【若丹国境】オバタケダンから八ヶ峰へ 静寂の縦走路
Posted: 2018年11月26日(月) 23:45
【日 付】2018年11月25日
【山 域】若丹国境
【天 候】晴れのち曇り
【コース】知見八原8:14---8:52巡視路取付き---9:57タケガダン---10:36オバタケダン---11:17鉄塔ピーク
---12:30 Ca730mランチ場13:45---14:44知井坂---15:02八ヶ峰15:30---16:25登山口---16:35駐車地
昨冬、初めてオバタケダンから少しだけ若丹国境稜線を縦走した。自分の先入観が間違っていたことを思い
知らされる、ブナ林の続く縦走路だった。稜線から坂本へ下山する分岐点で東の方を眺めた時、ブナの稜線が
まだまだ続いていることを知ってこの先を確かめたくなった。
南丹市の旧美山町の朝は低い雲に覆われ、強い冷え込みが体を包んでいた。今日の天気予報は晴れ。この雲
は放射冷却によるもので、ここが雲海の下だということは経験則でわかっている。
登山口の知見へ車を走らせる。美山の道は幾度となく走っているが、知見へ別れる道は初めてだ。
見たことのない風景は新鮮で、家から1時間半ほどの距離しかない場所なのにずいぶん遠くに来たように思える。
下山する知井坂の登山口を確かめて八原のバス停近くに車を止めた。こんなところまでちゃんとバスが来て
いるのに感心する。
車道を歩いて最奥の知見の集落へ向かう。東向きの谷間はいっぱいに朝陽を浴びて、さっきまでのうすら寒さ
がウソのようだ。500m以下の標高の場所は紅葉もまだ見頃で、山の斜面を彩る赤と黄のタペストリーが美しい。
集落を過ぎて林道に入る。目星を付けていた送電線の鉄塔巡視路の標識があった。谷あいの杉林の中にお馴染
みのプラ階段が続いている。隣の雑木林の尾根の方が魅力的に思えたが、グッと我慢してプラ階段を登って行っ
た。尾根に乗ると植林も終わり、隣と同じく自然林となる。
知見の集落手前から始まる尾根の末端から登ることも腹案としてあったのだが、現地を見てみると末端が墓地
になっていた。そこから登り始めるのはいくら何でもということでこっちへ回ってきたのである。
743m標高点のあるピークはタケガダンと呼ばれている。このピークの前後はブナ林が素晴らしく、葉の落ちた
この季節はそこそこの展望も楽しめる。これから歩く若丹国境稜線が目の前に横たわっており、その白っぽいラ
インが植林でないことを示している。
昨年登ったオバタケダンまで来た。前回はここでのんびりランチタイムとしたのだが、今日は時間が早い上に
先も長い。西から南の方向へ展望が開けているが、このあたりの山は特徴がなく、どれがどの山やらさっぱりわ
からない。この辺の山に詳しい人を奥美濃へ連れて行ったら同じことを言われるかもしれないが。
昨年は思いがけず雪の縦走路だったブナ林は落ち葉の絨毯を敷き詰めたプロムナードになっていた。
道はよく踏まれており、立派な道標もあって迷いようのない稜線歩きが続く。
前回稜線を離脱した鉄塔の立つピークまで来た。風が冷たい。冬型ゆえの風だと思っていたが、東の方から吹
いている。残りの行程を考えて、できるだけ前進してからランチとしよう。
国境稜線上は想像通りほぼ雑木混じりのブナ林が続いていた。細かいアップダウンが連続しているが、特に鞍
部状になった場所の丹波側斜面にいい森が見られた。若狭側は傾斜が急で、地形図の等高線の詰まり具合がその
まま目の前の風景として現れている。
稜線が北から東へ90度右折するCa730mピークの次のピークの北側に腰を降ろした。風も気になるほどではない。
場所としてはもっといいところがいくらでもあったのだが、気持ち良すぎるぐらい風が通り抜けるので初冬のラ
ンチ場としては不適当だ。
きっちり1時間半まったりとして靴を履こうとしたら体が固まってあちこちが痛い。これも年のせいだろうか。
ロボットのような歩き方でしばらく進むと体も温まってきたのか、スムーズに動くようになった。
天気予報通り、昼からは青空がほとんど消えて雲が空の大部分を占めるようになったが、今日は雨の心配はな
いだろう。オバタケダンから低いところで650m、高いところでも770m程度なので無いに等しいようなアップダ
ウンなのだが、それでもこれだけ連続するとジワジワと効いてくる。
稜線は特筆するような大木はないものの、相変わらずのブナ林で気持ちよく歩くことができる。
尾根の左側に突然広い道が現れた。知井坂は目の前だ。この国境稜線上では「坂」は峠あるいは峠に至る道を
表しているようで、昨年歩いた棚野坂や小黒坂(こちらは峠には峠の字が入っているが)など、「坂」のつく地名
が多い。「坂」という響きには昔の人が山なみを越えて山向こうの土地へ至る道程としての苦労のようなものが
偲ばれて、こころの中にすっと沁み込んでくるような気がする。その響きとは裏腹に、峠には林道が走り、風情
があふれているとは言えないのが少々残念ではあるが。
ここまで来れば八ヶ峰の山頂までは緩やかな登りを残すのみである。山頂に向かって一直線に切り開かれた登
山道を進めばわずかな時間で登りは終わった。
立派な標識と三角点がある小広い山頂は、盆栽のような松が数本立つ以外は潅木のみで、植生は魅力的とは言
えない。開けている分展望はそこそこだが、ここでも見える山の名前が特定できず、ただぼんやりと眺めている
のみである。
峠までそのまま引き返すのも面白くないので、北側に下りる道を辿ってみた。若狭側の知井坂を辿ってみよう
というわけだ。地形図にある林道の北側の破線を歩こうと思ったのだが、結局分岐を見つけられず林道を峠まで
戻ることになった。ただ林道の北側斜面はなかなかの樹林で、山頂まで尾根を辿った時には見られなかった風景
を見ることができたのはよかった。
知井坂の丹波側の道は素晴らしかった。勾配を最小限に抑えて斜面を巻き、尾根を折り返して付けられた道は
峠越えの古道特有の落ち着きがあり、そのラインの美しさは芸術的とすら言える。
その風景に残照を浴びて光る紅黄葉の森が散りばめられているのだから文句の付けようがない。
先月、大山の大休峠越の道を歩いた時のような心が温まるようなエピローグを迎えて若丹国境歩きの山旅を終えた。
山日和
【山 域】若丹国境
【天 候】晴れのち曇り
【コース】知見八原8:14---8:52巡視路取付き---9:57タケガダン---10:36オバタケダン---11:17鉄塔ピーク
---12:30 Ca730mランチ場13:45---14:44知井坂---15:02八ヶ峰15:30---16:25登山口---16:35駐車地
昨冬、初めてオバタケダンから少しだけ若丹国境稜線を縦走した。自分の先入観が間違っていたことを思い
知らされる、ブナ林の続く縦走路だった。稜線から坂本へ下山する分岐点で東の方を眺めた時、ブナの稜線が
まだまだ続いていることを知ってこの先を確かめたくなった。
南丹市の旧美山町の朝は低い雲に覆われ、強い冷え込みが体を包んでいた。今日の天気予報は晴れ。この雲
は放射冷却によるもので、ここが雲海の下だということは経験則でわかっている。
登山口の知見へ車を走らせる。美山の道は幾度となく走っているが、知見へ別れる道は初めてだ。
見たことのない風景は新鮮で、家から1時間半ほどの距離しかない場所なのにずいぶん遠くに来たように思える。
下山する知井坂の登山口を確かめて八原のバス停近くに車を止めた。こんなところまでちゃんとバスが来て
いるのに感心する。
車道を歩いて最奥の知見の集落へ向かう。東向きの谷間はいっぱいに朝陽を浴びて、さっきまでのうすら寒さ
がウソのようだ。500m以下の標高の場所は紅葉もまだ見頃で、山の斜面を彩る赤と黄のタペストリーが美しい。
集落を過ぎて林道に入る。目星を付けていた送電線の鉄塔巡視路の標識があった。谷あいの杉林の中にお馴染
みのプラ階段が続いている。隣の雑木林の尾根の方が魅力的に思えたが、グッと我慢してプラ階段を登って行っ
た。尾根に乗ると植林も終わり、隣と同じく自然林となる。
知見の集落手前から始まる尾根の末端から登ることも腹案としてあったのだが、現地を見てみると末端が墓地
になっていた。そこから登り始めるのはいくら何でもということでこっちへ回ってきたのである。
743m標高点のあるピークはタケガダンと呼ばれている。このピークの前後はブナ林が素晴らしく、葉の落ちた
この季節はそこそこの展望も楽しめる。これから歩く若丹国境稜線が目の前に横たわっており、その白っぽいラ
インが植林でないことを示している。
昨年登ったオバタケダンまで来た。前回はここでのんびりランチタイムとしたのだが、今日は時間が早い上に
先も長い。西から南の方向へ展望が開けているが、このあたりの山は特徴がなく、どれがどの山やらさっぱりわ
からない。この辺の山に詳しい人を奥美濃へ連れて行ったら同じことを言われるかもしれないが。
昨年は思いがけず雪の縦走路だったブナ林は落ち葉の絨毯を敷き詰めたプロムナードになっていた。
道はよく踏まれており、立派な道標もあって迷いようのない稜線歩きが続く。
前回稜線を離脱した鉄塔の立つピークまで来た。風が冷たい。冬型ゆえの風だと思っていたが、東の方から吹
いている。残りの行程を考えて、できるだけ前進してからランチとしよう。
国境稜線上は想像通りほぼ雑木混じりのブナ林が続いていた。細かいアップダウンが連続しているが、特に鞍
部状になった場所の丹波側斜面にいい森が見られた。若狭側は傾斜が急で、地形図の等高線の詰まり具合がその
まま目の前の風景として現れている。
稜線が北から東へ90度右折するCa730mピークの次のピークの北側に腰を降ろした。風も気になるほどではない。
場所としてはもっといいところがいくらでもあったのだが、気持ち良すぎるぐらい風が通り抜けるので初冬のラ
ンチ場としては不適当だ。
きっちり1時間半まったりとして靴を履こうとしたら体が固まってあちこちが痛い。これも年のせいだろうか。
ロボットのような歩き方でしばらく進むと体も温まってきたのか、スムーズに動くようになった。
天気予報通り、昼からは青空がほとんど消えて雲が空の大部分を占めるようになったが、今日は雨の心配はな
いだろう。オバタケダンから低いところで650m、高いところでも770m程度なので無いに等しいようなアップダ
ウンなのだが、それでもこれだけ連続するとジワジワと効いてくる。
稜線は特筆するような大木はないものの、相変わらずのブナ林で気持ちよく歩くことができる。
尾根の左側に突然広い道が現れた。知井坂は目の前だ。この国境稜線上では「坂」は峠あるいは峠に至る道を
表しているようで、昨年歩いた棚野坂や小黒坂(こちらは峠には峠の字が入っているが)など、「坂」のつく地名
が多い。「坂」という響きには昔の人が山なみを越えて山向こうの土地へ至る道程としての苦労のようなものが
偲ばれて、こころの中にすっと沁み込んでくるような気がする。その響きとは裏腹に、峠には林道が走り、風情
があふれているとは言えないのが少々残念ではあるが。
ここまで来れば八ヶ峰の山頂までは緩やかな登りを残すのみである。山頂に向かって一直線に切り開かれた登
山道を進めばわずかな時間で登りは終わった。
立派な標識と三角点がある小広い山頂は、盆栽のような松が数本立つ以外は潅木のみで、植生は魅力的とは言
えない。開けている分展望はそこそこだが、ここでも見える山の名前が特定できず、ただぼんやりと眺めている
のみである。
峠までそのまま引き返すのも面白くないので、北側に下りる道を辿ってみた。若狭側の知井坂を辿ってみよう
というわけだ。地形図にある林道の北側の破線を歩こうと思ったのだが、結局分岐を見つけられず林道を峠まで
戻ることになった。ただ林道の北側斜面はなかなかの樹林で、山頂まで尾根を辿った時には見られなかった風景
を見ることができたのはよかった。
知井坂の丹波側の道は素晴らしかった。勾配を最小限に抑えて斜面を巻き、尾根を折り返して付けられた道は
峠越えの古道特有の落ち着きがあり、そのラインの美しさは芸術的とすら言える。
その風景に残照を浴びて光る紅黄葉の森が散りばめられているのだから文句の付けようがない。
先月、大山の大休峠越の道を歩いた時のような心が温まるようなエピローグを迎えて若丹国境歩きの山旅を終えた。
山日和