【奥美濃】錦繍の根洞谷・小茂津谷から高丸へ
Posted: 2015年11月02日(月) 23:16
【日 付】2015年11月1日(日)
【山 域】奥美濃 高丸周辺
【天 候】晴れ
【コース】夜叉ヶ池登山口6:40---7:54尾根乗越---8:38根洞谷8:51---10:42小茂津谷10:56
---12:33 950m二俣13:31---14:52高丸15:08---16:40登山口
根洞谷(こんどうだに)や小茂津谷(こもつだに)と言っても奥美濃マニアでなければわからないだろう。
木曽三川のひとつである揖斐川は上流で東谷と西谷に分かれる。その西谷の源流域にあるのが根洞谷で、
小茂津谷はそのまた支流の谷である。西谷は最上流で金ヶ丸谷と根洞谷に分かれるのだが、いずれも奥美
濃屈指の原始の森に包まれた深い場所にあり、奥美濃マニア垂涎の地として存在している。
以前から長いアプローチを必要としていたが、徳山ダムが完成した現在では、西谷の上流へ向かう道路はダ
ムの下に水没してしまい、下流から入ることはできない。
ダムが造られる前に下流からのアプローチで金ヶ丸谷へ一度、完成後には山越えして根洞谷から金ヶ丸谷の
周回をやったことがあるが、いずれも沢泊で、豊穣の森の中をゆったりと流れる原始の谷に酔いしれた2日間
の山旅だった。
前夜、岐阜県側の夜叉ヶ池登山口である池ノ又谷林道の終点まで車を進めた。夜中の気温は2度。真冬の
ような冷え込みに水の中に入るモチベーションが下がる。
夜半はみぞれかと思うような水滴が降っていたが、夜が明けると快晴。夜叉壁のあたりが朝日を受けて金
色に染まっている。
駐車場を出て2番目に出合う谷が根洞谷へのショートカットルートだ。滝らしいものはなく、ただひたすら350m
の高度差を稼ぐ。高丸と越美国境稜線を繋ぐ尾根に出ると1本のブナと正面に見える美濃俣丸方面の稜線の
眺めが出迎えてくれた。風があり少し寒い。こういう日は谷を歩くに限る。
根洞谷へはせっかく登り詰めた尾根から300m下らなければならない。なんとも効率の悪い登山だが、これ
が根洞谷へ到達する最短のルートである。
[attachment=7]PB010012_1.JPG[/attachment]
眼下の斜面に飛び込むと、こちらの谷もまったく滝のない急傾斜のバリルートといった趣きで、簡単に根洞
谷の上流部に下り立つことができた。ここから悠然と流れる根洞谷を小茂津谷出合まで下って行く。
両岸の斜面はまさに錦繍。紅と黄に染められた森は息を呑むような美しさだ。この光景を見るためにこの季
節にここへ来たのである。
根洞谷は直線という部分がまったくない蛇行の連続で、地図で見る距離の倍ぐらい歩かないと目的地に到達
できない。いったいどれだけ蛇行を繰り返しただろう。
そろそろ飽きてきた頃に上流に向かって流れ込んで来る谷が見えた。小茂津谷だ。出発してから4時間を要し
てやっと目的の谷の入口に着いた。ほぼ予定の時間で到着したが、まだまだ先は長い。ここから高丸山頂ま
で3時間で行けるだろうか。
[attachment=6]PB010038_1.JPG[/attachment][attachment=0]PB010065_1.JPG[/attachment][attachment=5]PB010126_1.JPG[/attachment]
小茂津谷は序盤は根洞谷の小型のような谷だが蛇行はほとんどなく、地形図上でマークしていた途中で出
合う支流が思ったより早いペースで現われた。なかなか前に進まなかった根洞谷と大違いだ。
ちょっとした落ち込み程度の落差はあるものの、滝と呼べるものはない穏やかな谷である。
しかし上流に進むにつれ倒木が谷を埋める場面が目立ち始めた。やはりここ2~3年の水害の影響はここに
も及んでいたのか。美しいはずの渓相も台無しである。
[attachment=4]PB010139_1.JPG[/attachment][attachment=3]PB010178_1.JPG[/attachment]
時間が読めないのでゆっくりメシにする心の余裕を失っていたが、結構いいペースで次の二俣に着いた。
距離的にはもう4分の3近く消化している。これなら大丈夫だ。
なかなか適地を見つけられないまま標高950m付近の最後の二俣に腰を降ろした。あまりいい場所ではない
が仕方がない。ラーメンもビールもお預けかと思っていたが、余裕を持ってランチタイムを楽しめるのだから良
しとするか。
いつも通り1時間のランチタイムを取ったが、少々のんびりし過ぎたかもしれない。3時に山頂に立っていれば
OKだから1時間半のリードタイムがある。初見の谷を山頂まであと350m。そして山頂からは道はない。
ひたすらヤブを漕ぐか、以前登ったことのある谷を下りるかだ。
幸い谷の中は何の障害もなく、最後のツメも先ほど登り下りした谷同様、単に急なことを我慢すればいいだけ
のスッキリした斜面だった。振り返ると烏帽子山の端正な姿が見えた。3度もまったくヤブ漕ぎなしで稜線に立
てるとは奥美濃らしからぬラッキーなツメである。
50mほどヤブを漕いで1316mの高丸山頂に立った。読み通りの時間だ。K氏の標識1枚と三角点があるだけ
の清々しい山頂である。三角点の周りは少し刈り開かれており、白山や能郷白山、御嶽も望むことができた。
[attachment=2]PB010202_1.JPG[/attachment]
さて、下山はどうするか。無雪期にここへ来たのは15年振りだが、あれから登山ブームで少しは踏み跡らし
きものもできているかと思ったが、どこを見てもササの海が広がるばかりだ。方向を確認しながらササに突っ
込んで行く手もあるが、それも鬱陶しい。第2案の谷下りにしよう。
恐ろしいほどの急傾斜を谷に向かって下る。こういう斜面ではチェーンスパイクが極めて有効なのだが、こ
んな時に限って持って来るのを忘れてしまった。
問題はこの大岩谷唯一とも言える滝の存在だ。前回は懸垂下降で下りたが、今持っているのは20mのロープ。
これで下まで届いただろうか。滝まで来てみるとピンの位置が高く、どうも下まで届きそうにない。ならばとすぐ
隣の谷を窺ったがこちらも同じように滝がかかっている。さらに右へ移動するとロープ無しで下りられそうなル
ンゼが現われた。滑るように下りて滝の下へ。記憶では後は何も現われないはずだ。
この谷もいわゆるヤブ沢で、高丸への最短ルートと言う以上の意味を持たない。しかしぬるぬるの岩で滑る
ことさえ気を付ければ、下手にヤブを漕ぐより余程スマートに下山できる。終盤で現われるウォータースライダ
ー状のナメ滝が唯一の見せ場だ。
[attachment=1]PB010234_1.JPG[/attachment]
山頂から2時間を見ていたが、1時間半後には登山口の駐車場に立っていた。紅葉シーズンで賑わっただろ
う登山客の車も帰り仕度中の1台が残っているだけだった。
山日和
【山 域】奥美濃 高丸周辺
【天 候】晴れ
【コース】夜叉ヶ池登山口6:40---7:54尾根乗越---8:38根洞谷8:51---10:42小茂津谷10:56
---12:33 950m二俣13:31---14:52高丸15:08---16:40登山口
根洞谷(こんどうだに)や小茂津谷(こもつだに)と言っても奥美濃マニアでなければわからないだろう。
木曽三川のひとつである揖斐川は上流で東谷と西谷に分かれる。その西谷の源流域にあるのが根洞谷で、
小茂津谷はそのまた支流の谷である。西谷は最上流で金ヶ丸谷と根洞谷に分かれるのだが、いずれも奥美
濃屈指の原始の森に包まれた深い場所にあり、奥美濃マニア垂涎の地として存在している。
以前から長いアプローチを必要としていたが、徳山ダムが完成した現在では、西谷の上流へ向かう道路はダ
ムの下に水没してしまい、下流から入ることはできない。
ダムが造られる前に下流からのアプローチで金ヶ丸谷へ一度、完成後には山越えして根洞谷から金ヶ丸谷の
周回をやったことがあるが、いずれも沢泊で、豊穣の森の中をゆったりと流れる原始の谷に酔いしれた2日間
の山旅だった。
前夜、岐阜県側の夜叉ヶ池登山口である池ノ又谷林道の終点まで車を進めた。夜中の気温は2度。真冬の
ような冷え込みに水の中に入るモチベーションが下がる。
夜半はみぞれかと思うような水滴が降っていたが、夜が明けると快晴。夜叉壁のあたりが朝日を受けて金
色に染まっている。
駐車場を出て2番目に出合う谷が根洞谷へのショートカットルートだ。滝らしいものはなく、ただひたすら350m
の高度差を稼ぐ。高丸と越美国境稜線を繋ぐ尾根に出ると1本のブナと正面に見える美濃俣丸方面の稜線の
眺めが出迎えてくれた。風があり少し寒い。こういう日は谷を歩くに限る。
根洞谷へはせっかく登り詰めた尾根から300m下らなければならない。なんとも効率の悪い登山だが、これ
が根洞谷へ到達する最短のルートである。
[attachment=7]PB010012_1.JPG[/attachment]
眼下の斜面に飛び込むと、こちらの谷もまったく滝のない急傾斜のバリルートといった趣きで、簡単に根洞
谷の上流部に下り立つことができた。ここから悠然と流れる根洞谷を小茂津谷出合まで下って行く。
両岸の斜面はまさに錦繍。紅と黄に染められた森は息を呑むような美しさだ。この光景を見るためにこの季
節にここへ来たのである。
根洞谷は直線という部分がまったくない蛇行の連続で、地図で見る距離の倍ぐらい歩かないと目的地に到達
できない。いったいどれだけ蛇行を繰り返しただろう。
そろそろ飽きてきた頃に上流に向かって流れ込んで来る谷が見えた。小茂津谷だ。出発してから4時間を要し
てやっと目的の谷の入口に着いた。ほぼ予定の時間で到着したが、まだまだ先は長い。ここから高丸山頂ま
で3時間で行けるだろうか。
[attachment=6]PB010038_1.JPG[/attachment][attachment=0]PB010065_1.JPG[/attachment][attachment=5]PB010126_1.JPG[/attachment]
小茂津谷は序盤は根洞谷の小型のような谷だが蛇行はほとんどなく、地形図上でマークしていた途中で出
合う支流が思ったより早いペースで現われた。なかなか前に進まなかった根洞谷と大違いだ。
ちょっとした落ち込み程度の落差はあるものの、滝と呼べるものはない穏やかな谷である。
しかし上流に進むにつれ倒木が谷を埋める場面が目立ち始めた。やはりここ2~3年の水害の影響はここに
も及んでいたのか。美しいはずの渓相も台無しである。
[attachment=4]PB010139_1.JPG[/attachment][attachment=3]PB010178_1.JPG[/attachment]
時間が読めないのでゆっくりメシにする心の余裕を失っていたが、結構いいペースで次の二俣に着いた。
距離的にはもう4分の3近く消化している。これなら大丈夫だ。
なかなか適地を見つけられないまま標高950m付近の最後の二俣に腰を降ろした。あまりいい場所ではない
が仕方がない。ラーメンもビールもお預けかと思っていたが、余裕を持ってランチタイムを楽しめるのだから良
しとするか。
いつも通り1時間のランチタイムを取ったが、少々のんびりし過ぎたかもしれない。3時に山頂に立っていれば
OKだから1時間半のリードタイムがある。初見の谷を山頂まであと350m。そして山頂からは道はない。
ひたすらヤブを漕ぐか、以前登ったことのある谷を下りるかだ。
幸い谷の中は何の障害もなく、最後のツメも先ほど登り下りした谷同様、単に急なことを我慢すればいいだけ
のスッキリした斜面だった。振り返ると烏帽子山の端正な姿が見えた。3度もまったくヤブ漕ぎなしで稜線に立
てるとは奥美濃らしからぬラッキーなツメである。
50mほどヤブを漕いで1316mの高丸山頂に立った。読み通りの時間だ。K氏の標識1枚と三角点があるだけ
の清々しい山頂である。三角点の周りは少し刈り開かれており、白山や能郷白山、御嶽も望むことができた。
[attachment=2]PB010202_1.JPG[/attachment]
さて、下山はどうするか。無雪期にここへ来たのは15年振りだが、あれから登山ブームで少しは踏み跡らし
きものもできているかと思ったが、どこを見てもササの海が広がるばかりだ。方向を確認しながらササに突っ
込んで行く手もあるが、それも鬱陶しい。第2案の谷下りにしよう。
恐ろしいほどの急傾斜を谷に向かって下る。こういう斜面ではチェーンスパイクが極めて有効なのだが、こ
んな時に限って持って来るのを忘れてしまった。
問題はこの大岩谷唯一とも言える滝の存在だ。前回は懸垂下降で下りたが、今持っているのは20mのロープ。
これで下まで届いただろうか。滝まで来てみるとピンの位置が高く、どうも下まで届きそうにない。ならばとすぐ
隣の谷を窺ったがこちらも同じように滝がかかっている。さらに右へ移動するとロープ無しで下りられそうなル
ンゼが現われた。滑るように下りて滝の下へ。記憶では後は何も現われないはずだ。
この谷もいわゆるヤブ沢で、高丸への最短ルートと言う以上の意味を持たない。しかしぬるぬるの岩で滑る
ことさえ気を付ければ、下手にヤブを漕ぐより余程スマートに下山できる。終盤で現われるウォータースライダ
ー状のナメ滝が唯一の見せ場だ。
[attachment=1]PB010234_1.JPG[/attachment]
山頂から2時間を見ていたが、1時間半後には登山口の駐車場に立っていた。紅葉シーズンで賑わっただろ
う登山客の車も帰り仕度中の1台が残っているだけだった。
山日和