【奥美濃】高丸から烏帽子山へ 至高の雪稜を行く
Posted: 2014年3月10日(月) 22:24
【日 付】2014年3月9日(日)
【山 域】奥美濃 高丸1316.3m・烏帽子山1242.2m
【天 候】曇りのち小雪のち晴れのち曇り
【コース】椀戸谷出合7:13---8:26林道終点---9:39 P1114m---10:19JP---11:03高丸11:24---12:53烏帽子山13:58---14:32JP---15:57椀戸谷---16:33駐車地
早朝の道の駅さかうち。朝飯用に自販機でコーンポタージュを買っていると、後から「山日和さん」と呼ぶ声がした。振り向くとそこにはクロオさんの姿が。Kitayama-walkさんと待ち合わせて蕎麦粒山へ行くらしい。ここに着くまで自分の中でもどちらにしようか迷っていた山だ。
クロオさんと別れて予定通り川上へ向かう。昨夜林道の入口を偵察した時、驚くほど少ない雪にある程度のところまで車で入れる期待はあった。路面にはまったく雪がない。地獄の滑り台の難所もアクセルひと踏みで通過してしまう。
あれよあれよという間にバイクランドを過ぎ、神岳ダムまで来てしまった。八草峠越えの国道には新雪が積もってわだちができていたのにどういうことだろう。
椀戸谷出合の橋に難なく到着。先着の3人パーティーが出発するところだった。ここで人に会うのも初めてである。聞けば烏帽子へ行くと言う。気を付けてと見送り、準備に掛かった。
ここまで車で入れれば登ったも同然である。椀戸谷上流方面の空がやや暗いのが気に入らないが。福井県の天気予報は曇りのち雪。県境から遠い蕎麦粒山の方が天気はいいかもしれない。
[attachment=7]P1160920_2_1.JPG[/attachment]
道のど真ん中が雪割れして水が流れている。ここまでと比べれば一気に雪の量は増えた。
しばらく歩くと林道は完全に雪に覆われた。60~80センチというところか。先行パーティーはツボ足で進んでいるが、履けるだけの雪があればすぐにスノーシューを履くのが習いとなっている。スノーシューを履くとツボ足トレースの歩幅に合わせるより格段に歩きやすい。
2年前、烏帽子山からの周回をやった時の取り付きを過ぎてもトレースは続いていた。林道は右岸へ渡り返して高度を上げて行く。目的地変更したのだろうか。
林道終点は標高740m。1114m標高点の南東である。ここから稜線までの標高差は400m足らずしかない。当初は夜叉龍神社から林道を延々と歩くつもりをしていたことを思えば、うそのような快調さだ。ここでひと息入れて登りに備えよう。
高丸東のジャンクションの南尾根は往復を含めると5回歩いている。そのいずれもが末端からだ。この尾根の白眉は1114mの南側に展開するブナ主体の森だという思いが強いからである。今日は高丸と烏帽子山を繋ぐことが主目的。やや不満が残るルート設定だがやむを得ない。と思っていたら、この尾根がなかなかよかった。最初の100mほど鬱陶しい植林を我慢すれば、後はブナの純林が続いて気持ちのいい尾根に変わった。ただ、林道では天気の好転を予感させた日差しが消え、暗くなった空から雪まで舞い始めた。やや意気消沈気味だが登るしかない。
急登が終わり、1114mピークの肩まで来ると先行パーティーの姿が見え、頭上には青空が広がり始めた。ラストを歩いていた女性に尋ねると、ここから烏帽子に向かうということだ。なるほど、そういう発想は自分にはなかった。
1114mピークでザックを降ろしていた男性二人に追い付く。トレースの礼を言っていろいろ話をしているとやぶこぎネットの話題になり、クロオさんの話が出た。「道の駅で会いましたよ」と言うとびっくり。さらに「山日和です」と名乗ると大層驚かれ、記念撮影まで頼まれてしまった。やぶこぎもメジャーになったということだろうか。このパーティーはクロオさんの山友達の梨丸さんの御一行だった。
[attachment=0]P1160987_1_1.JPG[/attachment]
しかしさっきの雪空はなんだったんだろうと思わせるような青空が広がっている。貧雪とまで言われた今年の雪だが、ここではそんな言葉がまったく無縁の真っ白な世界だ。そして期待もしていなかった霧氷が花を咲かせている。ジャンクションピークまで梨丸パーティーの一員のように話しながら歩く。予想以上の素晴らしい雪稜と青空と霧氷に感嘆の声が飛び交った。「凄いとしか言いようがないですねえ」梨丸さんも大喜びだ。高丸の堂々たる姿が素晴らしい。
ジャンクションから見る高丸方面の雪稜は、凄まじいばかりの雪庇の断面を見せている。2年前より高さは低いようだが、文句の付けようがない。烏帽子山への稜線も素晴らしい。この吊尾根で結ばれた二つの特徴あるピークを繋ぐ縦走は、雪の奥美濃の中でも第一級のルートと言えるだろう。
[attachment=6]P1160999_1_1.JPG[/attachment]
烏帽子山へ向かう梨丸パーティーと別れて高丸へ足を踏み出した。ここまで楽をさせてもらったのでパワーはあり余っているはずだが、そうはいかないのが悲しいところ。やや重くなった雪にスピードは上がらない。しかし北面のブナ林と一面の霧氷は素晴らしいのひと言である。歩く時間とカメラを構える時間が変わらないのも前に進まない原因だ。
[attachment=5]P1170061_1_1.JPG[/attachment]
強烈な急傾斜に一歩ずつステップを刻む。目の前の青い空と白い雪の比率が逆転してだんだん青が勝ち始めた。高丸山頂だ。
西側の展望が一気に開けた。横山岳から上谷山、三国岳、真正面の白い巨体は三周ヶ岳。美濃俣丸、笹ヶ峰、金草岳、若丸山、能郷白山、不動山、千回沢山と奥美濃・越美国境のコアな山々が並ぶ。そしてこれから向かう烏帽子山がまさに名が体を表すように手前のコルから急角度で立ち上がっている。その山頂へ至る雪稜の南側はまるで堅固な城砦の石垣のごとく雪堤が連なる。
ここで早めのランチとしてしまえば烏帽子へ向かう気力が無くなりそうなので、後ろ髪を引かれながら高丸の山頂を辞した。
[attachment=4]P1170078_1_1.JPG[/attachment]
梨丸パーティーのトレースを追って雪稜を辿る。この稜線は比較的雪が締まっていた。烏帽子手前のジャンクションピークから一旦急降下してコルに下る。
ここから尾根芯は雪の壁が行く手を阻んだ。右の谷側に付けられたトレースを辿るとしばらくで行き止まり。ここから引き返したようだ。戻るのも面倒なので急斜面のトラバースを目論んだが、ヒザ近い潜りはともかく、雪の下の完全に氷化した層に歯が立たず、結局雪壁の下まで引き返す羽目になってしまった。もうひとつのトレースは左側のブッシュを巻いて上がっていたが、ここもなかなかの急傾斜である。
青息吐息で山頂に近付くと梨丸パーティーが下りてきた。彼らは元来たルートを引き返す予定らしい。こちらは当然の如く周回だが人にお薦めはできない。また会いましょうと挨拶をして別れた。
[attachment=1]P1170148_1_1.JPG[/attachment]
足は重いが心は軽く、いよいよ烏帽子山の山頂に到達。極端に長細い山頂は高度感も抜群だ。正面に蕎麦粒山が大きい。今頃クロオさんとkitayama-walkさんはあそこでランチの真っ最中だろうか。
少し風があるが、斜面に腰を降ろせば気になるほどではない。高丸を眺めながら至福のランチタイムを楽しむ。ここはまだ暖かい日差しが降り注いでいるが、高丸にはすでに雲がかかり始めていた。逆回りにしなくて正解と言うべきだろう。今日は鍋が貧弱なのが些か残念だが、極上の一杯を味わい、最後はしることコーヒーでシメる。
[attachment=2]P1170166_1_1.JPG[/attachment]
きっかり1時間で下山開始。スノーシューは外したがアイゼンを履くほどでもない。登りはブッシュを巻き上がった雪壁を滑り降りたところで異変が起きた。山頂への登りで攣りかけて秘薬を飲んでいたのだが、着地した瞬間に太ももを激痛が襲った。太ももの内側と外側が同時に攣って身動きできない。じっとしているのに走った後のような荒い呼吸が収まらない。これはヤバい。ザックを降ろして前に置き、その上に両膝をついて足をリラックスさせると少し楽になった。水分を補給してしばらく休むとなんとか歩ける状態に回復。ホッとひと息だがまだ油断はできない。足に負担が掛からないようお嬢さん芸のように小股で歩を進める。
トガスへ続く稜線へのジャンクションで南へと針路を変えた。このあたりはずっと雪庇が続いているが、山頂から雪庇の切れ目を確認していたのだ。ちょうど枯れ木が立つあたりに下降ポイントだ。難なく雪壁の下に降り立って尾根に乗る。
ここは2年前も歩いた既知のルートだが、Ca1030mあたりから南に分岐する尾根が気になっていた。上部はブナ林が続いていそうで、今度来る時は使ってみたいと思っていたのである。この尾根も若いブナ林が続いて雰囲気は悪くない。振り返れば烏帽子の山頂がはるかな高みに見えた。
[attachment=3]P1170185_1_1.JPG[/attachment]
Ca1030mで右に方向を変えた。予想通り広いブナ林の尾根だ。しかしそれもあまり長くは続かず、やがて廃林道跡に出るとそこからは放置植林となってしまった。この尾根の下部は地形が複雑で、葉が繁った植林は見通しが利かず方向を定めるのがひと苦労だ。お世辞にも面白いとは言えない植林を抜けて椀戸谷の二俣に下り立った。
懸案だった渡渉も流れは細く、ひとまたぎで越えられる程度。対岸の雪の段丘へも簡単に上がることができた。右岸には予想通り段丘が続いて苦労なく林道の橋の袂に帰着。梨丸パーティーの下りのトレースが延びている。
駐車地に戻る頃にはまた小雪が舞い始めていた。車のドアに紙切れがはさんである。見てみると梨丸パーティーの伝言のメモだった。ありがとうございましたと書かれていたが、こちらこそありがとうと言いたい。
いい出会いにも恵まれた今シーズン一番の雪山だった。
山日和
【山 域】奥美濃 高丸1316.3m・烏帽子山1242.2m
【天 候】曇りのち小雪のち晴れのち曇り
【コース】椀戸谷出合7:13---8:26林道終点---9:39 P1114m---10:19JP---11:03高丸11:24---12:53烏帽子山13:58---14:32JP---15:57椀戸谷---16:33駐車地
早朝の道の駅さかうち。朝飯用に自販機でコーンポタージュを買っていると、後から「山日和さん」と呼ぶ声がした。振り向くとそこにはクロオさんの姿が。Kitayama-walkさんと待ち合わせて蕎麦粒山へ行くらしい。ここに着くまで自分の中でもどちらにしようか迷っていた山だ。
クロオさんと別れて予定通り川上へ向かう。昨夜林道の入口を偵察した時、驚くほど少ない雪にある程度のところまで車で入れる期待はあった。路面にはまったく雪がない。地獄の滑り台の難所もアクセルひと踏みで通過してしまう。
あれよあれよという間にバイクランドを過ぎ、神岳ダムまで来てしまった。八草峠越えの国道には新雪が積もってわだちができていたのにどういうことだろう。
椀戸谷出合の橋に難なく到着。先着の3人パーティーが出発するところだった。ここで人に会うのも初めてである。聞けば烏帽子へ行くと言う。気を付けてと見送り、準備に掛かった。
ここまで車で入れれば登ったも同然である。椀戸谷上流方面の空がやや暗いのが気に入らないが。福井県の天気予報は曇りのち雪。県境から遠い蕎麦粒山の方が天気はいいかもしれない。
[attachment=7]P1160920_2_1.JPG[/attachment]
道のど真ん中が雪割れして水が流れている。ここまでと比べれば一気に雪の量は増えた。
しばらく歩くと林道は完全に雪に覆われた。60~80センチというところか。先行パーティーはツボ足で進んでいるが、履けるだけの雪があればすぐにスノーシューを履くのが習いとなっている。スノーシューを履くとツボ足トレースの歩幅に合わせるより格段に歩きやすい。
2年前、烏帽子山からの周回をやった時の取り付きを過ぎてもトレースは続いていた。林道は右岸へ渡り返して高度を上げて行く。目的地変更したのだろうか。
林道終点は標高740m。1114m標高点の南東である。ここから稜線までの標高差は400m足らずしかない。当初は夜叉龍神社から林道を延々と歩くつもりをしていたことを思えば、うそのような快調さだ。ここでひと息入れて登りに備えよう。
高丸東のジャンクションの南尾根は往復を含めると5回歩いている。そのいずれもが末端からだ。この尾根の白眉は1114mの南側に展開するブナ主体の森だという思いが強いからである。今日は高丸と烏帽子山を繋ぐことが主目的。やや不満が残るルート設定だがやむを得ない。と思っていたら、この尾根がなかなかよかった。最初の100mほど鬱陶しい植林を我慢すれば、後はブナの純林が続いて気持ちのいい尾根に変わった。ただ、林道では天気の好転を予感させた日差しが消え、暗くなった空から雪まで舞い始めた。やや意気消沈気味だが登るしかない。
急登が終わり、1114mピークの肩まで来ると先行パーティーの姿が見え、頭上には青空が広がり始めた。ラストを歩いていた女性に尋ねると、ここから烏帽子に向かうということだ。なるほど、そういう発想は自分にはなかった。
1114mピークでザックを降ろしていた男性二人に追い付く。トレースの礼を言っていろいろ話をしているとやぶこぎネットの話題になり、クロオさんの話が出た。「道の駅で会いましたよ」と言うとびっくり。さらに「山日和です」と名乗ると大層驚かれ、記念撮影まで頼まれてしまった。やぶこぎもメジャーになったということだろうか。このパーティーはクロオさんの山友達の梨丸さんの御一行だった。
[attachment=0]P1160987_1_1.JPG[/attachment]
しかしさっきの雪空はなんだったんだろうと思わせるような青空が広がっている。貧雪とまで言われた今年の雪だが、ここではそんな言葉がまったく無縁の真っ白な世界だ。そして期待もしていなかった霧氷が花を咲かせている。ジャンクションピークまで梨丸パーティーの一員のように話しながら歩く。予想以上の素晴らしい雪稜と青空と霧氷に感嘆の声が飛び交った。「凄いとしか言いようがないですねえ」梨丸さんも大喜びだ。高丸の堂々たる姿が素晴らしい。
ジャンクションから見る高丸方面の雪稜は、凄まじいばかりの雪庇の断面を見せている。2年前より高さは低いようだが、文句の付けようがない。烏帽子山への稜線も素晴らしい。この吊尾根で結ばれた二つの特徴あるピークを繋ぐ縦走は、雪の奥美濃の中でも第一級のルートと言えるだろう。
[attachment=6]P1160999_1_1.JPG[/attachment]
烏帽子山へ向かう梨丸パーティーと別れて高丸へ足を踏み出した。ここまで楽をさせてもらったのでパワーはあり余っているはずだが、そうはいかないのが悲しいところ。やや重くなった雪にスピードは上がらない。しかし北面のブナ林と一面の霧氷は素晴らしいのひと言である。歩く時間とカメラを構える時間が変わらないのも前に進まない原因だ。
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強烈な急傾斜に一歩ずつステップを刻む。目の前の青い空と白い雪の比率が逆転してだんだん青が勝ち始めた。高丸山頂だ。
西側の展望が一気に開けた。横山岳から上谷山、三国岳、真正面の白い巨体は三周ヶ岳。美濃俣丸、笹ヶ峰、金草岳、若丸山、能郷白山、不動山、千回沢山と奥美濃・越美国境のコアな山々が並ぶ。そしてこれから向かう烏帽子山がまさに名が体を表すように手前のコルから急角度で立ち上がっている。その山頂へ至る雪稜の南側はまるで堅固な城砦の石垣のごとく雪堤が連なる。
ここで早めのランチとしてしまえば烏帽子へ向かう気力が無くなりそうなので、後ろ髪を引かれながら高丸の山頂を辞した。
[attachment=4]P1170078_1_1.JPG[/attachment]
梨丸パーティーのトレースを追って雪稜を辿る。この稜線は比較的雪が締まっていた。烏帽子手前のジャンクションピークから一旦急降下してコルに下る。
ここから尾根芯は雪の壁が行く手を阻んだ。右の谷側に付けられたトレースを辿るとしばらくで行き止まり。ここから引き返したようだ。戻るのも面倒なので急斜面のトラバースを目論んだが、ヒザ近い潜りはともかく、雪の下の完全に氷化した層に歯が立たず、結局雪壁の下まで引き返す羽目になってしまった。もうひとつのトレースは左側のブッシュを巻いて上がっていたが、ここもなかなかの急傾斜である。
青息吐息で山頂に近付くと梨丸パーティーが下りてきた。彼らは元来たルートを引き返す予定らしい。こちらは当然の如く周回だが人にお薦めはできない。また会いましょうと挨拶をして別れた。
[attachment=1]P1170148_1_1.JPG[/attachment]
足は重いが心は軽く、いよいよ烏帽子山の山頂に到達。極端に長細い山頂は高度感も抜群だ。正面に蕎麦粒山が大きい。今頃クロオさんとkitayama-walkさんはあそこでランチの真っ最中だろうか。
少し風があるが、斜面に腰を降ろせば気になるほどではない。高丸を眺めながら至福のランチタイムを楽しむ。ここはまだ暖かい日差しが降り注いでいるが、高丸にはすでに雲がかかり始めていた。逆回りにしなくて正解と言うべきだろう。今日は鍋が貧弱なのが些か残念だが、極上の一杯を味わい、最後はしることコーヒーでシメる。
[attachment=2]P1170166_1_1.JPG[/attachment]
きっかり1時間で下山開始。スノーシューは外したがアイゼンを履くほどでもない。登りはブッシュを巻き上がった雪壁を滑り降りたところで異変が起きた。山頂への登りで攣りかけて秘薬を飲んでいたのだが、着地した瞬間に太ももを激痛が襲った。太ももの内側と外側が同時に攣って身動きできない。じっとしているのに走った後のような荒い呼吸が収まらない。これはヤバい。ザックを降ろして前に置き、その上に両膝をついて足をリラックスさせると少し楽になった。水分を補給してしばらく休むとなんとか歩ける状態に回復。ホッとひと息だがまだ油断はできない。足に負担が掛からないようお嬢さん芸のように小股で歩を進める。
トガスへ続く稜線へのジャンクションで南へと針路を変えた。このあたりはずっと雪庇が続いているが、山頂から雪庇の切れ目を確認していたのだ。ちょうど枯れ木が立つあたりに下降ポイントだ。難なく雪壁の下に降り立って尾根に乗る。
ここは2年前も歩いた既知のルートだが、Ca1030mあたりから南に分岐する尾根が気になっていた。上部はブナ林が続いていそうで、今度来る時は使ってみたいと思っていたのである。この尾根も若いブナ林が続いて雰囲気は悪くない。振り返れば烏帽子の山頂がはるかな高みに見えた。
[attachment=3]P1170185_1_1.JPG[/attachment]
Ca1030mで右に方向を変えた。予想通り広いブナ林の尾根だ。しかしそれもあまり長くは続かず、やがて廃林道跡に出るとそこからは放置植林となってしまった。この尾根の下部は地形が複雑で、葉が繁った植林は見通しが利かず方向を定めるのがひと苦労だ。お世辞にも面白いとは言えない植林を抜けて椀戸谷の二俣に下り立った。
懸案だった渡渉も流れは細く、ひとまたぎで越えられる程度。対岸の雪の段丘へも簡単に上がることができた。右岸には予想通り段丘が続いて苦労なく林道の橋の袂に帰着。梨丸パーティーの下りのトレースが延びている。
駐車地に戻る頃にはまた小雪が舞い始めていた。車のドアに紙切れがはさんである。見てみると梨丸パーティーの伝言のメモだった。ありがとうございましたと書かれていたが、こちらこそありがとうと言いたい。
いい出会いにも恵まれた今シーズン一番の雪山だった。
山日和