【伯耆大山】地獄谷から振子山・大休峠へ周回
Posted: 2018年9月25日(火) 22:22
【日 付】2018年9月23日(日)
【山 域】伯耆大山周辺
【天 候】晴れのち曇り
【コース】一向平6:30---7:08大山滝---7:31地獄谷入渓点---9:45駒鳥小屋分岐10:05---11:52振子山12:53
---13:29野田ヶ山---13:56大休峠14:14---15:16大山滝15:31---16:00一向平
一向平(いっこうがなる)は大山の東麓、と言うより加勢蛇(かせち)川を遡った深い山中にある。
よく整備されたキャンプ場があり、日本の滝100選にも選ばれている大山滝散策の基地になっている。
今回初めて訪れたのだがなかなかいいところだ。
高原の散策路といった風情の遊歩道を大山滝に向けて歩き出した。途中で左岸に渡るのだが、その吊
橋への道が激下りの階段で、帰りに疲れた足でここを登るのかと思うとうんざりしそうだ。
途中でたたら師や木地師が住んでいた跡と書かれた看板などを見ながら大山滝に到着。本当なら流れま
で下りて滝と対峙したいところだが先は長い。滝の落ち口より高い展望台からの眺めだけで我慢して先
を急ぐ。
大休峠との分岐から地獄谷へ下りる。立派な標識があり、登山コースであることを示している。
加勢蛇川の上流である地獄谷は源流で槍ヶ峰や天狗ヶ峰へと突き上げており、その源頭部は大山の南北
両面同様、ボロボロの崩壊壁で手が付けられない。入渓点から駒鳥小屋あたりまではまったくの平流で、
地獄谷の名にふさわしくない穏やかな流れだ。やはりその源頭部の様子から名付けられたのだろうか。
今日の地獄谷は水量もそこそこで流れが速い。このコースは登山靴で歩く人が多いようだが、登山靴な
ら入渓点で撃沈していただろう。ヒザ下あたりまで濡らさずに歩くことは不可能だ。
滝と呼べるものがまったくない代わりに崩れかけた堰堤をいくつも越えて行くのがこの谷のポイントだ。
要所にはロープがあり、越えるのに苦労することもない。
幾度にも及ぶ水害で谷はかなり荒れが目立つ。先の大山滝は最初3段だったものが、昭和初期に2段に
なり、近年の水害ではついにほぼ1段になってしまった。荒れ河原を歩くだけの沢登りとはとても呼べ
ない谷歩きである。時々高い両岸の壁から大休滝、野田滝、夫婦滝といった滝が落ちているのが見どこ
ろか。一時はせき止められて小さな池ができていたこともあったらしいが、その痕跡も見つけられなか
った。谷が南へ向きを変えるあたりから落ち着いた渓相になり、やっと谷歩きらしくなった。
右岸から落ちる夫婦滝を過ぎれば間もなく駒鳥小屋の分岐。小屋は樹林の中にあり、谷筋からは視認
できなかった。
休んでいると長靴を履いた単独の女性が下流方向へ歩いて行った。どこから来たのだろう。相当このあ
たりの山に慣れていることは間違いなさそうである。
歩き出しの体の重さから、果たして今日のコースを歩き通せるのか不安だったが、ここまで想定通り
のペースで来ている。稜線まで頑張れば大丈夫だろう。
エスケープルートがないので、ここから戻るか歩き通すしか選択肢がないのだ。
本流と別れて右の振子沢に入った。ガレ沢が稜線まで続いているという勝手なイメージを抱いていた
のだが、現実は草木がぼうぼうに繁るヤブ沢だった。道がわからず水流沿いを歩くも、ヤブが被さって
鬱陶しいことこの上ない。一挙にモチベーションが下がってしまった。しばらく進んで左へ逃げるとそ
れなりに踏まれた道が現われ、テープも頻繁に付けられている。これは楽だ。ずっとあのヤブ沢を遡行
していたら気持ちが切れそうだった。
昭文社の地図では振子山の西の鞍部へ破線が続いているが、実際には左の1636mへ向かう谷に入って
から右の斜面を上がるように道が付けられていた。かなりの急登で青息吐息である。
50mほど余分な登りを強いられ、しかも地形図上の緩やかな源頭を予想していただけに余計疲れる。
稜線はササに挟まれて人ひとり通れる幅の道が続き、休む場所もない。仕方なく振子山(ふりこせん)
まで頑張ることにした。
その振子山とて一人座れば満席という狭い山頂だった。幸いなことに先客が出発して行ったので、わず
かなスペースに陣取ってランチタイムとする。
ここからは大山最高点の剣ヶ峰を始め、天狗ヶ峰、三鈷峰、烏ヶ山、矢筈ヶ山といった大山の雄峰が
一望できる。10数年前に歩いた槍尾根の荒々しい姿が懐かしい。もちろん日本海も間近に見えるのだが、
予想よりも雲が多く霞みがちなのが残念だ。
振子山からは急降下して次の親指ピークを目指す。このピークは特徴的で、遠望すればどこから取り
付くのかと思わせるが、近くまで来てみると普通に道がある。離れて見た時は複数のロープがぶら下が
っており、岩壁登りでもあるのかと思わせるので拍子抜けというところだ。
親指ピークを過ぎるとブナ林が始まる。次の野田ヶ山は単なる通過点のような地味な山頂で、一気に大
休峠を目指した。
大休峠は登山道の十字路になっており、立派な避難小屋がある。小屋前のベンチでも数人の登山者が
憩っていた。ここまで来れば下山したも同然、大休峠で大休止としゃれこもう。
今日の最大の収穫は大休峠からのブナ林だったかもしれない。一向平からこの峠を経て北側の川床へ
と下る道は大山の古道であり、以前歩いた川床側の道は素晴らしい樹林の中の道だった。一向平側も同
様で、傾斜を最小限に抑えて付けられた、いかにも峠越えの古道らしい雰囲気の道だった。
朝の地獄谷分岐手前までずっとブナ林が続き、満ち足りた気分で山行の締めくくりを迎えた。
もう一度大山滝の展望台に立ってパンをかじる。キャンプに来た子供連れの家族が滝つぼへ下りて行
ったがこちらはもうその気力もない。長い間温めていたこのコースを歩き通せた満足感に浸りながら、
ずっと滝を眺めていた。
山日和
【山 域】伯耆大山周辺
【天 候】晴れのち曇り
【コース】一向平6:30---7:08大山滝---7:31地獄谷入渓点---9:45駒鳥小屋分岐10:05---11:52振子山12:53
---13:29野田ヶ山---13:56大休峠14:14---15:16大山滝15:31---16:00一向平
一向平(いっこうがなる)は大山の東麓、と言うより加勢蛇(かせち)川を遡った深い山中にある。
よく整備されたキャンプ場があり、日本の滝100選にも選ばれている大山滝散策の基地になっている。
今回初めて訪れたのだがなかなかいいところだ。
高原の散策路といった風情の遊歩道を大山滝に向けて歩き出した。途中で左岸に渡るのだが、その吊
橋への道が激下りの階段で、帰りに疲れた足でここを登るのかと思うとうんざりしそうだ。
途中でたたら師や木地師が住んでいた跡と書かれた看板などを見ながら大山滝に到着。本当なら流れま
で下りて滝と対峙したいところだが先は長い。滝の落ち口より高い展望台からの眺めだけで我慢して先
を急ぐ。
大休峠との分岐から地獄谷へ下りる。立派な標識があり、登山コースであることを示している。
加勢蛇川の上流である地獄谷は源流で槍ヶ峰や天狗ヶ峰へと突き上げており、その源頭部は大山の南北
両面同様、ボロボロの崩壊壁で手が付けられない。入渓点から駒鳥小屋あたりまではまったくの平流で、
地獄谷の名にふさわしくない穏やかな流れだ。やはりその源頭部の様子から名付けられたのだろうか。
今日の地獄谷は水量もそこそこで流れが速い。このコースは登山靴で歩く人が多いようだが、登山靴な
ら入渓点で撃沈していただろう。ヒザ下あたりまで濡らさずに歩くことは不可能だ。
滝と呼べるものがまったくない代わりに崩れかけた堰堤をいくつも越えて行くのがこの谷のポイントだ。
要所にはロープがあり、越えるのに苦労することもない。
幾度にも及ぶ水害で谷はかなり荒れが目立つ。先の大山滝は最初3段だったものが、昭和初期に2段に
なり、近年の水害ではついにほぼ1段になってしまった。荒れ河原を歩くだけの沢登りとはとても呼べ
ない谷歩きである。時々高い両岸の壁から大休滝、野田滝、夫婦滝といった滝が落ちているのが見どこ
ろか。一時はせき止められて小さな池ができていたこともあったらしいが、その痕跡も見つけられなか
った。谷が南へ向きを変えるあたりから落ち着いた渓相になり、やっと谷歩きらしくなった。
右岸から落ちる夫婦滝を過ぎれば間もなく駒鳥小屋の分岐。小屋は樹林の中にあり、谷筋からは視認
できなかった。
休んでいると長靴を履いた単独の女性が下流方向へ歩いて行った。どこから来たのだろう。相当このあ
たりの山に慣れていることは間違いなさそうである。
歩き出しの体の重さから、果たして今日のコースを歩き通せるのか不安だったが、ここまで想定通り
のペースで来ている。稜線まで頑張れば大丈夫だろう。
エスケープルートがないので、ここから戻るか歩き通すしか選択肢がないのだ。
本流と別れて右の振子沢に入った。ガレ沢が稜線まで続いているという勝手なイメージを抱いていた
のだが、現実は草木がぼうぼうに繁るヤブ沢だった。道がわからず水流沿いを歩くも、ヤブが被さって
鬱陶しいことこの上ない。一挙にモチベーションが下がってしまった。しばらく進んで左へ逃げるとそ
れなりに踏まれた道が現われ、テープも頻繁に付けられている。これは楽だ。ずっとあのヤブ沢を遡行
していたら気持ちが切れそうだった。
昭文社の地図では振子山の西の鞍部へ破線が続いているが、実際には左の1636mへ向かう谷に入って
から右の斜面を上がるように道が付けられていた。かなりの急登で青息吐息である。
50mほど余分な登りを強いられ、しかも地形図上の緩やかな源頭を予想していただけに余計疲れる。
稜線はササに挟まれて人ひとり通れる幅の道が続き、休む場所もない。仕方なく振子山(ふりこせん)
まで頑張ることにした。
その振子山とて一人座れば満席という狭い山頂だった。幸いなことに先客が出発して行ったので、わず
かなスペースに陣取ってランチタイムとする。
ここからは大山最高点の剣ヶ峰を始め、天狗ヶ峰、三鈷峰、烏ヶ山、矢筈ヶ山といった大山の雄峰が
一望できる。10数年前に歩いた槍尾根の荒々しい姿が懐かしい。もちろん日本海も間近に見えるのだが、
予想よりも雲が多く霞みがちなのが残念だ。
振子山からは急降下して次の親指ピークを目指す。このピークは特徴的で、遠望すればどこから取り
付くのかと思わせるが、近くまで来てみると普通に道がある。離れて見た時は複数のロープがぶら下が
っており、岩壁登りでもあるのかと思わせるので拍子抜けというところだ。
親指ピークを過ぎるとブナ林が始まる。次の野田ヶ山は単なる通過点のような地味な山頂で、一気に大
休峠を目指した。
大休峠は登山道の十字路になっており、立派な避難小屋がある。小屋前のベンチでも数人の登山者が
憩っていた。ここまで来れば下山したも同然、大休峠で大休止としゃれこもう。
今日の最大の収穫は大休峠からのブナ林だったかもしれない。一向平からこの峠を経て北側の川床へ
と下る道は大山の古道であり、以前歩いた川床側の道は素晴らしい樹林の中の道だった。一向平側も同
様で、傾斜を最小限に抑えて付けられた、いかにも峠越えの古道らしい雰囲気の道だった。
朝の地獄谷分岐手前までずっとブナ林が続き、満ち足りた気分で山行の締めくくりを迎えた。
もう一度大山滝の展望台に立ってパンをかじる。キャンプに来た子供連れの家族が滝つぼへ下りて行
ったがこちらはもうその気力もない。長い間温めていたこのコースを歩き通せた満足感に浸りながら、
ずっと滝を眺めていた。
山日和