【越美国境】ヤマネと戯れたガンドウ尾根から金草岳
Posted: 2017年3月28日(火) 23:23
【日 付】2017年3月26日(日)
【山 域】越美国境 金草岳
【天 候】晴れのち曇りのち小雪のち雨
【コース】芋ヶ平7:21---7:58尾根取付き点---9:42町境P920m---11:03ブナ平---11:44金草岳12:00---12:22ブナ平13:40---
14:28 P920m 14:48---15:46 P610m---16:26芋ヶ平
またも5時間半に及ぶマンションの理事会が終わった。このままビールを飲んでまったりしたい気持ちを抑えて山に向かう。
ヒザの調子は相変わらず良くないが、天気予報が若干マシになっているのでじっとしているわけにはいかない。
稀勢の里もケガを押して土俵に上がっている。これぐらいで欠場している場合ではないのだ。
[attachment=8]P3260001_1_1.JPG[/attachment]
今日は先週の広野ダムの北側の芋ヶ平から金草岳を目指す。蓮如上人ゆかりの芋ヶ平を訪れるのは11年振りだ。高倉峠へ続く藤倉谷
林道の起点である。除雪はここで終わっていた。
林道には昨日のものだろう、ツボ足のトレースが残っていた。ズッポリと沈んで苦しそうだ。予想に反して先週のようにガチガチでは
なく、スノーシューを履かなければヒザまで潜ってしまう雪質である。
林道をしばらく歩いて、旧今庄・池田町境稜線への支尾根に取り付いた。
急登を少し我慢すれば疎林の広い尾根に乗る。予報通りのいい天気で、日差しがあればモチベーションも上がるというものだ。
しかしこの天気も昼までだろう。なんとか展望の利く内に山頂に立ちたいものだ。
[attachment=7]P3260050_1.JPG[/attachment]
もう少しで町境稜線というところでライトニング系のトレースが現われた。林道の下流側へ出る支尾根を下ったようだ。
金草岳から来ているのは間違いないので、懸案のガンドウ尾根と呼ばれる難所の通過は約束された。しかしノートレースの雪面を歩く
喜びがなくってしまったので、安心2割、失望8割というところか。
[attachment=6]パノラマ2_1_1.jpg[/attachment]
無木立の雪のドームになった町境稜線のピークに立つと、荒々しい金草岳北面が大きく迫る。
しばらくはゆったりと広がっていた尾根はだんだん細くなり、ガンドウ尾根の核心部が近付いてきた。この尾根を辿るのは15年振り。
極端に痩せた尾根に雪が乗ると歩く場所が見つからないところだ。一度はここで敗退したこともある。
なんとトレースの主はスノーシューを履いたままで反対側の急斜面を下り、核心部を通過していた。相当な使い手というべきだろう。
滑ればアウトである。さすがにストックはピッケルに持ち替えていたようだが。
こちらはそれほど度胸はないのでアイゼンとピッケルに換装してトレースを辿った。その後もヤセ尾根のアップダウンが続き、尾根が
広がってブナ林が出てきたところでやっとひと息付いた。
しかし早くも山頂方面はガスに包まれ始めている。あと1時間早く出るべきだったと悔やんでも後の祭りである。
[attachment=5]P3260095_1_1.JPG[/attachment][attachment=4]P3260125_1.JPG[/attachment]
ブナ林の後の急斜面はヒールリフターを立てて快適に直上。下りのトレースはジグを切っている。ここはシリセードで一気に下りた
方が楽しいところだ。上に行くほど斜面が立ってきて、片方のストックをピッケルに替えて慎重に進む。
ここは滑ってもどうということはないが、もう一度登り直すのは勘弁してほしい。
[attachment=3]パノラマ7_1_1.jpg[/attachment]
11年前に登った林道からの最短ルートの尾根と合流すると立木は消え、斜面は白一色となった。まだ辛うじて権現山・高倉峠方面の
国境稜線が見えているが、これから向かう山頂方向も白一色となって、登るにつれ空と雪面の境もはっきりとしなくなった。
広大な山頂台地の雪原を歩いていると、方向感覚がおかしくなってしまう。
とにかくこれ以上高いところがない地点が山頂である。ただ登り切ったというだけで何の感慨も湧かない。15年前も同じような状況
だった。おまけに雪までパラつき始めたので早々に下山開始。
予定では越美国境稜線を歩いて権現山まで行き北尾根を下るつもりだったが、この状況では行く意味もないだろう。不本意だが元来た
道を戻ろう。
ほぼホワイトアウトの中、自分の登りのトレースを戻っているつもりが危うく国境稜線の方へ下りそうになってしまった。
自分の足跡だと思っていたのはさっきのトレースの主のものだった。昨日なら展望全開の素晴らしい周回を楽しめたことだろう。
うらやましい限りである。
[attachment=2]P3260158_1_1.JPG[/attachment]
ブナ平への急斜面で、下に障害物のないところへ横移動してシリセードしようとしたら、そのまま足が滑って強制シリセード状態と
なってしまった。まあ、手間が省けたということだ。
少し高度が下がるとガスもなくなったので、大きなブナの木の下で~♪ランチとしよう。展望があろうがなかろうが、天気が良かろうが
悪かろうがランチにかける時間があまり変わらないのが面白いところである。何を楽しいと思うかは気の持ちようなのだ。
ガンドウ尾根の核心部はスノーシューを履いたまま通過するが、最核心部手前の下りはなかなかスリルがあった。
きっちりステップを切ってあるから行けたものの、ノートレースでスノーシューを履いて下るのはかなり勇気が要る。
トレースの主には脱帽である。
[attachment=1]DSC_2968_3_1.jpg[/attachment]
登りの尾根との分岐でひと休みしていると、雪面をチョロチョロと走っている物体がある。
何かなと見ていたら、どんどんこちらへ近付いてきてザックに取り付いたりストックを登っていったりと忙しく動き回っている。
どうやらヤマネのようだ。まったく人を恐れる様子もなく遊び倒して消えて行った。
と思ったらまたやってきて、今度は私の足を登り始めた。背中から頭の方へ行ったようだがどこにいるのかわからない。ジャケットを
脱いで見てみると、フードにちょこんと座ってじっとこっちを見つめていた。愛いヤツじゃ。
自分の孫にもここまでまとわりつかれたことはない。じっとしていたらいつまでもヤマネとじゃれあっていられそうだったが、下山し
なくてはならない。この楽しいひと時だけで今日ここへ来た甲斐があったというものだ。
後ろ髪を引かれながら斜面を下って振り返ったら、まだ走り回っている姿が見えた。
[attachment=0]パノラマ5_1_1.jpg[/attachment]
登りのトレースを辿るだけではあまりにも芸がないので、駐車地の近くへ下りられるところまで尾根を辿ることにする。
この尾根が拾い物だった。馬には乗ってみよ、尾根は歩いてみよだ。最初は広々とした雪原が続く尾根で、三重嶽南西尾根のような印
象だ。後半はどうせ植林がちだろうと期待もしていなかったが、案に相違して50年後が楽しみな若いブナ林があったり、尾根と谷が混
然一体となったような広がりを持つブナ主体の森があったり、想像もしなかった展開に心が満たされた。
痛み始めたヒザをかばいながら、最後は雪の消えた植林の杣道を辿ると駐車地にほど近い林道にソフトランディングできた。
期待していた展望は得られなったが、それ以上の予期せぬ喜びを得られた山だったと言えるかもしれない。
家で寝ていたら何も手に入らないのだ。
山日和
【山 域】越美国境 金草岳
【天 候】晴れのち曇りのち小雪のち雨
【コース】芋ヶ平7:21---7:58尾根取付き点---9:42町境P920m---11:03ブナ平---11:44金草岳12:00---12:22ブナ平13:40---
14:28 P920m 14:48---15:46 P610m---16:26芋ヶ平
またも5時間半に及ぶマンションの理事会が終わった。このままビールを飲んでまったりしたい気持ちを抑えて山に向かう。
ヒザの調子は相変わらず良くないが、天気予報が若干マシになっているのでじっとしているわけにはいかない。
稀勢の里もケガを押して土俵に上がっている。これぐらいで欠場している場合ではないのだ。
[attachment=8]P3260001_1_1.JPG[/attachment]
今日は先週の広野ダムの北側の芋ヶ平から金草岳を目指す。蓮如上人ゆかりの芋ヶ平を訪れるのは11年振りだ。高倉峠へ続く藤倉谷
林道の起点である。除雪はここで終わっていた。
林道には昨日のものだろう、ツボ足のトレースが残っていた。ズッポリと沈んで苦しそうだ。予想に反して先週のようにガチガチでは
なく、スノーシューを履かなければヒザまで潜ってしまう雪質である。
林道をしばらく歩いて、旧今庄・池田町境稜線への支尾根に取り付いた。
急登を少し我慢すれば疎林の広い尾根に乗る。予報通りのいい天気で、日差しがあればモチベーションも上がるというものだ。
しかしこの天気も昼までだろう。なんとか展望の利く内に山頂に立ちたいものだ。
[attachment=7]P3260050_1.JPG[/attachment]
もう少しで町境稜線というところでライトニング系のトレースが現われた。林道の下流側へ出る支尾根を下ったようだ。
金草岳から来ているのは間違いないので、懸案のガンドウ尾根と呼ばれる難所の通過は約束された。しかしノートレースの雪面を歩く
喜びがなくってしまったので、安心2割、失望8割というところか。
[attachment=6]パノラマ2_1_1.jpg[/attachment]
無木立の雪のドームになった町境稜線のピークに立つと、荒々しい金草岳北面が大きく迫る。
しばらくはゆったりと広がっていた尾根はだんだん細くなり、ガンドウ尾根の核心部が近付いてきた。この尾根を辿るのは15年振り。
極端に痩せた尾根に雪が乗ると歩く場所が見つからないところだ。一度はここで敗退したこともある。
なんとトレースの主はスノーシューを履いたままで反対側の急斜面を下り、核心部を通過していた。相当な使い手というべきだろう。
滑ればアウトである。さすがにストックはピッケルに持ち替えていたようだが。
こちらはそれほど度胸はないのでアイゼンとピッケルに換装してトレースを辿った。その後もヤセ尾根のアップダウンが続き、尾根が
広がってブナ林が出てきたところでやっとひと息付いた。
しかし早くも山頂方面はガスに包まれ始めている。あと1時間早く出るべきだったと悔やんでも後の祭りである。
[attachment=5]P3260095_1_1.JPG[/attachment][attachment=4]P3260125_1.JPG[/attachment]
ブナ林の後の急斜面はヒールリフターを立てて快適に直上。下りのトレースはジグを切っている。ここはシリセードで一気に下りた
方が楽しいところだ。上に行くほど斜面が立ってきて、片方のストックをピッケルに替えて慎重に進む。
ここは滑ってもどうということはないが、もう一度登り直すのは勘弁してほしい。
[attachment=3]パノラマ7_1_1.jpg[/attachment]
11年前に登った林道からの最短ルートの尾根と合流すると立木は消え、斜面は白一色となった。まだ辛うじて権現山・高倉峠方面の
国境稜線が見えているが、これから向かう山頂方向も白一色となって、登るにつれ空と雪面の境もはっきりとしなくなった。
広大な山頂台地の雪原を歩いていると、方向感覚がおかしくなってしまう。
とにかくこれ以上高いところがない地点が山頂である。ただ登り切ったというだけで何の感慨も湧かない。15年前も同じような状況
だった。おまけに雪までパラつき始めたので早々に下山開始。
予定では越美国境稜線を歩いて権現山まで行き北尾根を下るつもりだったが、この状況では行く意味もないだろう。不本意だが元来た
道を戻ろう。
ほぼホワイトアウトの中、自分の登りのトレースを戻っているつもりが危うく国境稜線の方へ下りそうになってしまった。
自分の足跡だと思っていたのはさっきのトレースの主のものだった。昨日なら展望全開の素晴らしい周回を楽しめたことだろう。
うらやましい限りである。
[attachment=2]P3260158_1_1.JPG[/attachment]
ブナ平への急斜面で、下に障害物のないところへ横移動してシリセードしようとしたら、そのまま足が滑って強制シリセード状態と
なってしまった。まあ、手間が省けたということだ。
少し高度が下がるとガスもなくなったので、大きなブナの木の下で~♪ランチとしよう。展望があろうがなかろうが、天気が良かろうが
悪かろうがランチにかける時間があまり変わらないのが面白いところである。何を楽しいと思うかは気の持ちようなのだ。
ガンドウ尾根の核心部はスノーシューを履いたまま通過するが、最核心部手前の下りはなかなかスリルがあった。
きっちりステップを切ってあるから行けたものの、ノートレースでスノーシューを履いて下るのはかなり勇気が要る。
トレースの主には脱帽である。
[attachment=1]DSC_2968_3_1.jpg[/attachment]
登りの尾根との分岐でひと休みしていると、雪面をチョロチョロと走っている物体がある。
何かなと見ていたら、どんどんこちらへ近付いてきてザックに取り付いたりストックを登っていったりと忙しく動き回っている。
どうやらヤマネのようだ。まったく人を恐れる様子もなく遊び倒して消えて行った。
と思ったらまたやってきて、今度は私の足を登り始めた。背中から頭の方へ行ったようだがどこにいるのかわからない。ジャケットを
脱いで見てみると、フードにちょこんと座ってじっとこっちを見つめていた。愛いヤツじゃ。
自分の孫にもここまでまとわりつかれたことはない。じっとしていたらいつまでもヤマネとじゃれあっていられそうだったが、下山し
なくてはならない。この楽しいひと時だけで今日ここへ来た甲斐があったというものだ。
後ろ髪を引かれながら斜面を下って振り返ったら、まだ走り回っている姿が見えた。
[attachment=0]パノラマ5_1_1.jpg[/attachment]
登りのトレースを辿るだけではあまりにも芸がないので、駐車地の近くへ下りられるところまで尾根を辿ることにする。
この尾根が拾い物だった。馬には乗ってみよ、尾根は歩いてみよだ。最初は広々とした雪原が続く尾根で、三重嶽南西尾根のような印
象だ。後半はどうせ植林がちだろうと期待もしていなかったが、案に相違して50年後が楽しみな若いブナ林があったり、尾根と谷が混
然一体となったような広がりを持つブナ主体の森があったり、想像もしなかった展開に心が満たされた。
痛み始めたヒザをかばいながら、最後は雪の消えた植林の杣道を辿ると駐車地にほど近い林道にソフトランディングできた。
期待していた展望は得られなったが、それ以上の予期せぬ喜びを得られた山だったと言えるかもしれない。
家で寝ていたら何も手に入らないのだ。
山日和