【奥美濃】悲願の縦走路 花房山から雷倉へ
Posted: 2017年3月07日(火) 20:38
【日 付】2017年3月4日(土)
【山 域】奥美濃 花房山周辺
【天 候】晴れ
【コース】東杉原7:13---8:43Ca790mピーク---10:45花房山11:06---12:33最低鞍部---14:10雷倉15:20---16:00 Ca1080mピーク---17:20 698.1m三角点付近--18:00-林道---18:45東杉原
スタートからすぐにスノーシューを履けるだろうと手にぶら下げて歩き出したが、登山道上にはほとんど雪がなかった。
仕方なくザックに括り付けて歩く。雪のあるところでは結構新しい往復トレースが残されていた。ツボ足アイゼンのようだ。
しばらくはトレースを辿る。雪が繋がったところでスノーシューを装着。トレースを気にせず、ヒールリフターを利かせれば直線的に
上がっていけるので楽だ。この尾根は植林とモミの大木が多い。
[attachment=5]P3040035_1_1.JPG[/attachment]
Ca790mまでノンストップで上がる。今日は調子が良さそうである。天気も良く、日焼け止めとサングラスを忘れるとひどい目に遭
いそうだ。
ここから少し下ってナイフリッジ地帯に突入。細い尾根の上にスノーシューの幅ぐらいの雪が乗って、スノーシューを履いたまま通
過するのは些かテクニカルだ。
尾根はやがて針葉樹林からブナ林の急登に変わった。ブナを見るだけでモチベーションが上がる。雪は良く締まっており、急登でも
スノーシューがガッチリと雪面を捉えてくれる。
そして山頂台地に飛び出す瞬間が、積雪期の花房山北西尾根の白眉と言えるだろう。これまで閉ざされていた視界が一気に開け、山頂
へはここまでの尾根とは異次元のシャープな雪稜が延びている。眼下に落ち込む東前の谷の緩やかな源頭部はまるでカール地形のようだ。
[attachment=7]パノラマ2_1_1.jpg[/attachment][attachment=6]P3040082_1_1.JPG[/attachment]
ところが件のトレースはなんとここで終わっていた。山頂までわずか200mぐらいしかないのに、ここでやめてしまうという選択肢が
あるのだろうか。それも一番おいしいところを目の前にして。
雪庇に気を付けながら北側の斜面をトラバースして進む。積雪期にここを訪れるのは13年振りだ。ほどなく花房山頂に立った。
ここは雪庇の下がやや緩斜面になっていて、ザックを降ろすには絶好の場所である。奥美濃と越美国境の名だたる山々がすべて自分の
ものとなる。ひと際白いのは能郷白山だ。どこから見てもひと目でわかるのは屏風山。冠山と若丸山は似たような三角形が目を惹く。
揖斐川をはさんだ対岸には天狗・黒津・蕎麦粒・ミノマタといった山々が迫る。
ここから南へは小津権現、北へは雷倉へと雪稜が長く尾を引く。
花房山と合わせて小津三山と呼ばれている山々へは、今日で合計22回目の登頂だ。そしてこれから向かう雷倉が23回目のピークになる
はずである。
[attachment=4]P3040074_1.JPG[/attachment][attachment=3]P3040087_1.JPG[/attachment]
目指す山が近くに見えるかどうかが調子のバロメーターだ。今日の雷倉は近く見えた。一歩踏み出せばエスケープルートはない。
時間はほぼ予定通り。通過点とするにはあまりにももったいない山頂だが行こう。
ここから先は未知の尾根だが、一昨年の雷倉でルート観察はある程度できている。
急斜面を駆け下りて快適な雪尾根歩きを楽しむ。20年近く思い続けていたこの尾根をやっと歩くことができた喜びがこみ上げる。
雷倉から観察した時に、この雪尾根のポイントは北から北東へ方向を変える地点だと見ていた。直進方向の支尾根には大きな雪庇が発
達し、主稜線へは尾根の形がない急斜面へ下らねばならない。その雪庇の弱点を見つけて突破するのがカギだと思っていた。
雪庇の縁を探りながら進むと、うまい具合に2m程度の雪壁になった部分があり、そこを滑り降りて広大な斜面に乗ることができた。
斜面はササが露出しているところもあり、落ちた雪庇の巨大なブロックが転がっている。
ここでいきなりガクンと体が沈み込んだ。ササの上に積もった雪の穴に片足が落ちてしまったのだ。なんとか引き抜いて穴を見ると2m
ぐらいはありそうだ。ふう、危ない危ない。
[attachment=2]パノラマ3_1_1.jpg[/attachment]
しばらくは気持ちのいい樹林の雪原歩きを楽しんだ。順調だ。と、この時は思っていた。
しかし本当の核心部はこの先にあった。西側斜面から植林が迫ったヤセ尾根は不安定な雪が乗り、半ヤブ漕ぎしながら右側に転落しな
いよう神経を使う。ここでかなり消耗してしまった。
尾根の最低鞍部から雷倉へは300mの登り返しが待っている。雪質も今までのように締まっておらず、ダメージがジワジワと蓄積され
て足が上がらない。が、ギブアップという選択肢がない以上登り切るしかない。
亀のような歩みでもう少し、もう少しと高度を上げていく。そして見覚えのある雪のドームが視界に入ったと思うと、目の前から高い
場所が消えた。
やった。悲願の花房山~雷倉縦走の完遂だ。2時間半あればお釣りが来ると思っていたがたっぷり3時間かかってしまった。
振り返る花房山は、向こうから見た時とは違ってずいぶん遠くに見えた。
[attachment=1]DSC_2854_1_1.jpg[/attachment]
途中でメシにしてしまうと心が折れてしまうと思ったのでここまで我慢していた。さあ、待望のメシにしよう。
花房山を真正面にしたかったがやや風があるので、木の陰に陣取ってまずはひとりで祝杯を上げる。
しかしもう2時過ぎだ。あまりのんびりもしていられないが、急いで下りる気はさらさらない。いつも通りの鍋ランチとコーヒータイム
を楽しむ。
[attachment=0]P3040227_1.JPG[/attachment]
暗くなる前に林道へ辿り着ける時間を逆算して、3時15分には出発しようと決めた。下山コースは2年前にも歩いているので時間は読
めるのだ。
雷倉の山上台地を抜け、大きくなった能郷白山を正面にCa1080mのブナ林を楽しみながら進むとやがて支尾根への下降点。
下り口だけは微妙で間違えないように気を遣うが、乗ってしまえば1本道である。
このあたりは植林帯で面白みはないが、しばらく下ると右手から林道が現われて気が楽な下山路と言える。
しかし698.1m三角点付近からの下りが最後の核心部だった。完全に腐った雪はスノーシューを履いていてもヒザ近くまで潜ってしま
う。おまけに湿って重いので足を引き抜くのも難儀するのである。何度も大転倒を繰り返しながら、やっと林道に下り立った時には夕
暮れが迫っていた。ともあれ、これで帰れる。
揖斐川左岸の林道歩きの途中で、今年初のヘッデン点灯。ヘッデンの明りで雪道を歩くのもオツなものだ。
遠くが見えないので、まだあんなに遠いのかと思わなくて済むのもいい。
限られた視界の中、一心不乱に歩いていると突然足元の雪がなくなった。駐車地はもう目の前だ。
山日和
【山 域】奥美濃 花房山周辺
【天 候】晴れ
【コース】東杉原7:13---8:43Ca790mピーク---10:45花房山11:06---12:33最低鞍部---14:10雷倉15:20---16:00 Ca1080mピーク---17:20 698.1m三角点付近--18:00-林道---18:45東杉原
スタートからすぐにスノーシューを履けるだろうと手にぶら下げて歩き出したが、登山道上にはほとんど雪がなかった。
仕方なくザックに括り付けて歩く。雪のあるところでは結構新しい往復トレースが残されていた。ツボ足アイゼンのようだ。
しばらくはトレースを辿る。雪が繋がったところでスノーシューを装着。トレースを気にせず、ヒールリフターを利かせれば直線的に
上がっていけるので楽だ。この尾根は植林とモミの大木が多い。
[attachment=5]P3040035_1_1.JPG[/attachment]
Ca790mまでノンストップで上がる。今日は調子が良さそうである。天気も良く、日焼け止めとサングラスを忘れるとひどい目に遭
いそうだ。
ここから少し下ってナイフリッジ地帯に突入。細い尾根の上にスノーシューの幅ぐらいの雪が乗って、スノーシューを履いたまま通
過するのは些かテクニカルだ。
尾根はやがて針葉樹林からブナ林の急登に変わった。ブナを見るだけでモチベーションが上がる。雪は良く締まっており、急登でも
スノーシューがガッチリと雪面を捉えてくれる。
そして山頂台地に飛び出す瞬間が、積雪期の花房山北西尾根の白眉と言えるだろう。これまで閉ざされていた視界が一気に開け、山頂
へはここまでの尾根とは異次元のシャープな雪稜が延びている。眼下に落ち込む東前の谷の緩やかな源頭部はまるでカール地形のようだ。
[attachment=7]パノラマ2_1_1.jpg[/attachment][attachment=6]P3040082_1_1.JPG[/attachment]
ところが件のトレースはなんとここで終わっていた。山頂までわずか200mぐらいしかないのに、ここでやめてしまうという選択肢が
あるのだろうか。それも一番おいしいところを目の前にして。
雪庇に気を付けながら北側の斜面をトラバースして進む。積雪期にここを訪れるのは13年振りだ。ほどなく花房山頂に立った。
ここは雪庇の下がやや緩斜面になっていて、ザックを降ろすには絶好の場所である。奥美濃と越美国境の名だたる山々がすべて自分の
ものとなる。ひと際白いのは能郷白山だ。どこから見てもひと目でわかるのは屏風山。冠山と若丸山は似たような三角形が目を惹く。
揖斐川をはさんだ対岸には天狗・黒津・蕎麦粒・ミノマタといった山々が迫る。
ここから南へは小津権現、北へは雷倉へと雪稜が長く尾を引く。
花房山と合わせて小津三山と呼ばれている山々へは、今日で合計22回目の登頂だ。そしてこれから向かう雷倉が23回目のピークになる
はずである。
[attachment=4]P3040074_1.JPG[/attachment][attachment=3]P3040087_1.JPG[/attachment]
目指す山が近くに見えるかどうかが調子のバロメーターだ。今日の雷倉は近く見えた。一歩踏み出せばエスケープルートはない。
時間はほぼ予定通り。通過点とするにはあまりにももったいない山頂だが行こう。
ここから先は未知の尾根だが、一昨年の雷倉でルート観察はある程度できている。
急斜面を駆け下りて快適な雪尾根歩きを楽しむ。20年近く思い続けていたこの尾根をやっと歩くことができた喜びがこみ上げる。
雷倉から観察した時に、この雪尾根のポイントは北から北東へ方向を変える地点だと見ていた。直進方向の支尾根には大きな雪庇が発
達し、主稜線へは尾根の形がない急斜面へ下らねばならない。その雪庇の弱点を見つけて突破するのがカギだと思っていた。
雪庇の縁を探りながら進むと、うまい具合に2m程度の雪壁になった部分があり、そこを滑り降りて広大な斜面に乗ることができた。
斜面はササが露出しているところもあり、落ちた雪庇の巨大なブロックが転がっている。
ここでいきなりガクンと体が沈み込んだ。ササの上に積もった雪の穴に片足が落ちてしまったのだ。なんとか引き抜いて穴を見ると2m
ぐらいはありそうだ。ふう、危ない危ない。
[attachment=2]パノラマ3_1_1.jpg[/attachment]
しばらくは気持ちのいい樹林の雪原歩きを楽しんだ。順調だ。と、この時は思っていた。
しかし本当の核心部はこの先にあった。西側斜面から植林が迫ったヤセ尾根は不安定な雪が乗り、半ヤブ漕ぎしながら右側に転落しな
いよう神経を使う。ここでかなり消耗してしまった。
尾根の最低鞍部から雷倉へは300mの登り返しが待っている。雪質も今までのように締まっておらず、ダメージがジワジワと蓄積され
て足が上がらない。が、ギブアップという選択肢がない以上登り切るしかない。
亀のような歩みでもう少し、もう少しと高度を上げていく。そして見覚えのある雪のドームが視界に入ったと思うと、目の前から高い
場所が消えた。
やった。悲願の花房山~雷倉縦走の完遂だ。2時間半あればお釣りが来ると思っていたがたっぷり3時間かかってしまった。
振り返る花房山は、向こうから見た時とは違ってずいぶん遠くに見えた。
[attachment=1]DSC_2854_1_1.jpg[/attachment]
途中でメシにしてしまうと心が折れてしまうと思ったのでここまで我慢していた。さあ、待望のメシにしよう。
花房山を真正面にしたかったがやや風があるので、木の陰に陣取ってまずはひとりで祝杯を上げる。
しかしもう2時過ぎだ。あまりのんびりもしていられないが、急いで下りる気はさらさらない。いつも通りの鍋ランチとコーヒータイム
を楽しむ。
[attachment=0]P3040227_1.JPG[/attachment]
暗くなる前に林道へ辿り着ける時間を逆算して、3時15分には出発しようと決めた。下山コースは2年前にも歩いているので時間は読
めるのだ。
雷倉の山上台地を抜け、大きくなった能郷白山を正面にCa1080mのブナ林を楽しみながら進むとやがて支尾根への下降点。
下り口だけは微妙で間違えないように気を遣うが、乗ってしまえば1本道である。
このあたりは植林帯で面白みはないが、しばらく下ると右手から林道が現われて気が楽な下山路と言える。
しかし698.1m三角点付近からの下りが最後の核心部だった。完全に腐った雪はスノーシューを履いていてもヒザ近くまで潜ってしま
う。おまけに湿って重いので足を引き抜くのも難儀するのである。何度も大転倒を繰り返しながら、やっと林道に下り立った時には夕
暮れが迫っていた。ともあれ、これで帰れる。
揖斐川左岸の林道歩きの途中で、今年初のヘッデン点灯。ヘッデンの明りで雪道を歩くのもオツなものだ。
遠くが見えないので、まだあんなに遠いのかと思わなくて済むのもいい。
限られた視界の中、一心不乱に歩いていると突然足元の雪がなくなった。駐車地はもう目の前だ。
山日和