【比良】14番目の月を背に武奈ヶ岳
Posted: 2017年7月12日(水) 22:02
【日 付】2017年7月8日(土)
【山 域】比良 武奈ヶ岳周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【コース】明王院0:00---1:51御殿山---2:42武奈ヶ岳7:10---7:35コヤマノ岳---8:13シャクシコバの頭---9:45牛コバ---10:17駐車地
誰がいるはずもない深夜の坊村。月影の道端に車を止めて歩き出した。
夜中に歩くのも慣れたもの。もうドキドキすることもない。登山口の明王院はライトアップと言うわけではないが明るく、この時間
の寺社にありがちな不気味さを感じさせない。
武奈ヶ岳の超メインルートである西南稜コースを歩くのは20年以上振りだろうか。道は実によく整備されており、ヘッデン歩行で
も不安を感じる場面はない。初めは植林の中だが、ジグザクに切られた道をひたすら登るうちにやがて自然林に変わった。
特に846m標高点を過ぎて南側の山腹をトラバースするあたりは、明るければ素晴らしい雰囲気の場所だと見て取れるのだが、この暗
闇の中では想像を巡らせるだけだ。
[attachment=5]IMG_1919_1.JPG[/attachment]
今宵は満月の前の夜。背後には14番目の月が輝いている。次の夜から欠ける満月より輝きに勢いがあると思えるのは歌のせいだけで
はないだろう。時折草むらで「ガサガサ」という音がするが、柳に風と受け流す。気軽なジョークを飛ばす相方もない単独の夜間登山
では闇にうごめく動物たちも友達だ。沈黙もまた大切な友達である。
[attachment=4]IMG_1934_1.JPG[/attachment]
高度を上げるに連れガスが上がって月もおぼろになってしまった。長い間登っていても山の気持ちは読み切れず、もどかしさが増す
ばかりだ。しかしそのおかげでいつまでもときめきが失われないのだろう。
2週前の蓬莱山に続いて今日もまた期待外れか。そんな恨み言も言わぬが花というもの。思い通りにならない天気も含めてそれが山
というものだ。
御殿山の先から樹林帯を抜け、西南稜という名前に相応しい爽快な稜線歩きになるのだが、今はヘッデンの光が照らす足元を見つめ
て歩を進めるだけだ。汗だくの体に当たる風が冷たいが上着を着る気にはならない。ここまで来れば登りにも終わりが見える。
ガスの向こうにぼんやりと浮かび上がった高い標柱。武奈ヶ岳の山頂到着だ。今日は山の位置からして夜景は期待していない。
明け方にはスッキリ晴れてご来光を拝むことができるだろうか。とりあえずはシェルターを設営して、枝豆とハムをアテに乾杯だ。
乾いた服に着替えてシェルターに入れば寒さはまったく感じない。
[attachment=3]IMG_1953_1.JPG[/attachment]
外が少し明るくなってきたようだ。シェルターの入口から顔を出して外を窺う。やっぱり今日もダメか。また今度だな。
100%の晴天が約束されていない日に登っているのだから仕方がない。
皮肉なもので、朝メシのカップ麺を食べている内にどんどん青空が広がってきた。下山するまでは好天に恵まれそうだ。これから向
かうコヤマノ岳がこんもりとブナ林に覆われているのがよくわかる。その右奥には先々週歩いた蓬莱山が見えた。
[attachment=2]IMG_1958_1.JPG[/attachment]
八雲ヶ原方面に向かって歩き始めると、コヤマノ岳の分岐あたりで登山者が登って来て驚いた。イン谷口からこの時間にここへ来る
ためには4時頃には出発しないといけないだろう。もっとも向こうもこんな時間に下山する人に会って驚いただろうが。
比良山地では武奈ヶ岳に次ぐ標高を持つコヤマノ岳は、地味な存在だが見事なブナ林が広がっている。特に西面の口ノ深谷側は素晴
らしい。口ノ深谷は5回も遡行した沢だが、この前に歩いたのは何時だったろうか。その頃はあまり樹林の良さを意識していなかった
のかもしれない。
[attachment=1]IMG_1973_1.JPG[/attachment]
西南稜のワサビ峠と金糞峠を結ぶ中峠を過ぎると道はこれまでのように登山道然とした感じではなくなる。と言っても必要にして十
分な踏み跡である。
1121mのシャクシコバの頭で南の小川新道を辿るか、牛コバへダイレクトに下りる南西尾根にするか思案する。一般登山道歩きだけ
で終わってしまうのもらしくないので少しはバリっぽいルートを選ぼう。
この南西尾根もそこそこ歩かれているようでマーキングが続いていた。一部植林帯があるものの、なかなかいい尾根だ。
ほとんど人に会わずに武奈ヶ岳に登るにはいいルートだろう。突然驚くような杉の巨木があったりして面白い。
[attachment=0]IMG_2018_1.JPG[/attachment]
もう少しで牛コバというところでちょっと古いが立派な道標が現われて驚いた。奥ノ深谷方面と口ノ深谷方面への案内と時間が書か
れていた。今はどちらへも道はない。後で調べてみると、この道は旧志賀町と大津市の境界に沿って付けられたようで、境界策定のた
めの道のようだ。このラインを見ると登山道として使う意味はほとんどないように思われる。
ほとんどヤブ無しで林道へ下り立つと、ちょうど口ノ深谷の遡行者が入渓したところだった。また今度久しぶりに入ってみよう。
時刻はまだ10時前。今から帰れば半日を有効に使える。湖西フリーウェイに乗って家路につこう。
山日和
【山 域】比良 武奈ヶ岳周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【コース】明王院0:00---1:51御殿山---2:42武奈ヶ岳7:10---7:35コヤマノ岳---8:13シャクシコバの頭---9:45牛コバ---10:17駐車地
誰がいるはずもない深夜の坊村。月影の道端に車を止めて歩き出した。
夜中に歩くのも慣れたもの。もうドキドキすることもない。登山口の明王院はライトアップと言うわけではないが明るく、この時間
の寺社にありがちな不気味さを感じさせない。
武奈ヶ岳の超メインルートである西南稜コースを歩くのは20年以上振りだろうか。道は実によく整備されており、ヘッデン歩行で
も不安を感じる場面はない。初めは植林の中だが、ジグザクに切られた道をひたすら登るうちにやがて自然林に変わった。
特に846m標高点を過ぎて南側の山腹をトラバースするあたりは、明るければ素晴らしい雰囲気の場所だと見て取れるのだが、この暗
闇の中では想像を巡らせるだけだ。
[attachment=5]IMG_1919_1.JPG[/attachment]
今宵は満月の前の夜。背後には14番目の月が輝いている。次の夜から欠ける満月より輝きに勢いがあると思えるのは歌のせいだけで
はないだろう。時折草むらで「ガサガサ」という音がするが、柳に風と受け流す。気軽なジョークを飛ばす相方もない単独の夜間登山
では闇にうごめく動物たちも友達だ。沈黙もまた大切な友達である。
[attachment=4]IMG_1934_1.JPG[/attachment]
高度を上げるに連れガスが上がって月もおぼろになってしまった。長い間登っていても山の気持ちは読み切れず、もどかしさが増す
ばかりだ。しかしそのおかげでいつまでもときめきが失われないのだろう。
2週前の蓬莱山に続いて今日もまた期待外れか。そんな恨み言も言わぬが花というもの。思い通りにならない天気も含めてそれが山
というものだ。
御殿山の先から樹林帯を抜け、西南稜という名前に相応しい爽快な稜線歩きになるのだが、今はヘッデンの光が照らす足元を見つめ
て歩を進めるだけだ。汗だくの体に当たる風が冷たいが上着を着る気にはならない。ここまで来れば登りにも終わりが見える。
ガスの向こうにぼんやりと浮かび上がった高い標柱。武奈ヶ岳の山頂到着だ。今日は山の位置からして夜景は期待していない。
明け方にはスッキリ晴れてご来光を拝むことができるだろうか。とりあえずはシェルターを設営して、枝豆とハムをアテに乾杯だ。
乾いた服に着替えてシェルターに入れば寒さはまったく感じない。
[attachment=3]IMG_1953_1.JPG[/attachment]
外が少し明るくなってきたようだ。シェルターの入口から顔を出して外を窺う。やっぱり今日もダメか。また今度だな。
100%の晴天が約束されていない日に登っているのだから仕方がない。
皮肉なもので、朝メシのカップ麺を食べている内にどんどん青空が広がってきた。下山するまでは好天に恵まれそうだ。これから向
かうコヤマノ岳がこんもりとブナ林に覆われているのがよくわかる。その右奥には先々週歩いた蓬莱山が見えた。
[attachment=2]IMG_1958_1.JPG[/attachment]
八雲ヶ原方面に向かって歩き始めると、コヤマノ岳の分岐あたりで登山者が登って来て驚いた。イン谷口からこの時間にここへ来る
ためには4時頃には出発しないといけないだろう。もっとも向こうもこんな時間に下山する人に会って驚いただろうが。
比良山地では武奈ヶ岳に次ぐ標高を持つコヤマノ岳は、地味な存在だが見事なブナ林が広がっている。特に西面の口ノ深谷側は素晴
らしい。口ノ深谷は5回も遡行した沢だが、この前に歩いたのは何時だったろうか。その頃はあまり樹林の良さを意識していなかった
のかもしれない。
[attachment=1]IMG_1973_1.JPG[/attachment]
西南稜のワサビ峠と金糞峠を結ぶ中峠を過ぎると道はこれまでのように登山道然とした感じではなくなる。と言っても必要にして十
分な踏み跡である。
1121mのシャクシコバの頭で南の小川新道を辿るか、牛コバへダイレクトに下りる南西尾根にするか思案する。一般登山道歩きだけ
で終わってしまうのもらしくないので少しはバリっぽいルートを選ぼう。
この南西尾根もそこそこ歩かれているようでマーキングが続いていた。一部植林帯があるものの、なかなかいい尾根だ。
ほとんど人に会わずに武奈ヶ岳に登るにはいいルートだろう。突然驚くような杉の巨木があったりして面白い。
[attachment=0]IMG_2018_1.JPG[/attachment]
もう少しで牛コバというところでちょっと古いが立派な道標が現われて驚いた。奥ノ深谷方面と口ノ深谷方面への案内と時間が書か
れていた。今はどちらへも道はない。後で調べてみると、この道は旧志賀町と大津市の境界に沿って付けられたようで、境界策定のた
めの道のようだ。このラインを見ると登山道として使う意味はほとんどないように思われる。
ほとんどヤブ無しで林道へ下り立つと、ちょうど口ノ深谷の遡行者が入渓したところだった。また今度久しぶりに入ってみよう。
時刻はまだ10時前。今から帰れば半日を有効に使える。湖西フリーウェイに乗って家路につこう。
山日和