしまう。少し先に進むと同じ木製の道標で、今度は「堀越峠→」と記されたものが現れた。
国境尾根は小さなピークのアップダウンを繰り返してゆくが、いずれも数十メートルほどのわずかな高低差である。距離は長いが高低差が少ないお陰で、山毛欅が多く見られる自然林の美しい林相が続く。尾根上に時折かかる霧が風景に変化を与えてくれる。
樹に巻かれた古いテープには「トレイル」と印刷された文字が読める。HBさんが注意深くテープを見ると「美」の文字も読めた。かつて整備された美山トレイルの名残だろう。
706m峰を過ぎたあたり、緩やかな尾根上には突如として行く手を遮るかのごとく畸形の山毛欅の樹が立ちはだかる。この異様な山毛欅の樹には山日和さんのrepと引き続く越前さんのresで見覚えがある。山日和さんの命名による宇宙人ブナだ。この樹の異様さに対する驚きはその裏側に回った時にさらに大きくなるのだった。なんと樹は半分に裂けており、半分だけで樹は屹立しているのであった。その異形の姿から感じられる強い生命力には畏怖の念を禁じ得ない。
知井坂へのおよそ半分ほどの行程にある721m峰のあたりでランチ休憩に丁度良い時間になる。ここまでオバタケダンから約1時間半である。知井坂まで1時間半、最終目的地の五波峠までさらにそこから1時間半ほどだろうと踏む。地図ではピークの東南に尾根に囲まれた小さな窪地がある。この窪地に降りるとそれまでの国境の強風が嘘のように風が全くない。
早速、尾根で摘んできたタマゴタケとベーコンを痛めて調理する。周囲には下草もほとんど見られず、なだらかな谷間はランチの時間をゆっくりと過ごすにはあまりにも快適な場所であった。
721m峰を後にすると尾根は南東へと方向を変える。それまでの広い尾根からいくぶん細尾根気味になる。なだらかな尾根を歩くうちに知井坂にたどり着くと、峠を越える明瞭な掘割の古道に出た。
ここからは歩きやすい一般登山道となる。の手前で尾根上の展望ちからはいよいよ八ヶ峰のピークである。しかし我々が山頂へと歩いている間に瞬く間にあたりは雲の中へと入ってゆく。この日の随一の好展望である筈の山頂にたどり着いた時にはここでも全て景色は霧の中であった。
尾根が広くなり、二重尾根となったところで尾根上の窪地に小さな緑色の池が現れる。特異な色に惹かれて池の畔に降りてみる。池の周囲は樹高の高いコナラやカエデの壮麗な林となっている。下草のほとんどない林床にあって、池の繁茂するイワヒメワラビと池の不透明な緑色がこの魅力的な空間の非現実性を際立たせているように思われる。
最後のピーク708mのピークは登山道から外れたところにあるが、自然林の吊り尾根が魅了的に思われたので、ピークに寄り道する。ここからは五波峠へとなだらかに尾根を下ってゆく。若狭側から登ってくる林道と合流すると、まもなく立派な石碑が佇む五波峠へたどり着くと、美しい林相の快適な尾根歩きが終わってしまうのが勿体無いと思われのであった。
今年の夏は激しいアップダウンを繰り返すアルプスの山行が続いたのだが、その後で味わうこの静寂に充ちた若丹国境の尾根歩きはまさに癒しの山行という感であった。
【 山 域 】若丹国境
【メンバー】山猫、家内、HBさん
【 天 候 】曇り時々俄雨
【 ルート 】知見集落奥の林道入り口7:48〜9:12タケガダン9:16〜9:54オバタケダン9:59〜11:30 721m峰12:08〜13:16知井坂分岐〜13:38八ヶ峰〜14:59五波峠
そろそろ秋風が吹き、山の上が涼しくなる季節だ。オバタケダンから若丹国境を縦走して八ヶ峰を目指すことにする。昨秋の山日和さんの後追いになるが、山毛欅の葉のある季節の表情を見てみたかったのである。久しぶりにHB氏も山行にご一緒して頂くことになり、車が二台あるので、一台を五波峠にデポして八ヶ峰から若丹国境尾根を東に辿る計画とする。
この日は京都市内は35度を超える猛暑日の予報であるが、嶺南地方は天気予報のサイトにより天気予報はかなり異なるようだ。R162を北上し待ち合わせた周山に至るとほぼ完全に曇天の空模様となった。五波峠への細い道は鬱蒼として薄暗い自然林の中を進んでゆく。もう少し季節が進むと紅葉が美しそうだ。
HBさんの車を峠にデポすると知見の集落を目指す。知見はこの美山の中でも芦生と同様、最奥部に位置するものだろう。狭い谷間に付けられた細い道を抜けて集落に至るとかろうじて耕作が可能な小さな山あいに長閑な集落の風景が広がる。集落の最奥部、林道のゲートの前の広地に車を停めていざ出発である。
歩き出すと早々に右手の植林地の中に整然とした段が設けられていることに気がつく。棚田の跡のようだが、少なくとも杉の樹々は数十年は育っているであろうから、かなり古いものだろう。この狭い谷あいではわずかばかりの平地は貴重なものであった筈だ。苔むした林道の周囲は繁茂する羊歯の緑が美しい。
林道も終点に近づくl頃、右手の谷筋をよく見ると繁茂した蕨の下に見慣れたプラスチック階段があることに気がつく。事前にここに送電線巡視路があることを教えていたのだが、その情報がなければ下草が繁茂する季節、ここに道があるとは思いもよらないだろう。
完全に蕨の中に隠れている黒いプラスチックを探し出しながら沢の左岸を登ってゆく。行く手の尾根は植林地が広がっているが、すぐ西側、谷の右岸尾根は下草は全くない自然林であり、尾根の勾配もそれほど急ではなさそうだ。谷を渡って隣の尾根に乗り換えましょうかとHBさんに声をかける。しかし「隣の尾根はよく見える」という法則がある。地図を確認すると尾根を少し登ったところで急勾配が待っているようだ。ここは思い留まって、巡視路を忠実に辿ることにする。
プラスチック階段のお陰で急斜面を効率的に登り、尾根筋に乗ると植林は終わり、快適なアカマツ林となり、まもなく送電線鉄塔にたどり着く。鉄塔を過ぎるとジグザグと尾根を登ってゆく明瞭な掘割の古道が現れる。知見の集落と若狭の口坂本を結ぶ生活道であったことが窺われる。
空気は湿り気があるが、尾根上は涼しい。間断なく風が吹いており、登りでもほとんど汗をかかずにすむ。樹間から垣間見える稜線の上の方は雲がかかっているようだ。登りの勾配が緩やかになるとタケガダンへと続くなだらかな尾根となり、山毛欅の木々が目立つようになる。尾根上の踏み跡は不明瞭となるが、下草のほとんど見られない林床は快適に歩くことができる。足元には多くのキノコを目にする。HB氏はキノコにお詳しく、キノコを次々と同定しては教えて下さる。
山頂に近くなると快適な山毛欅の美林が広がる。山毛欅の葉はわずかに色づいている。タケガダンの山頂直下では樹にかけられた小さなプレートが目に入る。西の棚野坂へと至るこのルートを西畑越えと呼称されたようだ。
タケガダンの山頂を過ぎたあたり、三鈷杵のような風変わりなキノコがある。私は有り難さが全くわからないが、HB氏も初めてお目にかかるという非常に珍しいキノコだそうで、どうやらサンコタケというらしい。
オバタケダンへと向かうなだらかな尾根を辿ると、尾根には霧がかかり始める。尾根上には展望が開ける箇所があるが、霧の中から樹々のシルエットが淡く浮かびあがるばかりだ。時折、小雨がパラつくが、本格的に降る気配はないようだ。雨雲レーダーを確認するがこのあたりに雨雲は出てはいない。
オバタケダンの山頂の手前ではいくつかのタマゴタケに出会うことが出来た。今回の山行のもう一つの秘かな目的であった。早速、ランチのためにいくつかのタマゴタケを摘み取らせて頂く。
オバタケダンの山頂は西側が開けているが、この日は何も見えない。いつか天気の良い日に再訪したいものだ。山頂を後にするといよいよ若丹国境尾根に入る。尾根上は急に風が強くなる。この尾根のお陰でタケガダンからの尾根は風の陰に入っていたのだろう。
しばらく進むと「頭巾山→」と記された大きな道標が樹に架けられている。そのプレートには誰かが小さな文字で「堀越峠を越えてずっとずっと先」とうっすらと書き添えてあるのが読み取れる。オバタケダンと記すのはわかるがここに頭巾山への道標を懸けるのは果たして如何なものかと思ってしまう。少し先に進むと同じ木製の道標で、今度は「堀越峠→」と記されたものが現れた。
国境尾根は小さなピークのアップダウンを繰り返してゆくが、いずれも数十メートルほどのわずかな高低差である。距離は長いが高低差が少ないお陰で、山毛欅が多く見られる自然林の美しい林相が続く。尾根上に時折かかる霧が風景に変化を与えてくれる。
樹に巻かれた古いテープには「トレイル」と印刷された文字が読める。HBさんが注意深くテープを見ると「美」の文字も読めた。かつて整備された美山トレイルの名残だろう。
706m峰を過ぎたあたり、緩やかな尾根上には突如として行く手を遮るかのごとく畸形の山毛欅の樹が立ちはだかる。この異様な山毛欅の樹には山日和さんのrepと引き続く越前さんのresで見覚えがある。山日和さんの命名による宇宙人ブナだ。この樹の異様さに対する驚きはその裏側に回った時にさらに大きくなるのだった。なんと樹は半分に裂けており、半分だけで樹は屹立しているのであった。その異形の姿から感じられる強い生命力には畏怖の念を禁じ得ない。
知井坂へのおよそ半分ほどの行程にある721m峰のあたりでランチ休憩に丁度良い時間になる。ここまでオバタケダンから約1時間半である。知井坂まで1時間半、最終目的地の五波峠までさらにそこから1時間半ほどだろうと踏む。地図ではピークの東南に尾根に囲まれた小さな窪地がある。この窪地に降りるとそれまでの国境の強風が嘘のように風が全くない。
早速、尾根で摘んできたタマゴタケとベーコンを痛めて調理する。周囲には下草もほとんど見られず、なだらかな谷間はランチの時間をゆっくりと過ごすにはあまりにも快適な場所であった。
721m峰を後にすると尾根は南東へと方向を変える。それまでの広い尾根からいくぶん細尾根気味になる。なだらかな尾根を歩くうちに知井坂にたどり着くと、峠を越える明瞭な掘割の古道に出た。
ここからは歩きやすい一般登山道となる。の手前で尾根上の展望ちからはいよいよ八ヶ峰のピークである。しかし我々が山頂へと歩いている間に瞬く間にあたりは雲の中へと入ってゆく。この日の随一の好展望である筈の山頂にたどり着いた時にはここでも全て景色は霧の中であった。
尾根が広くなり、二重尾根となったところで尾根上の窪地に小さな緑色の池が現れる。特異な色に惹かれて池の畔に降りてみる。池の周囲は樹高の高いコナラやカエデの壮麗な林となっている。下草のほとんどない林床にあって、池の繁茂するイワヒメワラビと池の不透明な緑色がこの魅力的な空間の非現実性を際立たせているように思われる。
最後のピーク708mのピークは登山道から外れたところにあるが、自然林の吊り尾根が魅了的に思われたので、ピークに寄り道する。ここからは五波峠へとなだらかに尾根を下ってゆく。若狭側から登ってくる林道と合流すると、まもなく立派な石碑が佇む五波峠へたどり着くと、美しい林相の快適な尾根歩きが終わってしまうのが勿体無いと思われのであった。
今年の夏は激しいアップダウンを繰り返すアルプスの山行が続いたのだが、その後で味わうこの静寂に充ちた若丹国境の尾根歩きはまさに癒しの山行という感であった。