【飛騨】弓ヶ洞谷左俣から三方崩山に届かず
Posted: 2017年4月18日(火) 23:46
【日 付】2017年4月16日(日)
【山 域】飛騨 三方崩山周辺
【天 候】晴れ一時曇り
【コース】弓ヶ洞谷出合6:15---7:35二俣7:50---8:50 P1396m西コル9:15---12:10 P1956m 13:20---14:35弓ヶ洞谷二俣---15:30駐車地
スタートする時に抜けるような青空が頭上に広がっているのは久し振りのような気がする。
白山の北東、庄川支流の弓ヶ洞谷を訪れるのは2度目だ。ここは積雪期限定の山スキーヤー御用達の谷である。
下流部は大きく開けた緩やかな谷だが、二俣を過ぎると両岸が立ち、雪崩の巣窟のような急峻な傾斜で尾根へ突き上げている。
4月も半ばとなればそろそろ賞味期限の終わる頃。雪の状態はどうだろうか。
[attachment=6]IMG_0327_1.JPG[/attachment]
盼雲(かえりぐも)橋の駐車地に着くと、単独のスキーヤーが準備をしていた。挨拶して先発する。
通常は左岸の林道を進んで谷に入るのだが、今日は右岸の雨量計からヤブっぽい林に突っ込む。前回の下りで右岸を使った時、美しい
樹林と心地よい小川の流れが印象的だったからだ。
少しだけ鬱陶しいのを我慢すれば、すぐに雪に覆われた樹林の台地を歩くようになる。ここでスノーシューを装着。
台地の山側には雪を割って流れる小川がさわやかだ。効率はいいものの潤いの少ない林道を行くより優れたアプローチだと思う。
[attachment=7]IMG_0334_1_1.JPG[/attachment]
樹林を抜けると一面の大雪原が広がった。三方崩山北側の稜線も正面のはるか高みに望むことができる。
雪がなければ荒れ河原が広がる殺伐とした風景があるだけだろう。
見通しのいいところというのは、近いように見えてなかなか近付かないのが習いである。二俣もすぐそこに見えているのに結構時間
が掛かった。
二俣に着いて昨年歩いた右俣を見ると、出合の上から始まる連瀑帯が完全に露出していた。これではとてもスキーどころではないな。
右俣は完全に賞味期限切れである。
[attachment=5]IMG_0362_1.JPG[/attachment][attachment=0]IMG_0371_1.JPG[/attachment]
左俣の堰堤を左から越えると3連の堰堤が現われる。弓ヶ洞谷は砂防堰堤の谷でもある。
二俣のから上は流れが完全に雪に埋もれている。堰堤の下から右岸の支流に取り付いた。1369mピーク南西の鞍部に突き上げる小谷だ。
雪が詰まった谷を快適に高度を上げるとあたりはブナの森に変わった。
鞍部の雰囲気も実に良く、1369mピークに寄り道したい気持ちを抑えて1534mへの急登にかかる。ところがそれまでの快調さはどこへ消
えたのか、急に足が重くなった。それに加えて雪の表面が意外に緩く、足を置くだけでピタッと止まらない状況が疲れを呼ぶ。
こんないい天気なのにどこでやめようか考え始めている自分が情けない。
とにかく1534mまで登らなければ話にもならないのでひたすら登る。
[attachment=3]パノラマ4_1_1.jpg[/attachment]
ピークというより台地状の1534mに着くと景色が変わった。ここまでの優しいブナ林から荒々しい雪稜が目立つダイナミックな展望が
広がる。高度的にもブナからダケカンバやオオシラビソに変わる境目である。
平瀬からの登山道が合流する1956mピークは目の上はるかに聳えている。
とにかく行くしかないと足を前に出す。1700mを超えたあたりで傾斜が強まり、スノーシューでは足元が心許ないのでアイゼンに換装。
手にはピッケルと極端に短くしたシングルストックの2丁拳銃だ。雪がもう少し締まっていればスノーシューでもこなせる斜度だが、表
面がズルズルで流れると止めるのに消耗するのでアイゼンの方が精神衛生的にもいい。
雪面には春の風物詩であるクレバスがところどころに口を開けているので油断できない。2~3mはあるクレバスが3ヶ所。ぶつかるたび
に迂回するが、あまり気持ちのいいものではない。
[attachment=4]IMG_0443_1.JPG[/attachment]
青息吐息でやっと1956mピークに到着。出発からなんと6時間もかかってしまった。
ここまで来てようやく見える三方崩山の頂上は指呼の間だがもう前進する気力がない。
今日はここまでで勘弁してやろう。ここは自分の生まれた年と同じ高さのピークだ。これも何かの縁なのだろう。
平瀬からのトレースは無い。本日の三方崩山の登山者はゼロというわけだ。
抜けるような青空もいつしか雲に覆われてしまった。
高度感たっぷりで展望は申し分ないのでランチには最適である。庄川対岸の猿ヶ馬場山や三ヶ辻山、人形山、奥には金剛堂山。
白山北方の猿ヶ山や、南側には日照岳も見える。足元からは大ノマ谷が一気に落ち込み、はるか下方の庄川本流は上流の御母衣ダム湖
の緑色に光る湖水に吸い込まれて行く。
[attachment=2]パノラマ1_1.jpg[/attachment]
下山は往路を戻ってP1369m経由だと思っていたが、弓ヶ洞谷側の斜面を見て気が変わった。斜度は多少きついが雪が緩んでいるの
で危険は感じない。それに元々の計画通りに進行していれば下るつもりだった谷だから、半分予定通りみたいなものだ。
ただ、あまりに雪が緩み過ぎてお世辞にも快適とは言えない。アイゼン歩行だとヒザ近くまで潜ることもしばしばである。
そこでシートを取り出してシリセードに切り替えた。歩けばあれだけ潜るのに、接地面積が広いと結構なスピードで滑り出す。
雪面はガタガタなのでショックが大きく、こちらもあまり快適ではないのだが仕事だけは速い。
標高差400mほどを滑り降りると、この谷を並行して落ちる弓ヶ洞谷左俣本流との出合だ。このあたりは雪崩跡が谷一面を埋め尽くす
デブリのワンダーランドである。今朝会ったスキーヤーも右俣がダメで左俣もこれだと滑る場所がなかったに違いない。
本流の方は岩壁が屹立して鬼気迫る様相を見せている。
[attachment=1]IMG_0469_2_1.JPG[/attachment]
ここからは安全地帯。二俣の下流ほどではないものの、どこでも自由に歩ける広い雪渓が二俣まで続いた。しかし油断すると突然目
の前の雪原が消えてしまう時がある。下から来れば丸見えなのだが、そこには堰堤が隠れているのだ。
まあ、ジャンプしたところでケガをすることはないのだが、雪に埋もれて脱出できなくなると困る。
二俣からは左岸ルートを選んで、春の恵みを頂きながらのんびりと歩いた。こんな林道歩きも悪くないものだ。
山日和
【山 域】飛騨 三方崩山周辺
【天 候】晴れ一時曇り
【コース】弓ヶ洞谷出合6:15---7:35二俣7:50---8:50 P1396m西コル9:15---12:10 P1956m 13:20---14:35弓ヶ洞谷二俣---15:30駐車地
スタートする時に抜けるような青空が頭上に広がっているのは久し振りのような気がする。
白山の北東、庄川支流の弓ヶ洞谷を訪れるのは2度目だ。ここは積雪期限定の山スキーヤー御用達の谷である。
下流部は大きく開けた緩やかな谷だが、二俣を過ぎると両岸が立ち、雪崩の巣窟のような急峻な傾斜で尾根へ突き上げている。
4月も半ばとなればそろそろ賞味期限の終わる頃。雪の状態はどうだろうか。
[attachment=6]IMG_0327_1.JPG[/attachment]
盼雲(かえりぐも)橋の駐車地に着くと、単独のスキーヤーが準備をしていた。挨拶して先発する。
通常は左岸の林道を進んで谷に入るのだが、今日は右岸の雨量計からヤブっぽい林に突っ込む。前回の下りで右岸を使った時、美しい
樹林と心地よい小川の流れが印象的だったからだ。
少しだけ鬱陶しいのを我慢すれば、すぐに雪に覆われた樹林の台地を歩くようになる。ここでスノーシューを装着。
台地の山側には雪を割って流れる小川がさわやかだ。効率はいいものの潤いの少ない林道を行くより優れたアプローチだと思う。
[attachment=7]IMG_0334_1_1.JPG[/attachment]
樹林を抜けると一面の大雪原が広がった。三方崩山北側の稜線も正面のはるか高みに望むことができる。
雪がなければ荒れ河原が広がる殺伐とした風景があるだけだろう。
見通しのいいところというのは、近いように見えてなかなか近付かないのが習いである。二俣もすぐそこに見えているのに結構時間
が掛かった。
二俣に着いて昨年歩いた右俣を見ると、出合の上から始まる連瀑帯が完全に露出していた。これではとてもスキーどころではないな。
右俣は完全に賞味期限切れである。
[attachment=5]IMG_0362_1.JPG[/attachment][attachment=0]IMG_0371_1.JPG[/attachment]
左俣の堰堤を左から越えると3連の堰堤が現われる。弓ヶ洞谷は砂防堰堤の谷でもある。
二俣のから上は流れが完全に雪に埋もれている。堰堤の下から右岸の支流に取り付いた。1369mピーク南西の鞍部に突き上げる小谷だ。
雪が詰まった谷を快適に高度を上げるとあたりはブナの森に変わった。
鞍部の雰囲気も実に良く、1369mピークに寄り道したい気持ちを抑えて1534mへの急登にかかる。ところがそれまでの快調さはどこへ消
えたのか、急に足が重くなった。それに加えて雪の表面が意外に緩く、足を置くだけでピタッと止まらない状況が疲れを呼ぶ。
こんないい天気なのにどこでやめようか考え始めている自分が情けない。
とにかく1534mまで登らなければ話にもならないのでひたすら登る。
[attachment=3]パノラマ4_1_1.jpg[/attachment]
ピークというより台地状の1534mに着くと景色が変わった。ここまでの優しいブナ林から荒々しい雪稜が目立つダイナミックな展望が
広がる。高度的にもブナからダケカンバやオオシラビソに変わる境目である。
平瀬からの登山道が合流する1956mピークは目の上はるかに聳えている。
とにかく行くしかないと足を前に出す。1700mを超えたあたりで傾斜が強まり、スノーシューでは足元が心許ないのでアイゼンに換装。
手にはピッケルと極端に短くしたシングルストックの2丁拳銃だ。雪がもう少し締まっていればスノーシューでもこなせる斜度だが、表
面がズルズルで流れると止めるのに消耗するのでアイゼンの方が精神衛生的にもいい。
雪面には春の風物詩であるクレバスがところどころに口を開けているので油断できない。2~3mはあるクレバスが3ヶ所。ぶつかるたび
に迂回するが、あまり気持ちのいいものではない。
[attachment=4]IMG_0443_1.JPG[/attachment]
青息吐息でやっと1956mピークに到着。出発からなんと6時間もかかってしまった。
ここまで来てようやく見える三方崩山の頂上は指呼の間だがもう前進する気力がない。
今日はここまでで勘弁してやろう。ここは自分の生まれた年と同じ高さのピークだ。これも何かの縁なのだろう。
平瀬からのトレースは無い。本日の三方崩山の登山者はゼロというわけだ。
抜けるような青空もいつしか雲に覆われてしまった。
高度感たっぷりで展望は申し分ないのでランチには最適である。庄川対岸の猿ヶ馬場山や三ヶ辻山、人形山、奥には金剛堂山。
白山北方の猿ヶ山や、南側には日照岳も見える。足元からは大ノマ谷が一気に落ち込み、はるか下方の庄川本流は上流の御母衣ダム湖
の緑色に光る湖水に吸い込まれて行く。
[attachment=2]パノラマ1_1.jpg[/attachment]
下山は往路を戻ってP1369m経由だと思っていたが、弓ヶ洞谷側の斜面を見て気が変わった。斜度は多少きついが雪が緩んでいるの
で危険は感じない。それに元々の計画通りに進行していれば下るつもりだった谷だから、半分予定通りみたいなものだ。
ただ、あまりに雪が緩み過ぎてお世辞にも快適とは言えない。アイゼン歩行だとヒザ近くまで潜ることもしばしばである。
そこでシートを取り出してシリセードに切り替えた。歩けばあれだけ潜るのに、接地面積が広いと結構なスピードで滑り出す。
雪面はガタガタなのでショックが大きく、こちらもあまり快適ではないのだが仕事だけは速い。
標高差400mほどを滑り降りると、この谷を並行して落ちる弓ヶ洞谷左俣本流との出合だ。このあたりは雪崩跡が谷一面を埋め尽くす
デブリのワンダーランドである。今朝会ったスキーヤーも右俣がダメで左俣もこれだと滑る場所がなかったに違いない。
本流の方は岩壁が屹立して鬼気迫る様相を見せている。
[attachment=1]IMG_0469_2_1.JPG[/attachment]
ここからは安全地帯。二俣の下流ほどではないものの、どこでも自由に歩ける広い雪渓が二俣まで続いた。しかし油断すると突然目
の前の雪原が消えてしまう時がある。下から来れば丸見えなのだが、そこには堰堤が隠れているのだ。
まあ、ジャンプしたところでケガをすることはないのだが、雪に埋もれて脱出できなくなると困る。
二俣からは左岸ルートを選んで、春の恵みを頂きながらのんびりと歩いた。こんな林道歩きも悪くないものだ。
山日和