【若狭】シャワー天国のうつろ谷から極上の森へ
Posted: 2017年8月01日(火) 23:12
【日 付】2017年7月30日(日)
【山 域】若狭 赤坂山周辺
【天 候】曇り時々晴れ
【メンバー】わしたか、山日和
【コース】うつろ谷出合8:22---12:10明王禿13:20---13:36赤坂山---15:10湯の花谷ゴルジュ上---15:53湯の花谷左岸尾根大トチ---16:30駐車地
目が覚めるとわしたかさんからラインが入っていた。「天気はアレですけど予定通りですよね?」
「天気がアレ?」窓を開けると雨が降って雷も鳴っている。ワチャーである。わしたかさんはもう集合場所に向かって走っているよう
なので、平静を装って「とりあえず行ってみよう」と返信したが、単独なら完全に二度寝の場面だ。
美浜のローソンに着いてみるとあーら不思議。青空まで覗いているではないか。山の方は雲がかかっているものの、ここへ来るまで
のザザ降りの雨を思えば天国のようなものである。モチベーションメーターはEから一気にFに振り切れた。気分を良くして腹ごしらえ
と買い物を済ませる。
本日の目的地は耳川折戸谷支流のうつろ谷。この界隈では一番滝が多い楽しい沢だ。ここ訪れるのももう6回目。何度来ても飽きな
いという証しだろう。
出合には重機が止められており、右岸の林道工事以外にも何か変わりそうな予感がする。
もっともこの沢の核心部は古くからある3番目の堰堤以降。渓相に影響が出ることはなさそうだ。
[attachment=7]P7300009_1_1.JPG[/attachment]
沢が90度右折するところに掛かる10m滝の出迎えを受ける。ここは深い釜を横断して右岸を上がるのだが、いきなり胸までどっぷり
水浸しの洗礼を受ける。一度濡れてしまえば後はヤケクソだ。
[attachment=6]P7300020_1.JPG[/attachment]
2番目の10m滝前にはお誂え向きのツルがぶら下がっており、童心に帰って水上ブランコを楽しむ。ここは通常の左岸巻きではなく、
右岸支流の2段滝から中間尾根へ逃げて落ち口へ。そして幅広の2段滝を越えるとうつろ谷最大の15m滝と対峙する。
昨夜からの雨で水量は多めだが、チョロチョロ流れる貧相な滝では迫力もないのでちょうどいいだろう。左岸の階段状の岩場はホール
ドも豊富でしっかりしているのだがぬめりが強く気が抜けない。慎重に上ってロープダウン。わしたかさんを確保して登ってもらう。
[attachment=5]P7300038_1.JPG[/attachment]
ここから先はまさに直登天国。平流がほとんど無く、すべての滝を直登できる、若狭では稀有な沢と言えるだろう。
お助け紐を駆使しながら、出てくる滝を片っ端から直登していく。
休憩した時にザックを降ろして驚いた。雨蓋に挟んでいたロープがない。後続のわしたかさんも気が付かなかったという。最後にロ
ープを出した8m滝まで戻って忠実に登って来たラインを辿ったが見つからない。どこへ消えてしまったのか。仕方がない、あきらめよ
う。どなたか見つけて回収してただけたら1割の2mカットして差し上げます。
[attachment=4]P7300105_1.JPG[/attachment]
核心部最後の2段15m滝は流芯を落ち口へ上がるところがポイントだ。まともに水流を食らいながら、流芯にあるフットホールドを探
り当てられればOK。しかしこれ以上水量が増えると吹き飛ばされそうだ。
ここから沢は渓相を一変して、延々とナメ床が続く癒しの空間となる。三国山への左俣を見送ると谷幅もぐっと狭まり、いくつかの
小滝があるだけのほぼ平流となった。県境稜線と平行して東進しながら、頃合いを見計らって左岸の斜面を上がればすぐに登山道に飛
び出す。ガスで何も見えない明王禿で、琵琶湖の景色を想像しながらランチタイムとしよう。
ここは人気の登山コースなのだが、天気予報のせいか単独者と大人数の高年パーティー1組に出会っただけだった。
[attachment=0]P7300132_1.JPG[/attachment]
ずっしりと重たくなったザックを背に赤坂山へ向う。ここか粟柄越の古道を下れば1時間ほどで下山完了だ。しかしそんな普通のこと
をする気はさらさら無く、以前から気になっていた湯の花谷の巡視路を探索してみることにした。
勘違いで巡視路の入口を見逃し、湯の花谷左俣(六セン谷)の源頭部をトラバースしながら進む。なかなかいいところだ。しかしいくら
進んでも巡視路に出ないので、尾根に乗って樹間に見える鉄塔を目指して進む。辿り着いた鉄塔の先には道らしきものが見当たらない。
協議の結果、次の鉄塔の頭頂部が見えているので、そこに向かって一直線に行こうと決定。尾根を下っていくと湯の花谷の二俣状の場
所に着いた。下流方面はゴルジュの様相だ。送電線はどうやら谷を渡って、対岸の尾根の鉄塔に延びているらしい。
対岸の尾根を少し上って、現われた獣道を利用してトラバースして行くと明瞭な巡視路に出た。左に下ると鉄塔だが、右折する分岐が
あり、巡視路の標識がある。これが望む方向を指している保証はないが、ここはひとつ乗ってみよう。
[attachment=3]P7300140_1.JPG[/attachment]
この巡視路が意外に荒れてもおらずいい道で、再び湯の花谷本流の小滝の上に下り立った。かなり崩れた炭焼窯跡と大きなトチがあ
り、実にいいところだ。この景色には見覚えがある。湯の花谷の大滝とそれに続く滝が構成するゴルジュを巻き終わった地点が足元の
小滝の下にある台地だ。小休止して顔を洗ったり水をがぶ飲みしたりして生き返った。
それにしてもゴルジュに挟まれたこの場所で焼いた炭を運ぶのは大変だったろうなと感心する。
[attachment=2]P7300156_1.JPG[/attachment]
巡視路は谷を渡って小尾根を上がる。そして次の小谷に現役の木橋が掛かっていた。橋を渡って少し上がったところから、予想通り
等高線に沿ったトラバースルートとなる。
この道の雰囲気が素晴らしく、大きなブナとトチが林立する見事な森が続いた。大抵のところは歩いているつもりのこの近辺でもまだ
まだ新しい発見があるものだ。しかしこの発見は感動ものである。
「ブヒッ」と叫び声を上げて動物が近くの斜面を駈け上がった。イノシシのようだ。まあ襲っては来ないだろうが、ずっと警戒の鼻息
を鳴らし続けているので足早に通り過ぎる。
[attachment=1]P7300163_1.JPG[/attachment]
次の鉄塔に出た。湯の花谷左岸尾根上の鉄塔と勘違いしたが、下の斜面に記憶にないブナ林がある。
標識に従ってさらにトラバースして行くと、またも大木が点在する斜面を経て正真正銘の左岸尾根に到着。ここへ来ればすぐ上にある
トチの長老に挨拶しないわけにはいかない。
ここから林道へは20分ばかり。まっすぐ下れば1時間で下りられるところを3時間かけて下山をたっぷり楽しむことができた。
やや迷走気味だったが、「いい沢だった」だけで終わらないのが自分らしさということにしておこう。
山日和
【山 域】若狭 赤坂山周辺
【天 候】曇り時々晴れ
【メンバー】わしたか、山日和
【コース】うつろ谷出合8:22---12:10明王禿13:20---13:36赤坂山---15:10湯の花谷ゴルジュ上---15:53湯の花谷左岸尾根大トチ---16:30駐車地
目が覚めるとわしたかさんからラインが入っていた。「天気はアレですけど予定通りですよね?」
「天気がアレ?」窓を開けると雨が降って雷も鳴っている。ワチャーである。わしたかさんはもう集合場所に向かって走っているよう
なので、平静を装って「とりあえず行ってみよう」と返信したが、単独なら完全に二度寝の場面だ。
美浜のローソンに着いてみるとあーら不思議。青空まで覗いているではないか。山の方は雲がかかっているものの、ここへ来るまで
のザザ降りの雨を思えば天国のようなものである。モチベーションメーターはEから一気にFに振り切れた。気分を良くして腹ごしらえ
と買い物を済ませる。
本日の目的地は耳川折戸谷支流のうつろ谷。この界隈では一番滝が多い楽しい沢だ。ここ訪れるのももう6回目。何度来ても飽きな
いという証しだろう。
出合には重機が止められており、右岸の林道工事以外にも何か変わりそうな予感がする。
もっともこの沢の核心部は古くからある3番目の堰堤以降。渓相に影響が出ることはなさそうだ。
[attachment=7]P7300009_1_1.JPG[/attachment]
沢が90度右折するところに掛かる10m滝の出迎えを受ける。ここは深い釜を横断して右岸を上がるのだが、いきなり胸までどっぷり
水浸しの洗礼を受ける。一度濡れてしまえば後はヤケクソだ。
[attachment=6]P7300020_1.JPG[/attachment]
2番目の10m滝前にはお誂え向きのツルがぶら下がっており、童心に帰って水上ブランコを楽しむ。ここは通常の左岸巻きではなく、
右岸支流の2段滝から中間尾根へ逃げて落ち口へ。そして幅広の2段滝を越えるとうつろ谷最大の15m滝と対峙する。
昨夜からの雨で水量は多めだが、チョロチョロ流れる貧相な滝では迫力もないのでちょうどいいだろう。左岸の階段状の岩場はホール
ドも豊富でしっかりしているのだがぬめりが強く気が抜けない。慎重に上ってロープダウン。わしたかさんを確保して登ってもらう。
[attachment=5]P7300038_1.JPG[/attachment]
ここから先はまさに直登天国。平流がほとんど無く、すべての滝を直登できる、若狭では稀有な沢と言えるだろう。
お助け紐を駆使しながら、出てくる滝を片っ端から直登していく。
休憩した時にザックを降ろして驚いた。雨蓋に挟んでいたロープがない。後続のわしたかさんも気が付かなかったという。最後にロ
ープを出した8m滝まで戻って忠実に登って来たラインを辿ったが見つからない。どこへ消えてしまったのか。仕方がない、あきらめよ
う。どなたか見つけて回収してただけたら1割の2mカットして差し上げます。
[attachment=4]P7300105_1.JPG[/attachment]
核心部最後の2段15m滝は流芯を落ち口へ上がるところがポイントだ。まともに水流を食らいながら、流芯にあるフットホールドを探
り当てられればOK。しかしこれ以上水量が増えると吹き飛ばされそうだ。
ここから沢は渓相を一変して、延々とナメ床が続く癒しの空間となる。三国山への左俣を見送ると谷幅もぐっと狭まり、いくつかの
小滝があるだけのほぼ平流となった。県境稜線と平行して東進しながら、頃合いを見計らって左岸の斜面を上がればすぐに登山道に飛
び出す。ガスで何も見えない明王禿で、琵琶湖の景色を想像しながらランチタイムとしよう。
ここは人気の登山コースなのだが、天気予報のせいか単独者と大人数の高年パーティー1組に出会っただけだった。
[attachment=0]P7300132_1.JPG[/attachment]
ずっしりと重たくなったザックを背に赤坂山へ向う。ここか粟柄越の古道を下れば1時間ほどで下山完了だ。しかしそんな普通のこと
をする気はさらさら無く、以前から気になっていた湯の花谷の巡視路を探索してみることにした。
勘違いで巡視路の入口を見逃し、湯の花谷左俣(六セン谷)の源頭部をトラバースしながら進む。なかなかいいところだ。しかしいくら
進んでも巡視路に出ないので、尾根に乗って樹間に見える鉄塔を目指して進む。辿り着いた鉄塔の先には道らしきものが見当たらない。
協議の結果、次の鉄塔の頭頂部が見えているので、そこに向かって一直線に行こうと決定。尾根を下っていくと湯の花谷の二俣状の場
所に着いた。下流方面はゴルジュの様相だ。送電線はどうやら谷を渡って、対岸の尾根の鉄塔に延びているらしい。
対岸の尾根を少し上って、現われた獣道を利用してトラバースして行くと明瞭な巡視路に出た。左に下ると鉄塔だが、右折する分岐が
あり、巡視路の標識がある。これが望む方向を指している保証はないが、ここはひとつ乗ってみよう。
[attachment=3]P7300140_1.JPG[/attachment]
この巡視路が意外に荒れてもおらずいい道で、再び湯の花谷本流の小滝の上に下り立った。かなり崩れた炭焼窯跡と大きなトチがあ
り、実にいいところだ。この景色には見覚えがある。湯の花谷の大滝とそれに続く滝が構成するゴルジュを巻き終わった地点が足元の
小滝の下にある台地だ。小休止して顔を洗ったり水をがぶ飲みしたりして生き返った。
それにしてもゴルジュに挟まれたこの場所で焼いた炭を運ぶのは大変だったろうなと感心する。
[attachment=2]P7300156_1.JPG[/attachment]
巡視路は谷を渡って小尾根を上がる。そして次の小谷に現役の木橋が掛かっていた。橋を渡って少し上がったところから、予想通り
等高線に沿ったトラバースルートとなる。
この道の雰囲気が素晴らしく、大きなブナとトチが林立する見事な森が続いた。大抵のところは歩いているつもりのこの近辺でもまだ
まだ新しい発見があるものだ。しかしこの発見は感動ものである。
「ブヒッ」と叫び声を上げて動物が近くの斜面を駈け上がった。イノシシのようだ。まあ襲っては来ないだろうが、ずっと警戒の鼻息
を鳴らし続けているので足早に通り過ぎる。
[attachment=1]P7300163_1.JPG[/attachment]
次の鉄塔に出た。湯の花谷左岸尾根上の鉄塔と勘違いしたが、下の斜面に記憶にないブナ林がある。
標識に従ってさらにトラバースして行くと、またも大木が点在する斜面を経て正真正銘の左岸尾根に到着。ここへ来ればすぐ上にある
トチの長老に挨拶しないわけにはいかない。
ここから林道へは20分ばかり。まっすぐ下れば1時間で下りられるところを3時間かけて下山をたっぷり楽しむことができた。
やや迷走気味だったが、「いい沢だった」だけで終わらないのが自分らしさということにしておこう。
山日和