【白山】冬と夏が同居していた神の御座す山
Posted: 2013年10月21日(月) 21:35
【日 付】2013年10月19日(土)
【山 域】加賀白山
【天 候】曇りのち晴れ
【コース】別当出合6:55---8:20甚ノ助避難小屋---9:35室堂10:00---10:35御前峰---11:25千蛇ヶ池
12:20---12:45室堂13:00---13:50南竜ヶ馬場14:15---14:45甚ノ助小屋---15:45別当出合
先週までは大賑わいだっただろう市ノ瀬には4~5台の車が止まっているだけだった。
空はどんよりと曇っているが、雨が降りそうなほどでもない。花もない、紅葉もない、展望もな
いのないない尽くしかもしれないがトレーニングと割り切って登ろう。
今週からは週末でも別当出合まで車で入ることができる。その代わり、室堂も営業終了してい
るので、一部の南竜のテン泊登山者以外は全員日帰りだ。
砂防新道を歩くのは17年振り。無雪期だと35年振りである。道の様子はあまり記憶がないが、
あまり楽しい道でなかったことだけは印象にある。
山上の紅葉は終わっているが、下部の色付きはこれからというところで、そろそろ始まったブナ
の黄葉を始めとした美しい森を歩く。
途中で登り専用と下り専用に道が分かれていた。これもなかったような気がする。
心拍数が上がらず、口で息をしなくても済む程度の呼吸数に抑えて歩く。今年は体調が万全な
時の方が少なかったような気がして、自分の体力に自信が持てなくなってしまっていた。
甚ノ助避難小屋までワンピッチで到着。まだ真新しい小屋は初見参だ。昔ここで泊ったことが
あるが、すでに老朽化していたのとハエだらけのトイレの汚さに辟易した記憶がある。
小屋の前からは展望が開け、大屏風から別山への稜線がよく見えた。
[attachment=7]P1140510_1.JPG[/attachment]
小屋からひと登りで南竜への道を分ける。当初は南竜経由で登るつもりだったが、どうも天候
が怪しいので先に登ってしまおうと黒ボコ岩への道を選択した。
いくつも谷を横切りながら斜面をトラバースして行く道は、黒ボコ岩の手前で急登にかかる。こ
の斜面をシリセードで滑り降りたことを思い出した。
[attachment=6]P1140375_1.JPG[/attachment]
弥陀ヶ原の広大な台地まで来れば室堂は近い。斜面のあちこちに先週の名残りの雪が残ってい
る。先週なら見事な草紅葉が見られたのだろうか。
営業の終わった室堂だが中にも人の気配があり、小屋閉めの準備なのか忙しそうに立ち回って
いた。
抑えて歩いたとは言え、シャツは汗でずぶ濡れである。少し風も出てきて寒くてたまらないので
シャツを着替えた。一番下に着ているファイントラックのフラッドラッシュスキンメッシュはほ
とんど濡れていない。その上に長袖のフラッドラッシュスキンを着てモンベルのノマドパーカー
を羽織れば万全だ。風除けに薄いウインドブレーカーを着れば寒さを感じることはない。
センターの裏の小さな池は凍結していた。
[attachment=5]P1140382_1.JPG[/attachment]
ここまでは高曇りといった感じで見通しは比較的利いたのだが、見上げる御前峰方面は完全に
ガスの中。何度も山頂に立っているし、何も見えない山頂に意味はないのだがトレーニングとし
てはとりあえず登るしかない。
少しずつ雪が増え、ところどころ踏み固められて滑りやすくなった石段の道を歩く。だいぶバ
テてきてスピードが上がらない。周りは既にガスに包まれて視界はゼロである。
[attachment=4]P1140394_1.JPG[/attachment]
数人の登山者が憩う山頂に立ったが何の感慨も湧かない。
大白水谷を遡行して9時間後に立った時。平瀬ゲートからDOCで白水湖まで上がり、東面台地から
ダイレクトに山頂に到達した時。そんな鮮烈な思い出があると普通に登山道を歩いて上がっても
特別の喜びはない。景色が見えれば少しは気分も違うのだろうが。
[attachment=3]P1140421_1.JPG[/attachment]
記念写真を撮ることもなく(人には頼まれたが)、早々に山頂を辞して翠ヶ池へ向かった。こち
らへ向かう人は少なく、20センチほど積もった雪に2~3人のトレースが残っていた。
2年前の平瀬ゲート開通前に平瀬道を上がった時のことを思い出す。あの時はまったくのホワイト
アウト。10m先も見えない状態の中、御前峰から小カンクラ雪渓の下り口を手探りで探しながら
下りたものだ。ほんの一瞬ガスが晴れて剣ヶ峰が現われ、それで方向を確信したのだ。
今日はガスといってもそこそこ見通しは利くので問題はない。もとより普通の登山道だ。
ガスの中から次々と浮かび上がる池を巡って歩くのもまた風情があるというもの。
紺屋池、油ヶ池と過ぎて本命の翠ヶ池に着いた。しかし池のほとりまでは30~40m下りねばなら
ない。池畔でランチにしたかったが登り返すのも面倒くさく、そのまま進む。
その名もおどろおどろしい血の池を見送って、半分凍りついた千蛇ヶ池に着いた。風もほとんど
なく落ち着ける。ここでランチにしよう。
こういうシーンではビールより熱燗の方が似合いそうだが、私の場合は常にビールである。
生ハムを肴にビールを飲みながらラーメンの湯が沸くのを待つ。後ろを登山者が通り過ぎて行っ
た。じっとしているとだんだん寒くなってきたので、食後のコーヒーを済ませて荷物を担いだ。
[attachment=0]パノラマ 7_1_1.JPG[/attachment]
再び室堂へ戻る途中、唐突にガスが切れて息を飲むような景色が展開した。
眼下の室堂の向こうには別山への山稜が広がり、その上には青空さえ覗いている。まったく期待
していなかった光景に胸が躍った。御嶽や奥越、奥美濃の山々が、連綿と続く薄い雲の波頭の上
にくっきりと浮かび上がっていた。どうやら2500m以上の山頂部だけがガスに包まれていたよう
だ。
[attachment=2]P1140464_1_1.JPG[/attachment]
室堂からは歩いたことのないトンビ岩コースで南竜ヶ馬場を経由することにした。当初の登り
に予定していたルートだ。
トンビ岩を過ぎると日が当たり始めて暑くなってきた。南竜山荘に着く頃には一面の青空が広が
る。こんなことならもう少しランチを我慢した方がよかったか。
もう冬に突入したかのような山頂部から夏に逆戻りしたような日差しを浴びる。この時期の高
山は変化が激しい。
[attachment=1]パノラマ 9_1.JPG[/attachment]
砂防新道の分岐へ向かうトラバース道は展望が大きく開けて気持ちがいい。南竜から別山にか
けて屏風のように横たわる稜線を眺めながら歩くのは実にいい気分だ。
甚ノ助避難小屋からは駆けるように下った。朝は曇り空で輝きを失っていた紅黄葉が、今は西
日に美しくきらめいている。
一日の内に冬と夏が同居したような白山。2週間も経てばその名の通り、静けさが支配する真っ
白な世界に変わるのだろう。
山日和
【山 域】加賀白山
【天 候】曇りのち晴れ
【コース】別当出合6:55---8:20甚ノ助避難小屋---9:35室堂10:00---10:35御前峰---11:25千蛇ヶ池
12:20---12:45室堂13:00---13:50南竜ヶ馬場14:15---14:45甚ノ助小屋---15:45別当出合
先週までは大賑わいだっただろう市ノ瀬には4~5台の車が止まっているだけだった。
空はどんよりと曇っているが、雨が降りそうなほどでもない。花もない、紅葉もない、展望もな
いのないない尽くしかもしれないがトレーニングと割り切って登ろう。
今週からは週末でも別当出合まで車で入ることができる。その代わり、室堂も営業終了してい
るので、一部の南竜のテン泊登山者以外は全員日帰りだ。
砂防新道を歩くのは17年振り。無雪期だと35年振りである。道の様子はあまり記憶がないが、
あまり楽しい道でなかったことだけは印象にある。
山上の紅葉は終わっているが、下部の色付きはこれからというところで、そろそろ始まったブナ
の黄葉を始めとした美しい森を歩く。
途中で登り専用と下り専用に道が分かれていた。これもなかったような気がする。
心拍数が上がらず、口で息をしなくても済む程度の呼吸数に抑えて歩く。今年は体調が万全な
時の方が少なかったような気がして、自分の体力に自信が持てなくなってしまっていた。
甚ノ助避難小屋までワンピッチで到着。まだ真新しい小屋は初見参だ。昔ここで泊ったことが
あるが、すでに老朽化していたのとハエだらけのトイレの汚さに辟易した記憶がある。
小屋の前からは展望が開け、大屏風から別山への稜線がよく見えた。
[attachment=7]P1140510_1.JPG[/attachment]
小屋からひと登りで南竜への道を分ける。当初は南竜経由で登るつもりだったが、どうも天候
が怪しいので先に登ってしまおうと黒ボコ岩への道を選択した。
いくつも谷を横切りながら斜面をトラバースして行く道は、黒ボコ岩の手前で急登にかかる。こ
の斜面をシリセードで滑り降りたことを思い出した。
[attachment=6]P1140375_1.JPG[/attachment]
弥陀ヶ原の広大な台地まで来れば室堂は近い。斜面のあちこちに先週の名残りの雪が残ってい
る。先週なら見事な草紅葉が見られたのだろうか。
営業の終わった室堂だが中にも人の気配があり、小屋閉めの準備なのか忙しそうに立ち回って
いた。
抑えて歩いたとは言え、シャツは汗でずぶ濡れである。少し風も出てきて寒くてたまらないので
シャツを着替えた。一番下に着ているファイントラックのフラッドラッシュスキンメッシュはほ
とんど濡れていない。その上に長袖のフラッドラッシュスキンを着てモンベルのノマドパーカー
を羽織れば万全だ。風除けに薄いウインドブレーカーを着れば寒さを感じることはない。
センターの裏の小さな池は凍結していた。
[attachment=5]P1140382_1.JPG[/attachment]
ここまでは高曇りといった感じで見通しは比較的利いたのだが、見上げる御前峰方面は完全に
ガスの中。何度も山頂に立っているし、何も見えない山頂に意味はないのだがトレーニングとし
てはとりあえず登るしかない。
少しずつ雪が増え、ところどころ踏み固められて滑りやすくなった石段の道を歩く。だいぶバ
テてきてスピードが上がらない。周りは既にガスに包まれて視界はゼロである。
[attachment=4]P1140394_1.JPG[/attachment]
数人の登山者が憩う山頂に立ったが何の感慨も湧かない。
大白水谷を遡行して9時間後に立った時。平瀬ゲートからDOCで白水湖まで上がり、東面台地から
ダイレクトに山頂に到達した時。そんな鮮烈な思い出があると普通に登山道を歩いて上がっても
特別の喜びはない。景色が見えれば少しは気分も違うのだろうが。
[attachment=3]P1140421_1.JPG[/attachment]
記念写真を撮ることもなく(人には頼まれたが)、早々に山頂を辞して翠ヶ池へ向かった。こち
らへ向かう人は少なく、20センチほど積もった雪に2~3人のトレースが残っていた。
2年前の平瀬ゲート開通前に平瀬道を上がった時のことを思い出す。あの時はまったくのホワイト
アウト。10m先も見えない状態の中、御前峰から小カンクラ雪渓の下り口を手探りで探しながら
下りたものだ。ほんの一瞬ガスが晴れて剣ヶ峰が現われ、それで方向を確信したのだ。
今日はガスといってもそこそこ見通しは利くので問題はない。もとより普通の登山道だ。
ガスの中から次々と浮かび上がる池を巡って歩くのもまた風情があるというもの。
紺屋池、油ヶ池と過ぎて本命の翠ヶ池に着いた。しかし池のほとりまでは30~40m下りねばなら
ない。池畔でランチにしたかったが登り返すのも面倒くさく、そのまま進む。
その名もおどろおどろしい血の池を見送って、半分凍りついた千蛇ヶ池に着いた。風もほとんど
なく落ち着ける。ここでランチにしよう。
こういうシーンではビールより熱燗の方が似合いそうだが、私の場合は常にビールである。
生ハムを肴にビールを飲みながらラーメンの湯が沸くのを待つ。後ろを登山者が通り過ぎて行っ
た。じっとしているとだんだん寒くなってきたので、食後のコーヒーを済ませて荷物を担いだ。
[attachment=0]パノラマ 7_1_1.JPG[/attachment]
再び室堂へ戻る途中、唐突にガスが切れて息を飲むような景色が展開した。
眼下の室堂の向こうには別山への山稜が広がり、その上には青空さえ覗いている。まったく期待
していなかった光景に胸が躍った。御嶽や奥越、奥美濃の山々が、連綿と続く薄い雲の波頭の上
にくっきりと浮かび上がっていた。どうやら2500m以上の山頂部だけがガスに包まれていたよう
だ。
[attachment=2]P1140464_1_1.JPG[/attachment]
室堂からは歩いたことのないトンビ岩コースで南竜ヶ馬場を経由することにした。当初の登り
に予定していたルートだ。
トンビ岩を過ぎると日が当たり始めて暑くなってきた。南竜山荘に着く頃には一面の青空が広が
る。こんなことならもう少しランチを我慢した方がよかったか。
もう冬に突入したかのような山頂部から夏に逆戻りしたような日差しを浴びる。この時期の高
山は変化が激しい。
[attachment=1]パノラマ 9_1.JPG[/attachment]
砂防新道の分岐へ向かうトラバース道は展望が大きく開けて気持ちがいい。南竜から別山にか
けて屏風のように横たわる稜線を眺めながら歩くのは実にいい気分だ。
甚ノ助避難小屋からは駆けるように下った。朝は曇り空で輝きを失っていた紅黄葉が、今は西
日に美しくきらめいている。
一日の内に冬と夏が同居したような白山。2週間も経てばその名の通り、静けさが支配する真っ
白な世界に変わるのだろう。
山日和
【コース】別当出合6:55---8:20甚ノ助避難小屋---9:35室堂10:00---10:35御前峰---11:25千蛇ヶ池