【オーストラリア】バンヤ山国立公園で野生のワラビーと戯れる
Posted: 2018年6月18日(月) 13:29
【 山 域 】オーストラリア・クイーンズランド州南東部
【メンバー】レベンテ、クリスタ、コーネル、ロッティ(以上、レベンテ一家)、ケイリン、シュークリーム
【 天 候 】快晴
【 ルート 】レベンテ家 11:00 --- 13:00 バンヤ山国立公園駐車場(昼食)14:00 --- 14:55 チムシー滝 --- 15:50 パインゴルジュ展望台 --- 17:00 駐車場 17:30 --- 19:30 レベンテ家
オーストラリアへ来て約1ヶ月。山へ行きたくても、あまりにだだっ広い土地で、車がなければ何処へも行けない。したがって、ヤブレポも書けないということでしばらくレスのみで我慢していた。ワークショップが終わった翌日に、慰労会もかねてバンヤ山国立公園にレベンテ一家と一緒に出かけることになった。これでようやくレポが書けそう。なにせ子供連れなんで、ヤブレポには程遠いですが、はるばる南半球からのレポということで我慢してくださいませm(__)m
ヤブレポとは言っても、目的の半分はオーストラリアレポなので、洞吹和尚なみのどうでもいい話が大半ですので、興味のない人はとばしてくださいませ。もっとも、とばしちゃうと中身が全くないかも。
Toowoombaはクイーンズランド州の州都ブリスベンから内陸部に120キロほど入った田舎町で、人口約16万人。ただし、広大な地域に住宅地がだだっ広く広がっているので、日本人から見るとただの田舎である。それでも、オーストラリアでは16番目に大きい都市なのだというから驚き。
クイーンズランド南部は亜熱帯地域に入り、気候は温暖なはずだったし、私もそのつもりで防寒具は最小限にしてきたのだが、今日の最高気温は13℃、最低気温は3℃だって。津市の真冬の気温である。しかも冷たい風が吹き荒れてるし。出発直前に意外と気温が低いのに気がついて、急遽トランクに入れたヒートテックが手放せない。これがなければ今頃は凍え死んでたかも。
Toowoombaはブリスベンから西に張り出した標高600mほどの広大な台地に広がった町で、単純計算でブリスベンよりは気温が3、4℃低いことになるので、まあそんなもんかもしれない。去年9月に来た時は確かに亜熱帯の気候で暑かったので、そのつもりで来たのが仇になった。確かに、ブーゲンビリアやハイビスカスなどの熱帯系の花があるし、ヤシの木のようなのも生えているし、亜熱帯に間違いはないんだろうけど、一方でナナカマドがちゃんと紅葉しているので、要するになんでもありなんである。
一体何のためにオーストラリアにきたのか?そういう野暮なことは聞かないでもらいたい。実は私にもわからないのである。友人のレベンテから「あんたを呼ぶ予算があるので、もし来る気があるんだったら申請してみるけど、どうする?」という話があって、「どうせ定年で暇だろうから行くわ」と返事したのがきっかけといえばきっかけである。
ちょっとだけ真面目な話を書くと、周知のように、オーストラリア大陸は他の大陸から孤立した大陸で、そのためにカンガルーなどの有袋類を初めとする独特な生物が進化してきた。私はウドンコカビというカビの研究者だが、このカビはオーストラリアでは独自の種類がいなくて、ほとんどすべて人間活動によって最近になってオーストラリアに持ち込まれたものであると考えられてきた。ほんとにオーストラリアには独自のウドンコカビがいないの?というのが私の興味である。この点で、レベンテも同じ興味を持っている。私は地球上のいろいろな地域でウドンコカビを見てきて、例えば南米大陸には何千万年も前に北米大陸からウドンコカビが侵入してきた証拠を見つけた。オーストラリア大陸はどうなんだろうねえということを考えてみたいのである。
レベンテが私を呼んだ理由の一つは、「あいつを放し飼いにしておけばきっと面白いものを見つけてくるだろう」という期待なのだと思う。その期待にたがわず、こっちに来てわずか1週間で変なものを見つけてしまった。レベンテにしてみれば「あたり!」といったところだが、これがなんなのかは解析がおわらなければわからない。まあ、これでこっちに呼んでもらった領収書は書けたようなもんだ。
レベンテ一家はハンガリー人である。2017年1月にヘッドハンティングされて南クイーンズランド大学に教授として移籍してきた。高等移民である。ハンガリーではある研究所の所長をしていたのだが、経済的に厳しく、ゆとりのある生活を求めて移住してきたということだ。ハンガリーは二度の世界大戦に敗れ、国土の6割を失った。レベンテは今のルーマニア領に生まれたが、生粋のハンガリー人であって、そのためかハンガリーに対して強い愛情を持っている。運転者などをしながら苦学して大学を卒業し、その後ハンガリーに移住した。そのような強い祖国愛を持った人間でも、生活のために離国を決断せざるを得ない現実がある。オーストラリアでの生活はハンガリーよりもはるかにいいという。
私は数年前にブダペストで半年間暮らしていたことがあって、第2の故郷と思うくらいブダペストが大好きなのだが、地元民にとってはそんなノスタルジーに浸ってはいられない現実があるのだと思う。
私が住むToowoombaの周囲にはたくさんの国立公園があって、国立公園を巡る旅をしたいと思う旅人のベースキャンプになる。残念ながら、公共交通機関はないので、行きたいと思うとレンタカーを借りて巡るしか手はない。バンヤ山国立公園はToowoombaの北西100キロのところにある広大な国立公園で、標高は1000m前後。ここの売りはバンヤ松 (Banya pine)と呼ばれる木である。ナンヨウスギの一種で、ナンキョクブナと並んで南半球を代表する樹木である。松と言っても松じゃなく、杉といっても杉じゃない、ナンヨウスギ科に分類される独自の樹木である。南米パタゴニア地方にはモンキーテイル(猿の尻尾)と呼ばれる樹木があるが、よく似ているなあと思ったら同じナンヨウスギの仲間だった。
さて、ようやくここから本題。レベンテ家を11時に出発。遅いと言ってはいけません。子供連れなのでしょうがないのです。一路西に向かい、その後北に進路を変える。見渡す限り地平線しか見えない広大なところをひた走る。一人登場人物の紹介を忘れていました。ケイリンはブリスベンのBRIPと呼ばれる標本庫で働いている研究員で、今度から半分はレベンテのところで働くことになったらしい。オーストラリア生まれ、オーストラリア育ちの生粋のオーストラリア人(オージー)である。派手なところがない落ち着いた感じの人で、私からするととっつきやすい。ノーザンテリトリー(北方地域)出身だそうだ。ちょっと古いけど、クロコダイルダンディーがいたようなところかな。 2時間ほどでバンヤ山国立公園の駐車場に着く。休日とあって人が多い。オーストラリア人は自然が大好きで、休日はこういうところで過ごすことが多いようだ。駐車場の周囲の芝地には沢山のワラビー(カンガルーの小さいやつ)が遊んでいる。奈良の鹿やサルみたいなもんだが、それよりもずっと上品で控えめである。 まずはサンドウイッチで昼食。頭上の木の枝にワライカワセミが止まっている。一体にオーストラリアには鳥類の種類が多いように思う。私の通勤路でもいつも何種類かの鳥がいて、目を楽しませてくれる。 ゆっくりと遊歩道を歩いていく。遊歩道沿いにはバンヤ松やイチジクの仲間の大木があって目を楽しませてくれる。ケイリンはキノコにも興味があるようで、キノコを採集している。私たちの目当てのウドンコカビはないようだ。 途中、チムシー滝という滝があるようなので、楽しみにしていたのだが、実際に来てみると水がチョロチョロとしか流れていない貧相な滝で、日本で美しい滝を見慣れた目には期待はずれ以外の感想は出てこなかった。まあ、この辺りの1ヶ月降水量は100ミリもないらしいので、こんなもんなのだろう。沢登りなんて望むべくもない。それでも人々は滝の下に佇んだりして楽しそうだ。 そこからまたのんびり歩いてパインゴルジュ展望台へ。最初、英語のgorgeの意味がわからなくて、ケイリンに聞いて初めて日本語のゴルジュだということが分かった。谷が狭まった地形だということで、確かにゴルジュのことだった。 パインゴルジュ展望台で休憩したのち、同じ道を駐車地まで戻る。この旅での一つの発見はGeographicaがオーストラリアでも使えることだった。国土地理院の地図はないが、ロードマップをあらかじめ一括ダウンロードしておけば日本と同じように使うことができる。国土地理院の地図ほど精密ではないが、自分がどこにいるかはわかる。もう一つ、スマホの言語設定を英語に変えるとGeographicaが英語を喋ることも新しい発見だった。
こちらは今1年で昼間が最も短い時期で、夕方5時を過ぎるとあっという間に暗くなる。駐車場近くになると薄暗くなってきたが、闇下にはならずに帰ることができた。薄暗くなった駐車場にはワラビーが降りてきて、芝生で食事中だ。 帰りの運転は闇の中。レベンテが言うようにワラビーが道に飛び出してきて、危ないことこの上もない。Toowoombaの近くの道でもワラビーが車にひかれて死んでいるのをよく見かける。ワラビーはバカなので、すぐに道に飛び出すのだという。ワラビーなどまだいいが、カンガルーは大きいので、カンガルーとぶつかると車の方が壊れてしまうそうだ。
帰り道で、オーストラリア人はイギリス人のことが嫌いだという話になって、オージーであるケイリンに聞くとやっぱり嫌いなんだそうな。理由は偉そうな態度をしているからだそうで、確かにイギリス人は大英帝国の気分を未だに引きずっているので、私もそういう風に感じることがある。ただ、個人的に付き合っている人たちは皆いい人たちで、全体的な雰囲気なのだそうな。オーストラリア人にとってイギリスは祖国みたいなものだと思っていたので、これは意外な話だった。
まあ、私に取っても中国は全体的にはあまり好きではないが、何人かいる中国人の友人は皆いい人たちなので、同じことなのかもしれない。レベンテ家で夕食をご馳走になり帰宅する。ちなみに今日歩いた距離は6.6キロだった。