【越美国境】どんでん返しの青空 笹ヶ峰は今日も微笑んでくれた
Posted: 2014年4月01日(火) 20:43
【日 付】2014年3月29日(土)
【山 域】越美国境 笹ヶ峰
【天 候】晴れのち曇りのち晴れ
【メンバー】バーチャリ、ひいちゃん、山日和
【コース】林道駐車地7:18---大河内集落奥の橋8:16---11:44国境稜線---12:48笹ヶ峰13:01---13:42ランチ場14:50---16:41橋
---17:20-駐車地
広野ダム湖の右岸道には雪のかけらすら見られなかった。予定通り二ツ屋の導水施設まで車で入る。続く大河内林道にも雪は
ない。これ幸いと5分ほど進んだところでデブリに阻まれてストップ。往復30分ぐらいは林道歩きをセーブできたようだ。
ところどころデブリが残っているものの、林道はこの時期としては異例なほど荒れていない。雪解け水が勢いよく流れる大河内川
を見下ろしながら、すっかり春めいた林道を歩くもう開きかけたフキノトウがあちこちに頭を出していた。
[attachment=6]P1170811_1_1.JPG[/attachment]
導水施設で会った美濃俣丸へ向かう登山者が、ひとり笹ヶ峰へ向かった人がいると言っていた。そのトレースは大河内集落跡
を過ぎて3番目の橋を対岸へ渡っていた。我々は堰堤手前の最終の橋を渡って尾根に取り付く。722m標高点を経て源平谷山か
らの尾根に合流する支尾根である。
懸案は雪が少なく奥まで車で入ることができたのと引き換えに現われるであろうヤブの濃さだ。下部は植林もあり、比較的しっ
かりした杣道が続く。高度を上げるに従い道型は薄くなるものの、ヤブ漕ぎというほどのこともなく、順調に進んで行く。尾根芯に
密生した部分も残雪に助けられたりして歩行に問題はない。
今日の天気予報は昼から曇りで夕方には雨が降り出すかもしれないというものだ。昼までになんとか山頂に到達したい。
左手には谷を挟んで笹ヶ峰の山頂が意外な近さで見えていた。ここから真っすぐ行ければ近いのだが。
800mあたりから完全に雪が繋がってスノーシューを履くことができた。先行者はワカンで歩いている。雨と気温の上昇で雪は
緩んでいるが、こういう状況はスノーシューの得意とする場面である。同じように歩いてもワカンと沈み方が違う。
[attachment=5]P1170835_1.JPG[/attachment]
源平谷山の合流点手前から雲が多くなってきた。予報よりも天気の移り変わりが早いようだ。雪原状の合流点に着く頃には
すっかり曇り空になってしまった。印象的な形のブナが1本、広い雪原の中に所在無げに佇んでいる。その奥には上谷山から
北に伸びる長大な尾根が横たわっていた。
[attachment=4]P1170841_1.JPG[/attachment]
ここからロボットピークと呼ばれる越美国境稜線とのジャンクションまでは高々200mほどの標高差しかない。国境稜線に向
かって雪尾根が伸びているが、曇り空の下ではグレーに沈んで美しさに欠ける。
やや急な広い斜面をヒールリフターを効かせて登り、ロボットピークの手前で左にトラバースすれば待望の越美国境稜線に到
着である。初めてここ訪れた時、同行の洞吹氏がばててしまって途中で待っていると言った。それを叱咤激励してここまで登っ
た時のうれしそうな顔を思い出す。
ここに到達しなければ得られない景色がある。そしてその景色を目にした時の感動も。奥美濃最深部の山々の大パノラマが今
目の前に展開している。
国境稜線へ出た途端、東からの強烈な風に体をあおられた。暗い空の色と相まってモチベーションが下がる。とりあえず風を
避けられるところへと笹ヶ峰方面へ足を踏み出す。
この状況ではのんびりランチタイムを取れないかもしれないので、風の弱い場所で軽く腹ごしらえ。ひいちゃんから「ここで待って
いるからバーチャリさんと2人で行って来て」と泣きが入った。かなり体調が悪いようで、体のあちこちが痛いと訴えている。
しかしここまで来てやめるという選択肢はない。笹ヶ峰山頂は結構遠くに見えるが、実際歩いてみるとアップダウンも緩く、まさ
に稜線漫歩を楽しめるところなのだ。
[attachment=0]P1170905_1_1.JPG[/attachment]
不動山へのジャンクションのあたりから、意外なことに青空が広がり始めた。さっきまでの雨が降り出してもおかしくないような
空の色は完全に姿を消し、雪面は本来の白さを取り戻した。なんという僥倖。予定より時間は掛かっているが、こうなれば足取
りは軽い。風も先ほどの強風とは違い、歩くのに支障はない程度に弱まった。
[attachment=2]P1170952_1.JPG[/attachment]
夏小屋丸の雪庇跡の雪堤はいつ見ても圧倒的だ。この雪庇が健在な内に見ようと思えば、早い時期に広野ダムから延々と
歩かなければならないだろう。今年は雪が少ないとの評判だが、少なくともここではそんな印象はない。
巨大な雪の塊となった夏小屋丸のピークを越えて、現われ始めた雪割れに注意しながら広い斜面を下りると前方に登山者の
姿が見えた。山頂を往復して戻って来たようだ。
この山域で会う登山者としては若そうな単独者としばし話す。(下山後に検索するとヤマレコの彼の記事がヒットした。その時は
話題にしなかったが、うれしいことにやぶこぎも見てくれているようだ。) やはりワカンでは歩きにくく苦労したと言っていた。
[attachment=3]P1170923_1.JPG[/attachment]
稜線東側にできた仮想稜線とも言うべき夥しい雪の堆積の上を歩く。ところどころに亀裂が入って、もうひと雨来れば一気に
崩れ落ちてしまいそうな予感だ。
山頂手前の小ピークを越えて、こちらから見るとドーム状の本峰へのわずかな登り。手前で待って3人同時に山頂に立つ。
頭上は登頂を祝福するかのように真っ青な空が広がっていた。金草岳から能郷白山へ続く越美国境の山々。三周ヶ岳、高丸、
烏帽子山、蕎麦粒山、不動山、千回沢山といった奥美濃のコアなピーク達が出迎えてくれた。
春霞の向こうには白山と別山がうっすらと見える。バーチャリさんは感激のあまり涙ぐんでいる。ひいちゃんも念願が叶って喜
色満面だ。この素晴らしい展望を予想もしなかった好天の下で眺められる幸せを噛みしめた。
自分自身は4度目の笹ヶ峰だが、その喜びは些かも減じることはない。何度登ってもいい山はいいのだ。
[attachment=1]パノラマ 1_1_1.JPG[/attachment]
ロボットピーク手前の休憩地点まで戻ってランチタイムとする。国境稜線に出た時の状況からして、まさか青空の下でランチ
が楽しめると思っていなかった。ビールがウマ過ぎるのだ。
いつまでも留まりたいが下りなければならない。往路を忠実に戻る。源平谷山分岐のブナは往路では寒々しい佇まいだった
が、今は残照を浴びて生き生きとして見える。
普段はつまらない林道歩きも今日はこの素晴らしい一日の余韻を楽しむためのエピローグだった。
駐車地に帰着した時、バーチャリさんのザックからピッケルが消えていたのに気付いた。どうやら源平谷山からの下りで落とし
たらしい。シモンの青いシャフトのピッケルを拾った方がおられましたら、やぶこぎネットまで連絡頂ければ幸いです。
山日和
【山 域】越美国境 笹ヶ峰
【天 候】晴れのち曇りのち晴れ
【メンバー】バーチャリ、ひいちゃん、山日和
【コース】林道駐車地7:18---大河内集落奥の橋8:16---11:44国境稜線---12:48笹ヶ峰13:01---13:42ランチ場14:50---16:41橋
---17:20-駐車地
広野ダム湖の右岸道には雪のかけらすら見られなかった。予定通り二ツ屋の導水施設まで車で入る。続く大河内林道にも雪は
ない。これ幸いと5分ほど進んだところでデブリに阻まれてストップ。往復30分ぐらいは林道歩きをセーブできたようだ。
ところどころデブリが残っているものの、林道はこの時期としては異例なほど荒れていない。雪解け水が勢いよく流れる大河内川
を見下ろしながら、すっかり春めいた林道を歩くもう開きかけたフキノトウがあちこちに頭を出していた。
[attachment=6]P1170811_1_1.JPG[/attachment]
導水施設で会った美濃俣丸へ向かう登山者が、ひとり笹ヶ峰へ向かった人がいると言っていた。そのトレースは大河内集落跡
を過ぎて3番目の橋を対岸へ渡っていた。我々は堰堤手前の最終の橋を渡って尾根に取り付く。722m標高点を経て源平谷山か
らの尾根に合流する支尾根である。
懸案は雪が少なく奥まで車で入ることができたのと引き換えに現われるであろうヤブの濃さだ。下部は植林もあり、比較的しっ
かりした杣道が続く。高度を上げるに従い道型は薄くなるものの、ヤブ漕ぎというほどのこともなく、順調に進んで行く。尾根芯に
密生した部分も残雪に助けられたりして歩行に問題はない。
今日の天気予報は昼から曇りで夕方には雨が降り出すかもしれないというものだ。昼までになんとか山頂に到達したい。
左手には谷を挟んで笹ヶ峰の山頂が意外な近さで見えていた。ここから真っすぐ行ければ近いのだが。
800mあたりから完全に雪が繋がってスノーシューを履くことができた。先行者はワカンで歩いている。雨と気温の上昇で雪は
緩んでいるが、こういう状況はスノーシューの得意とする場面である。同じように歩いてもワカンと沈み方が違う。
[attachment=5]P1170835_1.JPG[/attachment]
源平谷山の合流点手前から雲が多くなってきた。予報よりも天気の移り変わりが早いようだ。雪原状の合流点に着く頃には
すっかり曇り空になってしまった。印象的な形のブナが1本、広い雪原の中に所在無げに佇んでいる。その奥には上谷山から
北に伸びる長大な尾根が横たわっていた。
[attachment=4]P1170841_1.JPG[/attachment]
ここからロボットピークと呼ばれる越美国境稜線とのジャンクションまでは高々200mほどの標高差しかない。国境稜線に向
かって雪尾根が伸びているが、曇り空の下ではグレーに沈んで美しさに欠ける。
やや急な広い斜面をヒールリフターを効かせて登り、ロボットピークの手前で左にトラバースすれば待望の越美国境稜線に到
着である。初めてここ訪れた時、同行の洞吹氏がばててしまって途中で待っていると言った。それを叱咤激励してここまで登っ
た時のうれしそうな顔を思い出す。
ここに到達しなければ得られない景色がある。そしてその景色を目にした時の感動も。奥美濃最深部の山々の大パノラマが今
目の前に展開している。
国境稜線へ出た途端、東からの強烈な風に体をあおられた。暗い空の色と相まってモチベーションが下がる。とりあえず風を
避けられるところへと笹ヶ峰方面へ足を踏み出す。
この状況ではのんびりランチタイムを取れないかもしれないので、風の弱い場所で軽く腹ごしらえ。ひいちゃんから「ここで待って
いるからバーチャリさんと2人で行って来て」と泣きが入った。かなり体調が悪いようで、体のあちこちが痛いと訴えている。
しかしここまで来てやめるという選択肢はない。笹ヶ峰山頂は結構遠くに見えるが、実際歩いてみるとアップダウンも緩く、まさ
に稜線漫歩を楽しめるところなのだ。
[attachment=0]P1170905_1_1.JPG[/attachment]
不動山へのジャンクションのあたりから、意外なことに青空が広がり始めた。さっきまでの雨が降り出してもおかしくないような
空の色は完全に姿を消し、雪面は本来の白さを取り戻した。なんという僥倖。予定より時間は掛かっているが、こうなれば足取
りは軽い。風も先ほどの強風とは違い、歩くのに支障はない程度に弱まった。
[attachment=2]P1170952_1.JPG[/attachment]
夏小屋丸の雪庇跡の雪堤はいつ見ても圧倒的だ。この雪庇が健在な内に見ようと思えば、早い時期に広野ダムから延々と
歩かなければならないだろう。今年は雪が少ないとの評判だが、少なくともここではそんな印象はない。
巨大な雪の塊となった夏小屋丸のピークを越えて、現われ始めた雪割れに注意しながら広い斜面を下りると前方に登山者の
姿が見えた。山頂を往復して戻って来たようだ。
この山域で会う登山者としては若そうな単独者としばし話す。(下山後に検索するとヤマレコの彼の記事がヒットした。その時は
話題にしなかったが、うれしいことにやぶこぎも見てくれているようだ。) やはりワカンでは歩きにくく苦労したと言っていた。
[attachment=3]P1170923_1.JPG[/attachment]
稜線東側にできた仮想稜線とも言うべき夥しい雪の堆積の上を歩く。ところどころに亀裂が入って、もうひと雨来れば一気に
崩れ落ちてしまいそうな予感だ。
山頂手前の小ピークを越えて、こちらから見るとドーム状の本峰へのわずかな登り。手前で待って3人同時に山頂に立つ。
頭上は登頂を祝福するかのように真っ青な空が広がっていた。金草岳から能郷白山へ続く越美国境の山々。三周ヶ岳、高丸、
烏帽子山、蕎麦粒山、不動山、千回沢山といった奥美濃のコアなピーク達が出迎えてくれた。
春霞の向こうには白山と別山がうっすらと見える。バーチャリさんは感激のあまり涙ぐんでいる。ひいちゃんも念願が叶って喜
色満面だ。この素晴らしい展望を予想もしなかった好天の下で眺められる幸せを噛みしめた。
自分自身は4度目の笹ヶ峰だが、その喜びは些かも減じることはない。何度登ってもいい山はいいのだ。
[attachment=1]パノラマ 1_1_1.JPG[/attachment]
ロボットピーク手前の休憩地点まで戻ってランチタイムとする。国境稜線に出た時の状況からして、まさか青空の下でランチ
が楽しめると思っていなかった。ビールがウマ過ぎるのだ。
いつまでも留まりたいが下りなければならない。往路を忠実に戻る。源平谷山分岐のブナは往路では寒々しい佇まいだった
が、今は残照を浴びて生き生きとして見える。
普段はつまらない林道歩きも今日はこの素晴らしい一日の余韻を楽しむためのエピローグだった。
駐車地に帰着した時、バーチャリさんのザックからピッケルが消えていたのに気付いた。どうやら源平谷山からの下りで落とし
たらしい。シモンの青いシャフトのピッケルを拾った方がおられましたら、やぶこぎネットまで連絡頂ければ幸いです。
山日和