【比良】地蔵峠~ヒジキ滝~釣瓶岳☆奥比良の森に滝と巨木を訪ねる

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yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

【比良】地蔵峠~ヒジキ滝~釣瓶岳☆奥比良の森に滝と巨木を訪ねる

投稿記事 by yamaneko0922 »

【 日 付 】2019年6月16日(日曜日)
【 山 域 】比良 
【メンバー】山猫、家内、その他二人(KY, HB)
【 天 候 】曇り時々雨
【 ルート 】地蔵峠登山口9:19~9:50地蔵峠~9:56地蔵山10:02~10:27ヒジキ滝10:50~11:42イクワタ峠~12:15釣瓶岳12:23~14:07栗木田谷出合

6月半ばのこの時期、山行の前に見頃を迎えた畑の棚田を訪れることが前提であった。今回はKYさんとHBさんとご一緒させて頂く。車が二台あるので、一台は栗木田谷出合に我が家の車をデポした上で、HBさんの車で林道鵜川村井線の地蔵峠への登山口へと向かう。登山口から林道をわずかに戻ると好展望地があり、眼下には期待通り、畑の棚田が美しい緑の階段を見せてくれる。遠くの高島のあたりには雲の合間から陽が零れ落ちているようだ。
林道より棚田.jpg

林道からは最初は植林地の中をジグザグと歩くことになるが、すぐに自然林の中をゆく掘割の古道となる。コメカイ道の滋賀県側の道になる。今はほとんど歩く人も少ないこの道も、昔は栃生から畑の棚田で作られた米を買いにいく要路であったのあったのだろう。

地蔵峠からは一息で地蔵山に辿り着く。当初、雨上がりなのでヒルの危険性が高いので今回はヒジキ滝は止めておきましょうという話ではあったが、なんのその、全員一致でいざヒジキ滝へということになった。ヒルの危険性を危惧するメンバーではない・・・家内以外は。

地蔵山からは植林の尾根を下り、猪谷の源頭部へと下る。谷沿いには左岸の斜面にサワグルミの巨木が目に入る。ここからは再びコメカイ道である。しばらくは谷沿いの明瞭な踏み跡を辿るが、やがて道は左手の斜面のトラバース道へと入る。沢沿いにも踏み跡があるように思われるが、この踏み跡を辿ってはならないとKYさんが云う。昨年、ご夫婦が遭難し、遺体で発見されたのはここの下流だったと思われる。ご夫婦の冥福をお祈りする。

トラバース道を辿り、ヒジキ滝の手前に来ると危険箇所には真新しいトラロープが張られている。ロープがなければ通過に難儀したことと思われるが、ロープのお蔭で無事、通過して滝の下に出る。ヒジキ谷の左岸の斜面にも同じトラロープが張られている。登山道を綺麗に整備して下さっているのはyoutousha(ヤマレコのハンドル・ネーム)さんである。昨年の台風直後、釣瓶岳に登るべく、栃生からコメカイ道を登り、折り重なった倒木に進退極まったところ、チェーン・ソウを片手に森の中から忽然と現れ、ご自身で新たに整備された登山道へと案内して下さったのは忘れ難い思い出である。

やがて、ヒジキ谷に入るとうす暗い谷奥には緩やかに屈曲しながら落下する二段の滝が目に入る。滝は雨の後で水量も増えているのだろう。静かな谷に響く滝音が心地よい。
ヒジキ滝2.jpg

形のよいV字の谷を振り返ると、両側の斜面に聳える苔むしたトチノキの見事な巨木が目に入る。
ヒジキ谷のトチノキ.jpg


ヒジキ滝を後にすると・・・ヒジキ谷右岸を登って、イクワタ峠に向かうことにする。最初は急登ではあるが、登るにつれて徐々に傾斜も緩やかになってゆく。登り始めるとすぐにも尾根の上で蠢くものがいる。蝮だ!動いているので同定が容易であったが、そうでなければ植林の林床では保護色となり、気づかない可能性があっただろう。
蝮.jpg

尾根に取り付き始めた時には小降りであった雨がいよいよ本降りになる。各人レインウェアーを着て、再び尾根を辿り始めると尾根上には比良では珍しいほどの台杉の巨樹が次々と現れる。雨につややかに濡れて黒味を帯びたその樹肌は晴天の日とは異なる迫力を見せてくれているようだ。その杉の畸形の樹肌にはその昔、杉の木が貴重であった時代に杉材を求めてこの奥深い尾根まで登り、台杉の成長を見守ってきた杣人の眼差しが刻み込まれているのだろう。
芦生杉.jpg
尾根上には時折、馬酔木が密集した藪を形成してはいるものの概ね歩きやすく、上部に至ると山毛欅や楓からなる自然林のなだらかな尾根となる。先程までは本降りであった雨もいつしか上がり、地蔵峠からイクワタ峠に至る主稜線の手前では北側に斜面が開け、蛇谷ヶ峰の山容が大きく視界に飛び込む。残念ながら山頂部のみは雲に覆われているが、雲のせいで景色の壮大さが際立つ。
蛇谷ヶ峰
蛇谷ヶ峰

視界の開けた主稜線に出ると、正面に釣瓶岳が山頂部まで秀麗な姿を見せている。蛇谷ヶ峰の雲が晴れることを期待して釣瓶岳まで進むことにする。
釣瓶岳
釣瓶岳
しかし、山の天気は気まぐれである。背後に見える蛇谷ヶ峰を覆う雲がますます濃くなったかと思うと、釣瓶岳への登りも一瞬にして霧に包まれる。おまけに再び雨が降り始める。

釣瓶岳からはナガオに入り、北東へと伸びる最初の尾根を下ることにする。尾根の上部が広くて下降点がわかりにくかったが、左手に進むと植林の明瞭な尾根筋となる。地図の密集した等高線が示す通りにそれなりの急下降となるが、掘割の古道が尾根上には出現する。古道は随所でコアジサイに覆われ、コアジサイの藪を漕ぐところもあるが、お陰でルート・ファインディングに気を使う必要はない。コアジサイは大部分がまだ蕾の状態であるが、下るにつれて、ところどころで薄紫色の霞のような花が散見する。

杉の植林地が切れて自然林が広がり始めたところで、古道の脇の楓の樹の窪みに水が溜まり、周囲に紅い若葉が芽吹いているのを見つける。まるで天然の盆栽である。
盆栽.jpg
このあたりから尾根の形が非常に複雑だ。古道は左手の植林の尾根へと下ってゆくが、栗木田谷の出合まで尾根を辿るべく右手の自然林の尾根へと進む。しかし、急に尾根上の倒木が目立つようになる。

P575へと連なる尾根の一本、左手の尾根へと入り込んでいる。はて、右手に分岐する尾根は見当たらなかったが・・・と思いつつ尾根を登り返すと、分岐する尾根が目に入らなかった理由をすぐに理解する。尾根の分岐部は積み重なった多数の杉の倒木が視界を塞いでいたのである。杉の倒木を越えて尾根を進むが、p575までの間はひたすら倒木を跨ぐか潜るかであった。

p575峰を過ぎると尾根の形は不明瞭となり、なだらかではあるが複雑な形の斜面を下ってゆく。1/25,000の地図につけられた破線を目標に東の方角へと進む。やがて平坦な植林地の中にいくつもの段と苔むした石垣が出現する。かつての棚田がここにあったのだろう。成長した杉の状態からすると何十年も前に打ち捨てられたものだと思われる。

棚田跡の東の縁に廃道と思われる道の跡を見つける。それが地図上の破線であった。道も倒木や小さな崩落でかなり荒れてはいるが、やがて八地谷にかかる苔むした小さな橋が目に入る。橋を渡って林道を進むとすぐに駐車地に帰り着くのだった。

車で最初の登山口に戻ると、最後は予定通り、畑の棚田を訪れる。険しい山道を越えて朽木からこの畑まで米を買いに来た人々もこの光景に出会った瞬間にどれほどの安堵と悦びを覚えたことだろう。

途中の道路脇の広地に車を停めて、棚田の上部から景色を眺めていると、私と家内のすぐ目の前の休耕田をゆうゆうと横切る動物がいる。長いコッペパンのようにふさふさした尻尾!狐だ・・・と思った瞬間、向こうも我々の姿に気がついたようだ。一目散に棚田の上へと逃げていった。犬の姿形によく似ているのだが、その動きは極めて優美だ。前回に遭遇した能見峠でも思ったのだが、今回、初めて野生の狐を目にした家内も同様の印象だったようだ。

この棚田では秘かに楽しみにしているものがもう一つあった。棚田の一番上の民家で作っている蕗の佃煮である。家に帰り着いて山椒の香りがきいた蕗の佃煮を口にする瞬間、脳裏に美しい棚田の光景が蘇るのだった。優美な狐の姿態と共に。
山猫 🐾
グー(伊勢山上住人)
記事: 2223
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:10
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Re: 【比良】地蔵峠~ヒジキ滝~釣瓶岳☆奥比良の森に滝と巨木を訪ねる

投稿記事 by グー(伊勢山上住人) »

山猫さん、こんばんは。
(行ったことはありませんが)熱帯雨林の湿度です。
静かにしていてもじっとりと汗がにじみ出てきます。

投稿記事 by yamaneko0922 » 2019年6月25日(火) 22:51

レスが付かないですね。
グーの知らない山域ですが、どれどれ?なぜなのか探ってみよう。

6月半ばのこの時期、山行の前に見頃を迎えた畑の棚田を訪れることが前提であった。

へぇ~。棚田に見頃があるとは知らなかった。

林道より棚田.jpg

なるほど。稲が育って緑に覆われた田と、まだ水面が見えている田のパッチワークですか。

全員一致でいざヒジキ滝へということになった。ヒルの危険性を危惧するメンバーではない・・・家内以外は。

ヒルの危険性を危惧するグーです。
と言いながら今日はヒルの巣窟である宮の谷に行ってきました。
カメラを忘れてスマホで撮ったのですが、PCへの取り込みは明日になります。(できるのだろうか?)

昨年、ご夫婦が遭難し、遺体で発見されたのはここの下流だったと思われる。ご夫婦の冥福をお祈りする。

道迷い遭難は下っちゃダメ。登って登って山頂で救助を待つのが鉄則です。

ヒジキ滝の手前に来ると危険箇所には真新しいトラロープが張られている。

トラロープの耐用年数はどれほどなんだろうか?
今日、クレモナロープの耐用年数を調べる試験設定をしてきました。

蝮だ!動いているので同定が容易であったが、そうでなければ植林の林床では保護色となり、気づかない可能性があっただろう。

そう、保護色なんですよね。
ただ、踏みつけさえしなければ咬まれないのかも?
ナズナさんの歩いた後でマムシを見つけることが二度ありました。

(SHIGEKIさんは沢登りで岩の上に顔を上げたら目の前にマムシ。
 攻撃をとっさにかわして、ほほのかすり傷で済んだそうですが)

家に帰り着いて山椒の香りがきいた蕗の佃煮を口にする瞬間、脳裏に美しい棚田の光景が蘇るのだった。
優美な狐の姿態と共に。


うん。皆さんが期待しているyamaneko文学の優美さが少なくて、
コースの説明に紙面の大半を割いたのがレスの付かない原因ですね。
山猫さんへの期待が大きくなってしまって、並の山レポでは皆さん満足しなくなっちゃったのかも?


              言いたい放題の グー(伊勢山上住人)
sato
記事: 417
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【比良】地蔵峠~ヒジキ滝~釣瓶岳☆奥比良の森に滝と巨木を訪ねる

投稿記事 by sato »

山猫さま

こんにちは。
なじみの深い山域、コメントしようと思いつつ今日にいたってしまいました。
タイトルの「地蔵峠、ヒジキ滝、釣瓶岳」の順番に?と思いました。コメカイ道を辿り地蔵山に登られたのではなかったのですね。

コメカイ道を整備されている方がいらっしゃるのですね。
知人が数年前、歴史ある道が埋もれていくのを見て整備しようとお仲間と向かったのですが、なかなか難しいと聞いておりました。
滝周辺は足場が悪く、道も不明瞭でした。お一人で整備されているのでしょうか。
このような方がいらっしゃるおかげで、埋もれてしまう道がかろうじて保たれているのですね。頭が下がります。

釣瓶岳先からの北東尾根は、私も取り付きや降り口をその時の気分で変えながらブラブラしています。
昨年の台風以前は倒木も少なく歩き易かったのですが・・・。
栗木田谷をぐるりと周回して遊んでいます。
イクワタ峠北峰でぼぉっと景色を眺めるのが恒例です。

栗木田谷の最初の二股の右股(イン谷)から畑への山中は、以前は田畑が途切れなく続いていたようです。
植林の中に石積みが続いています。初めてこの光景を目にしたとき胸に迫るものを感じました。
地蔵峠への尾根に出たあたりにも棚田の跡があります。
山猫さんのレポを拝見し、比良の山中にひっそりと残る暮らしの痕跡を感じに出かけたくなりました。

sato
yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

Re: 【比良】地蔵峠~ヒジキ滝~釣瓶岳☆奥比良の森に滝と巨木を訪ねる

投稿記事 by yamaneko0922 »

グーさん

レスのつかないレポにわざわざコメントして下さり、有難うございます。
返信が遅くなり失礼いたしました。5月の下旬から毎週の出張が続いており、その間にも仕事が山積みになっていく日々です。

>皆さんが期待しているyamaneko文学の優美さが少なくて、
コースの説明に紙面の大半を割いたのがレスの付かない原因ですね。
山猫さんへの期待が大きくなってしまって、並の山レポでは皆さん満足しなくなっちゃったのかも?


私自身はレスを期待したり、あるいは読み物としてレベルの高いものを書こうと心掛けているわけではなく、備忘録として書いているところもありますので、そのように期待されても困惑するばかりです。致し方ありません。
最後に編集したユーザー yamaneko0922 [ 2019年7月03日(水) 12:36 ], 累計 1 回
山猫 🐾
yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

Re: 【比良】地蔵峠~ヒジキ滝~釣瓶岳☆奥比良の森に滝と巨木を訪ねる

投稿記事 by yamaneko0922 »

satoさん

折角、このレスのつかないレポにコメントを頂いたにも関わらず、返信が遅くなり、失礼いたしました。
5月から延々と出張が続いており、明日からも九州に出かけて参ります。その前に今日中に片づけなければならない原稿もあり・・・


>コメカイ道を整備されている方がいらっしゃるのですね。
知人が数年前、歴史ある道が埋もれていくのを見て整備しようとお仲間と向かったのですが、なかなか難しいと聞いておりました。
滝周辺は足場が悪く、道も不明瞭でした。お一人で整備されているのでしょうか。
このような方がいらっしゃるおかげで、埋もれてしまう道がかろうじて保たれているのですね。頭が下がります。


そうなんです。整備はあくまでもお一人でされておられます。この方の言葉をそっくり引用いたします。頭が下がると同時に、この方の想いには心打たれずにはいられません。
奥比良山系の急斜面に設けられている「コメカイ道」は、現在の世の中とは、異質の存在だと感じています。
「コメカイ道」は、昔の山里の人々が、生活の為に、切り開いた難路です。木炭を背負子に載せて、畑集落へ。米を背負って、朽木栃生へ、或いは、葛川へ戻る。昔の山里の人々の想いが、「コメカイ道」に浸み込んでいる様で、廃道になる事だけは、何とか、食い止めたいと考えています。これからも、合間をみて、出掛け、少しずつ、整備を行いたいと、考えています。
>栗木田谷の最初の二股の右股(イン谷)から畑への山中は、以前は田畑が途切れなく続いていたようです。
植林の中に石積みが続いています。初めてこの光景を目にしたとき胸に迫るものを感じました。
地蔵峠への尾根に出たあたりにも棚田の跡があります。


おそらく一体、誰がこのイン谷からの山中の棚田跡をおとなうのでしょうか。satoさん以外・・・
貴重な情報、有難うございます。

この奥比良の山域は非常に好きなところですが、また新たな魅力を知ることが出来た山行でした。
私も比良の山中に残る暮らしの痕を探しに出かけてみたいと思います。稲穂が垂れる秋の時期の棚田の景色も楽しみにしているので
山猫 🐾
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